「貸金業務取扱主任者の資格を取っても、どんな仕事で役立つかわからない…」などと思っていませんか?

今回は貸金業務取扱主任者資格とはどんな資格で、資格を持っていれば何ができてどんな仕事に活かせるのか、ご紹介します。

今後のキャリアに貸金業務取扱主任者資格取得を検討している方は、ぜひご覧ください。

貸金業務取扱主任者とはどんな資格?

貸金業務取扱主任者は、国家資格の1つです。

当初は民間資格でしたが、2010(平成22)年から国家資格となりました。
現在は年1回の試験を受けて合格し、登録手続きを済ませれば「貸金業務取扱主任者」を名乗れるという決まりです。

民間資格が国家資格に切り替わった理由の1つに、違法金融業者に関する問題があります。貸金業法をはじめとした関連法規に関する知識や、コンプライアンス意識が薄い事業者が法外な貸付をしていたことが深刻な社会問題になったのです。このような背景もあり、貸金業者に対する統制を強め、消費者を保護する必要性が生じました。

貸金業務取扱主任者の役割

貸金業法には「貸金業者は、営業所又は事務所ごとに、貸金業務取扱主任者を置き、当該営業所又は事務所において貸金業の業務に従事する使用人その他の従業者に対する助言又は指導で、これらの者が貸金業に関する法令の規定を遵守してその貸金業の業務を適正に実施するために必要なものを行わせなければならない。」と定められています。

つまり、貸金業務取扱主任者には「法令遵守がきちんと行われているかを監視する企業内の責任者」としての役割が求められています。

また、貸金業者は貸金業務取扱主任者がこうした助言及び指導の職務を適切に遂行できるよう「配慮義務」があり、貸金業務に従事する使用人その他の従業者も「貸金業務取扱主任者が行う助言を尊重し、その指導に従わなければならない」と定められています。このような決まりからも、貸金業務取扱主任者の設置の有用性を更に高めようとする流れが汲み取れます。

参考:貸金業務取扱主任者制度とは | 【貸金業務取扱主任者】日本貸金業協会

貸金業務取扱主任者を設置しないと業務を行えない

クレジットカード会社や消費者金融などの貸金業者は、貸金業務取扱主任者を設置しないと業務を行えません
貸金業に従事する従業員50名に対し、1名以上の貸金業務取扱主任者の設置が義務付けられているためです。これにより、業務が適法かつ適正に行われ、消費者保護にも役立っています。

貸金業務取扱主任者になると何ができる?

貸金業務取扱主任者になると、下記のような業務に従事できます。

  • 企業内の法令遵守態勢の統制
  • 顧客の個人情報保護
  • 違法行為の排除
  • 反社会的勢力との関係根絶
  • 業務の透明性向上

消費者金融に代表される貸金業に勤務しながら、貸金業法がしっかり守られるよう管理・監督していくことが仕事です。

貸金業務取扱主任者資格を活かせる仕事は?代表的な就職先6選

貸金業務取扱主任者の就職先として代表的なものをご紹介します。

金融事務(銀行・証券)

