国家公務員の種別のひとつに、法務省専門職員という職業があります。

法務省専門職員はその業務内容上、深い人間理解が要求されるため、登用されるには「法務省専門職員(人間科学)試験」に合格する必要があります。

本コラムでは、法務省専門職員とは何か、具体的にどのような仕事があるのか、法務省専門職員(人間科学)採用試験の概要や難易度について解説します。

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法務省専門職員(人間科学)とは?仕事内容は?

法務省専門職員とは、主に犯罪者の更生援助や教育を行うことを業務内容とする国家公務員専門職のひとつです。
平成24年に旧試験制度を統合する形で新設されました。

法務省専門職員には人間科学の知識が要求されるので、登用されるには「法務省専門職員(人間科学)試験」に合格する必要があります。

法務省専門職員には以下の3つの職業区分があります。

  • 矯正心理専門職
  • 法務教官
  • 保護観察官

以下、一つずつご紹介します。

矯正心理専門職

矯正心理専門職は、少年院・少年鑑別所(家庭裁判所によって保護観察措置決定を受けた少年が収容される場所)・刑事施設に勤務し、犯罪者との面接や心理検査といった方法で、非行や犯罪の動機・背景についての原因分析や更生プログラムの提案を行います

矯正心理専門職は主に心理学的観点から、非行を行った少年の問題性について分析をします。
たとえば、「更生の余地があるのか」「どういった動機で非行に及んだのか」といった事柄です。

また、少年院や少年拘置所などの刑事施設において、非行をした少年を心理学的な面からサポートするのも矯正心理専門職の業務です。

少年本人と、なぜ非行をしてしまったのかを考える面談を行ったり、グループワークなどを実施することもあります。

法務教官

法務教官は、少年鑑別所・刑事施設に勤務し、非行を犯した少年などに矯正教育を行います

鑑別所・少年院で勤務する場合は、家庭裁判所から観護措置・保護処分を受けることになった少年に対して、社会復帰するための生活指導を行います。

また、非行に及ぶ少年の多くは家庭環境が複雑で、十分な教育を受けてこれなかった場合が多いです。
そのような少年に対しては、基礎的な学力を身につけさせるための教科指導も行います。

また、少年たちが社会に出た後自立した生活を送り、二度と非行に走らないように就職支援や就学支援をも行います。

刑事施設に勤務する場合は、それらの指導に加えて、性犯罪や薬物依存の指導も行います。

保護観察官

他の二職が主に非行少年や受刑者が社会に出る前のサポートを主な業務内容とするのに対し、保護観察官は、非行少年や受刑者が出所して社会に出てからの生活環境を整備したり、再犯防止に尽力することが仕事です。

保護観察官は地方更生保護委員会や保護観察所に勤務します。

地方更生保護委員会では、受刑者や非行少年と面接を行い、刑事施設からの仮釈放・少年院からの仮退院の時期が妥当であるかを調査するのが主な仕事です。
仮釈放後の行動によって釈放取り消しとなることもありますが、この判断を行うのも保護観察官です。

保護観察所では、保護観察処分となった者や仮釈放者の保護観察、生活調査をするのが主な仕事です。
住居や就職先をあっせんしたり、再犯防止活動を行うことも保護観察官の仕事です。

国法務省専門職員の待遇は?

給与・年収

法務省専門職員は国家公務員であるので、年次による給料体系は俸給表により明文化されています。
もっとも、3つの職業とも同じ給与体系ではありません。

矯正心理専門職区分・法務教官の給与は、国家公務員公安職俸給表(二)に基づいて計算されます。

矯正心理専門職員と法務教官の年収は約675万円(約6,750,332円)です。

人事院の令和5年度国家公務員給与等実態調査によると、矯正心理専門職区分・法務教官の平均給与月額は409,111円、俸給は339,218円で、ここにボーナスが加わり、平均年収は約675万円(約6,750,332円)でした。

矯正心理専門職区分・法務教官の初任給は、248,200円です。(地域手当なし:207,000円)

