不動産鑑定士は、独占業務を有する国家資格です。

不動産鑑定士に興味をお持ちの方は、「不動産鑑定士はやめとけ」という意見や「オワコン」という噂を聞いたことがあるのではないでしょうか。

不動産鑑定士を目指すなら、ネガティブな噂の真偽や、資格の将来性を把握しておきたいですよね。

本コラムでは、「不動産鑑定士はやめとけ」と言われる理由や、不動産鑑定士の将来性について解説します。ぜひ最後までご覧ください。

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不動産鑑定士はやめとけと言われる理由

不動産鑑定士資格の取得によってさまざまなメリットを得られる反面、「やめとけ」という意見も存在します。

不動産鑑定士はやめとけと言われる主な理由は、以下の3つです。

  • 取得難易度が高い資格だから
  • 不動産鑑定士になれるまで時間がかかるから
  • 過疎化で仕事が減少傾向だから

取得難易度が高い資格だから

不動産鑑定士はやめとけと言われる理由のひとつとして、資格を取得する難易度が高いことがあげられます。

不動産鑑定士試験は合格率が低く、短答式試験の合格率は約33~36%・論文式試験の合格率は約14~17%です。

特に論文式試験の難易度が高いため、十分な対策が必要です。

また、不動産鑑定士試験に合格するためには、最低2,000時間の勉強時間が必要であると言われています。

多くの時間や労力がかかるため、割に合わないと感じる可能性があるでしょう。

参考:土地・不動産・建設業:不動産鑑定士試験 試験結果情報 – 国土交通省

不動産鑑定士になれるまで時間がかかるから

不動産鑑定士はやめとけと言われる2つ目の理由は、不動産鑑定士になるまでに時間がかかることです。

不動産鑑定士試験に合格しても、すぐに不動産鑑定士になれるわけではありません。

不動産鑑定士として登録を行うためには、短答式および論文式の試験に合格後、1〜2年の実務修習を受け、修了考査に合格する必要があります。

そのため、1年間の試験勉強に取り組んだ場合、勉強を開始してから不動産鑑定士になるまでには、最低でも2年半〜3年半が必要です。

なお、2,000時間の勉強を1年で終わらせるためには、毎日5時間以上の勉強時間を確保しなければなりません。

1日あたりの勉強時間が短い場合や、勉強時間が伸びた場合は、さらに長い時間がかかるでしょう。

過疎化で仕事が減少傾向だから

少子高齢化に伴う地方の過疎化により、不動産鑑定士の仕事は減少傾向にあると言われています。

不動産鑑定士は、1963年に「不動産の鑑定評価に関する法律」の公布によって誕生した国家資格です。

当時の日本は高度成長期であったため、不動産市場の活性化に伴い、不動産の鑑定評価に対する需要が高まっていました。

しかし、現在の日本では公共事業や大型開発が減少しているため、不動産鑑定士の仕事も少なくなってきています。

せっかく不動産鑑定士の資格を取得しても、資格を活かせる仕事が減りつつあるため、「やめとけ」という意見に繋がっていると考えられます。

参考:日本不動産鑑定士協会連合会

不動産鑑定士は楽?激務?

不動産鑑定士は決して楽な仕事ではありませんが、やりがいがあるため楽しいと感じる人が多いです。

「楽しい」「やりがいがある」と感じる例として、さまざまな地域に足を運べることが挙げられます。

鑑定評価にあたって実地調査する際、実際にさまざまな地域に足を運んで調査することがあるため、多くの物件や土地を見ることが可能です。

一方で「不動産鑑定士は激務」という声もあります。
不動産鑑定士はクライアントを相手に仕事をするため、時には厳しい納期を設けられたり、評価額に納得してもらえなかったりなど「激務」「つらい」と感じる場面は多いです。

また実地調査の際には、険しい山道などを調査することもあるので、体力的につらいと感じることもあるでしょう。

このように楽しいと感じる仕事もあれば、激務と感じる仕事もあります。

不動産鑑定士の惨状?きついと言われる理由

不動産鑑定士がきついと言われる理由として、以下の3つがあげられます。

  • 年功序列の文化が残っているから
  • 独立の難易度が高いから
  • 人間関係のストレスがあるから

年功序列の文化が残っているから

不動産鑑定士がきついと言われるひとつ目の理由は、年功序列の文化が残っていることです。

不動産鑑定士の業界では、年齢や実務経験が重視される傾向があります。

そのため、経験年数が浅いと、思うような評価を得られない場合があるでしょう。

せっかく不動産鑑定士の資格を取得しても、早期のキャリアアップが実現するとは限らないため、効率が悪いと感じるかもしれません。

特に、不動産鑑定士になったばかりの方は、年功序列の業界でモチベーションが下がってしまう可能性があります。

独立の難易度が高いから

不動産鑑定士がきついと言われる2つ目の理由は、独立の難易度が高いことです。

不動産鑑定士は、経験年数が長い方が信頼を得られやすいとされています。

そのため、不動産鑑定士として独立し、成功するためには、長い経験が必要です。

不動産鑑定士としてのスキルに加え、顧客の獲得や経営に関する知識が求められるため、独立のハードルは高いと言えます。

人間関係のストレスがあるから

不動産鑑定士は、人間関係のストレスを感じやすい仕事です。

顧客が不動産の鑑定評価に納得できない場合、クレームが発生する可能性があります。

人とかかわる仕事が苦手な方は、きついと感じるかもしれません。

不動産鑑定士はオワコン?将来性は?