銀行・証券などの金融機関では貸金業務取扱主任者の資格がなくとも融資業務に従事できますが、知識が活きることも多いです。

信用金庫・信用組合・労働金庫なども同様です。

貸金業者に含まれない業態でも貸金業務取扱主任者の資格が役立つこともあるので、就職先の選択肢が広がります。

住宅設備・ハウスメーカー/個人営業/ローン取扱(代行業務)の拡大・推進業務

住宅設備・ハウスメーカーなどに就職し、営業を担うこともあります。

数千万円単位の大規模なローンを組むことの多い住宅関連会社では、法律・法令に関する深い知見が欠かせません。

フラット35など長期固定金利住宅ローンの紹介をするためにも、貸金業務取扱主任者の存在が不可欠です。

金融専門職

貸金業務取扱主任者は貸す側で役立つ資格ですが、その知識と経験を活かして借りる側の支援を行うことも可能です。

どんな状況であればいくら融資が受けられそうか判断し、アドバイスする経営コンサルタントになる人も増えました。

融資申請するうえでの書類作成を代行するなど、能力を多彩な方面で活かすことが可能です。

ファンドにおける審査部門担当

ファンドにおける審査部門担当者は、投資対象の経営・資金状況を審査し、健全性および安全性を正しく評価するスキルが求められます。

貸す側のプロとして評価されている貸金業務取扱主任者は、ファンドの審査部門でも大いにスキルを発揮できるでしょう。

一般事務/クレジットカード会社での事務業務

貸金業務取扱主任者は、クレジットカード会社で審査を担当することがあります。

クレジットカードを作ってもらうことだけでなく、個人の資産や収入を正しく評価し、利益の最大化を図れるような貸付をおこないます。

また、債権の返済計画について、法令に則ったものであるかをしっかりチェックすることも貸金業務取扱主任者の仕事です。

生命保険/その他金融系/【顧客管理業務】など

生命保険など多様な金融業において、顧客管理業務をすることも可能です。

貸金業務取扱主任者の役割に顧客情報の管理や反社会的勢力との関係根絶が盛り込まれているので、顧客情報を適切に管理する部門で活躍できるでしょう。

貸金業務以外の会社で貸金業務取扱主任者資格を活かせる仕事は?

貸金業務取扱主任者資格は、貸金業務を営む会社以外でも役立ちます。

コンプライアンス担当

貸金業務取扱主任者資格は貸金業にまつわるコンプライアンスオフィサーを担う職種でもあるので、コンプライアンス担当としてキャリア形成する人もいます。

健全な職場として関係を構築したり、顧客情報や個人情報を保護したり、企業犯罪を予防したりする立場として尽力することになります。

法務部など

事業の展開に欠かせない法律に関するプロフェッショナルとして働く道もあります。

契約書の作成・消費者や取引先とのトラブル仲介・コンプライアンス体制の遵守に携わることが多く、貸金業法に関する知識も活かせます。

監査部門

監査部門で働き、自社の健全性をチェックする仕事も可能です。

法令がきちんと遵守されているか、有効性があり継続に値する社内規定かなど、内部統制を担う部門と言えます。

業務の透明性向上にも貢献する職種であるからこそ、貸金業務取扱主任者の知識が活きてきます。

貸金業務取扱主任者資格取得の就職以外のメリット

貸金業務取扱主任者資格のその他のメリットを3つ紹介します。

より深い専門的知識が身につく

クレジットカードやカードローンなど、お金の貸し借りを伴う商品についても多少の知識はあっても、どんな法律に基づき提供されるサービスであるのか、法律の趣旨は何かといった深い部分の知識までは通常なかなか得られません。貸金業務取扱主任者の受験を通じ、貸金業法など関連法規の勉強もすることで、より深い専門的知識を身につけることができたという資格取得者の方もいます。

別の資格の勉強にも役立つ

貸金業務取扱主任者の試験科目には民法が入っています。民法の知識は日常でも、他の資格を取得する際にも役に立ちます。

お金のトラブルに関する相談に答えられるようになる

貸金業務取扱主任者を取得した方の中で、「ボランティアとして消費者からのお金に関する相談に乗る際に役に立った」と話している方がいます。相談内容はさまざまですが、中には「クレジットカード、キャッシングを利用する上でのトラブル」に関する相談を担当する機会も少なくありません。貸金業務取扱主任者試験に合格してからは「どのように対応すれば良いか」「より高度な対応が必要な場合はどこに相談すべきか」などの質問に対しても、根拠を持って答えられるようになったとのことです。

まとめ

貸金業務取扱主任者は、クレジットカード会社や信販会社、消費者金融などの貸金業者で働く場合は、非常に役に立ちます。ご紹介したように、既に貸金業法では「貸金業を営む場合、貸金業の業務に従事する従業員50名につき1名の貸金業務取扱主任者を設置しないといけない」旨が定められているためです。つまり、貸金業者にとって貸金業務取扱主任者は不可欠の資格と言っても過言ではありません。

このような背景もあってか、貸金業務取扱主任者試験の合格が昇進要件だったり、資格手当が支給されたりする会社も散見されます。将来はクレジットカード会社などに就職したい学生であれば、在学中に貸金業務取扱主任者試験に挑戦しても良いでしょう。

関連する業界で働くなら、取っておいて損はありません。また、資格取得がきっかけで仕事のチャンスが巡ってくることもあります。興味があるならチャレンジしてみましょう。

この記事の監修者 相賀 真理子 講師

北海道放送・テレビ神奈川の元アナウンサー。

家業の不動産業にも深く関わり、現在、不動産専門行政書士としても活動中。