不動産鑑定士試験の鑑定理論とは?概要と勉強法のポイント6つ
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不動産鑑定士試験の勉強方法で悩んでいませんか?
他の国家資格と比較すると不動産鑑定士試験についての情報は少ない状況であり、情報収集がしにくいことから不安になっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
特に「不動産鑑定士試験は暗記が大変な試験だ」といった情報に触れた方は心配になるかと思います。
このコラムでは試験科目の一つである「不動産の鑑定評価に関する理論」(以下、鑑定理論)がどのような科目なのか、試験の合格のためにはどのような勉強をするのが効率がよいのかがわかります。
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鑑定理論は、不動産鑑定士が不動産の鑑定評価を行う際に拠り所となる理論を学習します。
そのため、試験上でも実務上でも最も重要な科目であり、短答式試験と論文式試験の双方で出題されます。
短答式試験における鑑定理論の試験内容
短答式試験における鑑定理論は、「不動産鑑定評価基準」と「不動産鑑定評価基準運用上の留意事項」(以下まとめて、基準)の内容を理解しているかが問われます。
一部応用的な考えさせる問題も出題されますが、問題の大部分は基準ではどのように記載されているかを問う基本的な問題となっています。
なお、実務をやったことがなければ解答できないような問題は基本的には出題されませんのでご安心ください。
論文式試験における鑑定理論の試験内容
論文式試験における鑑定理論は、理論を記述する論文問題と計算が中心に問われる演習問題が出題されます。
⑴論文問題の試験内容
鑑定理論の論文問題は、基準の内容を理解しているかが問われます。
例として、「〇〇の定義を述べなさい。」や「~の場合に特に留意する点について説明しなさい。」のように、基準で用いられている専門用語を答えさせる問題や、基準上でどのような取扱いがなされているかを問う問題が出題されます。
基準が学習の中心であることから、基本的な勉強内容としては短答式試験と相違しません。
しかし論文式試験は答案用紙に文章を記述する必要がありますから、解答を文章の形で表現できるように準備しておかないといけません。
本試験で問われる問題は、その場で考えた自分の言葉で説明する問題というよりは、基準ではどのような記載がされているのかが問われます。
そのため、基準に記載されている文章を用いることによって解答の大部分を表現できることになります。
このような理由から、普段の学習時から基準の内容をある程度暗記することが必要となるでしょう。
なお、トップクラスの受験生は基準の文言をほぼ一字一句違わず全て暗記していますが、試験の合格だけを考えるのであればそこまでの暗記精度は問われませんし、定義のような専門用語を除けば(内容があっていることを前提として)自分の言葉が混在した説明となったとしても十分合格圏内に入ることができます。
⑵演習問題の試験内容
鑑定理論の演習問題は、20頁程度の資料を用いて不動産の鑑定評価額等を計算させる内容となっています。
資料が多く、計算量や解答量も多いことから、高い事務処理能力と効率的に問題を解答する訓練が必要となります。
その一方で、問題には丁寧な誘導が記載されていることから、難解な計算が問われるわけではありません。
演習問題で重要なのは試験時間内にどれだけ解答できるかといった解答スピードです。
本試験では毎回同じような論点が繰り返し出題される傾向にありますので、少しでも解答スピードを上げるために、典型論点について十分な準備をする必要があるでしょう。
なお、計算問題ではありますが解答は電卓を用いる事ができますし、高度な数学が必要な問題は出題されませんから計算能力や数学は必要とされません。
合格率・合格ライン
⑴短答式試験
短答式試験は鑑定理論と「不動産に関する行政法規」(以下、行政法規)の2科目で実施されます。
合格率及び合格ラインは、年によって多少変動するものの、合格率は35%程度、合格ラインは総得点の65%〜75%程度になっています。
