「介護福祉士試験の『人間の尊厳と自立』は難しそう…」と感じていませんか?

「人間の尊厳と自立」は、出題範囲や試験問題の傾向を把握し、試験対策を立てることが十分可能な科目です。

この記事では、「人間の尊厳と自立」の重要性や勉強法について解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。

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「人間の尊厳と自立」科目とは?

「人間の尊厳と自立」は、内容が哲学的・倫理的と言える科目かもしれません。

同科目の内容は、「人間の尊厳」や「自立」が、どのように法や制度、介護に反映されているかを学べる科目です。

一見、介護実務とは関係ないように感じるかもしれませんが、実は介護の基本となる科目と言えます。

介護福祉士としての基本的な心構えでもあり、介護を実践する上での根拠が学べるということでもあるのです。

また、「人間の尊厳と自立」は他の科目の基本となる科目であり、例えるなら「幹」と「枝葉」の関係です。

特に、介護福祉士試験で同じ科目群として扱われている「介護の基本」との関係性が強く、「人間の尊厳と自立」では理念を、「介護の基本」では理念が反映された法や介護などを学ぶ形になっています。

問題数は2問のみですが、「介護の基本」の10問と同じ科目群として扱われます。

そのため、両科目あわせた12問中の1点以上獲得すれば、一つの科目群で必ず1点以上獲得しないと不合格になる、という合格基準はクリアすることになります。

問題数は多くありませんが、実務や試験の基本となる科目なので、しっかりとした理解が大切と言えます。

介護における「人間の尊厳」とは?

高齢、障害によって自立した生活を送ることが難しい人たちの介護を行う際、介護職が最も大切にしなければならない考え方に「尊厳を保持する」があります。

「人間の尊厳」とは、私たち人間が人として、個人として尊重されることであり、一人ひとりの生き方を大切にして幸せを求めていく「価値のある存在」と認めることです。

介護の現場においても、利用者の「その人らしい生活・生き方」を尊重し、決して人としての尊厳を侵すことなく、生活を支援することが求められています。

利用者の尊厳を保持する考え方

全ての人は、人として生きる権利を持ち、個人として尊重される「尊厳」を持って生きています。

これは高齢者も障害者も同じで、介護者は「人として価値のある、尊い存在である」と認め、介護を提供するうえではその尊厳を守ることが重要です。

介護現場において利用者の尊厳を保持することは、介護者が最も大切にしなければならない基本となる考え方です。

次の事例を通して「人間の尊厳を保持する」とはどのようなものなのか、一緒に考えてみましょう。

事例:障害の受容

Aさん(42歳・男性)は会社員です。
元々LDLコレステロール値が高く、健康診断で「要治療」「再検査」と出ることが多くあったAさんは、40歳になって通院した結果「家族性高コレステロール血症」と診断を受け、コレストロール値を下げる薬を飲んでいました。

伴侶と巡り合い、マイホームも購入し、より一層仕事に精を出そうとした矢先に、脳梗塞を患い救急病院へ緊急搬送されました。結果、右半身の麻痺が残って要介護状態となりました。

急性期病院を退院してから、回復期のリハビリテーション病院へ転院することになりました。
しかし、Aさんはリハビリテーションに前向きになれません。
「なぜ私が?」「なぜこのタイミングで?」「社会復帰できなかったらどうしよう」「恥ずかしい姿を見られたくない」など不満や不安があることから、Aさんは生きる気力を失っており、社会復帰の見通しも立たないままでした。

Aさんを支援・介助する職員は、Aさんの前向きでない姿勢に対しても決して否定せず、Aさんを人として、価値のある存在として受け入れるよう支援しました。
Aさんの感情の揺れ動きも含めて、全てを受け入れて支援しました。

つまり、支援者は「人間の尊厳を保持する」という価値観に裏付けられた姿勢、真摯に関わる態度を取り続けたのです。

Aさんはリハビリテーション病院での訓練に励み、介護職やリハビリのセラピストの「尊厳を保持する」支援を受けるなか、少しずつ自身の「障害」について考え始めました。
時間はかかりましたが、「自分が障害者になった意味」を肯定的に捉えるようになったのです。

