民間企業に勤めている就職氷河期世代の方であっても、公務員へ転職することができます。

今回は、就職氷河期世代の方が公務員に転職する難易度や試験概要などを解説しています。

中途採用であっても公務員になれれば、ほかの職員との扱いが大きく変わらず、安定した職場環境や給与を得ることができるため、積極的に検討してみてはいかがでしょうか。

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就職氷河期世代が対象の国家・地方公務員採用はいつまで?

公務員の就職氷河期採用は「国家公務員は令和5年からの2年間」積極的に採用を行う方針となっています。

就職氷河期世代の方であっても、氷河期採用の区分に合格すれば公務員としての身分を得ることができます。

「就職氷河期採用」とは、就職氷河期の時期に新卒であった30代から50代を対象とした公務員試験の区分です。

氷河期世代に多いと考えられる「職歴がない(少ない)」といった要素は選考に影響されず、平等に合格を目指すことができる点が特徴のひとつです。

なお上記の時期はあくまでも、令和6年4月時点での情報となっています。

今後、採用強化の延長など、制度が変更になる可能性もある点に留意しましょう。

就職氷河期世代で公務員に採用される人とは?

それでは、就職氷河期世代を対象とした公務員試験にはどのような方が合格し、入庁後の待遇はどうなるのでしょうか。

それぞれを詳しく解説します。

就職氷河期世代の公務員試験の採用方針

上記でも触れた通り、就職氷河期世代の公務員試験では「職歴がない(少ない)」「高齢」といった理由だけで不採用になることはありません

個々の能力や適性を細かく審査して合否を決定します。

具体的には、国家公務員の中途採用の場合、以下のような判断基準を踏まえて合否が決定されます。

  • 公務に対する強い関心を持ち、全体の奉仕者として働く熱意を有するか
  • 採用後の業務や研修を通じて、知識やスキルが向上すると見込まれるか
  • 行政課題に取り組む際に必要な論理的思考力や判断力、表現力にかかる基礎的な能力を有するか

就職氷河期世代の採用試験に合格した後の待遇

就職氷河期世代を対象とした公務員試験の採用後は、採用後の人事評価に基づいて適材適所の人事運用が行われます。この際に優秀な職員は柔軟かつ早期に昇任が可能です。

また、自身のキャリアプランの共有を行い、必要な知識・スキルを習得するための機会も得ることができます。

ほかにも、元からいる職員との経験の差を埋め円滑に公務に取り組めるように、研修などを積極的に実施する点も特徴です。

就職氷河期世代向け公務員の採用人数と倍率

現在は就職氷河期世代の採用が積極的に行われているため、公務員になれるチャンスが増えているといえます。

しかし、申込者数も非常に多く、倍率も決して低くはありません。

ここでは、就職氷河期採用の採用人数や倍率を、国家公務員と地方公務員に分けて解説します。

国家公務員の就職氷河期採用の採用人数・倍率

2023年に実施された国家公務員中途採用者選考試験(就職氷河期世代)では、3,345人の受験者に対して、165人が最終合格を果たしています。
倍率で換算すると「約20.3倍」です。

ただし、区分や採用地域によって倍率は大きく異なります。

事務受講者数合格者数倍率
北海道113618.8
東北165918.3
関東甲信越1,4104432.0
東海北陸2741222.8
近畿4691433.5
中国1261210.5
四国92330,6
九州3191619.9
沖縄79419.7

※出典:中途採用者選考試験(就職氷河期世代)|国家公務員試験採用情報NAVI

特に事務区分の試験は倍率が高く、関東甲信越で「約32.0倍」近畿で「約33.5倍」となっています。

一方で技術区分の場合は、倍率が1桁代であるケースがほとんどで、中には倍率1.5倍から2倍程度の地区も存在します。

そのため、事務区分を目指すとなると、倍率20倍以上の試験を突破する必要があると考えておきましょう。

地方公務員の就職氷河期採用の採用人数・倍率

地方公務員も国家公務員と同様、氷河期世代の採用に力を入れています

総務省から公表されたデータによると、令和2年~令和4年における就職氷河期世代に限定した中途採用試験では、合計1,715名が採用されています。

就職氷河期世代が受験可能な中途採用試験に幅を広げると合計8,798名です。

採用数は非常に多いですが、試験の難易度は高倍率な傾向があります。

一例として、令和5年に実施された東京都の「氷河期世代を対象とした採用試験(Ⅰ類B)」の倍率は17.2倍です。
受験者361名に対して21名が合格した結果となっています。

