不動産鑑定士の実務修習とは?働きながらは難しい?
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不動産鑑定士になるためには、不動産鑑定士試験に合格後、実務修習を修了し、登録を行う必要があります。
不動産鑑定士を目指している方は、実務修習の内容や、スケジュールが気になっているのではないでしょうか。
本コラムでは、不動産鑑定士の実務修習に関する詳しい情報を紹介します。
実務修習にかかる費用の目安や、よくある質問についても触れているため、ぜひ参考にしてください。
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不動産鑑定士の実務修習とは?どんな研修?
不動産鑑定士の実務修習とは、不動産鑑定士になるために必要な技能および応用力の習得を目的として行われる実習・研修のことです。
不動産鑑定士として登録を行うためには、不動産鑑定試験に合格後、実務修習を修了しなければなりません。
不動産鑑定士の実務修習は、講義・基本演習・実地演習の3段階で構成されており、1年コースと2年コースのいずれかを選択できます。
実務修習のすべての過程を修得し、修了考査に合格すれば、不動産鑑定士となる資格を得られます。
不動産鑑定士の実務修習の内容は?
不動産鑑定士の実務修習の内容は、以下の通りです。
- 講義・講習
- 基本演習
- 実地演習
- 修了考査
それぞれについて、詳しく解説します。
講義・講習
不動産鑑定士の実務修習では、実務に関する講義・講習がeラーニング形式で行われます。
講義の期間は、1年コースの場合で例年4か月・2年コースの場合は例年11か月です。
実務修習における講義の内容は、以下の通りです。
- 基礎的知識:鑑定評価に関する倫理および不動産登記・税金・その他関連制度、並びに統計等に関する基礎的知識に関する講義
- 種類別鑑定評価:鑑定評価において採用される類型ごとの鑑定評価報告書を作成する際に必要とされる知識、および技術に関する講義
- 技術的知識:鑑定評価の各手法を適用する際に必要な専門知識および技術に関する講義
基本演習
不動産鑑定士の実務修習における基本演習では、現地調査から鑑定評価報告書の作成までを行い、実務を習得します。
基本演習は、東京の会場で実施されます。
また、基本演習はゼミナール形式によって4段階に分けて行われ、1段階あたりの日程は2~3日です。
各段階における演習の内容は、以下の通りです。
- 第一段階:更地
- 第二段階:借地権と底地
- 第三段階:自用の建物およびその敷地・貸家およびその敷地
- 第四段階:継続賃料
基本演習では、各段階において「基本演習報告書」および「論点整理メモ」の作成が必要です。
これらの作成物には提出期限が設けられており、基本演習報告書は、当該演習実施期間の最終日から起算して10日以内に提出しなければなりません。
作成物の提出はインターネットによって行う必要があるため、提出方法を確認のうえ、期限に余裕をもって行いましょう。
参考:基本演習実施要領
実地演習
不動産鑑定士の実務修習における実地演習は、物件調査実地演習と一般実地演習に分かれています。
また、実地演習は、講義および基本演習と並行して行われます。
物件調査実地演習では、土地に関する事項、および建物に関する事項の報告書を各1件ずつ作成し、一般実地演習では、種別や類型に応じた鑑定評価報告書を13件作成します。
一般実地演習における類型および必須件数は、以下の通りです。
- 宅地
更地:3件
底地:1件 - 見込地等
宅地見込地・農地・林地または工業地:1件 - 建物およびその敷地
自用の建物およびその敷地:2件
貸家およびその敷地:2件
区分所有建物およびその敷地:1件
借地権付建物:1件 - 賃料
地代:1件
家賃:1件
実地演習を受講するためには、指導鑑定士が在籍する不動産鑑定業者、または指定大学機関のいずれかの実地演習実施機関を選択のうえ、登録および受講申請が必要です。