時を同じくしてAさんの勤務先の社長から「病気が治ったら、いつでもいいから帰って来て下さい。無理しないで。またAさんと一緒に仕事がしたいです」との手紙が届きました。

これまで自身の障害をショックに感じ、時には否認・混乱していたのが、支援者による尊厳保持の介助や関わりと、社長からの手紙をきっかけに、障害の受容へと心が移り変わっていったのです。

家族の支えもあって、Aさんは次第に社会復帰に向けて生きる勇気を持てるようになりました。
そして、具体的なリハビリテーション計画、生活支援計画をもとに、社会復帰に向けて一歩ずつ前を向いて歩み始めました。

解説

このAさんの事例から、「尊厳の保持」と「障害の受容」を学ぶことができます。

支援者・介護職による「Aさんのそのままを受け入れる姿勢=尊厳を保持する支援」が、結果としてAさん自身の障害の受容に繋がったのです。

その後、社長からの手紙、家族の支えを元に「私は必要とされている人材だ」「家族のためにもう一度がんばろう」と思えるようになり、決して障害を否定するのではなく、障害と共に生きる選択をしたのです。

「人間の尊厳と自立」の勉強法

「人間の尊厳と自立」は問題数が2問しかないので、「あまり勉強時間をかけたくない」というのが受験生の本音かもしれません。

しかし、あまり勉強しないことによって、実際の試験で2問とも落とすことも十分考えられます。

そうならないために科目の特性を踏まえた勉強法や、2問しか出題されないからこそ出題傾向を見極めた勉強法を知る必要があります。

関連コラム:【科目別】介護福祉士国家試験問題の出題傾向と勉強の優先度

同じ科目群の「介護の基本」と関連させて勉強する

「人間の尊厳と自立」は「介護の基本」と関連性が強い科目なので、できるだけ近いタイミングで勉強するのが効率的です。

下表は、介護福祉士試験の主催団体である公益財団法人社会福祉振興・試験センターが公表している「人間の尊厳と自立」の出題基準です。

出題基準(人間の尊厳と自立)
大項目 中項目 小項目
1 人間の尊厳と自立 1)人間理解と尊厳 ・「人間」の多面的理解
・人間の尊厳
・自立・自律
2 介護における尊厳の保持・自立支援 1)人権と尊厳 ・権利擁護・アドボカシー
・人権尊重
・身体的・精神的・社会的な自立支援

同基準で示されているそれぞれの項目は「介護の基本」と関連があり、実際に出題される問題も、「人間の尊厳と自立」の内容を踏まえた問題と言っても言い過ぎではないでしょう。

そのため、両科目を関連させて勉強することで効率的に勉強を進めることができます。

関連コラム:【介護福祉士国家試験】「介護の基本」の基本情報と勉強法

出題傾向を把握した対策を立てる

試験合格のためには、出題傾向を把握してしっかりと対策を立てて、勉強することが大切です。

例年の出題傾向では、

・人物や用語、法律などの知識を問う問題
・事例をもとに適切な対応を問う問題

が1問ずつ出題されます。

知識問題対策

知識問題対策は地道な暗記が必要になります。

下記は第33回(令和2年度)に出題された実際の試験問題です。

人権や福祉の考え方に影響を与えた人物に関する次の記述のうち、正しいものを1 つ選びなさい。

1 リッチモンド(Richmond, M.)は、『ソーシャル・ケース・ワークとは何か』をまとめ、現在の社会福祉、介護福祉に影響を及ぼした。
2 フロイト(Freud, S.)がまとめた『種の起源』の考え方は、後の「優生思想」につながった。
3 マルサス(Malthus, T.)は、人間の無意識の研究を行って、『精神分析学入門』をまとめた。
4 ヘレン・ケラー(Keller, H.)は、『看護覚え書』の中で「療養上の世話」を看護の役割として示した。
5 ダーウィン(Darwin, C.)は、『人口論』の中で貧困原因を個人の人格の問題とした。