倍率は自治体の募集人数や規模によって大きく変動しますが、決して簡単でないことがわかるでしょう。

※参考:地方公共団体における就職氷河期世代支援を目的とした職員採用試験の実施状況
※参考:試験選考実施状況|試験選考情報|東京都職員採用

【氷河期世代採用】国家公務員試験の概要(令和6年)

それでは、氷河期世代採用の国家公務員試験はどのような日程や制度で行われるのでしょうか。

試験日程

国家公務員の中途採用者選考試験(就職氷河期世代)は例年秋から冬にかけて開催されます。

区分日程
受験申込受付期間令和6年7月下旬
※申込はインターネットにより行ってください
一次試験令和6年10月下旬
一次試験合格発表日令和6年11月下旬
二次試験令和6年12月上中旬
合格発表日令和6年12月下旬

このように、10月末から12月にかけて試験が行われます。
ただし、申込期限は7月下旬となっているため、手続きを忘れないように気を付けましょう。

また、二次試験を受験できる方は一次試験通過者に限られる点に注意が必要です。

受験資格

国家公務員の中途採用者選考試験(就職氷河期世代)の受験資格は、基本的に年齢制限のみです。

具体的には「1966(昭和41)年4月2日~1986(昭和61)年4月1日に生まれた者」が受験資格です。

また、以下のいずれかに該当する方は、受験ができないため注意しましょう。

  • 日本の国籍を有しない
  • 国家公務員法第38条の規定により国家公務員となることができない 
  • 平成11年改正前の民法の規定による準禁治産の宣告を受けている

試験概要

国家公務員の中途採用者選考試験(就職氷河期世代)では、筆記試験を行う一次試験と、人物試験を行う二次試験が実施されます。

それぞれを詳しく解説します。

一次試験

一次試験では「基礎能力試験」と「作文試験」が行われます。

基礎能力試験では、文章理解や数的処理を含む「知能分野」と自然科学や社会科学を含む「知識分野」が各20問出題されます。

マークシート式となっており、計40問を90分で解答する試験です。

一方で作文試験では、試験時間50分でひとつの題に関する作文を作成します。

具体的な文字数は定められていませんが、600字から1,000字程度で作成できるよう対策を行いましょう。

二次試験

二次試験では個別面接が行われます。個別面接は各府省で実施され、事前に作成する面接カードに沿って質問されます。

また「刑務官区分」では「身体検査」「身体測定」「体力検査」が実施されます。

特に体力検査は明確な基準が決められているため、事前に突破できるよう対策をしておきましょう。

試験地

一次試験の開催地は、基本的に以下の9都市です。

試験の区分にかかわらず、受験がしやすい開催地を選択することができます。

  • 札幌市
  • 仙台市
  • 東京都
  • 名古屋市
  • 大阪市
  • 広島市
  • 高松市
  • 福岡市
  • 那覇市

二次試験の個別面接は採用予定機関によって行われるため、受験案内を確実に確認するようにしましょう。

【氷河期世代採用】地方公務員試験の概要(令和6年)

一方で地方公務員の氷河期世代の採用試験は、各自治体ごとに行われます

ここでは東京都の「就職氷河期世代採用試験(1類B・3類)」を例に、詳しく解説します。

試験日程

東京都の令和6年における試験日程は以下の通りです。

「就職氷河期世代採用試験(1類B・3類)」も一次試験と二次試験で構成されています。

区分日程
受験受付期間(インターネット)令和6年8月7日(水)午前10時~8月20日(火)午後3時まで
※受信有効
一次試験令和6年10月6日(日)
一次試験合格発表令和6年11月8日(金)
二次試験令和6年11月30日(土)
合格発表令和6年12月13日(金)

一次試験開催日は10月ですが、受験受付期間は8月中となっている点に留意しましょう。

なお詳細情報は令和6年8月7日公開予定となっています。

受験資格

東京都の「就職氷河期世代採用試験(1類B・3類)」も国家公務員と同様に、年齢制限が課されています

具体的には「昭和45年4月2日~昭和61年4月1日生まれ」「令和7年4月1日現在39歳~54歳」を対象とした試験です。

国家公務員よりも年齢制限が厳しくなっています。

また、以下のいずれかに該当する場合は受験ができない点にも注意が必要です。

  • 日本国籍を有しない
  • 活字印刷文または、点字による出題で対応できない
  • 地方公務員法第16条の欠格条項に該当しない
  • 申込日現在で東京都職員である