原則として行政法規との合計で合否が決まるため、鑑定理論単独での合格ラインというものはありません。
行政法規の方が範囲も広く得点するのが難しい傾向が多いため、鑑定理論では安定的に80%以上の得点が取れることを目標とする必要があります。
なお、鑑定理論100%、行政法規40%のような偏った得点の取り方をした場合、合計得点が合格ラインを上回っても不合格となる事がありますが、基本的には気にする必要はないでしょう。
⑵論文式試験
論文式試験は「民法」、「経済学」、「会計学」、「鑑定理論」の4科目で実施されます。
「民法」、「経済学」、「会計学」は各100点満点ですが、「鑑定理論」は論文問題200点満点、演習問題100点満点と鑑定理論だけで300点分の配点がされており、全体における半分の配点を占めることになります。
論文式試験の合格率は例年14~17%、合格ラインは353~400点ですが、実質は競争試験となっています。
なお、総合点が合格ラインを超えていても、各科目が一定点に達しない場合は不合格となります。
どのくらいの人数がこの科目足切りの対象となっているかは公式の発表がなく不明ですが、毎年一定数の人が該当していると言われており、注意が必要でしょう。
出題形式と配点
⑴短答式試験
短答式試験の鑑定理論は、マークシート形式で40問出題され配点が100点(1問2.5点)となっています。
文章の正誤を判断させる問題が中心ですが、計算問題や、文章の空欄補充問題も出題されますので注意が必要でしょう。
近年は半分以上が組み合わせ問題となっており、全ての選択肢の正誤が判定できなくとも、消去法で解答にたどり着ける問題が多くなっています。
⑵論文式試験
論文式試験の鑑定理論は、論文問題200点満点、演習問題100点満点となっています。
「民法」、「経済学」、「会計学」それぞれは試験時間2時間で大問2問の出題ですが、鑑定理論の論文問題は試験時間4時間(2時間の試験を2回実施)で大問4問の出題がなされるため、論文式試験合格のために重要な科目と言えるでしょう。
一昔前の試験ではいわゆる一行問題が出題されていたのですが、近年の出題では小問形式となっており、問題の題意が把握しやすく解きやすい問題となっております。
鑑定理論(短答式)の勉強法のポイント3つ
ここでは、鑑定理論(短答式)の勉強法のポイントを3つ紹介します。
- 毎日基準に触れる
- 過去問も解いてみる
- 難解な問題は気にしない
毎日基準に触れる
鑑定理論は基準の理解と暗記が重要となります。
短答式試験の合格だけであれば文章の正誤が判断できれば良く、そこまで高い精度の暗記は求められません。
しかし、論文式試験を見据え、短答式試験の学習時から少しずつ暗記を進めるべきです。
多くの受験生が勉強開始時には基準を暗記することは難しいと感じますが、意味のない文章や数字の羅列を暗記する性質のものではないため、想像よりは難しくないでしょう。
また、知らない言葉を暗記するのは大変な一方で、知識量が増えるにつれて繋がりが見えてきますから、学習が進むにつれてより暗記が進みやすくなります。
そのため毎日少しずつでも基準に触れ、専門用語や言い回しに早い段階で慣れておく事をおすすめします。
過去問も解いてみる
試験の形式や難易度、正誤のポイントを把握するために過去問を解きましょう。
本試験では過去の出題と類似する問題が多く出題されますから、過去問演習は効果的です。
しかし、学習範囲が極めて広く短答式試験のみ課される行政法規とは異なり、鑑定理論は学習の範囲が比較的狭く論文式試験を見据える必要もあります。
そのため過去問演習のみを繰り返す学習ではなく、あくまで基準の理解と暗記を進める事を学習の中心とした上で、過去問演習も行うほうが良いでしょう。
なお、短答式試験で出題される計算問題に関しては基準の暗記だけでは解けないものですが、正解すること自体はそれほど難しくなく、ほとんどの場合は合格のために得点すべき基本的な問題です。
そのため計算問題の訓練は過去問を用いて繰り返し行いましょう。
難解な問題は気にしない
本試験では題意が掴めない難解な出題が一定数存在しますが、仮にそのような問題を解答できなくとも8割を超える得点は十分取れるため、あまり気にする必要はないでしょう。
短答式試験の鑑定理論は基準の内容が中心的に出題されます。
