【公務員試験】国家総合職の政策論文・総合論文とは?試験内容・答案の作成法を解説
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【国家公務員総合職のエキスパート】池田俊明講師による受験生応援コラム第4弾
国家公務員総合職試験で課される試験の1つに「政策論文」があります(教養区分試験では「総合論文」)。
多くの学生を見てきた限り、択一試験など他の筆記試験に比べて、政策論文・総合論文に対しては、ほとんど準備もせず、ぶっつけ本番で臨んでいるようです。
しかし、想像以上に配点は高い上、合格レベルの論文が書けるようになるにはかなりの時間を要します。
今回は、政策論文・総合論文の概要や試験情報、試験対策などについて説明します。
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「政策論文」「総合論文」とはどのような試験?
政策論文の試験内容
人事院によれば、政策論文は「政策の企画立案に必要な能力その他総合的な判断力及び思考力についての筆記試験」で、複数の資料(英文資料も含まれる)を基に、文系・理系の枠に囚われない複合的なテーマ1題を2時間かけて解答させます。
出題形式 | 出題1問 文系・理系の枠に囚われない複合的なテーマで、複数の資料が添付 ※資料には英字の資料やグラフ資料も含まれる |
制限時間 | 120分 |
文字数 | 答案用紙1枚両面(概ね1600字程度) |
総合論文の試験内容
一方、総合論文は「幅広い教養や専門的知識を土台とした総合的な判断力、思考力を判定する」試験で、
Ⅰ部:政策の企画立案の基礎となる教養・哲学的な考え方に関するもの
Ⅱ部:具体的な政策課題に関するもの
の2題を4時間かけて解答させます。
どちらも試験委員が同じ(後述)ということもあり、特に、Ⅰ部の形式は政策論文とほとんど同じです。
出題形式 | 出題2問 Ⅰ部:政策の企画立案の基礎となる教養・哲学的な考え方に関するもの (政策論文と形式面はほぼ同じ) Ⅱ部:具体的な政策課題に関するもの |
制限時間 | 240分 |
文字数 | 答案用紙2枚両面(政策論文と同じ用紙で、Ⅰ部、Ⅱ部それぞれ1枚) |
「政策論文」「総合論文」が出題されるタイミング
政策論文が出題されるタイミング
政策論文は、大卒区分の「2次試験」のタイミングで出題されます。
2次試験では、他に「専門試験(記述式)」「個別面接(人事院面接)」「性格検査」が行われます。
なお、院卒区分の場合、政策論文の代わりに政策課題討議試験が課されます。
ちなみに、性格検査は点数化こそされませんが、面接試験の参考とされます。
ゆえに、点数化されないからといって、ふざけた回答をするのは絶対にやめましょう。
総合論文が出題されるタイミング
一方、総合論文は、教養区分の「1次試験」で実施されます。
ただし、1次試験合格者は、同じ日に実施される択一試験(基礎能力試験Ⅰ・Ⅱ)の成績のみによって決定し、「総合論文試験」は1次試験合格者を対象に評定した上で、最終合格者決定に際して、他の試験種目の成績と総合されます。
それゆえ、教養区分受験者の多くは択一対策にのみ集中し、総合論文については準備不足で臨むことになります。
しかし、後述のとおり総合論文は教養区分試験において最も配点比重が高いため、せっかく2次試験が万全の出来だったとしても、総合論文が不出来であるために不合格という結果になりかねません。
論文もしっかりしましょう。
「政策論文」「総合論文」の配点
政策論文の配点
政策論文の配点は全体の2/15となっています(1次試験の基礎能力試験と同じ配点)。
同じ2次試験で実施される専門試験(記述式)の配点5/15、人物試験の配点3/15と比較すると、比較的少ない配点比率となっています。
総合論文の配点
これに対して、総合論文の配点は全体の8/28と、教養区分の全試験科目中、最も配点比率が高いものとなっています。
配点が小さくても論文対策は早めに始めるべき
これだけ見ると、同じ論文試験であっても、大卒区分と教養区分で全く異なる対策が必要なように思われます。
しかし、どちらも平均点が6割、足切り基準点が4割とされており、また、標準偏差も極めて小さく、受験者の大半は5~7割の点数に収束するため、多くの受験生は、他の試験科目に比べて軽視しているのが実態です。
(人事院より公表されているデータから推測すると、足切り対象者は例年、採点対象者の3%程度に過ぎません)
ですが、これは教養区分に顕著ですが、足切りは免れても、論文の出来が悪いため、2次対策の準備が万全であったにもかかわらず、最終合格できなかったという受験生が例年一定数いるのも事実です。
加えて、論文試験は、択一試験と異なり正答があるわけではないので、1~2回の添削を受けたくらいでは、目立った成果は表れません。
それゆえ、論文対策は余裕をもって取り組むことを強くお勧めします。
論文対策 出題傾向と問題例
出題傾向は?
