これから不動産鑑定士資格を取る方、不動産業界での経験を活かして不動産鑑定士としてキャリアを発展させたい方の中には、将来的に不動産鑑定士として独立開業したい方も多いのではないでしょうか。

このコラムでは、不動産鑑定士が独立開業に成功するポイントや独立後の年収について解説します。

独立開業するメリットやよくある質問についてもまとめたので、不動産鑑定士として独立開業を考えている方は参考にしてください。

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不動産鑑定士が独立開業して成功するには?必要な準備を解説

不動産鑑定士が独立して成功するためには、様々な準備と戦略が必要です。

ここでは、独立開業を成功させるために必要な準備を6ステップで紹介していきます。

 ①不動産鑑定士の資格を取得する

不動産鑑定を有償で行う不動産鑑定業に従事するには、不動産鑑定士の資格が必須です。

不動産の評価方法や市場動向、法律規制などの専門知識を習得することで、不動産の経済価値を適切に判定できるようになります。

以下は不動産鑑定士試験の概要です。

項目概要
受験資格なし
試験形式/科目短答式試験(2科目)・不動産に関する行政法・不動産の鑑定評価に関する理論
論文式試験(4科目)・民法・経済学・会計学・不動産の鑑定評価に関する理論・不動産の鑑定評価に関する理論演習(演習)
出題形式短答式試験:択一式(マークシート方式)論文式試験:論文式
試験時間全科目120分
合格基準・短答式試験の合格基準 総合点で概ね7割を基準とし、土地鑑定委員会が相当と認めた得点。なお総合点の他に各試験科目について一定の得点が必要。
・論文式試験の合格基準 総合点で概ね6割を基準とし、土地鑑定委員会が相当と認めた得点。なお総合点の他に各試験科目について一定の得点が必要。
受験料12,800円
試験会場・短答式試験の試験地(10会場) 北海道、宮城、東京、新潟、愛知、 大阪、広島、香川、福岡、沖縄
・論文式試験の試験地 (3会場)東京、大阪、福岡
免除制度・短答式試験合格後、翌年と翌々年は担当試験免除・司法試験および公認会計士試験の合格者は、論文式試験で一部科目が免除
参考:令和6年 不動産鑑定士試験受験案内

また論文式試験合格後は、不動産鑑定士に必要な技能と専門的能力の修得のため、1年または2年の実務修習の受講が必要です。

実務修習修了後に修了考査を受け、合格することで、不動産鑑定士の登録申請が行えます。

筆記試験のみで資格取得ができるわけではないので注意が必要です。

②実務経験を積む

不動産鑑定士の資格取得後は、企業内鑑定士として不動産鑑定事務所やコンサルティング会社などで実務経験を積みます。

現場で実際の不動産の評価や取引に携わることで、土地や建物の状況、周辺環境、需要と供給のバランスなどを考慮した、客観的かつ公正な評価ができるようになります。

実務の中で、不動産市場や評価方法に関する知識やスキルを習得することで、独立開業に必要な不動産鑑定士としての専門性が高められるでしょう。

③人脈を広げる

不動産鑑定士として独立開業する場合、あらかじめ顧客を獲得しておくと、独立に成功しやすくなります。

独立開業前に顧客や業界内外の取引先と関係を築くことで、ビジネスチャンスを増やせるでしょう。

次にあげる業界・業種とのコネクションは、独立開業に有用に働く可能性があります。

  • 不動産仲介業
  • 不動産開発業
  • 不動産管理会社
  • 建築業
  • 金融業
  • 弁護士事務所、法律事務所
  • 地域コミュニティ
  • 商工会議所

