国家一般職で、内定を勝ち取るための最重要プロセスが「官庁訪問」です。

ですが、人事院が実施する1次試験、2次試験とは異なり、各官庁や出先機関によって日程や、ルール、対策も異なります。

また、巷には膨大な情報が溢れ、困惑されている方も多いのではないでしょうか。

本稿では、官庁訪問の基本についてご説明します。

ぜひ参考にして、錯綜する情報の波に溺れることなく、後悔しない官庁訪問、そして内定獲得に役立ててください。

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国家一般職の選考の流れを今一度確認しよう

国家一般職の採用フロー

2025年の国家一般職の選考の流れを紹介します。

項目日程
申込受付期間2月20日(水)9:00~3月24日(月)受信有効
第1次試験日6月1日(日)
第1次試験合格者発表日6月25日(水)9:00
第1次試験合格通知書
ダウンロード期間
2月上旬に掲載予定
面接カードダウンロード期間2月上旬に掲載予定
第2次試験日7月9日(水)~7月25日(金)
※土・日曜日及び祝日等の休日は、実施しない予定
最終合格者発表日8月12日(火)9:00
最終合格通知書ダウンロード期間2月上旬に掲載予定
個人の試験結果(成績)閲覧可能期間2月上旬に掲載予定

国家一般職の採用までの流れは、大きく分けて、

  1. 人事院が実施する「採用試験」
  2. 各府省が個別に実施する「官庁訪問」

の2つからなっています。

1.採用試験

国家公務員一般職として採用される(就職する)には、まず、人事院が実施する「採用試験」に合格する必要があります。

「採用試験」には1次試験(筆記試験)と2次試験(人物試験=人事院面接)があります。

2.官庁訪問

採用試験に合格=採用ではありません。

ご自身が採用を希望する各府省での面接などを受けて、内定(厳密には内々定ですが)をもらって、初めて採用となります。

関連コラム:公務員試験の面接対策【質問例付】~個人面接・集団面接・集団討論~

官庁訪問の時期に注意

官庁訪問に関してまず、気をつけなければならないのが、官庁訪問のスタート時期です。

地方公務員や他の国家公務員だと、筆記試験合格→面接試験合格→内定という流れをたどります。

また、国家総合職でも、最終合格者発表後に官庁訪問がスタートします。

これに対して、国家一般職試験は、1次試験合格発表(2024年だと6/26)後に官庁訪問がスタートします(2024年だと7/2〜)。

つまり、最終合格発表(2024年だと8/13)がされないまま官庁訪問がスタートし、最終合格者の選定と官庁訪問が同時並行で進みます。

せっかく希望省庁から内定をもらっても、最終合格できないとその内定も無駄になってしまいます。

なので、2次試験(人事院面接)対策をしつつ、官庁訪問の対策をするというハードスケジュールをこなさなければなりません。

そもそも官庁訪問とは?

官庁訪問とは何か

官庁訪問とは、「自分が働きたい官庁から内定をいただくための活動」です。

繰り返しになりますが、国家一般職試験は、「合格=採用」ではありません。

「合格=国家一般職として働く能力はあると認められた」だけで、さらに希望官庁から採用されるための活動が官庁訪問なのです。

イメージとしては、一般の民間企業の就職活動とほぼ変わらないと考えてください。

つまり、官庁訪問こそが、就職活動の本番と言っていいでしょう。

ちなみに、国税専門官にも官庁訪問と同じような「職場訪問」というものがあります。

ですが、国家一般職が複数の府省庁が訪問先となるのに対し、国税専門官の場合、官庁は国税庁に決まっていて、具体的に訪問するのは、各地域に置かれている国税局という大きな違いがあります。

パターンは官庁ごとに違って当たり前

官庁訪問は、訪問できる官庁の種類と数、府省庁ごとに異なる日程、面接の形態、面接回数、求められる人材など、制度の複雑さや煩雑さを感じる方がいらっしゃるかもしれません。

