今回は実務経験ルートでの受験のために必要な実務経験や研修、経験の日数計算方法、考えられる就業方法などを紹介していきます。

介護福祉士になるためにさまざまなルートがありますが、その中でも実務経験ルートでの受験を考えている方もいらっしゃいます。

ぜひ参考にしてください。

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目次

介護福祉士になるには実務経験が必要?

介護福祉士になるにはさまざまなルートがありますが、全てのルートで実務経験が必要となるわけではありません

それぞれ規定がありますので詳しく見ていきましょう。

実務経験ルートには実務経験が必要

実務経験ルートは実務経験3年以上と一定の研修(実務研修や喀痰吸引研修、基礎研修)を受講すると受験資格を得ることができます

養成施設ルートに実務経験は不要

このルートは実務経験は必要ありません。

養成施設ルートでは福祉系大学、保育士養成施設、社会福祉養成施設のいずれかを卒業後、介護福祉士養成施設を1年以上かけて卒業するか、介護福祉士養成施設を2年以上かけて卒業した後に介護福祉士国家試験を受験する資格を得ることができます。

福祉系高校ルートは場合によって実務経験が必要

高等学校のカリキュラムに介護福祉士養成カリキュラムが組み込まれている学校になります。

平成20年を境にルートがわかれますので注意が必要です。

また特例高校などは実務経験が9カ月以上必要になってきます。

経済連携協定ルートは実務経験が必要

このルートでも実務経験が3年以上必要となっています。

経済連携協定(EPA)ルートは日本が外国諸国との友好を目的とし、協定を結んでいる国の方を受け入れて介護福祉士を養成するルートとなっています。

介護福祉士になるための実務経験ルートの受験資格について

実務経験ルートの受験資格を見ていきましょう。

従業期間3年従事日数540日+実務者研修 

実務経験ルートの受験資格を得るには、従事期間が3年以上(かつ540日以上)と実務者研修の受講が必要となっています。

従事期間は3年以上となっていますが、3年間在籍していただけでは日数にカウントされません。

3年以上かつ540日以上の従事日数が必要になってくるので注意が必要です。

実務者研修とは、以前の「ヘルパー1級」「介護職員基礎研修」をまとめて一本化した資格とされています。

学習内容としては初任者研修よりも多く、介護福祉士の国家試験内容が盛り込まれています。

実務者研修は以前のヘルパー資格では1級と同等の資格とされていますが、ヘルパー資格と違うのは「介護福祉士養成施設2年課程を修了」という資格も得ることができることです

介護福祉士養成施設2年課程を修了している水準の技術・知識があると判断され、介護福祉士国家試験の受験資格を得ることができます。

従業期間3年従事日数540日+介護職員基礎研修・喀痰吸引等研修

従事日数が3年以上かつ540日以上あり、介護職員基礎研修と喀痰吸引等研修を修了すると介護福祉士国家試験の受験資格を得ることができます

介護職員基礎研修は2013年度に廃止となっています。

2012年度までに取得された方は、次項の喀痰吸引研修を修了することで介護福祉士国家試験の受験資格を得ることができます。

また、喀痰吸引等研修とは介護職員が医師の指示、看護師の指導のもと喀痰吸引と経管栄養を実施する資格を得る研修です。

  • 実務者研修や2016年以降の介護福祉士養成カリキュラムでは「医療的ケア」と呼ばれる項目になっています。

民間企業や都道府県委託事業などで実施されている研修で、口腔と鼻腔、気管切開部からの吸引や胃ろう(腸ろう)、経鼻経管栄養、半固形化栄養剤の注入を行うことができる資格を得ます。