人脈を広げる方法の代表例を4つ紹介します。

既存の顧客とコミュニケーションを取る

既存の顧客や取引先と定期的にコミュニケーションを取り、独立開業に向けて信頼関係を強化しましょう。

顧客のニーズを理解し、誠実なサービスの提供に努めることで、口コミや紹介による新規顧客獲得につながります。

ネットワーキングイベント等への参加

不動産業界や地域コミュニティで開催されるネットワーキングイベントやセミナーに参加することで、業界関係者や地域のビジネスパートナーと交流を深められます。

団体への参加

不動産関連の業界団体や商工会議所、コミュニティビジネス団体などに参加することで、業界内外での知名度を高めたり、信頼関係を築いたりできます。

特に日本不動産鑑定士協会連合会(JAREA)に加入している不動産鑑定士は多いため、人脈を作りたい人は加入を検討しましょう。

SNSやホームページを活用する

ウェブサイトやSNSを活用して、自己紹介・業績・サービスの情報を発信することで、新たな顧客やビジネスパートナーとのつながりを広げられます。

④開業するエリアを決める

不動産鑑定士として独立開業する場合、開業するエリアの不動産市場が活発かどうかを確認しましょう。

不動産の需要が高く、供給が少ない地域や、新興の不動産市場がある地域が独立開業しやすいです。

また、開業するエリアの競合状況の把握も重要です。

他の不動産鑑定士や関連業者が多く競合の激しいエリアの場合、差別化戦略やニッチ市場への進出も考慮しなくてはなりません。

 ⑤ターゲット・事業内容を決める

ターゲット・事業内容をしっかり決めておくことで、ビジネス展開がしやすくなります。

独立開業する際のターゲット層と事業内容の例は、以下のとおりです。

ターゲット層事業内容
個人の不動産所有者不動産の価値評価・不動産の売却価格の査定・不動産の相続評価
不動産投資家不動産の投資評価・収益物件の価値評価
企業や開発業者不動産の開発プロジェクトの評価・地域開発プロジェクトのコンサルティング・資産ポートフォリオの評価と管理
金融機関や保険会社不動産担保の評価・資産の価値評価とリスク評価・融資審査のための評価レポートの作成

⑥開業に必要な手続きをする

不動産鑑定士として独立開業する場合、事業を行うために法人や個人事業主としての登録、届出が必要です。

まず不動産鑑定士登録申請書を、住所地を管轄する地方整備局等及び登録免許税納税機関に提出しましょう。

その際に国税の収納を行う銀行・郵便局等で、登録免許税として62,800円の納付が必要です。

また、個人事業主として開業するのであれば、開業開始1ヶ月以内に税務署に開業届を出さなくてはなりません。

鑑定業務に必要な設備や資材の準備も必要なため、事務所や作業スペース、業務に必要な設備やソフトウェアなどの用意を漏れがないように行いましょう。

独立開業している不動産鑑定士の年収はどれくらい?

独立開業して年収1000万円を稼げる不動産鑑定士も少なくありません。

企業内鑑定士として働くより稼げる人も多いです。ただし開業してはじめのうちは、思うように稼げないケースもあるでしょう。

不動産鑑定士として独立開業した際の年収は、業務の規模、案件の数によって左右されます。

個人や中小企業を主な顧客とする場合と、大手企業や金融機関などを主な顧客とする場合では、案件の規模や収入水準も異なるでしょう。

年収を高めるためには、営業力を鍛えたり人脈を広げたりして、自ら仕事を獲得しに行くことが重要です。

不動産鑑定士が独立開業する3つのメリット

ここでは不動産鑑定士が独立開業する3つのメリットについて解説します。

年収アップを目指せる

独立開業による年収アップは可能です。

顧客と直接取引することで、報酬や手数料を自分で設定できるため、収入アップが期待できます。

また、独立開業によって新たなクライアント層や市場を開拓できる可能性があるので、特定の分野や市場に特化したサービスやコンサルティングもできるでしょう。

多種多様な顧客のニーズに合わせた鑑定評価やコンサルティング業務を行うことが高い評価につながり、結果として年収アップにつながります。

 定年がないので長く働ける

不動産鑑定士の資格保有者に定年制度はないので、不動産鑑定士は生涯続けられる職業です。

ただし、不動産鑑定事務所や一般企業などに雇用されている場合は、勤務先の規定で定年制が適用されることもあります。

独立開業している場合は、年齢に関係なく、70代以降も働き続けることが可能です。

初期投資費用が少ない

不動産鑑定士は独立開業にあたって初期投資費用が比較的少ない職種と言えるでしょう。

開業準備としてオフィススペースの確保・パソコンやソフトウェアなどの設備・家具等の購入・マーケティングと広告費用の確保などが必要ですが、特別高額なものはありません。

