「地方上級ってそもそも何?地方公務員のこと?」
「地方上級ってどんな試験なの?」
「地方上級に合格するとどこで公務員として働けるの?」

こういった疑問をお持ちではないでしょうか?

そこでこのコラムでは、公務員試験の中の「地方上級」について、仕事内容や試験制度、日程などを紹介します。

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公務員試験における「地方上級」とは

地方上級とは、地方公務員試験において「大学卒程度」の方が受験する試験区分のことを指します

地方自治体によっては、独自の名称や制度を使用して公務員試験を実施しています。
例えば、都道府県庁や政令市では「地方上級」「Ⅰ類」など。この名称は、一部の自治体でのみ使用されています。

受けたい自治体によって名称が異なるため、必ず受験案内を確認しましょう。

短大卒程度は「地方中級」、高卒程度を「地方初級」といったりします。
※「地方中級」に該当する試験区分を設けているのはほんの一部の自治体です。

ただ、これらの用語は、単なる公務員試験の受験業界用語です。
自治体側が「地方上級」という名称の試験を行っているわけではありません。

このあたりは、国家公務員の総合職・一般職といった用語と異なります。
国家公務員の場合は、採用後も「あの人は総合職だ」「この人は一般職だ」と言いますが、それは国側がこの総合職・一般職という名称の試験を行っているからです。

本稿では、「大卒程度の都道府県・政令指定都市・特別区(東京23区)の職員採用試験」として説明します

実際の試験区分の名称は、「1~3類」「上級・中級・初級」「大卒程度・高専・短大卒程度・高卒程度」「A・B・C」など自治体によってまちまちです。

なお、これらの区分は、あくまで試験のレベルの目安であって、受験に際しての学歴が要求されるわけではありません。
ほとんどの自治体では、受験の要件は年齢制限だけというのが一般的です。

もっとも、神戸市のように一部自治体では、学歴を受験の要件に設定しているところもあります。
各自治体の受験案内で確認するようにして下さい。

〜政令指定都市・特別区(東京23区)とは〜
政令指定都市とは、地方自治法で「政令で指定する人口50万以上の市」と規定されている都市のことです。
都道府県と同等の行財政能力などを有していることが求められます。
2020年時点では20都市が指定を受けており、居住人口は全人口の約2割を占めます。
政令指定都市は、住民に最も身近な自治体(基礎自治体)として、一般の市と同様の行政サービスの提供に加え、都道府県が行っている権限・財源が移譲されます。
例えば、保健や福祉、都市計画などについて市が独自に実施できる行政サービスの幅が広がります。
政令指定都市は区を設置して区制を施行します。
この区は特別区(東京23区)と区別して「行政区」と呼ばれています。
特別区(東京23区)とは、独立した法人格を持つ「特別地方公共団体」です。
したがって、特別区は市と同様に固有の事務処理権限を有し、議会をもっています。

地方上級と市役所の違いは?

地方上級と市役所の違いは、政令指定都市か、政令指定都市以外の違いになります。

政令指定都市の大卒区分試験を地方上級と指しますが、政令指定都市以外の市役所職員採用試験のことは「市役所試験」といいます。

「地方上級」の仕事内容とキャリアパスについて

職務内容

地方公務員は、担当業務の内容から基礎自治体と広域自治体の2つに分けられます。

政令指定都市・特別区(東京23区)は基礎自治体に該当します。
住民票や戸籍登録、各種諸証明の発行、生活保護、健康管理、消防、ごみ処理、まちづくり、上下水道の管理、公園や緑地の整備、各種施設(保育所、小中学校など)の運営管理といった、住民の日常生活に密着した基礎的行政サービスを担います。

都道府県は広域自治体に該当します。
総合的な開発、治山・治水事業、環境問題、産業振興、道路・河川の管理、警察、義務教育・社会福祉の水準維持、国との関係調整事務など、市町村を超えて処理すべき事務や都道府県全体で統一すべき業務といった広域的行政サービスを担います。

キャリアパス

国家公務員は、日本全体や外国との交渉まで視野にいれたダイナミズムがあり、特定の分野に特化したスペシャリストとして専門性を極めていきます。

これに対して、地方公務員は、1つの都道府県や市区町村とエリアは限定されるものの、3~4年おきに異動を繰り返し、採用された自治体のゼネラリストとして活躍することが期待されます。

特に、「地方上級」に合格して採用されると、将来の幹部候補生とされ、責任あるポストに配属され、昇進のスピードや昇進できる上限、給与など待遇面で優遇されることが少なくありません。

