競売不動産の取扱を専門に扱う唯一の資格「競売不動産取扱主任者」は、一般消費者の競売物件購入のニーズが高まる中で今注目されている資格です。

今回は、競売不動産取扱主任者の仕事内容や働き方、どのような業界で活躍できるのか、資格の需要や取得のメリットについて解説していきます。

競売不動産取扱主任者の受験をお考えの方はぜひチェックしてみてください。

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競売不動産取扱主任者とは

競売不動産取扱主任者とは、不動産競売のプロとして競売に関するアドバイス及びサポートをするために必要な知識・能力を持っていることを示す民間資格です。

競売不動産とは、購入したものの何らかの理由で支払いがなくなり差し押さえられた不動産のことをいいます。

近年の不動産取引の透明化、不動産投資市場が盛り上がる中で、競売不動産に対しても一般消費者の注目が高まってきています。

しかし、競売不動産の購入や代行は一般流通物件とは異なる点も多く、トラブルが多いのも現状です。

また、競売代行については法律の制限もなく、宅建業者でなくても行うことができます。

このことを背景に、競売不動産の購入を検討する一般消費者が安心して取引を行うことができるようにサポートできる能力を持った人材、一定の知識・能力の判断基準となる資格として2011年に誕生したのが競売不動産取扱主任者資格です。

競売不動産取扱主任者の仕事内容・働き方

競売不動産取扱主任者の仕事内容・働き方として、代表的な以下の4つを紹介します。

  • 不動産業界での競売不動産取扱主任者の仕事内容
  • 金融業界での競売不動産取扱主任者の仕事内容
  • 士業での競売不動産取扱主任者の仕事内容
  • ADR調停人の基礎資格として

競売不動産取扱主任者の主な役割は、不動産競売の専門家として一般消費者に競売に対するアドバイス・サポートを行うことです。

そのため、不動産業界に携わる人の取得が多い資格ですが、一方で不動産競売に関わる金融機関や、司法書士、不動産鑑定士などの士業の分野でも取得する人が一定数います。

まずは、競売不動産取扱主任者の仕事内容と資格取得者の働き方についてご紹介していきます。

不動産業界での競売不動産取扱主任者の仕事内容

競売不動産取扱主任者が主に活躍するのは、不動産会社や不動産関連企業などの不動産業界です。

お買い得に取得できる可能性のある競売物件の認知が高まっている中で、知識がないためにどう手に入れたら良いのかわからないという一般消費者は多くいます。

実際に、競売不動産は一般流通物件とは異なることが多く、知識がないとトラブルに巻き込まれたり、購入に失敗してしまうケースもあります。

一般の消費者が安心して競売不動産の取得をするためには、法律の知識と実務能力を持った人材が必要です。

競売不動産取扱主任者は不動産競売の専門家、頼れるアドバイザーとして消費者をサポートします。

物件調査を行ったり、安全な取引となるよう入札全般のアドバイス・フォローをしたります。

また、宅建士として働く人が不動産競売の知識を得て、新規開拓・業務の幅を広げる目的で取得する場合もあります。

営業個人としての競売不動産取扱主任者の取得は、顧客の信頼の獲得に繋がります。

事業全体としても、一般流通物件に加えて競売不動産の知識を習得することで、不動産のほぼ全ての取引への対応が可能になり、地域不動産のプロフェッショナルとして市場で優位になりやすくなるでしょう。

競売不動産の取扱いは不動産業界でも未だニッチな分野であるために、個人規模、事業規模においても差別化を図る目的で資格は有効活用できます。

金融業界での競売不動産取扱主任者の仕事内容

金融業界で競売不動産取扱主任者を取得する場合は、その知識がローン相談、融資、債権回収、土地評価などの分野で活かされます。

近年の法改正により、競売物件でも住宅ローンが組めるようになり、金融機関のローン相談においても競売不動産に関する知識を持った専門家が必要とされています。

実際にメガバンク・首都圏の地方銀行・信用金庫等でも競売物件の購入者向け融資の検討、実行が増えてきました。

一方で、競売物件に関わる融資は未だに多くの金融機関が消極的な分野であり、競売物件に対するローン案件に取り組んでいる金融機関は全体的にみると少ないのが現状です。

担当者の知識不足により、一般消費者が門前払いされるケースもあります。

資格を通して正しい知識を身に着けることによって、適切な融資の相談を行うことが可能になり、新たなビジネスチャンスを獲得したり、ローン案件のルート拡大がなされることが期待されます。

