国家公務員総合職のエキスパート】池田俊明講師による受験生応援コラム第6弾

国家公務員総合職志望者は筆記試験に比べ、コミュニケーション能力を軽視する傾向にあります。

特に、集団コミュニケーション能力の有無をみる政策課題討議試験については、ほぼ無対策で臨む受験生が多いようです。

しかし、官庁訪問において、集団コミュニケーション能力必須の省庁もあるので、今のうちにしっかり準備をしておきましょう。

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政策課題討議とは?

人事院募集要項によれば、政策課題討議試験とは「課題に対するグループ討議によるプレゼンテーション能力やコミュニケーション力などについての試験」であり、院卒区分および教養区分の2次試験の1科目であります。

ちなみに、院卒区分の場合、「課題に関する資料の中に英文によるものを含む」と明記されています。

配点は、院卒区分が2/15、教養区分が4/28(総合論文の半分)と、どちらも、試験全体に占める配点比重はあまり高くありません。

しかし、民間就活もそうですが現在の官庁訪問において、グループディスカッションを導入している省庁が増加しているため、配点比重とは関係なく、政策課題討議対策の重要性は高まっているといえます。

政策課題討議の内容

政策課題討議試験は一度に多くの受験生が会することから、コロナ禍において、実施方法が若干変更されています。

ゆえに、はじめにコロナ禍以前の方法について説明します。

コロナ禍以前の政策課題討議の内容

教養区分

6人1組のグループを基本として実施

レジュメ作成(20分)→個別発表(1人当たり3分)→グループ討議(45分)

→討議を踏まえて考えたことを個別発表(1人当たり2分)(おおよそ2時間)

院卒区分

6人1組のグループを基本として実施

レジュメ作成(25分)→個別発表(1人当たり3分)→グループ討議(30分)→討議

を踏まえて考えたことを個別発表(1人当たり2分)(おおよそ1.5時間)

政策課題討議 当日の流れ

1 60人ほどの受験生が一度に集められ、課題についてレジュメを作成する(時間は、上記のように教養区分、院卒区分で異なる)。

2 時間になったら、問題・資料含めすべて回収される。

~休憩(10分間)~

3 座席が三角形の形に配置され、各辺に2名、計6名1グループがつくられ(下図参照)、6人分のレジュメコピーが全員に配布される。

4 先に作成したレジュメ内容に従い、個別発表(持ち時間3分間)開始。発表者以外のメンバーは発表者のレジュメを見ながら話を聞く。

5 発表後、ホチキス留めされた他の人のレジュメを読む(5分間)。

6 グループ討議開始。評価者は、三角形の各頂点に1名の計3名、他に監督官、時計係各1名。
なお、討議時間はすでに記載したように教養区分、院卒区分で異なる。また、討議中、メンバー同士は番号(例えば、61番さん、というように)で呼称し合う。

7 討議終了後、各自で考えをまとめる(5分間)。

8 討議を踏まえて、最終の個別発表(持ち時間2分間)

コロナ禍における試験の流れ

感染防止の観点から、政策課題討議試験は規模の短縮化が図られています。

例えば、2021年教養区分試験では、

6人1組のグループを基本として実施

レジュメ作成(20分)→個別発表(1人当たり2分)→グループ討議(30分)

というような短縮化に加え、マスク着用およびアクリル板によるパーテーション設置で実施されました。

そのため、相手の表情も見えにくく、また周りの声が聞こえづらかったのでかなりやりにくかったという声が多かったです。

ゆえに、感染状況次第ですが、2022年以降の受験予定者は是非参考にしてください。


結構面倒だなと思った方も多いかと思いますが、教養区分では、この後に人事院面接(15~20分程度)があるので、当日はかなりのハードスケジュールになります。
(近年はグループによっては、面接⇒討議の順番で行われるので、その場合は面接でかなり深く突っ込まれても気落ちせず、政策課題討議に臨むだけの心臓の強さが求められる)

また、教養区分の場合は、前日に企画提案試験があるので、院卒行政に比べかなりきついです!

政策課題討議テーマと傾向

政策課題討議試験は、他の試験科目とは異なり、課題用紙、資料等の持ち帰りは一切できません。

そのため、過去の出題テーマは、すべて受験者からの情報提供に基づくものであるため、完全とは言えませんが、2021年院卒区分における政策課題討議テーマは下記の通りでした。

【課題】

【課題】ベーシックインカム導入に賛成か反対か

賛成の場合は、
1.理由、2.金額をどの程度にすべきか、3.ベーシックインカム以外の社会保障はどうするかに加え、留意点についても言及せよ。

一方、反対の場合は、その理由に加え、現状の社会保障制度の中で変えていかなければならない部分について言及せよ。

【資料】

【資料1】
ベーシックインカムの5つの定義

定期的 (Periodic): 一定の間隔で支払われる (例えば毎月ごと)。1回限りではない。
現金給付 (Cash payment): 交換に適しており、受領者が何に費やすか決定できるものによって支払われる。つまり、食べ物やサービス、特定の用途に限られた引換券などは該当しない。

