国家資格である不動産鑑定士や一級建築士は、不動産業界において需要が高い資格です。

両資格とも就職に有利なため、将来に向けて取得を検討している方も多いでしょう。

合格に向けて勉強を進める前には、両資格の試験難易度の違いやダブルライセンスの必要性について気になりますよね。

本コラムでは、不動産鑑定士と一級建築士ではどちらの試験難易度が高いのかを解説します。

仕事内容や年収の違い、ダブルライセンスの必要性についても触れるため、興味がある方はぜひ今後の参考にご覧ください。

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不動産鑑定士と一級建築士の違いは?

不動産鑑定士と一級建築士は不動産にかかわる職業ですが、専門とする業務などが異なります。

2つの職業の主な違いは、以下の3つです。

  • 仕事内容の違い
  • 年収の違い
  • 試験内容の違い

仕事内容の違い

不動産鑑定士は土地や建物などの不動産に関する鑑定評価を行い、適正な経済価値を算出する業務が主な仕事です。

対して一級建築士は建物の設計や工事管理を行う技術者であり、行う仕事内容が異なります。

不動産鑑定士は独占業務として、不動産鑑定評価と結果を記す不動産鑑定評価書の作成が認められています。

鑑定以外の業務は、不動産に関する調査や分析、相談業務、コンサルティング業などです。

一方、一級建築士は建築士のトップの資格です。

建築士資格には3つの種類があり、それぞれ設計できる建造物が異なります。

中でも一級建築士は設計する建物に制限がなく、どのような構造物でも設計することが可能です。

学校や病院、劇場などの延べ面積が500㎡以上ある構造などの大規模な構造物は、一級建築士だけしか設計が認められていません。

また、設計のほかに、工事監理の仕事も建築士の独占業務になります。

独占業務以外には、建設許可申請などの行政手続きや契約書の監修、建築物に関する調査鑑定などの業務を建築士が行います。

年収の違い

不動産鑑定士と一級建築士は年収が異なります。

2019年の賃金構造基本統計調査によると、不動産鑑定士の平均年収は約754万円でした。

対して、一級建築士の平均年収は、2019年の賃金構造基本統計調査によると約718万円です。

2つの職業の平均年収を比較すると、不動産鑑定士の方がやや高いといえるでしょう。

試験内容の違い

不動産鑑定士と一級建築士では、試験内容や合格までの流れが異なります。

不動産鑑定士試験は、短答式試験と論文式試験がある二段階方式の試験です。

短答式試験に合格すると論文式試験に進むことができ、両試験に合格すれば不動産鑑定士に合格となります。

受験する科目は短答式試験が2科目、論文式試験が4科目の合計6科目です。

国土交通省の土地鑑定委員会の受験案内などでは、各試験に合格基準が設けられているという内容の記載がありますが、実際には相対評価による合否判定ではないかといわれています。

対して一級建築士試験には、学科試験と設計製図の試験があります。

不動産鑑定士試験と同様に二段階方式になっており、学科試験合格後に設計製図試験に進むことが可能です。

例年、学科試験は5科目あり、総得点の合格基準点と科目ごとの合格基準点が設けられています。

両方の基準点がクリアできれば、学科試験合格です。

対して、設計製図の試験ではひとつの課題が出題されます。

課題内容と建築物の計画に関する留意事項は事前に公表されるため、事前に対策を立てておくことは可能です。

設計製図の試験の採点では採点結果が4つのランクにわけられ、一番高いランクのみが合格となります。

学科試験と設計製図の試験の両方に合格すれば、一級建築士試験に合格となります。

不動産鑑定士試験と一級建築士試験はどっちの難易度が高い?

試験の難易度を合格までの勉強時間と合格率の観点で比較すると、不動産鑑定士試験のほうが難易度がやや高い傾向にあります。

試験の難易度は不動産鑑定士のほうが高い

まず勉強時間を比較すると、不動産鑑定士試験の方が合格までに必要な勉強時間は長くなります。

一般的に不動産鑑定士試験の合格には、約2,800時間の勉強が必要です。

約2,800時間という数字は、短答式試験合格に必要な約800時間と論文式試験に合格に必要な約2,000時間の合計です。

対して、一級建築士試験の合格までに必要な勉強時間は約1,000〜1,500時間といわれています。

不動産鑑定士試験に比べると約半分の勉強時間で合格できる傾向にあるため、不動産鑑定士試験の方が難易度は高いでしょう。

ただし、紹介した勉強時間はあくまでも目安です。

個人の持っている知識や経験によって、合格までにかかる勉強時間は変わる可能性があるでしょう。

さらに両試験の合格率を比較すると、不動産鑑定士の方が低い傾向があります。

以下の表では、不動産鑑定士試験の合格率と一級建築士試験の合格率について例年の傾向をまとめました。

1次試験合格率(例年)2次試験合格率(例年)最終合格率(例年)
不動産鑑定士試験短答式試験論文式試験約4.6~6.1%
約33~36%約14~17%
一級建築士試験学科試験設計製図の試験約5.3~7.9%
約16~22%約33~36%
※参考:土地・不動産・建設業:不動産鑑定士試験 試験結果情報 – 国土交通省試験結果:建築技術教育普及センター