昇任・昇級に関しては、庁内で実施される昇任試験に合格することが必須の自治体、確たる昇任試験といった制度を実施していない自治体など、様々です。

ただ、自身のスキルアップを図るための自己研鑽は必要です。
この点、どの自治体も研修制度が充実しているのは共通しています。

地方公務員法で職員には研修を受ける機会が保障されています。

職員には、その勤務能率の発揮及び増進のために、研修を受ける機会が与えられなければならない。(地方公務員法 第39条1項)

また、各自治体(都道府県・市町村・特別区)は1つ1つが別個独立した法人(会社のようなもの)です。
ですから、採用後に自治体をまたいでの異動はありません。

新型コロナ禍の下、各自治体の主体的な取り組みの重要さが非常にクローズアップされました。

憲法が予定している地方自治のあるべき姿へと舵取りがなされている中、地方上級に合格して、自治体の幹部候補生として働くことは益々やりがいを感じる仕事となっていくのではないでしょうか。

採用区分

地方公務員には、採用後の職務内容に応じて様々な採用区分が設けられています。

なお、設けられている採用区分の種類や名称は自治体ごとに異なりますので、受験案内で確認するようになさってください。

事務系(行政系)

行政運営の事務処理や管理の役割を担います。
学校事務や警察事務といった配属先が採用試験時期から限定されているものもあります。

専門職

担当職務に専門性が要求され、配属先が限定される心理職、福祉職、技術職(土木・建築・電気・機械・化学・農業・林業など)といった専門職があります。
専門職には、一定の学科の履修や資格(臨床心理士や心理判定員、保健師や社会福祉士など)を受験資格とされる場合があります。

地方上級の試験概要は?

地方上級(行政職)の受験資格

受験資格として学歴要件が課される自治体は限られています。
受験案内に大学卒業程度とあっても、あくまで筆記試験の内容が「大卒程度」のレベルが出題されるにすぎません。

受験資格として注意が必要なのは、年齢制限です。

大卒程度の年齢上限は大半の自治体で30~35歳前後に設定されています。
中には、59歳まで受験可能な試験区分を設けている自治体もあります。

また、技術職、福祉職、心理職などでは、特定の学科の終了や資格免許証を要求されるのが一般的です。

地方上級の試験日程

公務員試験は、試験日程さえ被らなければ、併願できるのが基本です。

したがって、地方上級同士も試験日程が違えば併願できるので、どの自治体がいつ試験を実施するのかは重要ポイントになります。

2023年度の地方上級の一次試験の日程は以下の通りです。
いずれも大卒程度の行政職(事務職)です。

日付主な地方上級試験
4月30日(日)特別区Ⅰ類(一般方式・新方式)
東京都Ⅰ類B(一般方式・新方式)
6月18日(日)地方公務員上級(行政職・心理職・福祉職・技術職)

※北海道、東京都、特別区、大阪府、大阪市は他の地方上級とは別日程で一次試験が実施されています。
※以上とは別に「新方式」と呼ばれる筆記試験の負担を軽くした採用方式を実施するところが増えています(この点については後述します)。

地方上級試験日程まとめ
地方上級(47都道府県・20政令指定都市・特別区)のうち、
・北海道、東京都、特別区、大阪市、大阪府以外は毎年6月第4日曜に一次試験が実施される
・東京都と特別区、大阪府と大阪市は同一日程で実施されるので併願できない
・「新方式」と呼ばれる、筆記試験の負担を軽くした採用方式を実施する自治体が増えている

「地方上級」の試験制度~筆記試験と面接試験~

地方上級の試験制度とは?筆記試験・面接試験で合否が決まる。筆記試験の択一試験は「全国型」「関東型」「中部・北陸型」「独自型」の4つに分かれる。試験内容は自治体によって異なるため受験したい自治体の試験内容をチェックする。

地方上級も他の公務員試験と同様に、「筆記試験」と「面接試験」によって合否が決まります

筆記試験には、「教養択一」「専門択一」「教養記述」「専門記述」があります。

ですが、全ての地方上級でこの4パターンが出題される訳ではなく、自治体によって異なります。

大まかな傾向として、教養択一、専門択一、教養記述は多くの自治体で出題されますが、専門記述が出題される自治体はごく少数派です。

教養択一 ◎教養記述 ◎
専門択一 ◎専門記述 △

択一試験は主に4つの型に分かれる

ほとんどの地方上級の一次試験は同一日程で実施されます(ここしばらくは6月第4日曜に実施されています)。

教養記述は各自治体独自の課題が出題されますが、択一試験は出題科目・出題数によって「全国型」「関東型」「中部北陸型」「独自型」に分かれます

基本となるのは「全国型」で、「関東型」「中部北陸型」は「全国型」の問題に問題を足し引きして若干アレンジされるだけです。
例えば、関東型の一般知能は全国型の25問から21問だけを採用していますし、一般知識は全国型の25問に4問加えて29問にしているわけです。