工夫次第でコストを抑えられるものばかりです。

例えば、小規模なオフィスや共有オフィスを利用することで賃貸料・設備費を抑えることが可能です。

また自宅をオフィスにしてしまえば賃貸費用を節約できます。

ウェブサイトの作成や印刷物の制作、広告掲載などにかかる費用もSNSやホームページを活用することで節約できるでしょう。

不動産鑑定士の独立開業についてよくある質問

不動産鑑定士の独立開業に関するよくある質問を取り上げ、解説していきます。

廃業率はどれくらい?

不動産鑑定事務所の廃業率は公開されていません。

ただし以下の理由から、比較的廃業しにくいと言われています。

独占業務があるので仕事が安定しやすい

不動産鑑定評価は不動産鑑定士の独占業務です。

不動産鑑定士は独占業務があることで、様々な分野や業界で活躍することが可能です。

不動産業界で、不動産の価値評価や投資のアドバイス、物件の分析などの業務を行う以外にも、金融業界で不動産担保ローンの査定をしたり、法律業界で不動産紛争の証拠の鑑定などをしたりできます。

不動産鑑定士の資格保有者は希少価値が高い

令和5年1月1日時点で、国土交通省に登録している不動産鑑定士の登録者数は8,608人、不動産鑑定士補の人数は1,190人と少ないため、希少価値が高く重宝されやすいです。

不動産鑑定士は比較的難易度の高い資格で、合格率は短答式試験が例年32〜36%、論文式試験が、例年14〜18%となっています。

不動産鑑定士の資格があることは、不動産関連の法律や規制に関する知識や不動産投資やローンに関わる金融知識など、幅広い知識と高度な専門的スキルを持つ証明となります。

そのため不動産鑑定士の資格保有者は希少価値が高く、重宝されやすいと言えます。

参考:土地・不動産・建設業:不動産鑑定士試験 試験結果情報

資格取得後に即独立・起業できる?

不動産鑑定士資格と開業資金さえあれば、即独立・起業は可能ですが、安定して稼ぎ続ける難易度は高いと言えます。

なぜなら不動産鑑定士一本で生計を立てるには、しっかりとした顧客基盤と不動産鑑定士としての高い信頼性が重要だからです。

それらを築くには、豊富な実務経験とそれをベースとした専門知識が必要となります。

つまり実務経験がない状態で独立すると、できる仕事が少ないので仕事を取ってくるのが難しいのです。

そのため、まずは不動産鑑定事務所などで経験を積むのがおすすめです。

地方でも開業して稼げる?

東京や大阪ほど仕事は多くありませんが、地方でも稼ぐことは可能です。

地方では都市部と比べて不動産取引が少なく、鑑定依頼も多くありませんが、公的な仕事はあります。

不動産市場での鑑定士の需要の高さは開業する地域によって異なるため、地方で開業したい場合は競合性の低いエリアかどうかを見極めるのが大切です。

自宅でも開業できる?

仕事ができる環境を整えれば自宅でも開業可能です。

適切な作業スペースを確保し、必要な設備や備品を整えれば、自宅を事務所として利用できます。

オフィス賃料や光熱費などのコストを削減できるので、開業初期の費用も抑えられるでしょう。

また通勤時間の制約がなくなるので、ワークライフバランスが取りやすくなります。

経費を抑えて、自分のペースで働くことを優先するなら自宅開業も良いでしょう。

まとめ

不動産鑑定士が独立開業して成功するには、不動産鑑定士の資格取得・十分な実務経験・顧客基盤の確立・開業エリアの選択・他との差別化を図る事業内容などが必要です。

独立開業した不動産鑑定士の年収は地域・業務内容の専門性・顧客層によっては異なりますが、独立開業して年収1,000万円を超えた不動産鑑定士もいます。

将来、不動産鑑定士として独立開業を考えているなら、まずは資格取得を目指しましょう。

独学で合格が厳しいと感じたら、通信講座や予備校の利用がおすすめです。

プロ講師の指導や網羅性の高い教材で効率的に学べます。

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