陸上特殊無線技士では、国家試験の他、養成課程を受講するという手段があります。

このコラムではそれぞれの違いとどのような人が向いているのかを説明します。

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陸上特殊無線技士資格を取得する方法は4つ

陸上特殊無線技士を取得する方法としては4種類の方法があります。

国家試験に合格する

一陸特は年3回、二陸特、三陸特はCBT方式で常時行われている国家試験に合格することにより、取得することが可能です。

総務大臣が認める養成課程を修了する

日本無線協会をはじめする各社が実施する無線従事者養成課程を修了することにより、取得することができます。

大学等により無線通信に関する科目を修めて卒業する

大学や高等学校などで総務省が認める科目を履修して卒業することにより取得することができます。

一定の無線従事者資格及び業務経歴を有する

一海通、二海通又は航空通の資格を有し、かつ、当該資格により無線局の無線設備(アマチュア局の無線設備を除く。)の操作に6ヶ月以上従事した者は、二陸特の資格を得ることができます。

陸上特殊無線技士の養成課程(eラーニング)一覧

実施企業 価格(税込)
キューシーキュー企画 2級 25,950円(免許申請手数料含む)
3級 17,150円(免許申請手数料含む)
トライアロー 1級 57,200円(選抜試験込)
3級 19,800円(ドローン基礎講座込)
電調社 1級 63,800円(選抜試験込)
3級 19,800円
ベータテック 1級 48,225円(免許申請印紙代含む)、選抜試験費用5,500 円
2級 20,725円(免許申請印紙代含む)
3級 16,325円(免許申請印紙代含む)
※2024年12月現在の価格です

 

1陸特養成課程(Eラーニング)の受講要件

2陸特、3陸特には受講要件がありませんが、1陸特には以下の受講要件のいずれかを満たす必要があります。

  1. 学校教育法第1条に規定する高等学校又は中等教育学校の電気科又は電気通信科を卒業した者
     
  2. 学校教育法による大学、短期大学、高等専門学校、高等学校又は中等教育学校(高等学校又は中等教育学校の電気科又は電気通信科を除く。)の電気通信に関する課程を有する学科を卒業した者
     
  3. 学校教育法による大学の電気通信に関する課程を有する学科を1年次以上修了した者又は高等専門学校の電気通信に関する課程を有する学科を3年次以上修了した者
     
  4. 入学資格を学校教育法第57条に規定する者とする修業年限が3年以上の学校等の電気通信に関する課程を有する学科を卒業した者
     
  5. 入学資格を学校教育法第90条に規定する者とする修業年限が1年以上の学校等の電気通信に関する課程を有する学科等を卒業し又は修了した者(「修了した者」については、1年次以上を修了した者に限る。)
     
  6. 2総通、3総通、1海通、2海通、4海通又は航空通の資格を有する者
     
  7. 当該認定の申請前5年以内に通算して3年以上(学校教育法による高等学校又は中等教育学校を卒業した者及びこれに準ずる者の場合は、1年以上)多重無線設備の保守の補助又は搬送端局設備若しくは電力線搬送端局設備の保守に従事した経歴を有する者。この場合において、高等学校を卒業した者に準ずる者は、学校教育法第90条第1項に規定する大学に入学することのできる者とする。
     
  8. 1陸特の資格に係る選抜試験に合格した者。

養成課程の選抜試験内容

なお、選抜試験試験は、受講しようとする養成課程を実施している会社の選抜試験でなければなりません。

選抜試験の内容は次の通りです。

試験項目 試験内容 試験
問題
試験
時間
合格点 レベル
数学 ①代数
(二次方程式、複素数、不等式及び対数)
②三角関数
(加法定理、二角の和及び差の正弦余弦の積、二倍角及び半角の公式並びに正弦余弦の乗積公式)
③微分、積分の初歩
(関数の極限、微分法、極大極小及び積分の基礎公式)
6問
各問5点
2時間 60点 高等学校又は中等教育学校の電気科又は電気通信科卒業程度
電気物理 ①静電気
(電界、クーロンの法則、静電誘導、コンデンサ及び静電容量)
②電流
(オームの法則、ジュールの法則及び抵抗率)
③電流の磁気作用
(右ねじの法則、ビオ・サバールの法則、電磁誘導、フレミングの右手の法則及びインダクタンスの計算)
4問
各問5点
電気回路の基礎 ①直流回路
(電流の接続、抵抗の接続及びキルヒホッフの法則)
②交流回路
(基本交流回路、直並列回路、共振及び相互インダクタンス)
6問
各問5点
電子回路 ①増幅作用
(原理、回路動作、等価回路並びに電圧及び電力増幅)
②発振作用
(原理及び発振器)
③変調作用
(変調波の種類、振幅変調の原理及び周波数変調の原理)
④復調作用
(原理(振幅変調波の復調及び周波数変調波の復調))
⑤整流作用
(原理、種類及び平滑回路)
4問
各問5点

