憲法はあらゆる公務員試験で出題されます。

専門科目に憲法が含まれる場合だけでなく、専門科目がない地方公務員でも教養科目の中で出題されます。

あらゆる受験生が憲法の勉強をする以上、効率よく憲法をマスターすることは、他の受験生に差をつけるにはもってこいの勉強方法です。

本稿では、超効率的勉強方法をご紹介します。

ぜひ参考にして、他の受験生に差をつけてください。

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「憲法」とはどんな科目?

憲法はお得な科目

なぜ憲法はあらゆる公務員試験で出題されるのでしょうか。
答えは、憲法第99条にあります。

憲法第99条 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。

憲法はあらゆる公務員は憲法に従うことが要求されます。

なので、全ての公務員試験で憲法が出題されるわけです。

具体的には、

  • 専門科目(択一試験)
  • 専門科目(記述試験)
  • 教養科目(択一試験)政治経済・時事問題

で出題があります。

憲法の出題分野

基本的人権

【人権総論】
法の下の平等など人権全体に共通する内容

【精神的自由】
表現の自由など精神的に自由に関する内容

【経済的自由/人身の自由】
職業選択の自由や刑事手続に関する内容

【参政権/社会権】

選挙権や社会権に関する内容

統治機構

【国会】
国会や国会議員に関する内容

【内閣】
内閣や、内閣総理大臣、国務大臣に関する内容

【裁判所】
裁判所や、司法権の独立、違憲審査権に関する内容

【財政/地方自治】
財政や地方自治に関する内容

憲法の出題数

表中、断りのない限り出題形式は択一式です。

職種 憲法/総出題数
国家一般職 2科目(10題)/16科目(80題)→8科目(40題)選択解答
特別区Ⅰ 2科目(10題)/11科目(55題)→40題選択解答
東京都ⅠB(記述式) 1科目/10科目→3科目選択
裁判所事務官 択一式:7題/40題→30題選択解答(憲法は必須解答)
記述式:1題(必須解答)
国税専門官 択一式:3題/70題→40題選択解答(行政法と合わせて6題選択解答)
記述式:1科目/5科目→1科目選択
地方上級
全国型
4題/40題→全問必須解答

頻出分野

全体的に、人権では精神的自由権が頻出といえますが、ほかの人権からの出題も少なくはありません。

統治では国会、内閣、裁判所が満遍なく出題されています。

憲法は条文が少なく、範囲が狭いので満遍なく出題があります。

また、出題数の少ない職種(国税専門官や教養のみで憲法が出題される職種)では、1つの問題の中で選択肢ごとにバラバラの分野が含まれる複合問題が出題される傾向にあります。

難易度

民法や行政法に比べて、馴染みがありとっつきが良いという意味では難易度は低いと言えます。

ですが、民法や行政法より範囲が狭く、それだけに深く勉強しなければならないこちから、難易度を高くさせる可能性があります。

しかし、範囲が狭いということは、同じ分野が繰り返し出題されることですし、あらゆる公務員試験で出題されるのは過去問が豊富にあるということです。

したがって、戦略を立てやすく、トータルでは難易度は低めといえます。

憲法の対策をしよう!

ここでは、択一対策を中心に解説します。

過去問に始まり過去問に終わる

他の科目の勉強方法についてのコラムでも、勉強の手順としては、以下の優先順位を推奨しています。

①まず過去問を解く(読む)→②テキストで復習→③講義を受ける。

憲法に関しては超オススメです。

小中高の社会の時間に多少なりとも憲法の内容に触れたことがあるので、他の法律科目よりははるかに馴染みがあるからです。

先ず過去問を「読む」ことから始めてください。
頻出分野から始めてもいいでしょう。

わからなくても止まってはいけません。
内容が頭に入らなくても気にしないことです。

とにかくスピード感を重視して、「過去問を読む」ことです。

その上で、ざっとテキストに目を通すと頭の中で体系的整理ができます。

そして、この段階で理解できた箇所があれば、その箇所の講義はスキップしてください。

全範囲の過去問を先に読むのは時間もかかりますし、先に読んだ内容をすっかり忘れてしまう危険があるので、分野ごとに以上の作業を行なうと良いでしょう。

そして、講義を受けたら、過去問を「解く」ことで、復習をして下さい。
テキストをきっちり読み返したり、いわんやノートにまとめるのは時間の無駄です。

ノートではなく、メモや印をつける

このようにして、過去問で復習した結果、間違った箇所には、後で見直した時に瞬時に(ここ重要です)わかるように印を付けたり、キーワードをメモ(ノートではなく、メモです)すると良いでしょう。

