【公務員試験】地方上級の試験科目や難易度、対策法を型ごとに解説
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「地方上級」の公務員試験の択一試験は、主に出題科目・出題数によって「全国型」「関東型」「中部北陸型」「独自型」の4つに分かれます。
そこでこのコラムでは、地方上級の試験科目や難易度、対策法を型ごとにお伝えしていきます。
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「地方上級」公務員試験の概要
地方上級も他の公務員試験と同様に、「筆記試験」と「面接試験」によって合否が決まります。
筆記試験には、「教養択一」「専門択一」「教養記述」「専門記述」があります。
ですが、全ての地方上級でこの4パターンが出題される訳ではなく、自治体によって異なります。
大まかな傾向として、教養択一、専門択一、教養記述は多くの自治体で出題されますが、専門記述が出題される自治体はごく少数派です。
区分 | 教養択一 | 教養記述 | 専門択一 | 専門記述 |
---|---|---|---|---|
国家総合職 | 30題 | ー | 40題 | 2題 |
国家一般職 | 30題 | 1題 | 40題 | ー |
国家専門職 | 30題 | ー | 40題 | 1題 |
地方上級(全国型) | 50題 | 1題 | 40題 | ー |
東京都(Ⅰ類B一般方式) | 40題 | 1題 | ー | 3題 |
東京特別区 | 40題 | 1題 | 40問 | ー |
市役所(政令指定都市以外) | 〇 | 〇 | ー | ー |
警察官・消防官 | 〇 | 〇 | ー | ー |
※自治体や試験区分によっては独自の出題形式をとる試験もあります。 ※区分や自治体によって試験内容が異なります。 |
択一試験は主に4つの型に分かれる
ほとんどの地方上級の一次試験は同一日程で実施されます(ここしばらくは6月第4日曜に実施されています)。
教養記述は各自治体独自の課題が出題されますが、択一試験は出題科目・出題数によって「全国型」「関東型」「中部北陸型」「独自型」に分かれます。
基本となるのは「全国型」で、「関東型」「中部北陸型」は「全国型」の問題に問題を足し引きして若干アレンジされるだけです。
例えば、関東型の一般知能は全国型の25問から21問だけを採用していますし、一般知識は全国型の25問に4問加えて29問にしているわけです。
教養択一 | 専門択一 | |
---|---|---|
全国型 | 一般知能25問(全問必須) 一般知識25問(全問必須) | 40問(全問必須) |
関東型 | 一般知能21問(全問必須) 一般知識19問(29問から選択) | 40問(50問から選択) |
中部北陸型 | 一般知能25問(全問必須) 一般知識25問(全問必須) | 40問(50問から選択) |
※北海道、東京都、特別区、大阪府、大阪市は他の地方上級とは別日程で一次試験が実施され、全く独自の試験問題を使用しています。
地方上級の地方公務員試験の難易度
区分(都道府県) | 受験者数 | 最終合格者数 | 倍率 |
---|---|---|---|
大学卒業程度試験 | 81,091 | 19,422 | 4.2倍 |
短大卒業程度試験 | 6,829 | 1,717 | 4.0倍 |
高校卒業程度試験 | 44,874 | 8,243 | 5.1倍 |
公務員試験内容や倍率で見る地方上級の難易度は、地方公務員試験の「初級」「中級」と比べて高い傾向にあります。
総務省が発表した令和4年度地方公共団体の勤務条件等に関する調査結果によると、地方上級の倍率は、4.2倍でした。高卒区分より低く、短大卒区分よりは高い結果となっています。
ただし、大卒程度に比べ高卒区分の採用試験内容が難しい、というわけではありません。高卒区分の採用予定者数が他の区分より少ないため、倍率が高い傾向にあります。
試験内容や倍率は自治体によって異なるため、希望する自治体の倍率を確認するとよいでしょう。