種類教養択一専門択一
全国型一般知能25問(全問必須)
一般知識25問(全問必須)
40問(全問必須)
関東型一般知能21問(全問必須)
一般知識19問(29問から選択)
40問(50問から選択)
中部北陸型一般知能25問(全問必須)
一般知識25問(全問必須)
40問(50問から選択)

※北海道、東京都、特別区、大阪府、大阪市は他の地方上級とは別日程で一次試験が実施され、全く独自の試験問題を使用しています。

各自治体が採用する試験形式の型の一覧

いずれも地方上級・大卒程度・行政(事務)系の択一式試験の出題形式です。

以下は2019年度のデータに基づくもので、年度によって変わる可能性があります。

 
都道府県 教養科目 専門科目
北海道 独自型
青森県 全国型 全国型
岩手県 全国型 全国型
宮城県 全国型 全国型
秋田県 全国型 全国型
山形県 全国型 全国型
福島県 全国型 変形型
茨城県 関東型 関東型
栃木県 関東型 関東型
群馬県 関東型 関東型
埼玉県 関東型 関東型
千葉県 関東型 関東型
東京都 独自型 記述式
神奈川県 関東型 変形型
山梨県 関東型 関東型
長野県 関東型 関東型
新潟県 関東型 関東型
岐阜県 中部・北陸型 中部・北陸型
静岡県 関東型 関東型
愛知県 中部・北陸型 中部・北陸型
三重県 中部・北陸型 中部・北陸型
富山県 中部・北陸型 中部・北陸型
石川県 中部・北陸型 中部・北陸型
福井県 中部・北陸型 中部・北陸型
滋賀県 全国型 全国型
京都府 総合政策 変形型 全国型
法律 変形型 法律型
経済 変形型 経済型
大阪府事務行政(22-25) 独自型
兵庫県 全国型 全国型
奈良県 全国型 全国型
和歌山県  法律 全国型 法律型
経済 全国型 経済型
総合A・B 全国型 変形型
鳥取県 全国型 全国型
島根県 全国型 全国型
岡山県 全国型 全国型
広島県 行政 全国型 全国型
法律 全国型 法律型
経済 全国型 経済型
山口県 全国型 全国型
徳島県 全国型 その他
香川県 全国型 全国型
愛媛県 全国型 全国型
高知県 全国型 全国型
福岡県 全国型 全国型
佐賀県 全国型 全国型
長崎県 全国型 全国型
熊本県 全国型 変形型
大分県 全国型 全国型
宮崎県 全国型 全国型
鹿児島県 全国型 全国型
沖縄県 全国型 全国型

政令指定都市
特別区

教養科目 専門科目
札幌市 変形型
仙台市 全国型 全国型
さいたま市 全国型 全国型
千葉市 全国型 全国型
特別区 独自型 独自型
横浜市 変形型 なし
川崎市 総合筆記試験(知能分野と専門科目)
相模原市 変形型 なし
新潟市 全国型 全国型
静岡市 事務A 全国型 なし
事務B なし 全国型
浜松市 全国型 全国型
名古屋市 行政一般 全国型 なし
法律 変形型 法律専門
経済 変形型 経済専門
京都市 変形型 全国型
大阪市事務行政(22-25) 独自型
堺市 変形型 全国型
神戸市 変形型 変形型
岡山市 変形型 全国型
広島市 法律 全国型 法律型
経済 全国型 経済型
行政 全国型 全国型
北九州市 全国型 全国型
福岡市 全国型 全国型
熊本市 全国型 全国型

※法律型・経済型…法律科目・経済科目中心の出題形式
※変形型…いずれかの型をアレンジした出題形式、あるいはどの型にも属さない独自の出題形式
※独自型…北海道、東京都、特別区、大阪府、大阪市は他の地方上級とは別日程で一次試験が実施され、全く独自の出題形式を使用

各試験形式ごとのより詳細な出題傾向と対策については、下記コラムを参照下さい。
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この記事の著者

小林 美也子講師 (講師紹介はこちら


大手資格予備校・地方自治体・企業・教育機関等様々な場所で,長年にわたり公務員試験,宅建試験の受験指導,職員研修を行う。

難解な法律用語は平易な表現とたとえ話でかみ砕き,理解しにくい内容はオリジナルの挿絵でわかりやすく説明する。

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