国家公務員試験は、毎年2月1日にその年に実施予定の全区分の試験委員が発表されます。
令和4年度の「政策論文」「総合論文」の試験委員は下記のとおりです。
- 神里達博・千葉大学国際教養学部教授(科学史、科学技術社会論、リスク論)
- 越川房子・早稲田大学文学学術院教授(臨床心理学、パーソナリティ心理学)
- 曽我謙悟・京都大学大学院法学研究科教授(行政学、現代日本政治)
試験委員は数年で交代しますが、
- 科学技術社会論
- 日本政治・官僚制
- 経営・ビジネス分野の諸課題
を関心分野とする研究者が試験委員に就任する構図は昔からずーっと変わっていません。
このように書くと、専門記述試験対策のように、試験委員の代表的著作を読む等の対策が必要なのではないかと思われがちですが、実は、出題テーマこそ毎年異なっているものの、出題形式は毎年同じです。
Ⅰ部の問題例(大卒区分政策論文も同じ形式)
著作権の問題があるので、資料全文をここに掲載することはできませんが、例えば、2019年教養区分本試験における総合論文は下記の通りでした。
設問 次は、平成に起きた主な出来事を示したものである。平成は、様々なリスクに正面から向き合うことを求められる時代であった。まず、平成を振り返り、現在、我が国が直面している課題を挙げよ。その上で、それがどのような構造から生じたのかを述べるとともに、それをどのように克服していくべきかについて論ぜよ。
資料1:AKANE OKUTSU and AKIHIDE ANZAI『’Lost generation’ haunts Japan, Abe and the BOJ -Workers frozen out in the 1990s now lack the spending power the economy needs』 OCTOBER 2, 2018, NIKKEI ASIAN REVIEW
資料2:昭和の成長期と平成期の日本経済の違いについて(神里達博『ブロックチェーンという世界革命: 価値観を根本から変えるテクノロジーの正体』より)
資料3:1992年以降の生活者の意識や行動,価値観の変化に関する長期時系列調査結果のグラフ(博報堂生活総合研究所『生活定点1992-2018』より)
Ⅱ部の問題例(総合論文のみ出題)
設問 我が国において、国民の安全で安心な暮らしを実現するための具体的な課題を複数挙げるとともに、それらの対策について、あなたの考えを具体的に述べなさい。
資料は無し
テーマはともかく、出題形式は毎年同じです。
また、資料の詳細が気になるところではありますが、専門記述と異なり、全く手も足も出ないということはありませんよね?
そのようなわけで、試験委員対策は不要です。
むしろ、そんな時間があるのならば、過去問を入手して自分で時間を計って答案を作成し、信頼できる人に添削をお願いし、ダメ出しをしてもらう作業を何度も繰り返す方が、合格レベルの答案を書く上ではるかに効果的です。
論文試験添削の活用法
例題を見て気付いたかと思いますが、政策論文も総合論文も1つの決まった答えを導き出す問題ではありません。
しかし「独自性」を問われているかと言われたら、そうではありません。
また、支離滅裂な日本語の使い方や、誤字脱字は減点の対象となりますので、意識して確認しましょう。
その上で、既に述べたように、論文試験の対策として必須なことは、「多くの過去問で答案を作成し、信頼できる人(または予備校)の添削を何度も受けることで、文章表現力および構成力を高める」ことです。
とはいっても、ただ漫然と添削をお願いするだけでは、効果は期待できません。
添削を受ける際に気を付けるポイントは以下の通りです。
- 本番に準じた答案作成をする
- 予備校の添削講座を利用している人は、一度にまとめて答案を提出しない
- 添削内容を踏まえて、再度答案を作成する
本番に準じた答案作成をする
まず1番目についてですが、知人にお願いする場合、相手の時間を奪うことになるわけですから、現時点で完璧と思える(あくまで本人視点ですが…)答案を提出しないと失礼になります。
また、予備校のサービスを利用する人の場合、添削通数に制限があるところがほとんどだと思います。
それゆえ、毎回提出する答案は、学習効果を考えると、現時点においてBESTなものであるべきです。
(それでも、真っ赤になって答案返却されると思いますが…)
早め早めに提出し、添削済み答案を踏まえ次の答案を作成する
次に2番目と3番目についてですが、私は自分の予備校の学生だけでなく、アガルートさんの受講生の添削もたくさんしています。
すると、毎年必ず一定数、添削期限ぎりぎりになってまとめて大量に答案を提出してくる人がいます。
消費者行動としては理解できますが、そういう人で答案の出来が良かった人は、一人としていませんし、こういう人に対して、私はかなり厳しいダメ出しを毎年しています(笑)。
本人は気付かないのかもしれませんが、答案には個人の癖が如実に現れますし、癖は容易には直りません。
助詞の使い方に問題のある答案は昔から多く、また、文章を書く習慣がない人にはごく普通にみられる傾向ですが、近年危惧しているのは、「~だ。」とやたらと断定調で書いてくる答案の急増に対してです。
原因は定かではありませんが、論文でよく問われる「あなたの考え」とは、絶対に揺らぐことのない自分の主張、という意味ではありません。
それ以前に、大学生ならば大学の講義等で専門論文や教科書を読む機会があると思いますが、断定調の記述なんて見たことありますか?
