公認心理師は、2017年9月15日に施行された「公認心理師法」により規定されている新しい国家資格です。 

そのため公認心理師法が施行される以前に、大学や大学院に在籍していた方、また卒業した方への特例として、受験資格に経過措置が設けられています。 

本コラムでは、公認心理師試験の受験資格を得るためのルートのうち、特に経過措置のルートに着目して解説します。通常ルートとの違いを知りたい方は、ぜひ最後まで読んで参考にしてください。

公認心理師のD・E・F・Gルートは経過措置

公認心理師試験の受験資格を得るためのルート（区分）は8つありました。
A、B、C、D1、D2、E、F、Gの8つです。 

この8つのルートは大きく3つにわけることができます。 

• 通常ルート（A、B）
• 同等以上認定ルート（Cルート）
• 経過措置ルート（D1、D2、E、F、G） 

通常ルートのA、Bは、これから新たに1から学んで資格取得を目指す方のルートです。 同等以上認定ルートのCは、A、Bと同等以上の知識・技能を有すると認定された方のルートになります。 

経過措置ルートは、公認心理師の新設による不利益や不都合が生じないために設けられた過渡的なルートです。 

この経過措置ルートでは、2017年9月15日以前に大学に入学した方が対象となる科目の読み替えが可能かどうかという点が重要になります。 

読み替えとは、大学での履修が必要とされている25科目のうち、所定の12科目を履修したと2017年9月15日以前に入学した大学がみなすことです。 

5つの経過措置ルートの一つであるGルートは、すでに心理職として働いていた現任者を対象として設けられたルートですが、令和4年7月17日（第5回公認心理師試験）をもって終了しています。 

現在も継続している経過措置ルートは、D1、D2、E、Fの4つです。

Dルートで受験資格を得る流れ

Dルートは、公認心理師が新設される以前に、大学院に入学または所定の科目を修了して卒業した方を対象とした経過措置ルートです。 

Dルートには、D1とD2の2種類あります。 

D1ルートは、2017年（平成29年）9月15日以前に、大学院で所定の6科目以上を修了して卒業した方が対象です。 

D2ルートは、2017年（平成29年）9月15日以前に大学院に進学し、新設時は在学中で、その後に所定の6科目以上を修了して卒業した方が対象となります。 

D1、D2ともに所定の6科目の修了とは、「大学院における必要な科目」のうち、「経過措置対応科目」の6科目以上を履修することをいいます。 

以下は、大学院における必要な科目の一覧です。 

1.保健医療分野に関する理論と支援の展開
2.福祉分野に関する理論と支援の展開
3.教育分野に関する理論と支援の展開
4.司法・犯罪分野に関する理論と支援の展開
5.産業・労働分野に関する理論と支援の展開
6.心理的アセスメントに関する理論と実践
7.心理支援に関する理論と実践
8.家族関係・集団・地域社会における心理支 援に関する理論と実践
9.心の健康教育に関する理論と実践
10.心理実践実習（450時間以上 

Dルートにおける「経過措置対応科目」の6科目以上とは、1と10（必須）、2〜5の4科目から2科目以上、6〜9の4科目から2科目以上の計6科目以上を履修することです。

参照：公認心理師のカリキュラム等について

Eルートで受験資格を得る流れ

Eルートは、2017年（平成29年）9月15日以前に4年制の大学で所定の12科目を履修（又は履修中）した方を対象とした経過措置ルートです。 

Eルートにおける所定の12科目の履修とは、「大学院における必要な科目」のうち、「経過措置対応科目」の12科目以上を履修することをいいます。 

大学において所定の科目を履修後、2017年（平成29年）以降に大学院に進学して所定の10科目を修了すると、Eルートの公認心理師の受験資格が与えられます。 

以下は、大学における必要な科目の一覧です。 

1.公認心理師の職責
2.心理学概論
3.臨床心理学概論
4.心理学研究法
5.心理学統計法
6.心理学実験
7.知覚・認知心理学
8.学習・言語心理学
9.感情・人格心理学
10.神経・生理心理学
11.社会・集団・家族心理学
12.発達心理学
13.障害者（児）心理学
14.心理的アセスメント
15.心理学的支援法
16.健康・医療心理学
17.福祉心理学
18.教育・学校心理学
19.司法・犯罪心理学
20.産業・組織心理学
21.人体の構造と機能及び疾病
22.精神疾患とその治療
23.関係行政論
24.心理演習
25.心理実習（80時間以上）