ですが、民間企業の就職活動を考えれば、以上のことは当たり前のことです。

例えば、製造業と流通業では全く別業界ですね。

そして、同じ流通業の中でも、総合商社から、小売業、小売も店舗型、通販専門と業態は異なり、さら総合商社でも伊藤忠、三菱商事、三井物産……と会社の個性は異なります。

同じように国の機関も、府省が違えば別業界、局が違えば別会社と言ってもいいでしょう。

したがって、訪問する官庁ごとに日程や面接形態などが異なるのは当然です。

内定を出す(一緒に働いてもらう)かどうかをチェックするために、お話をする(面接)のはどの官庁も共通しています。

面接は複数回実施され、 1回面接をクリア→官庁から電話→次の面接というのが通例です。

もちろん、1回の面接で即、内定をもらう人もいます。

もっとも形式は、個別面接、集団面接、職場見学や業務の説明会、集団討論(グループディスカッション)、職員との座談会(質問会)など様々です。

どこに官庁訪問できるのか

その年に採用予定がある府省ならば、複数の府省に官庁訪問できます。

具体的には受験地域内にある出先機関と本府省です。

例えば、東海北陸地域で受験した場合、東海北陸地域にある出先機関および、本府省であれば自由に官庁訪問ができます。

「行政」区分における本府省への採用については、「行政関東甲信越地域」からの採用が中心とされていますが、全国から有為の人材確保をするという観点から、それ以外の地域からも採用が可能となっています。

参考までに、試験情報・採用情報に記載されている2024年行政関東甲信越地域採用予定人数の一部をご紹介しましょう。

府省等名採用予定官庁名採用予定数
内閣府内閣府22名
デジタル庁デジタル庁8名
総務省総務省65名
法務省各地方法務局53名
検察庁各地方検察庁87名
外務省外務省4名
財務省財務省15名
文部科学省文部科学省20名
厚生労働省厚生労働省190名
農林水産省農林水産省28名
経済産業省経済産業省35名
国土交通省国土交通省52名
環境省環境省15名
防衛省防衛省57名

ほんの一例にすぎませんが、採用機関の種類、採用人数の多さにも驚きますよね。

官庁訪問「まで」の対策

何と言っても「情報収集」が重要

まず、採用スケジュールの確認は必須で、人事院のHPはこまめにチェックするようにしましょう。

過去には、民間企業の採用スケジュールの変化に応じて公務員の採用試験スケジュールが大幅に変更されて例もあります。
特に、2020年はコロナ禍の影響を受けて多くの公務員採用試験が後ろ倒しになりました。

特に、国家一般職は、最終合格発表前から官庁訪問がスタートしますから、「合格してから面接対策を考えていればいいや」と悠長に構えているわけにはいきません。

早い段階からの情報収拾を心がけましょう。

公務員試験の勉強を始めた時から、「自分は公務員として、どんな職場でどんな仕事をしたいのか」を考えるためにも、広くアンテナを張って情報収拾をしておきましょう。

また、様々な形式の面接や説明会が行われので、志望官庁で例年実施されている面接や選考プロセスについての情報収集は入念に行うべきです。

「業務説明会」という名目の「官庁訪問」には注意

官庁訪問の開始日は発表されますが、この日よりずっと前から、「業務説明会」「職場体験」「インターンシップ」という名目でガッツリ選考を行っている官庁もあります。

民間企業が「業務説明会」や「インターンシップ」で実質的な選考を行なっているのと似ていますね。

もちろん、早々と実施される「業務説明会」や「インターンシップ」に参加していないと、必ずしも内定が取れないというわけではありません。

ですが、情報収集という観点から、こういった制度を積極的に利用しない手はありません。

官庁訪問対策は面接対策につきる

「官庁訪問」は、結局は面接が基本なので、面接対策につきます。

まず、ほぼ確実にどの官庁も面接カード(エントリーシート)の提出を要求されます。

フォーマットは官庁ごとに異なりますが、ネットなどで希望官庁の面接カードがどのようなものなのか、しらべておくとよいでしょう。

※面接カードの書き方については「【公務員試験】面接カード徹底解説!~入手から提出まで~」を参考になさってください

とくに組織研究と自己分析は就職活動の必須項目です。

「自分を知り」、「相手を知る」ことが、ミスマッチを避けるため、適切な行動のためには何よりも重要でだからです。

「国家公務員ならばどこで働こうが同じ」ではありません。

先述のように、府省が違えば別業界、局が違えば別企業です。

厳しい受験勉強をくぐり抜けてきたのですから、とにかく内定をもらえるなら……と思ってしまう気持ちはわからないではありません。

ですが、公務員試験に合格したものの、「何か違う」「やっぱり合わない」と他の公務員や民間企業に転職する人は決して少なくありません。

したがって、組織研究と自己分析の目的は、内定をもらうことそのものではなく(内定はあくまで手段です)、「幸せな就職」のために必要なことと考え、手を抜かないことです。