試験勉強は、結局は暗記です。

暗記は繰り返すことで定着します。
繰り返すためには、繰り返すべきことを絞り込む必要があります。

そのためには、情報量の多いノートではなく、一覧性のあるもの、短い言葉で記憶喚起できるものを残していくべきです。

人権は判例、統治は条文知識(数字)

過去問を読むと一目瞭然です。

人権に関しては圧倒的に判例が出題されます。

また、統治では、憲法や関係法令(国会法など)の条文に書かれてある制度内容や数字が出題される傾向にあります。

教養択一の政治・経済でも、統治の条文知識が問われることが多いです。

判例は結論だけでは対応できない

憲法判例の結論は、合憲か違憲かです。

ほとんどの憲法判例は合憲判決です。

違憲の法律がやたらと制定されたのでは日本はやばい国ということになりますから。

なので、結論だけなら、わからない場合は「合憲」としておけば正解する率は高いわけです。

ですが、憲法判例で重要なのは、結論に至った「理由」です。
公務員試験でも合憲・違憲の結論部分は合っているけど、理由の部分が違っているから誤りという選択肢が随所にあります。

【例題】「尊属殺重罰規定違憲判決」(昭和48年(1973年))の判例

頻出判例である「尊属殺重罰規定違憲判決」(昭和48年(1973年))を例にとってみましょう。

裁判所における判断

・一審の宇都宮地方裁判所は、刑法200条を違憲とし、刑法199条(殺人罪)を適用した上で、情状を考慮し過剰防衛であったとして刑罰を免除した。
・二審の東京高等裁判所は、同条は合憲とし、その上で最大限の減刑を行い、かつ未決勾留期間の全てを算入して、懲役3年6月の実刑を言い渡した。
・終審の最高裁判所大法廷は、従来の判例を変更し同条を違憲と判断した上で、刑法199条を適用し懲役2年6月、執行猶予3年を言い渡した。女性Yは実父に長年夫婦同様の生活を強いられていた。

判例のポイント
・尊属殺人重罰規定の存在自体は認められる
・しかし、尊属殺人罪は普通殺人罪に比して法定刑があまりにも重いので法の下の平等に反し、違憲である

選択肢に「尊属殺人罪の存在自体が違憲である」とあれば、結論(違憲判決)は正しいものの、最高裁の違憲判決に至る理由が異なっているので誤りとなります。

このように、憲法の勉強では、頻出判例は「理由」の部分まで整理して覚えておく必要があります。

過去問をよく読んで、どこで引っ掛けてくるかを把握することが、効率的な勉強方法です。

条文の素読みは効果的

民法だと条文の量も多く、意味がわかりにくいので、公務員試験対策では条文を読む必要はありません。

ですが、憲法は条文数も104条しかない上に、比較的読みやすいです。

特に、前文と統治は条文に書かれてある内容(数字など)がベタに出題される傾向にあります。

※出典:尊属殺重罰規定違憲判決 – Wikipedia

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いつから憲法の勉強を始めるべき?

まずは憲法から

どの受験予備校でも、法律科目は憲法からスタートとしています。

憲法は早い時期からスタートをすべきです。

理由は、他の法律科目よりは馴染みがあってとっつきがよく、法律科目の入門として最適だからです。

また、日頃から政治・経済など社会情勢に興味と持つことが公務員試験対策では重要ですが、憲法の基礎知識があれば、政治ニュースがより分かるようになるのも憲法をいち早く勉強するメリットです。

他の法律科目のベースになる

行政法は、憲法の統治の理解を前提にした行政権のあり方を学びますし、国家賠償や損失補償といった憲法の人権で勉強する内容も含まれます。

刑法の勉強は、憲法の人身の自由の知識があった方が効率的に学べます。

民法は憲法との関連性が一見なさそうですが、現行憲法が制定されたのを受けて戦後、民法の家族法は大改正されました。

また、憲法は日本の最高法規です。

したがって、憲法に反するあらゆる法令は無効になるので、他の法律でも、合憲性が問題になった判例を学ぶ機会があります。

以上から、憲法の知識を持ってから他の法令を勉強することは、効率のいい勉強には不可欠です。

※関連コラム:【公務員試験】専門科目の勉強法とおすすめ優先順位~択一&記述~

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この記事の著者

小林 美也子講師 (講師紹介はこちら


大手資格予備校・地方自治体・企業・教育機関等様々な場所で,長年にわたり公務員試験,宅建試験の受験指導,職員研修を行う。

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