「五大官庁とは?ほかの官公庁とは何が違うの?」などと疑問に思っていませんか。
五大官庁は中央省庁の中でも特に人気のある省庁を差し、官庁訪問でも多くの受験生が訪れます。

各官庁の特徴を理解して興味のある仕事があれば、入庁を目指してみてはいかがでしょうか。

本コラムでは五大官庁の仕事や採用までの流れ、そのほかの省庁の概要などを解説しています。
五大官庁や国家公務員の仕事に興味がある場合、これから何をすべきかも理解できるため、ぜひご覧ください。

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五大官庁とは?

五大官庁(五大省庁)とは、日本の中央省庁の中でも特に人気のある財務省、外務省、経済産業省、警察庁、総務省を指す言葉です。

  • 財務省
  • 外務省
  • 経済産業省
  • 警察庁
  • 総務省

法律等で明確に定義付けされているわけではありませんが、これらの省庁は官庁訪問でも多くの受験生が興味をもっています。

また、日本の中央省庁は1府11省1庁で構成されていますが、その中でも入庁の難易度が非常に高いことも特徴です。

国家公務員総合職で採用される方は、東京大学や京都大学といった難関大学群の生徒が中心となっています。

ただし、現在は国家公務員の人気が低下傾向にあるため、ほかの大学群からでも内定を狙うチャンスは十分にあります。

五大官庁の主な仕事内容

国家公務員の仕事は、採用される省庁の管轄によって大きく異なる点が特徴です。

また、総合職や一般職などの採用区分の違いはあっても、同じ省庁に採用されれば同じ方向を向いて業務に従事する点は共通しています。

ここでは、五大省庁の主な仕事の内容を解説します。

財務省

財務省では「国の信用を守り、希望ある社会を次世代に引き継ぐ」という使命の下、以下のような幅広い業務が行われています。

  • 予算の編成
  • 税制の企画立案
  • 経済連携協定への取組み
  • 国債の発行
  • 外国為替市場の安定 など

国家行政のさまざまな局面で財務省の判断が求められる点も大きな特徴です。中央省庁の中でも中心的な役割を担っています。

また、地方支部部局として「財務局」と「税関」、外局として「国税庁」も財務省の組織の一部となっています。

外務省

外務省では「平和で安全な国際社会の維持」や「良好な国際環境の整備」「調和ある対外関係の維持・発展」「日本国および日本国民の利益の増進」などを図るために以下のような業務が行われています。

  • 日本の安全保障政策や国際協調
  • 平和維持・平和構築
  • 国際社会における法の支配の強化
  • 海洋における秩序と安全の確保
  • 軍縮・不拡散と原子力の平和的利用の推進
  • テロ・国際組織犯罪対策への協力 など

日本国内だけでなく、海外勤務がある点も大きな特徴です。

また、総合職や一般職だけでなく、専門職に位置する「外務省専門職員」も採用されています。

経済産業省

経済産業省では「国富の拡大」に向けて以下のような業務が行われています。

  • デジタル変革
  • 産業構造転換
  • スタートアップ・中小企業支援
  • 経済連携
  • アジア新産業共創
  • 再生可能エネルギー
  • 水素社会
  • 資源外交 など