また、演習には期限が設けられており、期限までに報告書と付属資料を提出する必要があります。
修了考査
講義・基本演習・実地演習のすべての過程を修了した方には、修了考査が行われます。
修了考査は、記述の考査と口述の考査に分かれており、記述考査では、多肢択一式問題および論文式問題の両方が出題されます。
各考査の内容は、以下の通りです。
- 記述考査
・多肢択一式問題:不動産の鑑定評価の実務に関する基礎知識・種類別の鑑定評価および手法適用上の技術的な知識について、マークシート方式で出題
・論文式問題:不動産鑑定評価基準、および不動産鑑定評価基準運用上の留意事項について、論文式で出題
- 口述考査:一般実地演習で作成した13 件の鑑定評価報告書の中から1件を選択し、内容について試問
不動産鑑定士の修了考査は、記述考査・口述考査ともに、東京の会場で実施されます。
また、修了考査に不合格となった場合は、再考査を受けることが可能です。
再考査には、内容に応じた3つの区分が設けられており、区分によって実施時期や実施方法が異なります。
再考査を受ける際は、自分がどの区分に該当するのかを確認のうえ、必要な手続きを行いましょう。
不動産鑑定士の実務修習のスケジュール・期間・日程
不動産鑑定士の実務修習には、以下の2つのコースが設けられています。
- 1年コース
- 2年コース
それぞれについて、詳しく解説します。
1年コース
不動産鑑定士の実務修習における1年コースの実施期間は、例年12月上旬から翌年11月下旬までです。
1年コースでは、4か月間の講義および計4回の基本演習に加え、11か月間の実地演習が行われます。
また、修了考査は、1年コースが修了した翌年1月に実施されます。
1年コースにおけるスケジュールの詳細は、以下の通りです。
講義 | 12月上旬から4か月間 |
基本演習 | 4月5月8月9月の計4回 それぞれ2~3日東京の会場で実施 |
実地演習 | 12月上旬から11か月間 |
修了考査 | 1年コース終了後の1月 (2024年12月開始の場合、2026年1月) |
2年コース
不動産鑑定士の実務修習における2年コースの実施期間は、例年12月上旬から翌々年の11月下旬までです。
2年コースでは、4か月間の講義および計4回の基本演習に加え、1年11か月間の実地演習が行われます。
修了考査は、1年コースと同様に、コースが修了した翌年の1月に実施されます。
2年コースにおけるスケジュールの詳細は、以下の通りです。
講義 | 12月上旬から11か月間 |
基本演習 | 4月5月8月9月の計4回 それぞれ2~3日東京の会場で実施 |
実地演習 | 12月上旬から1年11か月間 |
修了考査 | 2年コース修了後の1月 (2024年12月開始の場合、2027年1月) |
不動産鑑定士の実務修習の費用は?
不動産鑑定士の実務修習にかかる費用は、約31万円〜111万円です。
実務修習の費用は、日本不動産鑑定士協会連合会に支払う受講料と、実地演習実施機関に支払う受講料に分かれており、実地演習の受講料は実施機関によって異なります。
実務修習にかかる費用のうち、日本不動産鑑定士協会連合会に支払う受講料の合計は約31万円です。
受講料の内訳は、以下の通りです。
- 講義受講料金:98,700円
- 基本演習受講料金:174,800円
- 修了考査受験料金:36,600円
物件調査実地演習および一般実地演習の受講料は、原則として無料です。
しかし、実地演習実施機関で実地演習を受ける場合は、上記に加えて、別途受講料が発生する場合があります。
実地演習の受講料には、以下の通り上限額が定められています。
- 物件調査実地演習: 22,000円
- 一般実地演習: 1演習あたり56,000 円
上限額の受講料を設定している実施機関で実地演習を受けた場合、最大で約75万円の費用が発生するでしょう。
実務修習はサラリーマンとして働きながらだと難しい?
