「教員の退職金はどのくらいなのか?」

「手取り額はいくらになるのか?」

そういった疑問をもっている方も多いのではないでしょうか。

総務省の「給与・定員等の調査結果等」によると、公立教員の退職金は平均2,269万円(※定年退職者等の平均支給額)です。

ただし、自治体や校種などによって異なります。

また、条件を満たしていないと、退職金はもらえません。

このコラムでは、教員の退職金の手取り額や計算方法について解説します。

さらに、退職金の受給条件も解説するため、教員を目指している方は最後までチェックしてみてください。

教員の退職金はいくら?

総務省の「給与・定員等の調査結果等」によると、公立教員の退職金は平均2,269万円(※定年退職者等の平均支給額)です。

ただし、自治体や校種によって異なります。

  • 最も多い愛知県では、2,381万円
  • 最も少ない大阪府では、2,151万円

退職金が最も多い愛知県と最も少ない大阪府では、約230万円の差があります。

また、校種ごとの退職金の支給額を比較すると、高校の教員のほうが、小・中学校の教員よりも、退職金が多い傾向にありました。

高校教員の退職金が多い理由として、高校教員のほうが給与水準がやや高めに設定されているからと考えられます。

このように、公立教員が退職金をいくらもらえるかは、勤務している自治体や校種によって異なります。

では、私立教員の場合はどうでしょうか?

私立教員の退職金も同じぐらい?

私立教員の退職金は、公立教員と同じくらいの金額が支給されることが一般的です。

基本的に、退職金は「基本給×勤続年数」で計算されます。

そのため、基本給が高く、勤続年数が長いほど受け取れる退職金は多くなります。

ただし、詳細は学校ごとの規定によって異なるのが、私立教員の退職金の特徴です。

そのため、詳しくはそれぞれの学校の雇用契約書や就業規則などを確認しましょう。

勤務する学校で、自分自身が退職金をいくらくらいもらえるのか解説します。

教員の退職金の計算方法は?

公立教員の退職金は、退職する時点の月給×支給率+退職手当調整額で計算できます。
※「退職する時点の月給×支給率」はまとめて、基本額とも呼ばれます。

一般的に、退職する時点の月給が高く、勤続年数が長いほど、受け取れる退職金の金額は大きくなります。

それぞれの要素について詳しく見ていきましょう。

退職する時点の月給

退職する時点の月給とは、退職時の基本給に、地域手当や教職調整額などが加算された金額です。

教職調整額は、月給の4%に相当する金額が支給されます。

支給率

支給率は、勤続年数や退職理由などによって異なります。

一般的に、勤続年数が長く、退職理由が自己都合よりも会社都合(定年退職など)の退職の場合に高い支給率が適用されます。

退職手当調整額

退職手当調整額は、教員の在職期間中の貢献度に応じて加算されるものです。

役職や等級によって月額の調整額が決まっています。

引用:退職手当の支給 | 人事院

具体的には在職期間中において、最も高いものから順に、5年(60か月)分の調整月額を合計して算出されます。

ただし、勤続期間が9年以下、かつ、自己都合による退職の場合は、調整額が加算されません。

また、以下のいずれかに当てはまる場合は、調整額が半額になります。

  • 勤続期間が10年以上24年以下、かつ、自己都合による退職
  • 勤続期間が4年以下、かつ、自己都合以外の理由による退職

ここまで、退職金の計算方法にかかわる要素を確認しました。

では次に、実際の例を見ていきましょう。

特に、早期退職などを検討する場合にも役立つため、参考にしてみてください。

退職金の例を3パターン紹介

今回は「国家公務員退職手当支給率早見表」をもとに、以下の3つのパターンで退職金がいくらになるかを計算します。

  • 勤続年数が5年、退職時点での月給:30万、退職理由が自己都合の場合
  • 勤続年数が10年、退職時点での月給:35万、退職理由が自己都合の場合
  • 勤続年数が20年、退職時点での月給:45万、退職理由が公務外傷病の場合