【地域別】地方上級試験の出題科目と対策
【全国型】
全国型は、教養試験は50問、専門試験は40問で、ともに全問必須回答です。
教養科目50問(全問必須) | 専門科目40問(全問必須) |
【一般知能 25問】 ※一般知能の内訳 数的処理 16問 文章理解 9問(現代文③、英文⑤、古文①) 【一般知識 25問】 ※一般知識の内訳 人文科学 7問 自然科学 7問 社会科学 11問 | 憲法④、民法④、 行政法⑤、刑法②、 労働法②、経済原論⑨、 財政学③、政治学②、 行政学②、国際関係②、 社会政策③、経営学② |
合格ラインは公表されていませんし、自治体によっても異なりますが、おおむね6割取っていれば合格できると考えていいでしょう。
ただ、教養科目・専門科目ともに最低4割はキープできるようにしてください(いわゆる足切りライン)。
専門科目の勉強に時間を取られがちなのが受験性の一般的な傾向ですが、教養科目で足切りされないように注意が必要です。
合否判定における、各試験の配点を公表している自治体もありますので、志望する自治体の受験案内をネットで調べてみてください。
どの自治体も終了した採用試験の受験案内をネット上で公開しています。
教養科目では、出題数の多い数的処理・英文で得点できれば、4割キープは確実です。
したがって、数的処理・英文の勉強から始めましょう。
あとは、勉強したことのある科目を過去問中心に勉強して、数的処理・英文で得点できない分を補うように作戦を立てることです。
古文は他の職種ではほぼ出題されないので、ぶっつけ本番で大丈夫です。
専門科目の刑法・労働法は、裁判所事務官併願者で刑法選択、労働基準監督官併願者でない限りは捨てるべきです。
特に地方上級の刑法は、出題数が少ない・難易度が高いという非常にコスパの悪い科目と言えます。
出題の多い経済原論・行政法は得点源とすべきです。
経済原論も行政法も「最初はとっつきが悪いけど最終的には得点源になった」と異口同音に語る合格者が多い科目です。
社会政策は難易度も低く、時事対策も兼ねられるので勉強すべき科目でしょう。
【関東型】
関東型は、教養試験・専門試験ともに50問中40問選択回答です。
以下がその内訳です。
教養科目50問(40問選択回答) | 専門科目50問(40問選択回答) |
【一般知能 21問】(必須回答) ※一般知能の内訳 数的処理 12問 文章理解 9問(現代文③、英文⑤、古文①) 【一般知識 29問】 ※一般知識の内訳 人文科学 9問 自然科学 7問 社会科学 13問 | 憲法④、民法⑥、 行政法⑤、刑法②、 労働法②、経済原論⑫、 財政学④、政治学②、 行政学②、国際関係③、 社会政策③、経営学②、 経済史①、経済政策② |
合格ラインや足切りライン、基本的な対策方法は、全国型を参考にしてください。
教養科目においては、数的処理の出題数が少ないこと、人文科学・社会科学の出題数が多い(合計で22問!)ことが大きな特徴です。
したがって、数的処理が苦手なままでも、人文科学・社会科学には力を入れるべきです。
特に一般知識は29問中19問だけ選択すればいいので、積極的に捨て科目を作って効率よく勉強するようにしてください。
専門科目も、選択回答なので得意分野で勝負するようにしましょう。
地方上級の経済原論は総じて難易度は高めなうえ、関東型は12問も出題されます。
ですが、科目のバリエーションが多く選択回答であることを利点として、コスパのいい科目で勝負しやすいのが関東型の特徴といえます。
【中部北陸型】
中部北陸型は、教養試験が必須回答、専門試験は選択回答です。
教養科目50問(全問必須) | 専門科目50問(40問選択回答) |
【一般知能 25問】 ※一般知能の内訳 数的処理 16問 文章理解 9問(現代文③、英文⑤、古文①) 【一般知識 25問】 ※一般知識の内訳 人文科学 8問 自然科学 7問 社会科学 10問 | 憲法⑤、民法⑦、 行政法⑧、刑法②、 労働法②、経済原論⑧、 財政学③、政治学②、 行政学②、社会学②、 国際関係②、社会政策②、 経済政策②、経済事情③ |