eラーニング(養成課程)で資格を得るメリット

自分の好きな時間に受講できる

これが一番のメリットです。

集合講習タイプの養成課程や国家試験は特定の日に特定の会場で実施されます。

この時間や場所の拘束が一切ありません。

なお、修了試験は自分で会場を予約する必要があります。

合格率が高い

養成課程では、合格率がいずれも99%程度となっています。

そのため、ちゃんと学習すれば確実に合格できる作りとなっています。

養成課程(eラーニング)のデメリット

受講期間が短い

会社にもよりますが、最大でも半年程度となっています。

この期間に修了試験まで合格する必要があります。

修了試験の受験回数に限りがある

修了試験は最大でも2回までしか受験することができません。

2回連続で不合格となると、もう一度一からやり直しになります。

所属会社の資格取得奨励金がもらえない場合がある

会社によっては資格取得奨励金が設定されている場合もあります。

この要件が「資格の取得」ではなく、「試験の合格」であった場合もらいない可能性があります。

一陸特は受講要件がある

基本的に大学や高校で電気科や電気通信科等を卒業していない場合は、選抜試験に合格する必要があります。

国家試験を受けて資格を取る方法がおすすめ

<1陸特>国家試験の受験がおすすめの理由

1陸特は、基本的に国家試験を受験する事をお勧めします。

理由としては次のものがあげられます。

養成課程の受講資格を満たせない人が多い

殆どの人は養成課程の受講資格を満たすことができません。

選抜試験を受験するというのも一つの手ですが、選抜試験に合格できるレベルまで勉強できるのであれば、国家試験に合格するレベルまで勉強できます。

従って、選抜試験からの養成課程というのは、お勧めできません。

拘束時間が長い

養成課程は無線工学48時間以上、法規6時間以上と長時間になります。

そのため集合講習の場合は、約2週間かかります。

当然、1分でも講習から抜けると修了試験の受験資格はないため、時間的余裕がない方にはお勧めできません。

実務で求められる知識がある

養成課程は、1陸特の国家試験に必要な知識を教授しますが、十分ではありません。

一陸特を必要とする者は、殆どの場合、業務上必要としていると思います。

即ち、測定や各種手続き等を知らないといけません。

国家試験では、業務をするのに十分とは言えませんが、養成課程より幅広く更に深く問われますので、養成課程に比べ実際の業務に役立ちます。

対策を行えば合格できるレベルである

1陸特は、難しいと言われていますが、合格できないレベルではありません。

対策を行っても合格が難しいものであれば、養成課程をお勧めします。

しかしながら、1陸特は、対策を行えば十分合格できるレベルです。

試験に慣れている人は、自分で対策を立てれると思いますが、自信の無い人は、国家試験の対策講座がありますので、利用することをお勧めします。

特に選抜試験の範囲を見て、自信が無いという場合は、対策講座の受講をお勧めします。

<2陸特・3陸特>国家試験の受験がおすすめの理由

2陸特、3陸特についても、国家試験を受講することをお勧めします。

理由としては次の通りです。

CBTでの試験になり全国どこでも受けられるようになった

以前であれば、養成課程をお勧めしていました。

理由としては、受験会場(12会場)までの交通費を考えると養成課程の方がお得になるから、でした。

しかしながら、今はCBTでの試験となり、各都道府県で1箇所以上受験できる場所があります。

日程も年3回でしたが、自分の都合に合った日時を指定できます。

そのため、国家試験を受験するコストが大幅に減りました。

難易度が高くないため独学でも合格しやすい

1陸特と異なり2陸特、3陸特は難易度が高くありません。

独学で合格できる人も相当数いると思います。

そのため、養成課程を受講してまで取得する資格ではありません。

自信が無ければ、対策講座を利用してみるのも一つの手です。

自信がつく

自動車の運転免許を考えてください。

殆どの人は自動車学校で技能免除になったと思います。

自動車学校に通わずとも免許試験場で試験に合格すれば免許は得られます。

しかし、自動車学校に通うのは何故でしょうか。それは、免許試験場での試験は難しいからです。

無線従事者も同じです。

確かに国家試験の方が難易度が高いです。

そのため、合格すれば国家試験に合格したという自信がつきます。

まとめ

1陸特は、基本的に国家試験の受験をお勧めします。

ただ、会社の都合上確実に取得させることが必要であり、養成課程の受講要件を満たすのであれば、養成課程をお勧めします。

2陸特、3陸特は、国家試験の受験をお勧めします。

どうしても国家試験を受けるのに抵抗があるのであれば、養成課程を検討する価値はあるとは思います。

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この記事の著者  橋爪 兼続 講師

橋爪 兼続 講師 講師紹介はこちら


【保有資格】
・第一級陸上無線技術士
・第一級海上無線通信士
・航空無線通信士
・第二級アマチュア無線技士

海上保安大学校卒業後、大型巡視船の主任通信士として通信業務に携わりました。
退職後、地場鉄道会社の子会社において、鉄道関連の無線設備の保守等に従事し、社内向けに第一級陸上特殊無線技士の取得講座を行っています。

その一方で、他社からの依頼により、第二級及び第三級陸上特殊無線技士並びに第三級及び第四級アマチュア無線技士の養成課程講師としても活動しています。

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