【介護福祉士国家試験】「介護過程」の基本情報と勉強法
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「介護過程」は、「高齢者一人ひとりに効果的な介護とは何か」を考える科目です。
そのためには介護に関する基礎知識だけではなく、専門的な知見から考察する力が求められます。
本記事では、これから「介護過程」を勉強しようと思っている人やこの科目で点数が取りにくいと思っている人に「介護過程」の特徴や難易度、項目ごとの学習ポイントを紹介していきます。
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「介護過程」科目とは?
高齢者介護の過程は、アセスメント(情報収集と分析)から始まり、計画の立案を経てサービスが実施され、一定期間のあと評価、終結というプロセスで構成されます。
介護過程の科目では、それぞれの過程の特徴と高齢者の特性を理解したうえで、「効果的な介護はどのように展開するべきか」が主な出題のテーマになります。
介護過程の重要度
介護過程の重要度は、全13科目の中でも高い科目に位置づけられます。
なぜなら介護過程をマスターすることにより、介護福祉職としての実践スキルの向上はもちろん、介護の意義について考察する力が身につきます。
「その介護がなぜ必要なのか」という根拠に基づく介護実践は、利用者にとって効果的なサービスを提供するだけでなく、質の高い人材育成にも関係しています。
関連コラム:【科目別】介護福祉士国家試験問題の出題傾向と勉強の優先度
介護過程の問題数と難易度
介護過程は8問が出題され、難易度はやや高いほうです。
事例問題の場合、年齢や疾患、生活環境を具体的に想定した問題が出題されます。
利用者の状態像をどれだけイメージできるかがポイントになります。
介護現場での経験があるからと安易に考えずに、知識を活かして理論的に解くようにようにしましょう。
介護における「介護過程」とは?
介護過程とは、利用者・家族が抱える課題を解決するため、または希望する生活を実現するためにどのような介護が必要なのかを考え、実践するプロセスを指します。
一般的には次の段階を踏みます。
- 情報収集と整理(アセスメント)
- 計画の立案(プランニング)
- 介護の実践
- 評価
このような一連の流れを、介護過程(ケアマネジメント)といいます。
介護保険制度が登場し、介護現場に介護過程(ケアマネジメント)が導入された理由は、目的・根拠に基づいた介護の提供につなげるためです。
利用者一人ひとりに介護過程(ケアマネジメント)を実践し、これまでの介護職員による経験と勘に加えて、「目的・根拠」に基づいた介護を提供することを目指したのです。
介護過程は、目的・根拠に基づいて、どのような介護がどのくらい提供されたのかを記録し、それを振り返ることで利用者の生活が質的に向上することを狙いとしています。
介護過程の展開
1.情報収集と整理(アセスメント)
介護過程の第一段階において、利用者に関する情報を収集するとともに、どのようなニーズ・課題があるかを正しく把握することです。
情報収集では、利用者本人だけでなく家族から聞き取りを行ったり、利用者の既往歴・性格などを観察したりすることも有効です。
また、他職種(リハビリ、看護師等)からのヒアリングも欠かすことはできません。
このようにして集めた情報を整理し、優先順位を付け、彼らの抱える生活上の課題にはどのような原因があるのか、どのような状況から生じているかを明らかにする作業です。
2.計画の立案(プランニング)
アセスメントで明確になった生活上の課題に対して、具体的な介護計画を立案する段階です。
生活上の課題を解決する目的で実践されるサービス内容は何かを考え、介護計画・個別サービス計画書を作成します。
まずは長期目標と短期目標を立て、その目標を達成するために、どのような介護を、どのような方法で、何回、評価方法は、注意点は、等を考えて具体的なプログラムに落とし込んでいきます。
一度立てたプランは変更ができない訳ではありません。
実施と評価を繰り返して、利用者の生活の質的向上に資すると判断できれば、計画内容を変更することができます(後述)。
3.実施
介護計画・個別サービス計画書に則って、実際の現場で介護サービスを提供する段階です。
実際に介護サービスを行う際には、次のような点に注意します。
- 介護計画の内容を本人・家族が了承していること
- 常に計画の内容を意識して(根拠に基づいて)、介護を提供すること
- 介護計画の内容を、他の介護職員・専門職と共有すること
- 次の段階の「評価」に役立てるため、気づいたことは記録に留めておくこと
このように、「何となく」や「勘で」介護を提供するのではなく、目的・根拠を明確にして介護を提供することが重要なのです。
5.評価
