「消防士になりたいけど、何から始めればいいのかな?」
「消防士になるためには、どんな試験があるのだろうか?」

『消防士試験』などという資格試験みたいなものがあるわけではないため、混乱されている方が多いのではないでしょうか。

本稿では、消防士になるための情報として、仕事内容や試験概要、試験日程、難易度、対策法等をお伝えします。

是非参考にして頂き、消防士になるための試験について理解を深め、実際に試験に向けての準備を始めて下さい。

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消防士の主な5つの仕事内容とは?

消防士は、消火活動や救急活動などによって、人々の安全と命を守ります。

消防士の業務は、大きく分類して以下の5つに分けられ、さまざまな業務を担当しています。

  1. 消火活動
  2. 救命活動
  3. 救急活動
  4. 防災活動
  5. 予防活動

大災害や事故の発生時には、現場へ駆けつけ、災害に巻き込まれた人々の「救助活動」をすることもあります。

また、怪我人・病人などが発生すれば、現場に向かい、応急手当と医療機関への搬送といった「救急活動」を行います。
移動手段には、救急車だけだけでなく、ヘリコプター、船、バイクまであります。

この時、消防士に同行する「救命救急士」という名称をきいたことはないでしょうか。
消防官としての実務経験を経た後や、大学や専門学校で勉強した後に、国家試験に合格することで「救命救急士」になることができます。

さらに「救助活動」といえば、オレンジの制服で活躍するレスキュー隊があります。
東京消防庁の「消防救助機動部隊」、通称「ハイパーレスキュー隊」が有名ですね。
東京都内にとどまらず、全国各地に出動し、海外の災害地に派遣されることもあります。

このほかにも、消防士は、防災のための啓蒙活動や、建物や設備の耐火性・安全性を確認する検査業務なども担っています。

消防士の給与

消防士の給与は、職務の危険性や特殊な勤務体系が加味された「公安職俸給表(一)」が適用され、一般の公務員よりも12%程度高い金額が支給されます。

加えて、職務の危険性から様々な手当てが充実しており、このことが給与水準を引き上げています。

地方自治体や階級などによって個人差がありますが、平均年収は30代で600万円前後、40代で700万円前後のようです。
なお、令和5年地方公務員給与実態調査結果の消防職の給与月額合計は405,224円でした。

勤務体系は地方自治体によって多少の差がありますが、火災や災害があればいつでも出動する必要があるので、出勤日は24時間勤務が基本となります。

2部制か3部制を取るのが通例です。
2部制は非番・休日・24時間勤務のシフト、3部制は日勤・当番・非番のシフトです。

関連記事:消防士の給与・年収はいくら?警察官との差は?年収を階級別に比較!

消防士になるためには?~消防士は地方公務員~

消防士として働くためには、公務員試験を受ける必要があります

採用試験は基本的に市町村単位で実施され、この点は都道府県単位で採用がある警察官と異なります。

もっとも、消防官の採用試験がどの団体で実施されるか、自治体によって異なるので、少しややこしいです。
基本的には、市町村では市、広域消防本部、消防組合単位で行われ、政令指定都市は人事委員会(堺市、岡山市は消防局)で行われます。

東京は特殊です。
首都機能を抱える東京では、東京都の機関である東京消防庁(島しょ地域と多摩地域の一部(稲城市)を除く東京都のほぼ全域を管轄)が一括して採用試験を行なっています。

ほとんどの場合、男女の区別なく募集されますが、ごく一部の自治体で男性のみ募集する場合もあります。

各自治体ホームページや受験案内等で必ず詳細を確認しましょう。

※関連コラム:地方公務員の仕事内容とは?なるには?職種(種類)は?

消防士採用試験の概要

基本的に、消防士の採用試験は、筆記試験、面接、体力テスト、身体検査の組み合わせで行われます。

教養試験、面接試験以外の実施の有無、1次で行うか2次で行うかは、自治体によって異なります。

以下はオーソドックスな組み合わせの例です。

1次試験教養試験(択一式、40~50問、120~150分)
数的処理、文章理解、自然科学、人文科学、社会科学など
論文(作文)試験(800字程度、60~120分)
適性検査(性格検査)、体力テストなど
2次試験面接(個別面接以外に、集団面接、集団討論を実施する自治体もあります。)
体力・身体検査など

消防士の職務上、火や外部の圧力による物質の変化、人体の構造、機材の性質などの知識を見につける必要があります。
そのため、数学、物理、化学などの素養があるかを教養試験で試されます

また、例えば現場の後は報告書などの文書の作成をしなければなりませんし、職務上関係法令を勉強しなければならないので、国語力(作文作成能力)を問うために論文(作文)が課されるわけです。