合格ラインや足切りライン、基本的な対策方法は、全国型を参考にしてください。
教養科目においては、関東型ほどではないにせよ、人文科学・社会科学の出題数が多いので、やはり力を入れましょう。
専門科目では、憲法・民法・行政法の3大法律科目だけで20問も出題されるのは中部北陸型の大きな特徴です。
しかも、地方上級におけるこれら3科目は難易度も高くありませんし、併願可能な他の職種でも出題される科目です。
ですから、憲法・民法・行政法の勉強に力を入れるべきです。
難易度が高い経済原論も出題数は、全国型や関東型よりも出題数が少なめです。
対して、経済政策・経済事情という他の型にはない出題があります。
ですが、経済政策は、経済原論と財政学と範囲が被りますし、経済事情は、財政学の時事版といった感じです。
したがって、経済原論と財政学は基本的な問題に対応できる程度の勉強をし、加えて時事対策をしておけば、3大法律科目と相まって合格ラインを狙うことが可能です。
地方上級の教養記述は重要度が高い
ほとんどの地方上級では、教養記述が出題されます。
名称は、小論文、論文試験など自治体によって異なりますが、与えられたテーマについて1、000〜2、500字ほどの文章を書くのが一般です。
教養記述は、与えられるテーマによって、作文(自分の想い・考えを記述するもの)と論文(社会の問題についての解決策などを記述するもの)とに分けられます。
教養記述は、地方上級については、合否判定における配点が高い傾向にあることに注意が必要です。
当該自治体特有の課題が出題されるので、受験自治体の現状、問題点、解決策について準備しておくことが必須となります。
これは、面接対策にも通じます。
地方上級試験の面接試験
地方上級の面接試験は、様々なバリエーションがあります。
一次試験から筆記試験と併せて面接試験を実施する自治体、面接試験を形を変えて2回、3回と実施する自治体、形式も、個人(個別)面接、集団面接、集団討論、グループワーク、プレゼンテーションなど多岐に渡ります。
公務員試験も就職試験である以上、面接重視・人物本位です。
面接試験にも十分な対策を講じておくことが、内定獲得には必須であることを忘れないようにしましょう。
新方式・就職氷河期
近年、大阪府や大阪市、北海道のように従来の公務員試験とは全く異なる採用試験を実施する自治体や、通常の採用形式(一般方式と呼ばれます)とは別に、「新方式」といわれる採用方式を実施する自治体が増加傾向にあります。
いずれも、「筆記試験」の負担を軽くして、民間企業と併願しやすくする採用形式を実施することが一番の狙いです。
- 東京都(新方式) 併願不可
- 神奈川県(秋季チャレンジ)
- 長野県行政B(SPI方式) 併願不可
- 京都市(京都方式) 併願不可
- 滋賀県(アピール型) 併願不可
- 鳥取県(キャリア総合コース) 併願不可
- 山口県(チャレンジ型) 併願可
- 神戸市(デザインクリエイティブ枠・特別枠) 併願不可
- 佐賀県(行政特別枠)
など、「新方式」の名称も試験内容も、自治体によって様々です。
「新方式」の試験日が一般方式と同一日程か別日程かで、一般方式と併願できるか否かが異なります。
さらに、雇用環境が極めて厳しい時期に就職活動を行い、正規雇用の機会に恵まれなかった就職氷河期世代の方を対象とした採用試験が国家公務員、地方公務員ともに実施されています。
受験資格のポイントは年齢(2023年現在30代後半〜40代後半)ですので、受験案内で確認するようにしてください。
いかがでしたでしょうか。
数年前に比較すると、地方上級の採用形式は驚くほどバリエーションが豊富になってきています。
興味のある自治体を見つけたなら、ぜひチャレンジしてみてください。
最後まで読んでくださってありがとうございます。
本項がみなさんの就職・転職活動の選択肢を広げることに少しでも貢献できたなら幸いです。
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