日本の経済活動を活発化させるための機関となっており、民間企業と密接に関連している点も特徴です。

組織は「中小企業庁」や「特許庁」「資源エネルギー庁」「商務情報政策局」などで構成されており、各機関の使命を果たすための業務に従事します。

警察庁

警察庁では各内部部局の仕事に従事して、日本の治安や安全を守るための仕事が行われています。

警察庁の内部部局は以下のように構成されています。

  • 生活安全局
  • 刑事局・組織犯罪対策部
  • 交通局
  • 警備局・外事情報部・警備運用部
  • サイバー警察局

警察庁に採用された場合も、いわゆる「警察官」となりますが、現場での仕事はなく、都道府県警察の指揮や監督、調整などを行う点が特徴です。

総務省

総務省は「総て(すべて)務める(つとめる)」官庁として、日本の基本的な仕組みにかかわる制度や、国民の経済や社会活動を支える基本的システムなどを管轄しています。

具体的には以下のような業務を行います。

  • 行政運営の改善
  • 地方行財政
  • 選挙
  • 消防防災
  • 情報通信
  • 郵政行政 など

国民の暮らしの基盤にかかわる仕事が中心である点が特徴です。

五大官庁で働くには?方法と流れを解説

五大官庁で働くには、大きく国家公務員総合職での採用と、国家公務員一般職での採用の2種類の方法があります。

ここでは、それぞれの試験の概要などを解説します。

国家公務員総務職に採用されて働く

国家公務員総合職とは、中央省庁の幹部候補として採用される職種です。いわゆる「キャリア」や「官僚」とも呼ばれます。

採用試験は、主に基礎能力試験と専門試験が課される一次試験に加え、専門記述試験と政策論文試験、人物試験が課される二次試験で構成されています。

そして、最終合格後には志望の省庁で面接などを受ける「官庁訪問」が実施され、内定が決まる流れです。

国家総合職は、大卒程度試験と院卒者試験が実施されている点も特徴です。

大卒程度試験の基本的な受験資格は「大学卒業見込みもしくは卒業済みで22歳以上30歳以下の方」となっています。

一方で院卒者試験の基本的な受験資格は「30歳以下で大学院卒業見込みもしくは卒業済みの方」です。

総合職試験の一次試験は、例年4月上旬に実施されます。ほかの公務員試験よりも早い時期に行われる点が特徴です。

国家公務員一般職に採用されて働く

国家公務員一般職は、政策の実行や事務処理などを担当する職種です。しかし、出先機関だけでなく中央省庁での採用も存在し、五大省庁への入庁も可能です。

大卒程度の採用試験は、主に教養試験と専門試験、一般論文試験が課される一次試験と、人物試験が課される二次試験で構成されています。

国家総合職と同様に官庁訪問で内定を得る必要がありますが、日程は一次試験の合格発表直後である点に留意しましょう。

国家一般職では高卒者試験と大卒程度、社会人採用が実施されています。

大卒程度試験の基本的な受験資格は「22歳以上30歳以下の方(採用日時点)」です。基本的に学歴の要件は定められていません。

なお外務省を希望する場合は、国家専門職として「外務省専門職員試験」も実施されています。

1府11省1庁(1府12省庁)を分かりやすく解説【一覧】

日本の中央省庁は1府11省1庁で構成されているため、五大官庁以外にもさまざまな機関が存在します。

各省庁で仕事の内容が大きく異なるため、公務員を目指す方は視野を広げてさまざまな省庁の仕事を理解しましょう。

ここでは、1府11省1庁(1府12省庁)の特徴や仕事内容を解説します。

(1)総務省

上述した通り、総務省では国民の暮らしの基盤にかかわる以下のような仕事が行われています。

  • 行政運営の改善
  • 地方行財政
  • 選挙
  • 消防防災
  • 情報通信
  • 郵政行政 など

国の基本的な仕組みに関する制度や、国民の経済・社会活動を支えるシステム作りなどに携われます。

また、総務省は公害等調整委員会や総合通信局、消防庁を含む1官房9局2外局で構成されている点も特徴です。

(2)法務省

法務省では「国民が安全・安心に暮らせる公正・公平な社会の実現」というミッションを掲げ、以下のような業務が行われています。

  • 基本法制の維持・整備
  • 国民の権利擁護
  • 刑務所の運用
  • 外国人の入出国管理
  • 不動産や法人などの登記 など

法務省は矯正局や入国管理局を含む内部部局と、公安審査委員会・公安調査庁で構成される外局で構成されています。

また、国家総合職・国家一般職のほかに、国家専門職として「法務省専門職員」が採用されている点も特徴です。

法務省専門職員として採用されると犯罪者の更生援助や教育といった業務に従事することとなります。

(3)財務省本省

財務省本省では「国の信用を守り、希望ある社会を次世代に引き継ぐ」という使命を掲げ、国家財政を担う以下のような仕事が行われています。

  • 予算の編成
  • 税制の企画立案
  • 経済連携協定への取組み
  • 国債の発行
  • 外国為替市場の安定 など

国の予算を扱う仕事であるため、ほかの省庁の仕事にも深く影響を及ぼします。中央省庁の中でも中心的な位置づけであるといえるでしょう。

(4)厚生労働省

厚生労働省では「国民生活の保障・向上」と「経済の発展」を目指して、医療や保険、衛生、福祉、年金などの分野に関する取組みを行っています。

また、少子高齢化や男女共同参画、経済構造の変化に対応して、社会保障と労働政策を一体的に推進しています。

厚生労働省では総合職と一般職採用以外にも、国家専門職の「労働基準監督官」と「食品衛生監視員」が採用されている点も特徴です。

(5)外務省

外務省では以下のような外交分野の仕事が行われています。

  • 日本の安全保障政策や国際協調
  • 平和維持・平和構築
  • 国際社会における法の支配の強化
  • 海洋における秩序と安全の確保
  • 軍縮・不拡散と原子力の平和的利用の推進
  • テロ・国際組織犯罪対策への協力 など