結論から述べると、サラリーマンとして働きながら不動産鑑定士の実務修習を受けることは可能です。
一般的な会社で働きながら実務修習を受ける場合は、余裕をもって取り組める2年コースがおすすめです。
ただし、実務修習には多くの時間がかかるほか、平日に演習を受ける必要があります。
休みを取れない方は、実務修習の修了が難しいかもしれません。
また、実務修習は東京で行われるため、遠方にお住まいの方は、移動手段や宿泊先の確保が必要になるでしょう。
一方で、実地演習実施鑑定業者に就職している方は、仕事と実務修習を両立できる可能性が高いです。
実地演習実施鑑定業者の多くは、その業者で働いている方にしか実務修習を行っていないため、実務修習の受講を目的として、不動産鑑定業者へ転職する修習生も見受けられます。
ただし、修習生の受け入れ状況は、実地演習実施期間によって異なるため、確認が必要です。
働きながら実務修習を受ける際は、自分に合った受講方法を選択しましょう。
不動産鑑定士の実務修習中は給料が出る?
不動産鑑定士の実務修習を受講する際に、国や実施団体からの給料は支給されません。
ただし、実務修習中に就職できた場合は、就職先から給料が発生するでしょう。
不動産鑑定業者に就職した場合の年収は、約300〜400万円ほどと言われています。
不動産鑑定士の実務修習についてよくある質問
ここでは、不動産鑑定士の実務修習についてよくある質問を紹介します。
- 試験合格後いつまでに実務修習を受けないといけない?
- 不動産鑑定士の実務修習は免除になる?
試験合格後いつまでに実務修習を受けないといけない?
不動産鑑定士試験に合格してから実務修習を受けるまでの期間は、定められていません。
実務修習を受けるために必要な条件は、以下の通りです。
- 不動産鑑定士試験の合格者
- 平成16年法律第66号による改正前の不動産の鑑定評価に関する法律の規定による不動産鑑定士試験第二次試験の合格者
- 特別不動産鑑定士補試験の合格者
- 不動産鑑定士補特例試験の合格者
不動産鑑定士の実務修習は免除になる?
不動産鑑定士の実務修習にはみなし履修という制度が設けられており、一定の条件を満たせば、実地演習の一部が免除されます。
令和6年における各実地演習の免除の条件は、以下の通りです。
- 物件調査実地演習
令和6年12月1日前の1年以内に、不動産鑑定評価業務に関する実務経験があり、10件以上の物件調査に従事していること。
- 一般実地演習
令和6年12月1日前の2年以内に不動産鑑定評価業務に関する実務経験があり、1件以上の鑑定評価報告書を完成させていること。
みなし履修を受けるためには、各実地演習における免除の条件を満たしたうえで、書類の提出が必要です。
書類の提出には期限が設けられているほか、書類によって提出方法が異なる場合があるため、日本不動産鑑定士協会連合会の公式サイトより詳しい内容をご確認ください。
40代でも実務修習を受けられる?
不動産鑑定士の実務修習に年齢制限はないため、何歳でも受けられます。
ただし実地演習の実施機関によっては「35歳まで」など年齢制限を設けている不動産鑑定業者もあるので注意が必要です。
実務修習生の受け入れを行っている実施機関は多いため、40代以降でも積極的に申し込むことで演習先を見つけられるでしょう。
参考:実務修習のご案内
不動産鑑定士資格取得後に維持費はかかる?
実務修習を終えて不動産鑑定士資格を取得したあと、追加で維持費はかかりません。
不動産鑑定士として登録する際に登録免許税として、6万円の納付が必要ですが、それ以降の維持費は不要です。
まとめ
本コラムでは、不動産鑑定士の実務修習について解説しました。
不動産鑑定士の実務修習では、講義・基本演習・実地演習が行われ、すべての過程を修了した方は、修了考査を受けられます。
また、実務修習は、1年コースと2年コースのいずれかを選択可能です。
不動産鑑定士の実務修習および修了考査を受けるためには、最低でも約31万円の費用がかかります。
実地演習を受ける実施機関によって受講料が異なるため、事前に確認しておくことがおすすめです。
働きながら不動産鑑定士の実務修習を受ける際は、仕事との両立が課題となります。
自分の働き方に応じて、無理のないスケジュールを立てましょう。
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