不動産鑑定士は、オワコンではなく将来性が高い資格です。

不動産鑑定士の将来性が高いと思われる理由は、以下の通りです。

  • 独占業務がある
  • 現状AIに仕事を奪われていない
  • 資格の組み合わせで市場価値を高められる

独占業務がある

不動産鑑定士の将来性が高いとされている理由のひとつとして、独占業務を有していることがあげられます。

不動産鑑定評価業務は、不動産鑑定士の独占業務です。

不動産鑑定士の資格を持っていない方が不動産鑑定評価業務を行うと刑事罰の対象となるほか、不動産鑑定業者は、事務所ごとに専任の不動産鑑定士を1名以上配置しなければなりません。

不動産鑑定士しか行えない業務が存在するため、一定の需要が見込まれるでしょう。

参考:不動産鑑定士ってなに?資格者は何ができるの?

現状AIに仕事を奪われていない

不動産鑑定士は、AIに仕事を奪われる可能性があると言われていますが、現状ではAIに仕事を奪われていません。

AI技術の発展はさまざまな分野に影響を及ぼしており、人間の仕事が減ってしまうことが懸念されています。

しかし、現在の技術では、AIの力だけで不動産鑑定士の仕事を行うことは困難です。

特に、不動産に関するコンサルティングなどの分野は、AIによる代替が難しいと考えられます。

また、不動産鑑定士は社会的な信頼性が高い資格であるため、完全に仕事がなくなる可能性は低いでしょう。

不動産鑑定士の定型的な業務をAIによって自動化すれば、業務の効率が上がります。

AIを活用するためのスキルを身に付けるとともに、自分の得意分野を強化することで、不動産鑑定士としての将来性を高められるでしょう。

資格の組み合わせで市場価値を高められる

不動産鑑定士は、ほかの資格との相乗効果によって市場価値を高めやすい資格です。

不動産鑑定士と相性の良い資格として、以下の3つがあげられます。

  • 宅建士
  • 中小企業診断士
  • 税理士

不動産鑑定士と宅建士のダブルライセンスによって、不動産の鑑定から不動産取引までを ワンストップで担えるようになります。

また、中小企業診断士の資格を取得すれば、企業経営に関する知識を活かしたアドバイスが可能になるため、ほかの不動産鑑定士との差別化を図れるでしょう。

加えて、不動産鑑定士が税理士の資格を取得すれば、税に関する知識を顧客への提案に活かせます。

すでに税理士として活躍している方が不動産鑑定士の資格を取得すれば、不動産鑑定に関する専門的な知識をアピールできるため、相乗効果を得られるでしょう。

参考:不動産鑑定士は中小企業診断士のダブルセンス取得がおすすめ?

不動産鑑定士の将来性についてよくある質問

ここでは、不動産鑑定士の将来性についてよくある質問を紹介します。

  • 不動産鑑定士は食いっぱぐれる?
  • 不動産鑑定士はなぜ少ない?

不動産鑑定士は食いっぱぐれる?

結論から述べると、不動産鑑定士が食いっぱぐれる可能性は低いと考えられます。

先述の通り、不動産鑑定士は、専門性が高い業務独占資格です。

また、ほかの資格との組み合わせによって市場価値を高めやすく、独立開業も可能です。

独立すれば、定年に関係なく働けるでしょう。

加えて、厚生労働省が手がける職業情報サイト「jobtag」によると、令和4年における不動産鑑定士の平均年収は579.8万円となっています。

令和5年民間給与実態調査における給与所得者の平均年収は460万円であるため、平均よりも高い水準の収入を得られる可能性が高いです。

不動産鑑定士は将来性が高く、安定した収入が見込める資格であると言えるでしょう。

参考:不動産鑑定士 – 職業詳細 | job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET))

参考:令和5年分 民間給与実態統計調査

不動産鑑定士はなぜ少ない?

不動産鑑定士が少ない理由として、資格を取得する難易度が高いことがあげられます。

令和5年4月時点における、全国の不動産鑑定士の人数は5,022人です。

不動産鑑定士になるためには、難関試験に合格後、最大2年の実務修習を受け、修了考査に合格しなければなりません。

長期間の努力が求められるため、途中で受験を断念してしまう方も少なくないと考えられます。

参考:事業概要

まとめ

本コラムでは、「不動産鑑定士はやめとけ」と言われる理由や、不動産鑑定士の将来性について解説しました。

不動産鑑定士は、取得難易度が高い資格です。

一般的に、不動産鑑定士の資格を取得するまでには2年半〜3年半を要するため、十分な計画が必要です。

一方で、不動産鑑定士はほかの資格とのダブルライセンスによって市場価値を高めやすく、将来性が高い資格であるといえます。

また、独占業務を有する国家資格であるため、取得によってさまざまなメリットを得られるでしょう。

将来性の高い資格を取りたいと考えている方は、不動産鑑定士の資格取得を検討してみてはいかがでしょうか。

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