ただトップクラスの受験生は、短答式試験受験時には基準の大部分について暗記を終えてしまっているため、基準の内容のみから出題すると満点を取る受験生が多く出てしまいます。
そうすると国家試験として合否の判定が難しくなってしまう事から、基準のレベルを超える問題を一定数出題していると考えられます。
このような問題は論文式試験で必要とされる知識すら超えるものとなっているため、普段の学習時には気にしなくて良いと思います。
一部の難問に振り回されず、基準の範囲内で解答できる問題に注力しましょう。
鑑定理論(論文式・演習)の勉強法のポイント3つ
ここでは鑑定理論(論文式・演習)の勉強法のポイントを3つ紹介します。
- 基準を細分化し毎日触れる
- 専門用語は正確に暗記する
- 演習を得意科目にする
基準を細分化し毎日触れる
論文式試験では短答式試験から引き続き、基準の理解と暗記が重要になります。
毎日基準に触れて暗記を進めましょう。この場合に、答案に表現しやすいように、基準を典型的な論点毎に細分化して論証のような形で暗記しておくと便利です。
基準を基準の形のまま暗記しただけですと、試験の問題を解答するに当たって、基準のどの部分を記載するかをその都度判断する必要がありますし、解答に必要な部分を文章の塊から抜き出す作業が必要となります。
一方で、細分化された論証の形で暗記しておけば、後は本試験の問題に応じてそれを組み立てるだけで解答が完成するためです。
特に近年の本試験では小問形式での出題が一般的で、題意が把握しやすい問題ばかりですから、何を書けばよいか悩むことはあまりありません。
そのため、用意した論証をどのように組み立てるかの訓練はそれほど必要とはされませんし、細分化した論証を数多く用意しておいた方が、なにを記述すればよいか思いつきやすくなります。
なお、試験が近くなるにつれ、鑑定理論の勉強は生活の隙間時間に暗記のメンテナンスを行うだけになっていくのが一般的でしょう。
専門用語は正確に暗記する
鑑定理論の論文式試験では、専門用語を正確に記述できなければ減点されると思ってよいでしょう。
例として基準上における更地の定義を用いて説明いたします。
基準では、「更地とは、建物等の定着物がなく、かつ、使用収益を制約する権利の付着していない宅地をいう」とされています。この文章の全てを一字一句正確に表現する必要があるわけではないのですが、例えば「更地とは、建物等の定着物がなく、かつ、使用収益を制約する権利の付着していない土地をいう」と記述してしまうと、「宅地」と「土地」は別の意味になってしまう(土地の方が広い概念)ため、減点されてしまいます。
特に鑑定理論では専門用語の定義や内容を記述する機会が多いため、不正確な記述をして減点されないように正確に暗記しましょう。
演習を得意科目にする
不動産鑑定士試験の合格のためには、演習を得意科目とすることが得策と言えるでしょう。
演習は他の科目と異なり数字で解答する箇所が多いため、客観的な採点が可能であり、◯か✖かの採点となります。
論文式の問題であれば文章で解答するため△があり得ますが、数字で解答して間違っている場合に△となる事がありません。
そのため点差がつきやすく、得意科目にすることで他の受験生に大きな差をつけることも可能となります。
演習を得意科目とするためには典型論点の解答スピードを上げることが重要であり、電卓の入力にも十分慣れておく必要があります。
まとめ
鑑定理論は不動産鑑定士試験において合否を分ける最重要科目です。
勉強の中心となる基準の暗記は確かに大変ではありますが、毎日触れる事で早い段階において専門用語に慣れていけば知識が繋がりどんどん暗記が進むはずです。
合格のために鑑定理論を必ず得意科目にしましょう。
効率よく学習したい人には、通信講座や予備校の利用もおすすめです。
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令和元年不動産鑑定士試験 合格
北海道大学大学院経済学院会計情報専攻 卒業
大手資格予備校の講師として公務員試験(経済系科目・法律系科目・会計学等)、日商簿記検定試験を⾧年指導。
効率的な勉強方法を追及するため、自身で様々な資格試験を受験し、合格している。
自身の学習経験に加え様々な合格者の学習方法を分析し、効率性を追及した講義と教材の提供を行っている。