(解答は1)

第33回(令和2年度)以外では、第32回(令和元年度)はアドボカシー、第31回(平成30年度)は『夜と霧』や『死と愛』の著者であるフランクルが提唱した価値の説明について問う問題が出題されました。

このような知識を問う問題は、単純な暗記問題なので、地道な勉強が必要になります。

限られた時間の中で暗記する必要があるので大変かもしれませんが、工夫次第で効率的に勉強できます。

事例問題対策

事例問題の解答力を上げるには、問題集で問題を解く前にしっかりと基本を理解することが大切です。

下記は第33回(令和2年度)に出題された実際の試験問題です。

自宅で生活しているAさん(87 歳,男性,要介護 3 )は、 7 年前に脳梗塞(cerebral infarction)で左片麻痺となり,訪問介護(ホームヘルプサービス)を利用していた。Aさんは食べることを楽しみにしていたが、最近、食事中にむせることが多くなり、誤嚥を繰り返していた。誤嚥による緊急搬送の後、医師は妻に、「今後も自宅で生活を続けるならば,胃ろうを勧める」と話した。妻は仕方がないと諦めていたが、別に暮らしている長男は胃ろうの造設について納得していなかった。長男が実家を訪れるたびに、Aさんの今後の生活をめぐって口論が繰り返されていた。妻は訪問介護員(ホームヘルパー)にどうしたらよいか相談した。介護福祉職の職業倫理に基づく対応として、最も適切なものを 1 つ選びなさい。

1 「医療的なことについては発言できません」
2 「医師の判断なら、それに従うのが良いと思います」
3 「Aさん自身は、どのようにお考えなのでしょうか」
4 「息子さんの気持ちより、一緒に暮らす奥さんの気持ちが優先されますよ」
5 「息子さんと一緒に、医師の話を聞きに行ってみてください

(解答は3)

このような問題の解答力を上げるには、「人間の尊厳と自立」で介護の根拠をしっかりと学んだうえで問題をたくさん解いて問題に慣れることが大切なように感じます。

まずは、「人間の尊厳と自立」の基本的な部分を勉強して理解しましょう。

また、問題を解いた後はしっかりと解答の解説文を読んでください。

正解となる選択肢がなぜ正解なのか、間違いがなぜ間違いなのかをしっかり理解してください。

事例問題は正しい順番でしっかり勉強すれば、労力の割には得点を獲得しやすく、暗記問題よりは比較的勉強しやすく、得点源になりやすいと言えます。

ただし、しっかりと理解したうえで問題演習に望まないと、「正解の選択肢を選べるがなぜ正解なのかよくわからない」ということになり、とても危険な状態になります。

試験対策としては、「人間と社会」で出題される暗記の一問は、ここ数年難しい問題も出題されていますが、基本的なことを確実を暗記することは諦めないでください。

勉強前から諦めることを選択すれば、他の問題でも同じことをしてしまい不合格になりかねません。

単純な暗記は時間がかかりますが、工夫して勉強することで効率的に暗記することが可能です。

要点をまとめたペーパーを部屋のどこかへ貼って、普段から見るようにすることも良いでしょう。

暗記の範囲は膨大な量があるわけではなく、

・日本国憲法第13条(幸福追求権)、第25条(生存権)
・生活保護法(生存権の理念を具現化した法律、朝日訴訟など)
・介護保険法や障害者基本法など(人間の尊厳と福祉関連法との関係)
・権利擁護の理解(アドボカシーやエンパワメント)
・自立と自律の理解

などがポイントになります。

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この記事の監修者 遠藤 愛 講師

遠藤 愛 講師

全くの異業種から介護の世界に飛び込み、訪問介護員として介護業界での勤務をスタート。住居環境・経済状況が様々なケースを担当。

現在は、医療ソーシャルワーカーとして、地域の在宅・施設の福祉職と協働しながら、数多くの高齢者・障害者とその家族への退院支援業務にあたる。

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