Eルートにおける「経過措置対応科目」の12科目以上とは、2～6のうち3科目以上、7～13のうち4科目以上、14、15、24、25のうち2科目以上、16～20のうち2科目以上、21か22（又は16）に相当する科目などの計12科目以上を修めることをいいます。 

大学院で履修が必要な科目とは、以下の10科目です。

1.保健医療分野に関する理論と支援の展開
2.福祉分野に関する理論と支援の展開
3.教育分野に関する理論と支援の展開
4.司法・犯罪分野に関する理論と支援の展開
5.産業・労働分野に関する理論と支援の展開
6.心理的アセスメントに関する理論と実践
7.心理支援に関する理論と実践
8.家族関係・集団・地域社会における心理支 援に関する理論と実践
9.心の健康教育に関する理論と実践
10.心理実践実習（450時間以上 

参照：公認心理師のカリキュラム等について

Fルートで受験資格を得る流れ

Fルートも2017年（平成29年）9月15日以前に4年制の大学で所定の12科目を履修（又は履修中）した方を対象とした経過措置ルートです。 

ただし、Fルートでは、大学において所定の科目を履修後、認定施設（プログラム施設）で2年以上（実際は標準で3年以上）の実務経験を積むことで受験資格を得ることができます。 

以下は、大学における必要な科目の一覧です。

1.公認心理師の職責
2.心理学概論
3.臨床心理学概論
4.心理学研究法
5.心理学統計法
6.心理学実験
7.知覚・認知心理学
8.学習・言語心理学
9.感情・人格心理学
10.神経・生理心理学
11.社会・集団・家族心理学
12.発達心理学
13.障害者（児）心理学
14.心理的アセスメント
15.心理学的支援法
16.健康・医療心理学
17.福祉心理学
18.教育・学校心理学
19.司法・犯罪心理学
20.産業・組織心理学
21.人体の構造と機能及び疾病
22.精神疾患とその治療
23.関係行政論
24.心理演習
25.心理実習（80時間以上）

Fルートにおける「経過措置対応科目」の12科目以上とは、Eルートと同様に、2～6のうち3科目以上、7～13のうち4科目以上、14、15、24、25のうち2科目以上、16～20のうち2科目以上、21か22（又は16）に相当する科目などの計12科目以上を修めることをいいます。

参照：公認心理師のカリキュラム等について

以下は、2024年3月現在の認定施設の一覧です。プログラムの内容や応募方法等については各照会先にお問い合わせください。
 

	施設名	紹介先
1	少年鑑別所及び刑事施設	法務省矯正局
2	一般財団法人愛成会 弘前愛成会病院	一般財団法人愛成会 弘前愛成会病院
3	裁判所職員総合研修所及び家庭裁判所	最高裁判所事務総局家庭局
4	医療法人社団至空会 メンタルクリニック・ダダ	医療法人社団至空会 メンタルクリニック・ダダ
5	医療法人社団心劇会 さっぽろ駅前クリニック	医療法人社団心劇会 さっぽろ駅前クリニック
6	学校法人川崎学園 川崎医科大学付属病院	学校法人川崎学園 川崎医科大学付属病院
7	学校法人川崎学園 川崎医科大学総合医療センター	学校法人川崎学園 川崎医科大学総合医療センター
8	社会福祉法人風と虹 筑後いずみ園	社会福祉法人風と虹 筑後いずみ園
9	社会福祉法人 楡の会	社会福祉法人 楡の会

Gルート（期間終了）

Gルートは、2017年に公認心理師法の施行に伴って設けられたルートです。 

公認心理師が新設される以前から心理職として働いていた現任者を対象としていました。 

Gルートで受験資格を得るためには、5年以上の実務経験と、尚且つ2012年9月16日から2017年9月15日までの間に心理職として働いていたという2つの要件が必要でした。 

5年間限定の経過措置だったため、2022年の第5回公認心理師試験で終了しています。 

また受験資格の取得には「公認心理師現任者講習会」の受講も必須で、所要時間は30時間と規定され、40,000円（税込）の受講料も必要でした。