一方、保護観察官の給与は、国家公務員行政職俸給表(一)に基づいて計算されます。

保護観察官の年収は約666万円(約6,666,248円)です。

人事院の令和5年度国家公務員給与等実態調査によると、保護観察官の平均給与月額は404,015円、俸給は322,487円で、ここにボーナスが加わり、平均年収は約666万円(約6,666,248円)でした。

保護観察官の初任給は、218,640円です。(地域手当なし:182,200円)

すなわち、保護観察官の給与は他の二職と比べてやや低いといえます。

公務員の月の給与は、給料(基本月給=俸給表の俸給月額)と各種手当(地域手当や扶養手当など)の合計値です。
毎月「税金」と「社会保険」は、民間企業と同じく、給与から差し引かれます。

昇給については、基本的には定期昇給です。
専門官、統括専門官、主席専門官、施設長といった役職に就くとさらに昇給します。

勤務地

先述の通り、法務省専門職員の勤務場所は少年院やそれに関連する施設です。

矯正心理専門職・法務教官の勤務地等については、本人の希望を考慮して決定され、原則として採用施設を所管する矯正管区の管轄地域内で異動します。

矯正管区とは、法務省専門職員が所属する、法務省矯正局の事務を分掌する地方支分部局です。
全国8か所、札幌・仙台・東京・名古屋・大阪・広島・高松・福岡の矯正管区があります。

したがって、基本的にはこれら8か所のいずれかの矯正管区が管轄する区域内での移動となるため、全国転勤が頻繁にある職種ではありません。

保護観察官も同様に、おおむね2、3年ごとに採用管内の地方更生保護委員会又はその管内の保護観察所を異動することになりますが、昇任に応じて異動の地域は広くなります。

なお、職員には宿舎が用意されています。
宿舎は、勤務庁の近隣に設けられており、公安職俸給表適用職員の特例により、宿舎費は原則として無料となります。

法務省専門職員(人間科学)採用試験の概要

受験資格

法務省専門職員試験は細かい区分に分かれているので、以下の表をご覧ください。

試験区分年齢
矯正心理専門職(男性)30歳未満
矯正心理専門職(女性)30歳未満
法務教官(男性)30歳未満
法務教官(女性)30歳未満
法務教官(男性・社会人)40歳未満
法務教官(女性・社会人)40歳未満
保護観察官30歳未満

倍率・難易度【2023年】

2023年度の受験申込者数、合格者数から算出した倍率は以下の通りです。

区分受験者数一次合格者数最終合格者数倍率
矯正心理専門職A9285511.8倍
矯正心理専門職B212141782.7倍
法務教官A5102901693.0倍
法務教官B239181912.6倍
法務教官A(社会人)4538202.3倍
法務教官B(社会人)111033.7倍
保護観察官211107603.5倍
合計1,3208524722.8倍
2023年度 法務省専門職員(人間科学)採用区分別実施状況

難易度は地方公務員上級クラスよりやや低く、一般的な国家公務員試験と同じく、大卒レベルの学力が要求される程度の難易度といえます。

※参考:2023年度 法務省専門職員(人間科学)採用区分別実施状況

試験科目

採用試験は1次試験と2次試験に分かれています。

1次試験では、公務員としての基礎的な能力を問う「基礎能力試験(多肢選択式)」と、心理学・教育学・福祉および社会学の分野から出題される「専門試験(多肢選択式・記述式)」を行います。

基礎能力試験はいわゆる教養試験と呼ばれるもので、3種全ての試験に共通しています。

2次試験では、人物試験(個別面接)・身体検査・身体測定を行います。

法務省専門職員採用試験の対策

市販のテキストなどを使って独学することも可能ですが、やや厳しいので予備校を使うことをおすすめします。

以下、具体的な対策についてです。

まず、基礎能力試験は、現代文・英文や資料解釈といった「一般知能」科目とその他地歴公民といった「一般教養」科目に分かれていますが、一般知能の配点が圧倒的に高いので、こちらを重点的に対策しましょう。

また、矯正心理専門職については、専門試験科目のうち心理学の配点が特に高いので、心理学を重点的に対策しましょう。

関連記事:【公務員試験の科目一覧】教養科目と専門科目とは?

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