原則として職員全員が海外勤務を経験する点が大きな特徴です。在外公館に勤務して、相手国政府との交渉や連絡、政治・経済に関する情報収集、広報文化活動などを行います。

また、総合職と一般職に加えて、国家専門職の「外務省専門職員」も採用されています。

(6)農林水産省

農林水産省では「生命を支える「食」と安心して暮らせる「環境」を未来の子供たちに継承すること」をミッションとした取組が行われています。

具体的な業務例は以下の通りです。

  • 食の安全確保と安定供給
  • 農業経営の安定化
  • 農業構造の強化
  • 農山漁村地域の活性化 など

また、総合職・一般職共に採用数が多い点も特徴です。

国家総合職では技術系での採用が中心となっています。

また、一般職の行政区分の本省採用も多いです。技術系では地方農政局での採用が中心となっています。

(7)文部科学省

文部科学省は以下の4分野を管轄する業務を担当する省庁です。

  • 教育(教育分野の政策の企画・立案や教育改革の推進など)
  • 科学技術(科学技術等の創出を目的とした政策の企画立案など)
  • スポーツ(アスリートの支援やスポーツの普及、部活動改革など)
  • 文化(芸術や伝統芸能、生活分野などの振興など)

近年では2015年にスポーツ庁が設置され、オリンピック・パラリンピックムーブメントの推進などの取組みも行われました。

(8)経済産業省

経済産業省では、日本の経済活動を活性化させるための以下のような業務が行われています。

  • デジタル変革
  • 産業構造転換
  • スタートアップ・中小企業支援
  • 経済連携
  • アジア新産業共創
  • 再生可能エネルギー
  • 水素社会
  • 資源外交 など

国家一般職では本省採用のほかにも、地方経済産業局・産業保安監督部での採用が行われています。

(9)国土交通省

国土交通省は人々の生活空間や移動、安全などに関連する以下のような業務を担当しています。

  • 国土の総合的かつ体系的な利用・開発・保全
  • 社会資本の整合的な整備
  • 交通政策の推進
  • 気象業務の発展
  • 海上の安全・治安の確保 など

採用数が非常に多い点も特徴で、一般職でも54名の採用予定数となっています。

本省以外に目を向けると、地方整備局や運輸局などの機関が多くの技術系合格者の採用を行っているため、採用されるチャンスの多い省庁ともいえるでしょう。

また、国家専門職として海上保安官や航空管制官の採用が行われています。

(10)防衛省

防衛省では日本の平和や独立を守り、国の安全を保つための以下のような取組みが行われています。

  • 防衛政策の立案
  • 総合的な情報収集・分析
  • 防衛力の整備
  • 自衛隊や在日米軍の安定的な運用に関する取組み
  • 戦略的な装備政策の展開 など

防衛省は自衛官を含めると国家公務員全体の約46%を占める組織です。

国家総合職や一般職採用以外にも「防衛省専門職員採用試験」や「自衛官」などのさまざまなルートで入庁を目指せます。

(11)環境省

環境省は、以下のような環境全体に纏わる分野を担当しています。

  • 総合環境政策
  • 大気環境・自動車対策
  • 地球環境・国際環境協力
  • 地域脱炭素
  • 水・土壌・地盤・海洋環境の保全
  • 環境再生・資源循環
  • 自然環境・生物多様性
  • 地方環境対策

総合職では「事務系」「理工系」「自然系」の3種類の区分で採用が行われています。

霞が関の本省のほかにも、地方環境事務所や自然保護官事務所などが勤務地となりますが、一般職採用の方でも本省勤務を経験できる点も特徴です。

(12)復興庁

復興庁とは、東日本大震災からの復興を成し遂げるため、平成24年に設置された新しい組織です。

従来は令和3年までの期限付きの組織でしたが、令和13年まで存続することが決まりました。

具体的な業務としては「復興に関する国の施策の企画・調整・実施」「地方公共団体への一元的な窓口と支援」などがあげられます。

公務員を目指している方へ

今回は日本の五大官庁の仕事内容や採用の流れなどを解説しました。

五大官庁は日本の中央省庁の中でも人気が高く、官庁訪問に訪れる方も多い機関です。

五大省庁で働きたいと思った場合は、国家公務員総合職試験もしくは国家公務員一般職試験に合格し、官庁訪問で内定を得る必要があります。

しかし、公務員試験では幅広い範囲の対策が必要であるため、独学での合格は難易度が高いです。

関連記事:公務員試験は独学合格できる?3つの勉強法と合格する7つのポイントを紹介

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この記事の執筆者 渡邉新太

渡邉新太(わたなべ あらた)

大学現役時に以下の公務員試験に独学で合格。
・国家公務員一般職
・国税専門官
・東京特別区
・地方上級(地元県庁)

そして、公務員としての勤務を経た後に、フリーランスのWebライターとして独立。
現在は公務員時代の知識や経験を活かして、多くの方の人生の選択に役立てるよう日々奮闘しています。

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