試験概要

東京都の「就職氷河期世代採用試験(1類B・3類)」では、筆記試験が行われる一次試験と、口述試験が行われる二次試験が実施されます。

ここではそれぞれを詳しく解説します。

一次試験

一次試験の内容は試験区分「1類B」と「3類」で異なります
それぞれの試験内容は以下の通りです。

【1類B】

試験内容試験の詳細
教養試験知能分野:24題必須回答
知識分野:16題必須回答
専門知識:10題中5題選択回答(2時間30分のマーク式回答)
論文試験1,000字以上1,500字程度の課題式(1時間30分)

【3類】

試験内容試験の詳細
教養試験知能分野:28題必須回答
知識分野:17題必須回答(2時間のマーク式回答)
作文試験600字以上1,000字程度の課題式(1時間20分)

※参考:試験・選考情報(令和4年度実施)|試験・選考情報|東京都職員採用

「1類B」と「3類」の違いは試験の難易度にあります。
1類Bは大卒程度の難易度、3類は高卒程度の難易度です。

3類の試験は教養試験で専門知識が課されず、論文ではなく作文であるため、試験のハードルは低いといえるでしょう。

二次試験

二次試験は一次試験合格者を対象とした口述試験です。

指定された日の午前と午後に1回ずつ、計2回の個別面接が行われます。

事前に作成した面接シートの内容を中心とした試験となります。

氷河期世代向けの公務員試験受付中・受付予定の地域

就職氷河期世代向けの公務員試験は、数多くの自治体で開催されています。

実際に現在募集中もしくは受付予定の都道府県は以下の通りです。(令和6年4月時点)

  • 東京都小平市

その他の地域はこちらをご覧ください。

上記と同様に、都道府県庁以外に各市町村でも数多くの募集が行われているため、随時希望の自治体を確認しましょう。

試験実施予定の地域

また、就職氷河期世代向けの公務員試験を実施予定の都道府県も数多くあります。
具体的には以下の通りです。(令和6年4月時点)

  • 東京都特別区人事委員会

その他の地域はこちらをご覧ください。

上記と同様に、都道府県庁以外に各市町村で募集を行っているケースも多いため、公式ホームページを随時確認することがおすすめです。

なお、地方公務員の採用試験は、自治体によっても異なります。

そのため、各自治体の公式ホームページを必ず確認しましょう。

※参考:地方公共団体における就職氷河期世代支援を目的とした職員採用試験の実施状況

氷河期世代採用の公務員試験概要・対策

就職氷河期世代採用の公務員試験に合格することは決して簡単ではありません

特に一次試験の筆記試験で苦戦する方が多いです。

試験の合格のために特に重要となる分野が「知能分野」です。

知能分野の問題中心の自治体も多く「数的処理」「判断推理」は多くの方が苦手とするため、ここで点数を取れれば合格に近付くことができます。

試験の合格のために有効な対策が「過去問対策」です。
公務員試験は過去問と似通った問題が数多く出題される点が特徴です。

そのため、過去問を中心に解答方法を適切に理解するのが、合格のポイントといえるでしょう。

また、独学での対策が難しい試験が「論文試験」です。
対策が難しい分野であるからこそ、適切な対策方法を理解し、効果的に学習を進めることが重要です。

関連記事:【公務員試験の科目一覧】教養科目と専門科目とは?

公務員への転職を悩んでいる方へ

今回は就職氷河期世代採用の公務員試験について解説しました。

30代や40代の就職氷河期世代の方であっても、公務員に転職することは十分に可能です。

公務員に転職できれば、安定した職場環境や給与の中で仕事ができ、より充実した人生を送ることができるでしょう。

しかし公務員になるには、公務員試験の突破が必須です。
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この記事の執筆者 渡邉新太

渡邉新太(わたなべ あらた)

大学現役時に以下の公務員試験に独学で合格。
・国家公務員一般職
・国税専門官
・東京特別区
・地方上級(地元県庁)

そして、公務員としての勤務を経た後に、フリーランスのWebライターとして独立。
現在は公務員時代の知識や経験を活かして、多くの方の人生の選択に役立てるよう日々奮闘しています。

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