最終合格率は不動産鑑定士試験が約4.6〜6.1%、一級建築士試験が約5.3〜7.9%でした。

不動産鑑定士試験の方が最終合格率がやや低いため、合格率の観点から見ても不動産鑑定士の方が難しいと考えられるでしょう。

スタートラインが異なる点に注意が必要

不動産鑑定士試験と一級建築士試験では受験できる条件が違うため、難易度についてはスタートラインが異なる点に配慮して考える必要があるでしょう。

不動産鑑定士試験には受験資格は設けられていません。

年齢や性別、学歴に問わず受験することが可能であり、不動産に関する仕事に従事していなくても挑戦できます。

実際に初学者で不動産鑑定士試験を受けている人も多いです。

対して、一級建築士試験は建築士法第14法において、建築に関する学歴と資格などにより受験資格が定められています。

一級建築士試験の受験資格は、以下のとおりです。

  • 大学、短期大学、高等専門学校、専修学校などで指定科目を修了して卒業した者
  • 二級建築士または建築設備士の資格を有する者
  • そのほか、国土交通大臣が特に認める者(外国の大学を卒業した者など)

※参考:受験資格:建築技術教育普及センター

受験資格の内容により、一級建築士試験はすでに一定の知識がある者しか受けられない試験だといえます。

勉強時間や合格率で比較すると不動産鑑定士試験の方が難しい傾向ですが、受験者のスタートラインが異なるため、難易度を比較する際には注意が必要です。

なお、一級建築士試験も受験資格が厳しい条件にもかかわらず合格率が低いため、試験の難易度は高いといえるでしょう。

不動産鑑定士と一級建築士のダブルライセンスはおすすめ?

不動産鑑定士と一級建築士のダブルライセンスは、以下2点の観点によりおすすめです。

  • 不動産鑑定士の仕事に役立つ
  • 業務の幅が広がる
  • 独立に成功しやすくなる

不動産鑑定士の仕事に役立つ

不動産鑑定士をメインの仕事にする場合、不動産鑑定士と一級建築士のダブルライセンスは業務を行う上で大いに役立ちます。

特に、不動産鑑定士の独占業務である鑑定評価の場面で、一級建築士の知識を使うことが多いです。

具体的には、建築基準法の遵法性や原価法の再調達価格、収益還元の修繕費、資本的支出の算定などで建築の知識が役立ちます。

対して、一級建築士を主な仕事とすると、不動産鑑定士の知識が使える場面はあまりないといわれています。

業務の幅が広がる

不動産鑑定士と一級建築士の両資格を取得すると、業務の幅が広がるメリットがあるでしょう。

どちらの資格も建物や土地に関する高度な専門知識や技術を有するため、不動産に関するスペシャリストとして重宝されます。

また、両資格を持っていればどちらかの仕事で思うようにいかなくても、もう一方の資格を活かして仕事に就くことが可能です。

ダブルライセンスはリスクヘッジとしても有効であり、不動産に関する仕事を幅広く行いたい場合におすすめです。

独立に成功しやすくなる

不動産鑑定士と一級建築士の両資格を持っていれば、独立開業が成功しやすくなります。

両資格とも試験難易度が高く、不動産鑑定士の登録には実務修習の修了も必要です。

ダブルライセンスには労力や期間が必要なため、どちらも取得すると自分の希少価値が上がるでしょう。

また、建築士の知識をもつ不動産鑑定士、不動産鑑定もできる一級建築士など独立する際の強みができるため、競合事務所との差別化が図れます。

強みがあれば顧客獲得の幅も広げられるため、独立後の事業も軌道に乗りやすいでしょう。

まとめ

本コラムでは、不動産鑑定士と一級建築士のどちらが難易度が高いのかについて解説しました。

以下、要点をまとめます。

  • 合格までに必要な勉強時間と最終合格率を比較すると、不動産鑑定士試験の方が難易度が高い
  • ただし、一級建築士試験には厳しい受験資格があり、不動産鑑定士試験とは受験のスタートライン異なる点で注意が必要
  • 不動産鑑定士と一級建築士のダブルライセンスは、不動産鑑定士の仕事に役立つ・業務の幅が広がる・独立が成功しやすくなる点でおすすめ

どちらも難易度は高い試験のため、ダブルライセンスを目指すには時間や労力が必要です。

短期間で合格したい方や忙しい中で合格を目指す方は、効率的に学べる通信講座の利用を検討してみても良いでしょう。

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