士業での競売不動産取扱主任者の仕事内容

競売不動産取扱主任者資格は、司法書士、弁護士、不動産鑑定士、行政書士などの士業の分野でも活用が期待されており、受験者の約1~2割は士業が占めています。

不動産競売は士業の扱う分野とも関連し、競売ローンの活用(司法書士)、占有者退去の交渉(弁護士)などは、専門家でないと対処できないこともあります。

競売不動産取扱主任者資格を持っていることで、競売にも精通していることを示し、問い合わせ窓口となることで業務の幅を広げ顧客を獲得することができるでしょう。

また、競売不動産取扱主任者試験は民法や民事執行法など法律からの出題が多いため、法律家である弁護士、司法書士、不動産に関わる法律を熟知している不動産鑑定士は対策が容易であり、取得しやすいというメリットもあります。

合格後の実務講座では、不動産関係・金融関係の業種との交流もあり、その中で仕事の幅を広げていくことも可能です。

ADR調停人の基礎資格として

競売不動産取扱主任者は、平成29年「不動産ADR調停人」として認証を受け、指定研修(20時間)を受講し、登録をするとADR調停人となることができます。

ADR(裁判外紛争解決手続)とは、争いが生じた際に裁判によることなく法的なトラブルを解決する手法、手段のことです。

ADR調停人は、中立的な立場での交渉の提案、占有者解除において話し合いによるトラブル解決を担うことができます。

競売不動産取扱主任者がADR調停人となる主なメリットは2つ。

競売全般・明渡・任意売却等に関するトラブル解決において報酬を得ることができるほか、立ち退き交渉などをきっかけとして、買請け人から管理やリフォームの依頼を得るなどの新規案件の受注も期待できます。

競売不動産取扱主任者は需要がある?

競売不動産取扱主任者の取得にあたっては、その資格の価値や取得後の需要についても気になるところです。

また、競売不動産取扱主任者は「意味がない」と言われることがあり、取得に躊躇してしまう場合もあるでしょう。

ここからは、競売不動産取扱主任者の需要と資格取得のメリットについてお話していきます。

不動産競売市場の拡大により需要が伸びる可能性がある

競売不動産取扱主任者資格は、競売不動産を専門に扱う唯一の資格として今後の需要の拡大が期待されています。

競売物件はかつてローン設定ができず、現金での購入が中心であり、購入者は一定以上の金融資産を持つ人に限られていました。

しかし現在はローンでの購入が可能。

競売物件は一般流通物件より比較的低価格で購入できるため、購入を希望する人が増えてきています。

金融資産の少ない一般消費者層も加わり、昨今の不動産投資等の不動産需要を受け、競売市場への注目度は高まってくるでしょう。

しかし、競売不動産は一般流通物件とは異なる点が多いため、トラブルが発生しやすく、一般消費者の購入は一定のリスクがあります。

宅建業法が適用される一般物件とは異なり、裁判所は仲介の立場はなく、物件の調査は自己責任で内覧もできません。

市場が広がっていく中、一般消費者には不動産競売の専門家による一定のサポートが必要であり、その知識や能力を持つことを示す競売不動産取扱主任者の資格の需要も増大していく見込みです。

競売不動産取扱主任者資格のメリット

競売不動産取扱主任者は、取得することによってさまざまなメリットが考えられます。

不動産競売を扱う不動産業の実務家にとっては、知識の担保となり、不動産のプロフェッショナルとして顧客からの信頼を得やすくなるでしょう。

また、入札して落札するという通常業務の範囲内だけでなく、不動産競売の一連の流れを把握できるため、実務の更なるブラッシュアップにも役立ちます。

実務を経験していない企業や個人にとっては、市場参入への足掛かりとして基礎知識の習得に繋がります。

資格を習得することによって、新たなビジネスチャンスが手に入るのです。

一般消費者・大家・投資家が取得するメリット

一般消費者・大家・投資家にも、競売不動産取扱主任者の取得のメリットがあります。

近年、不動産投資が盛り上がっている中で、不動産を割安で入手できる競売不動産も注目されてきています。

競売物件は市場価格より1.5〜3割程度安く入手することが可能というデータもあり、見逃せない市場であることは多くの方が実感しているでしょう。

しかし、知識がない初心者では競売による物件の入手はリスクが高く、個人での入札も未だ少ないのが現状です。

その中で、体系的に不動産競売について学ぶことができる競売不動産取扱主任者の学習は有効であり、資格の取得を通して正しい知識を得て市場に乗り込むことができます。

学生・若者が取得するメリット

競売不動産取扱主任者は、学生や若者の資格取得も増加しています。

競売不動産は、不動産業界・金融業界においても未だニッチなジャンルのため、資格を取得していると目を引きやすいという特徴があります。

不動産業界・金融業界へ就活をする際には、宅建やFPなどの資格と合わせて取得しておくことができ、他のライバルとの差別化を図ることができ、アピールポイントとなるでしょう。