医療的ケアの分野も介護福祉士国家試験の出題範囲となっています

実務経験の範囲 実務経験として認められる仕事の種類

それでは実務経験の範囲というのは、どのような仕事の種類が該当するのでしょうか

注意点と一緒にみていきましょう。

児童分野

児童分野とは、知的障害児施設や肢体不自由児施設などを指します

対象となる業種は、

  • 保育士
  • 介助員
  • 看護補助者
  • 指導員
  • 児童指導員  

など入所者の保護に直接関わる職種が該当となります。

また保育所等訪問支援、居宅訪問型児童発達支援の訪問支援員も該当です。

これらは主な業務が介護等の業務であった場合に実務経験になりますので、注意しましょう。

障がい者分野

障害者自立支援法関係の施設・事業で、障害者支援施設、療養介護、生活介護、グループホーム、就労継続支援、就労移行支援の介護職員や寮母、介助員が対象になります。

次の職種にかぎっては主な業務が介護であって、介護職員の配置がない場合にかぎります。

  • 保育士
  • 生活支援員
  • 指導員
  • 精神障害者社会復帰指導員
  • 世話人

居宅介護、重度訪問介護などの訪問介護員、ガイドヘルパーなどの主な業務が介護等の業務の方も対象になります。

高齢者分野

デイサービスや特別養護老人ホーム、指定訪問介護や指定訪問看護など介護保険で利用できる介護サービスを提供する事業所です。

  • 介護職員
  • 介護従事者
  • 介助員
  • 支援員

など介護業務が主である方が対象です。

しかしデイケアや検体の運搬、空床のベッドメーキングが主な場合には実務経験にはなりませんので注意が必要です。

その他の分野

その他の分野とは、生活保護法関係の施設(救護施設、更生施設)や社会福祉施設(地域福祉センター、ハンセン病療養所、原子爆弾被爆者デイサービス事業、家政婦紹介所など)、病院、診療所をさします。

  • 介護職員
  • 介護員
  • 介助員
  • 看護補助者
  • 看護助手

などで主な業務が介護などの業務である方が対象です。

介護等の便宜を供与する事業

地方公共団体が定める条例・実施要綱等に基づく事業や介護保険法の基準該当居宅、介護予防サービス、障害者総合支援法の基準該当障害福祉サービス、その他の介護などの便宜と供与する事業が該当になります。

また、非営利法人が実施する介護保険法の指定、指定介護予防、指定地域密着型介護予防などのサービスまたは、障害福祉サービス事業も対象になります。

非営利法人の場合は、法人格を取得する前の期間も実務経験の対象になります。

勤務形態はアルバイトや時短でも大丈夫?

実務経験の範囲を考える際には、雇用形態は問題ありません

対象となる職種で雇用されていれば実務経験の日数に入りますので、アルバイトでも時短勤務でも範囲内です。

在籍していた事業所や施設が廃業していたら?

以前務めていた場所が廃業や休止していたとしても実務経験証明書を提出しなくてはなりません

また施設の文書保管期間経過等の理由で記録が処分された場合でも同様です。

しかし以前務めていた場所が閉鎖や廃業していると作成してもらうことが難しくなります。

そのような場合には、

  • 「施設・事業種類」が確認できる書類(閉鎖事項全部証明書など)
  • 「職種(職名)」が角煮にできる書類(雇用契約書、労働契約書、辞令、給与明細など)
  • 「従業期間(雇用期間・在籍期間・登録期間)」が確認できる書類(源泉徴収明細など)
  • 「従業従事日数(出勤日数・労働日数)」が確認できる書類(勤務表、給与明細など)

を全て揃えて、受験の手引きにある「廃業した施設・事業所等の実務経験について(自己申告)」を提出しましょう。

全てが揃わないと受験できませんので不備がないようにしっかり確認しましょう

実務経験として認められない職種

受験資格とならないものは次の通りです。

  1. 「人員配置基準」「運営要綱」等に示された、主たる業務が介護等の業務と認められない職種
  • 生活相談員、支援相談員などの相談援助業務を行う職種
  • 医師、看護師、准看護師
  • 理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などの機能訓練担当職員(該当業務を補助する方を含む)
  • 心理指導担当職員、作業指導員、職業指導員、就労支援員
  • 事務員、介護支援専門員、調理員、栄養士、計画作成担当者、福祉用具専門相談員
  1. 主たる業務が介護等の業務でないことが明確な職種

例:相談員、警備員、運転手、用務員、清掃員、あん摩マッサージ指圧師

従事期間や従事日数はクリアしていても、実務経験の範囲外となると受験資格は得られませんので注意しましょう。

社会福祉振興・試験センターHP「受験資格」より抜粋)

受験資格に必要な従業期間と従業日数について

受験資格の要件でわかりにくい従業期間と従業日数について詳しく見ていきましょう

しっかり理解せずに簡単に計算をしていると、申し込みしても受験資格がないものとされて受験ができなくなるのでしっかり理解しておく必要があります

従事期間

従業期間は3年(1095日)以上が必要になってきます。

この3年のあいだに産休や育休、病休などの休職期間も含まれます。

ただし退職して再就職するまでのあいだはカウントされませんので注意してください。

従事日数

従事日数は540日以上が必要になってきます。

3年以上の従事期間がクリアしても、週に1.2回しか出勤していない場合、3年間で約310日となります。

3年で540日の従事日数はクリアできませんので受験資格がないものとみなされます。

目安としては週に4日以上勤務していると3年間で540日はクリア可能です。

計算方法

一か所で3年以上かつ540日以上の経験日数が把握できれば計算するのは簡単です。

しかし複数の施設を合算して計算する場合はこちら(福祉振興・試験センター「従業期間計算表」)のページを使うと手間をかけることなく、日数が確認できます。

掛け持ちでの重複期間・重複日は?