さらに、個人面接、集団面接、集団討論と、形式に応じて柔軟に対応できるよう、それぞれの対策・コツを掴んでおきましょう。

→面接対策の詳細に関しては「【公務員試験】面接の対策について知ろう!~個人面接・集団面接・集団討論~」を参考になさってください。

官庁訪問「当日」の対策

官庁訪問「当日」に気をつけるべきこと

官庁訪問「当日」に気をつけるべきマナーは、これも面接対策となんら異なりません。

服装、入退室の仕方、お辞儀の仕方、声の出し方、持ち物など、詳しくは面接マナーのコラム(【公務員】面接のマナーとは?服装・入退出・面接本番のマナーを解説)をご参照ください。

訪問先の優先順位には注意

いくら複数の機関に官庁訪問ができるからと言っても、体は1つしかありませんので、優先順位は決めておきましょう。

多くの機関が一斉に官庁訪問を実施する以上、面接の日程がかぶることはあります。

例えば、1回目の面接を複数受けられたとしても、2回目、3回目となると、被ってしまうこともあります。

その際には、正直に事情を話して日程をずらしてもらえる可能性は低いと考えるべきでしょう。

なぜなら、各機関もスケジュールをやりくりしながら選考を進めているからです。

また、日程変更を申し出るということは、その官庁が第一志望ではないと先方に告げているようなものなので、印象はよくありません。

この辺りは慎重に行動すべきですね。

官庁訪問開始の1回目の訪問は、第一志望先を訪ねることです。

面接を受けている間に気づくこともある

とはいえ、第一志望先から内定をもらうことが「幸せな就職」とは限らないのが就職活動です。

ほとんどの受験生は併願します。複数の地方公務員、国家公務員、そして複数官庁です。

そして、複数の受験先から内々定を受ける人も多くいます。

民間企業の就職活動も同じことが言えるのですが、面接段階になると、一生懸命に組織研究も自己分析もします。
面接官にお会いして色んな話をして、聞いて、考えて、知ります。

すると、ここにきて初めて自分が何をやりたいのか、どんな仕事に向いているのか、発見することが多々あります。

筆者の教え子の中には、勉強を始めた時から「絶対に県庁」と話していたのですが、複数の内々定をもらい、結果、国税専門官を選んだ方がいます。

就職後、彼は国税の仕事があっていたようで、やりがいを感じ、能力が認められ本省へ移動にもなりました。

このように、就職活動をしている間に気付かされることは多々あります。

ですから、官庁訪問に限らず、面接に真剣に向き合うことはエネルギーも必要ですが(はっきり言って疲れます)、「幸せな就職」のため、とても大切なことと考えて頑張っていただきたいです。

諦めなければ内定はもらえる

採用予定人数を見て、「申込者数に対して、こんなに少ないの?!」と不安になられた方がいるのではないでしょうか。

ですが、

申込者数>受験者数>最終合格者>内定者数>就職者数

です。

多くの公務員受験生は併願します。

したがって、内定をもらっても辞退する方は少なからずいます。

人事担当者は、内定辞退を避けたいところですが、こればかりは如何ともしようがありません。

すると、年末、年明けになってからも欠員ができたままで採用予定人数を確保できない機関が必ず出ます。

なので、最後まで諦めずに粘っていれば(採用先を選ばなければ)、希望者にはほぼほぼ内定が出ているのが実情です。

ですから、最初に回った官庁から思うように内定が出なかったとしても、「ご縁がなかっただけ」とめげることなく就職活動を続けることです。

最後に

ここまで読んできてくださってありがとうございます。

公務員試験の最終目的は、第一志望先から内定をもらうことではありません。

いわんや多くの内定をもらうことでもありません。

みなさんは、幸せな人生を送るために苦労して筆記試験の勉強をして、面接対策をされるわけです。

ぜひ、「幸せな人生」を送るために「幸せな就職」をなさってください。

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この記事の著者

小林 美也子講師 (講師紹介はこちら


大手資格予備校・地方自治体・企業・教育機関等様々な場所で,長年にわたり公務員試験,宅建試験の受験指導,職員研修を行う。

難解な法律用語は平易な表現とたとえ話でかみ砕き,理解しにくい内容はオリジナルの挿絵でわかりやすく説明する。

テンポの良いメリハリの効いた講義で多くの合格者を輩出。時間が限られる受験生のために,エッセンスが詰まった学習効率が高い講義を展開する。

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