また、競売不動産取扱主任者は、宅建の知識に加えて民事執行法などの専門知識を学びます。

宅建の知識さえあれば新たに覚える分野は多くはないため、宅建合格者であれば比較的取得は容易です。

資格の合格に有効期限はないため、時間のある学生のうちに集中して取り組むことで、就活や将来の活躍に備えておくことができます。

競売不動産取扱主任者の取得が「意味ない」と言われる理由

競売不動産取扱主任者は、時として「取得しても意味がない」と言われることがありますが、その内容についてはご自身でよく検討する必要があります。

競売不動産取扱主任者資格が意味ないと言われる理由は、

  • 独占業務がない
  • 容易に取得が可能というイメージがある
  • 実務の場で資格を活かすことができない

というものが考えられます。

競売不動産は基本的に資格がなくても誰でも取り扱うことができ、競売不動産取扱主任者には、宅建士のようにその資格がなければ業務を行うことができないという「独占業務」がありません。

そのため、意味がないと言われることがありますが、それだけを持って資格の価値がないというのは誤りです。

独占業務がなくても実務に役立てられる資格や、就職・転職で有利となる資格はあり、競売不動産取扱主任者も資格を保持していることが、実務力の向上や一定の能力を担保することに繋がっています。

また、競売不動産取扱主任者は取得が容易なイメージがあるため「誰でも取れる」=「意味がない」と考える人もいます。

しかし、宅建士の資格合格者の受験が多く、その中でも半数以上の人が合格できない試験であること、法律を熟知し、体系的に不動産競売について理解しなければならないことを考えると、決して簡単な試験ではありません。

合格者は、不動産競売についての一定の知識を身に着けた専門家だと言えます。

競売不動産取扱主任者に限らず、表面的な学習だけでは実務において必要な知識を全て網羅することはできないため、資格を取得したのに実務でうまく活用ができないという悩みが出てくることもあります。

資格取得は少なくとも知識面での充実や顧客の信頼に繋がり、実務に役立つものです。

専門家としての実務力は、資格取得と経験との相乗効果で磨いていくことが大切です。

競売不動産取扱主任者になるには

競売不動産取扱主任者になるには、年1回の試験に合格後、主任者登録をする必要があります。

競売不動産取扱主任者試験に合格する

競売不動産取扱主任者になるためには、年一回の不動産競売流通協会主催の試験への合格が必要です。

試験に受験資格はなく、誰でも受験することができます。

試験日程は例年12月の初旬、全国約14箇所の会場で実施されます。内容は不動産競売の実務、裁判所資料の理解、関連する法律などから50問出題され、4肢択一のマークシート方式で解答をします。約7割の正答率で合格でき、合格率は30〜40%ほどです。

受験資格なし(ただし登録には宅建試験合格が必要)
試験日程例年12月初旬
出題形式4肢択一・マークシート方式(50問)
試験地全国11~14会場
願書配布期間例年8月1日~10月31日

競売不動産取扱主任者を名乗るには登録が必要

誰でも受験することができる競売不動産取扱主任者試験ですが、主任者を名乗って助言や代行を行ったり、名刺に競売不動産取扱主任者と記載するためには主任者登録が必要です。

主任者登録は除外要件に当てはまらないことのほか、宅地建物取引士資格合格者でなければ登録をすることができません。

登録要件を満たしている場合は、春期と秋期に行われる競売不動産取扱主任者登録講習を受講し、終了すると主任者登録がなされます。

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この記事の監修者 横田 政直 講師

横田 政直 講師 (講師紹介はこちら

1992年 中央大学 法学部卒業
2006年 専修大学大学院修了
2001年 宅地建物取引士試験合格
2018年 行政書士試験合格
2019年 競売不動産取扱主任者試験合格
2020年 賃貸不動産経営管理士試験合格

延べ20年近くにわたり宅建の企業研修、大学の課外授業、予備校での授業、個人レッスンを通して1,000名以上の合格者をサポートしてきました。
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