複数の事業所に従事していて、同日に従事している場合、従業期間と従事日数は1日として計算していきます。

事業所を掛け持ちしていた人は「従事日数内訳証明書」が必要

従事日数内訳証明書は複数の事業所を掛け持ちしている方は実務経験証明書と一緒に提出しなければなりません。

掛け持ち期間が重なった事業所ごとに、従事日数内訳証明書を準備しなければなりません。

従事日数内訳証明書はこちらからダウンロードすることができます。

実務経験見込みとは?

実務経験見込みとは、出願時点ではまだ受験資格を満たしていないが、指定された日までに受験資格を満たすことが条件で受験することです。

介護福祉士国家試験の願書を出すのは例年だと8月から9月頃となっています。

実際に筆記試験が行われるのは翌年1月末のため、3カ月の差があります。

実務経験証明書を提出する際、実務経験の期間は願書を出す翌年3月31日までに3年以上かつ540日以上を達成する見込みがあれば、受験可能となっています。

実務経験見込みで申し込めるケース

実務経験見込みで申し込めるケースとしては、「翌年3月31日までに介護などの業務に従事する予定がある方」が対象になっています。

実務経験見込みで申し込む際の注意点

もしも翌年3月31日まで従事せずに実務経験に達しなかった場合には、受験資格がなかったものと扱われるので、注意が必要です。

就業場所の変更は可能ですが異動や転職で主な業務が介護等に従事していないとならないため、職名や職位は必ず確認しましょう。

実務経験ルートの受験に必要な実務経験証明書

では実務経験証明書について詳しく見ていきましょう

入手方法と記入方法

実務経験証明書は社会福祉振興・試験センターHPのこちらからダウンロードすることができます。

ダウンロードして職場に提出し、記載してもらいましょう。

ある程度日数が必要な場合もありますし、複数の場所から得る必要があるため日数には余裕をもって行動することをおすすめします

実務経験証明書の送り方

受験申込書などを一緒に社会福祉振興・試験センターへ郵送しましょう。

実務経験証明書を準備し、実務経験証明書と従事日数内訳証明書(必要者のみ)を提出しても、受験申込は完了しません。

実務経験ルートに必要な書類まとめ

最後に実務経験ルートで受験するために必要な書類についてまとめています。

受験申込書 

受験をするためには必須の書類になります。

社会福祉振興・試験センターHPのこちらからダウンロードすることもできますし、受験の手引きの請求をすることで郵送してもらうこともできます。

受験手数料振替払込受付証明書貼付用紙

受験の手引きなどが届き、振込みを終了した際に受け取った領収書を、受験手数料振替払込受付証明書貼付用紙に貼り、受験申込書などと一緒に郵送します。

「受験の手引き」を取り寄せると同封されています。

受験用写真等確認票

受験をするときに本人確認のため、本人写真を貼り付けた受験票が必要になります。

受験票に利用する写真を添付して郵送します。

「受験の手引き」を取り寄せると同封されています。

実務経験(見込み)証明書

実務経験(見込み)証明書は従事期間や従事日数を証明してもらう事業所などに記入してもらいます

記入後に受け取り、郵送します。

ダウンロードはこちらから可能です。

従事日数内訳証明書

複数の就業場所を掛け持ちしていた場合に使用します。

複数の就業場所が重複して就業していない場合には必要ありません。

ダウンロードはこちらから可能です。

実務者研修修了(見込み)証明書

実務経験ルートの場合は実務者研修修了することも受験要件になっています。

実務者研修を修了している、または修了する予定(見込み)を証明する証明書が必要になってきます。

ダウンロードはこちらから可能です。

介護福祉士国家試験は実務経験を積みながら試験対策を

実務経験ルートの場合には研修を受けたり、就業しながらの受験となります。

介護福祉士国家試験の内容は日頃の業務や実務者研修での知識でも身に付きます。

現場での日々が勉強となることが実務経験ルートの強みですので、毎日の業務一つ一つが国家試験対策に繋がっています。

実務者研修などでインプットしたものを実際の現場でアウトプットしながら学習できるため、たくさんの事例に触れて、しっかりと知識を吸収しましょう。

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この記事の「監修者」遠藤 愛 講師


遠藤 愛 講師


全くの異業種から介護の世界に飛び込み、訪問介護員として介護業界での勤務をスタート。住居環境・経済状況が様々なケースを担当。

現在は、医療ソーシャルワーカーとして、地域の在宅・施設の福祉職と協働しながら、数多くの高齢者・障害者とその家族への退院支援業務にあたる。

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