個人向け (Individual): 個人に支払われる。世帯への給付ではない。
普遍的 (Universal): 資産調査なしにすべての人に支払われる。
無条件 (Unconditional): 労働要件や働く意思の実証なしに支払われる。

【資料2】
社会保障給付費の推移のグラフ(厚生労働省)

【資料3】
山森亮「ベーシックインカムは希望の言葉」(日経ビジネス)
中田大悟「急浮上するベーシックインカム論 理念だけで語るな」(WEDGE Infinity)2020年12月5日

【資料4】
「The Guardian」2020年5月7日号

政策課題討議テーマの傾向

毎年の傾向として、専攻の違いによって有利・不利が生じないよう、誰もが考えることができ、かつ発言することができるようなテーマで、問われる内容もシンプルです。

そして、複数の資料が必ず用意されます。

また、日本人にありがちな曖昧な見解は許容されず、いずれのテーマも賛成・反対いずれの立場にあるかはっきり明示させる必要があります。

さらに、討議に際しては、次のことを必ず強調されます。

『討議においてはある程度一定のグループの方針が出るように努めなさい。ただし、必ずしも意見の一致を求めるものではありません』『司会役をたてる等、議論方法は自由ですが、他者に役割を課すことは禁じます』

と、口頭で必ず言われます。

テーマを教えてくれた元受講生(ちゃんと某省庁に内定しています!)は、実際の討論について次のような感想を寄せてくれました。

【合格者の感想】

「討論の内容としては、賛成派は資料2にある、①生活保護・失業手当の捕捉率の低さ(およびそれによる不平等な現状)、②一定の金額を得ることで「自分がしたいこと」をできる世の中になるのではないかを、反対派は①財政面の懸念、②労働意欲の減少の可能性、③導入に関してのエビデンス不足、④年金を無くすことへの国民の反発を押してきていました。

あまり、人の意見を拾ってそれを広げようとする人が多くなく、ある意見に対して自分がなぜ賛成か、反対か、という観点から話していく人が多い印象でした。時間が足りず、両意見共通で懸念に思っているところと、それぞれの立場独自の懸念点をまとめたところで終了してしまい、方向性として1つにまとめられた感じがしませんでした。」

コロナ禍での討議でしたので、いつも以上に時間不足が顕著だったと言えますが、だからこそ、短い時間で手際よく自分の見解を述べるスキルが求められます。
(よくいますが、自分の意見をひたすら長々と話す人じゃダメってことです)

政策課題討議の対策法

短時間で適切に討議をおこない、結論を導く

何といっても、決められた時間の間、滞りなく討議ができ、そして一定の方向性を持った結論が導き出せることが何よりも要求されます。

全体を俯瞰的に見て必要なことをおこなう

決して、オリジナリティあふれる意見を要求しているわけではないので、自分だけ目立とうとか、変な欲は出さず、むしろ全体に目配せできることが大事といえます。

短時間で簡潔かつわかりやすいレジュメを作成できるようになる

また、資料の分量に対して、レジュメの作成時間が短いので、簡潔かつわかりやすくまとめる必要があります。
(他のメンバーも見るものなので、レジュメ作成力が評価の大きなウェイトを占めると考えたほうがいい)

賛成・反対の自分の立場をはっきりさせる

でも、討議が評価のメインなので、テーマについて賛成・反対いずれの立場にあるかはっきりさせ、中間みたいな立場になるのはやめましょう。


なんか、難しく思えたかもしれませんが、ほぼ全員が討議に慣れていないせいか、終わった後は「手ごたえまったくなし!」と感じる人がほとんどです。

でも、点数は相対評価なので、気にせず面接試験に臨みましょう。
(実際、足きりだと思っていたらCだったというケースが多いです)

くよくよしていると、配点比重の高い面接に失敗してしまいますよ。

なので、事前に予備校等で模擬討議を体験し、しっかりフィードバックを得るようにしましょう!

最後に

最後に、6回にわたりお送りした私のコラムもこれでひとまず終了です。

提供した情報量について、きっと読者のみなさんに資するものばかりだったと自負しておりますが、何度も言っているように、情報習得で終わりにせず、必ず実践してくださいね!

皆さんのご要望があれば、また登場するかもしれませんので、是非感想をお寄せください。皆さんの健闘を祈っております。

池田俊明講師による受験生応援コラム
前:国家総合職の企画提案試験とは?内容や対策法を解説!

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この記事の著者

池田 俊明講師 (講師紹介はこちら


20年以上にわたり、数多くの受験生をキャリア官僚として、霞ケ関へ送り込んだ国家公務員総合職のエキスパート。

また、現職の大学の経済学教員でもあり、試験科目として経済学が課される全ての資格試験の出題傾向に精通している。

国家公務員総合職経済区分試験向け講座の講師を担当。

ごあいさつ
このコラムでは、国家公務員総合職を目指す人々に正しく、そして役立つ情報を提供します。
夢の実現に向けて頑張るみなさんには、出所不明な噂に惑わされることなく、最も信頼できる心の拠り所として、このコラムを活用していただければ幸いです。

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