また、SNSでは文章力を鍛えることはできません。
(他人を攻撃するスキルは身につくかもしれませんが、それは最終的に自分の身を滅ぼします)
面倒と思うかもしれませんが、返却された添削済み答案を踏まえ、次のテーマの答案を作成し、また添削を依頼する、これが論文対策の基本です。
答案を作成する上で大切なこと・大きな減点ポイント
論文答案を作成する上で大切なことは、
- 添付された資料から「出題者の意図」を読み取ること
- 出題者の意図を踏まえて、整合性のある「論理的な説明」を行うこと
です。
一方、誤字脱字以外で試験本番で大きな減点となる答案は以下の通りです。
- 出題者の意図に大きく反した構成・結論の答案
- 論理性や日本語が支離滅裂な答案
- 未完成の答案
論文1題あたり2時間という試験時間(総合論文は2題なので4時間)を長いと感じるか短いと感じるかは人それぞれですが、「出題者の意図の把握」「論理的な骨組みの作成」「骨組みへの肉付け」の手順は非常に大切です。
また、最初のうちは、それを踏まえた答案作成は2時間では終わらないと思います。
答案作成手順例
論文執筆経験が乏しい方は、まずは、以下のような流れで作成することをおすすめします。
- 問題文と資料を読み込み、何が問われているのか、出題者の意図は何かを把握するために、それぞれの資料を数行程度に要約する
- 結論・構成を考える
- 結論・構成は論理的か、流れはおかしくないかを確認
- 構成に沿って答案を作成する
- 誤字脱字を確認する
時間制限がある当試験では「途中まで書き終わったが、方向性がおかしいため最初から書き直す」ということは難しいです。
そのため、上記の手順で答案作成を進めることで「途中で方向性の違いに気付く」「結論が出ないまま答案用紙に向かう」ということは極力防ぐことができるでしょう。
なお、「誤字脱字」よりも「答案が最後まで終わらない」方が評価は下がる傾向にあります。
(ただし、あまりにも誤字脱字が多い場合は別)
すなわち、細かい表現等で長時間悩まずに、最後まで書き上げることが重要です。
最後に
最後に、多くの添削経験から気付いたことですが、アガルートのコラムの読者には、司法試験を念頭に置いている方も多いかと思います。
司法試験受験経験者は、論文執筆に際して、前提や定義づけを冒頭にかなりのスペースを割く傾向にあります。
(私は経済の人間なので全くの門外漢なのですが、司法試験とはそういうものなのでしょうか?)
このコラムの最初の方にも書きましたが、論文1問につき答案は1枚で字数にしてせいぜい1600字程度です。
前提に紙幅を割く余裕なんかありません。
また、問題文に前提が書いてあるのですから、問題を受ける形で書き始めましょう。
かなりの長文コラムになりましたが、いずれにせよ、実際に答案を作成し、厳しい答案添削を何度も繰り返し受けることが、論文作成力向上の最短ルートです。
くれぐれもコラムを読んだだけで、対策が完了した気になることだけは絶対にやめましょう。
池田俊明講師による受験生応援コラム
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- 添削を受けることで正しい書き方を身に付けたい方
- 答案作成までの思考プロセスの定着を目指す方
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