なお、退職手当調整額はすべて区分10(21,700円)であったと仮定します。

引用:退職手当の支給 | 人事院

勤続年数が5年・退職時点での月給30万・退職理由が自己都合の場合

退職金=退職する時点の月給×支給率+退職手当調整額

退職金=300,000×2.511+0

退職金=753,300円

勤続年数が9年以下の自己都合による退職は、退職手当調整額の対象外となります。

勤続年数が10年・退職時点での月給35万・退職理由が自己都合の場合

退職金=退職する時点の月給×支給率+退職手当調整額

退職金=350,000×5.022+21,700×60か月×1/2

退職金=1,757,700+651,000

退職金=2,408,700円

勤続年数が10年以上24年以下の自己都合による退職は、退職手当調整額の半額が支給されます。

勤続年数が20年・退職時点での月給45万・退職理由が公務外傷病の場合

退職金=退職する時点の月給×支給率+退職手当調整額

退職金=450,000×19.6695+21,700×60か月

退職金=3,766,500+1,302,000

退職金=5,068,500円

勤続年数が10年以上24年以下であっても、自己都合「以外」による退職の場合、退職手当調整額は半額ではなく、満額が支給されます。。

このように、それぞれの状況によって退職金をいくらもらえるかは変わります。

より正確な退職金の金額を知りたい場合は、勤務する自治体や学校などに確認するのがおすすめです。

教員と民間企業の退職金を比較

結論からいうと、教員の退職金は、大企業と同じくらいの高水準です。

総務省の「給与・定員等の調査結果等」によると、公立教員の退職金の平均は約2,269万円でした(※定年退職者等の平均支給額)。

民間企業の場合、大企業か中小企業かによって退職金の金額が異なります。

ここからは、公立教員の退職金と大企業・中小企業の退職金を比べてみましょう。

大企業との比較

中央労働委員会の「令和5年賃金事情等総合調査」によると、大企業の退職金の平均は以下の通りです(※調査産業計において満勤勤続した男性定年退職者の退職金)。

最終学歴退職金の平均額
大学卒約2,139万円
高校卒約2,019万円
参考:令和5年賃金事情等総合調査 | 中央労働委員会

平均値では、いずれも2,000万円以上となっています。

中小企業との比較

東京都産業労働局の「中小企業の賃金・退職金事情(令和6年版)」によると、中小企業のモデル退職金は以下の通りです。

最終学歴モデル退職金
大学卒(定年退職)約1,149万円
高校卒(定年退職)約974万円
参考:中小企業の賃金・退職金事情(令和6年版)| 東京都産業労働局

以上のデータから、公立教員の退職金は、大企業とほぼ同水準であるとわかります。

また、中小企業に比べて、公立教員の退職金は高い水準でした。

教員が退職金をもらうには条件がある

公立教員は、以下の条件に該当すると、退職金をもらえません。

  • 勤続期間が6か月未満で退職した場合
  • 懲戒免職により退職した場合
  • 欠格事由により退職(失職)した場合

一方、私立教員は学校によって退職金の支給条件が異なります。

とはいえ、何もないとイメージが湧きにくいかもしれません。

そのため、参考資料として、公益財団法人私立大学退職金財団「令和6(2024)年度退職金等に関する実態調査報告書」を紹介します。

令和6(2024)年度退職金等に関する実態調査報告書」によると、「退職金の支給対象となるために必要な在職期間」は1年以上であると回答した教員が、会員数の7割を超えていました。

参考:令和6(2024)年度退職金等に関する実態調査報告書

上記のデータから、私立教員が退職金をもらう場合も、一定の在職期間は必要なことが多いといえるでしょう。

ただし、繰り返しになりますが、私立教員は学校によって退職金の支給条件が異なります。

各学校の雇用契約書や就業規則などを確認し、退職金をもらえる条件を把握しておきましょう。

まとめ

教員の退職金の平均は、2,269万円です。

ただし、自治体や校種などによって差があります。

退職金の計算方法は以下の通りです。

退職金=退職する時点の月給×支給率+退職手当調整額

一般的に、退職する時点の月給が高く、勤続年数が長いほど受け取れる退職金の金額は大きくなります。

教員の退職金は、大企業と同水準で、中小企業と比べると高い水準にありました。​

ただし、退職金の支給には一定の条件があるため、事前に確認しておくことが大切です。

今回紹介した内容を参考に、​教員としてのキャリアプランを考えてみてはいかがでしょうか。