試験日程

東京消防庁1類は例年5月中旬に行われます。

その他の市町村は、事務職などと同一日程で同じ試験問題を使用するのがほとんどです。
例年、政令指定都市が6月下旬、政令指定都市以外の市町村は9月下旬に行うところが多いですが、6月~10月にかけて行う自治体もあります。

必ず、最新情報を各自治体のホームページ、受験案内などで確認しましょう。

受験資格

自治体によって異なりますが、年齢制限の上限は26~30歳あたりが多いようです。
職務の性質上、同じ自治体の採用試験であっても、事務職より低めの年齢制限となっていることが多いので、注意しましょう。

学歴要件は設けられていないことが多いです。
「大卒程度」とあるのは、試験のレベルを指すだけで、実際に大卒の学歴がなくても、受験できます。
もっとも、学歴要件を設けている自治体もあるので、希望する自治体の「受験資格」で確認してください。

身体基準

消防士には職務遂行に必要な体力・健康であることが求められます

審査基準は自治体によって異なりますが、視力、色覚、聴力についての基準が主で、身長、体重、胸囲、肺活量についても基準を設けている自治体もあります。

基準や検査項目は、変更されることもあります。
例えば、かつては、消防士といえば視力が必要で、矯正視力(コンタクレンズなど)では不可とする自治体が多数でした。
なので、消防士になるためにレーシック手術を受ける強者受験生もいたほどです。
ですが、昨今の若者の視力低下に鑑み、今では矯正視力可と変更する自治体がほとんどです。

必ず、最新の受験資格を、各自治体のホームページ、受験案内等で確認しましょう。 

消防士採用試験の対策について

教養試験対策

公務員試験の試験科目は、これまで勉強したことのない科目も多くあるかもしれません。

ですが、満点とる必要はありませんし、教養試験の合格ラインは4〜5割程度がほとんどです。
まずは、出題数の多い数的処理の勉強から始めましょう

過去問を解くことが最優先事項です。

東京消防庁は問題を公開しているので、市販の過去問集を繰り返し解きましょう。
他の市役所に関しては、東京消防庁の過去問も有益ですし、市役所試験の教養科目の問題集で対応できます。

ちなみに、東京消防庁の数的処理は、難問が多い傾向にありますが、焦る必要はありません。
難しい問題は他の受験生も解けませんし、満点取らなくても合格できることを忘れないようにしてください。

「他の受験生が解ける基本的な問題は落とさない」ことが、公務員試験の勉強の鉄則です。

論文(作文)対策

論文(作文)で試されるのは、徹頭徹尾、文章作成能力です。

つまり、ちゃんと日本語(問題文)が読めて、日本語(答案)が書けるかが問われるのです。
決して、採用担当者は文章によって人柄とか性格を知ろうとしているのではありません。

なので、書く内容に素晴らしいアイディアとか、オリジナリティ不要で、ありきたりの内容を読みやすい文章で書くことができればいいのです。

誤字脱字がない、「てにおは」が正しく使えている、原稿用紙の使い方が正しい、などが採点対象です。

いくつかの頻出テーマについて、実際に書いて、添削を受け、書き直してまた添削を受ける……この繰り返しを何通か行うことで、正しい日本語の文章が書けるようになります。
とにかく数をこなすことです。

面接対策

最重要試験項目です。

面接におけるマナーも大切です。
仲間内のルールは通用しません。

目線、歩き方、姿勢といった些細なことで、面接官に与える印象は格段に変わります。
スマホで自撮りするなどして、自分では気づかない癖などチェックしましょう。

志望動機、自己PRはどこの面接でも質問されると考えて、事前に準備をしておきましょう。

「なぜ消防士になりたいのか」「どんな消防士になりたいのか」「消防士としてどんなことがしたいのか」、、、
自己分析を十分に行うことが大切です。

体力テスト

体力テストはランニング・シャトルラン・腕立て伏せ・上体起こし・反復横とび・体前屈などが行われますが、普段から運動をやっていれば大丈夫です。

情報収集が大切

ここまで、何度もしつこく「各自治体のホームページ、受験案内等で確認しましょう。」と述べてきました。

採用情報、試験内容、受験資格など、去年と同じとは限りません。

自分の五感を駆使して、実際につかんだ情報が何よりも信頼できます。
それがモチベーションの維持にもつながります。

説明会や救命講習会に参加して、現役消防士の方からお話を聞くことも有益です。

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この記事の著者

小林 美也子講師 (講師紹介はこちら


大手資格予備校・地方自治体・企業・教育機関等様々な場所で,長年にわたり公務員試験,宅建試験の受験指導,職員研修を行う。

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