実施した介護の効果を判定し、長期目標・短期目標に対してどの程度達成できたかを評価する段階です。
提供した介護は利用者に対してどの程度の効果があったのか、方法・量は適切だったのか、立てた目標に対してどのくらい達成できたのかをチェックします。
チェック・評価は複数人で行い、様々な視点からその妥当性を判断します。
目標が達成されていない場合や、新たに課題が見つかった場合は、プランを見直す作業に入ります。
この場合は、もう一度アセスメントから始めて、改めて情報収集・分析を行い、再度介護計画を作成します。
このように①情報収集と整理(アセスメント)→②計画の立案(プランニング)→③実施→④評価→再アセスメント、と一連の流れを繰り返して、利用者の生活の質的向上を図る取り組み・プロセスを介護過程といいます。
「介護過程」の勉強法
介護過程は事例問題が年度によっては半数を占めているので、基礎知識を身につけていることが重要です。
「介護の基本」「生活支援技術」などの科目で、ある程度の基礎力をつけてから取り組むと理解が進むでしょう。
関連コラム:【介護福祉士国家試験】「介護の基本」の基本情報と勉強法
関連コラム:【介護福祉士国家試験】「生活支援技術」の基本情報と勉強法
次に具体的な学習ポイントについて、出題基準の4大項目を取り上げて、紹介します。
1 介護過程の意義
介護過程の目的に関する問題は、毎年確実に出題されるテーマです。
第33回、32回、31回の問題をさかのぼってみても、3年連続出題されています。
「なぜ介護が根拠に基づいて提供されることが重要なのか」というテーマについては、テキストや問題集で繰り返し学習しておきましょう。
2 介護過程の展開
利用者は一人ひとり課題や目標をもっているので、出来上がった介護計画書の内容は異なります。
ですから情報収集の段階において生活歴やADL、生活環境などを丁寧に聞き取り、ご利用者がどのような暮らしを望んでいるか、把握することがポイントになります。
近年の出題傾向としては、「情報収集」や「アセスメント」という場面が多く出題されていますので、それぞれの目的は必ず理解しておきましょう。
3 介護過程の実践的展開
介護過程の実践的展開については、具体例をもとに事例問題として出題されます。
多様な状況下にある利用者の事例問題を正解に導くためには、個別の課題を客観的に把握して、どうすれば望んでいる生活を実現できるか最善の方法を選択することが重要です。
例年の出題傾向をみると、介護計画や目標設定がよく問われているので、事例の利用者のニーズと介護計画の方向性があっているか、という視点が重要なポイントになります。
4 介護過程とチームアプローチ
出題の頻度としては4つの中で最も低いですが、ケアマネジャーが中心となって行う在宅サービスでの多職種連携や担当者会議などがこの項目のテーマになります。
たとえば在宅で看取りを希望する高齢者は昨今増加していますので、「医療と介護の連携」などネットで検索して、現状や課題を確認しておくことをおすすめします。
「介護過程」と深くかかわる科学的介護
介護過程のテーマは根拠に基づいた介護実践がされているかどうかという視点です。
これは2021年度介護報酬改定で登場した科学的介護情報システム(LIFE)と同じ考え方です。
介護過程の内容を頭に入れながら、国が示した新しい介護実践を読むと、介護過程が科学的介護の考えの基礎となっており、今後介護福祉専門職には必要不可欠の専門技術となることがわかります。
試験全般にかかわる内容なので、目を通しておきましょう。
介護過程の出題ポイント【過去問】
ここからは介護福祉士国家試験の過去問のうち、介護過程に関する問題を一つ取り上げて解説します。皆さんも一緒に解いてみて下さい。
問題62 介護過程における情報収集に関する次の記述のうち、最も適切なものを 1つ選びなさい。
※出典:第34回介護福祉士国家試験(財団法人 社会福祉振興・試験センター)
1 利用者の日常生活の困難な部分を中心に収集する。
2 利用者との会話は解釈して記載する。
3 他の専門職が記載した記録は直接的な情報として扱う。
4 利用者の生活に対する思いを大切にしながら収集する。
5 情報収集はモニタリング(monitoring)を実施してから行う。
正解は「4」です。
介護過程は、利用者の希望する生活・課題を解決する目的で行なわれる一連の取り組みです。
ご本人の意思伝達などに問題が無ければ、生活に対する思いを聞き取り、それを大切にしながら情報収集することは介護職に求められる適切な姿勢であるといえます。
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▶資料請求して特典を受け取るこの記事の監修者 遠藤 愛 講師
全くの異業種から介護の世界に飛び込み、訪問介護員として介護業界での勤務をスタート。住居環境・経済状況が様々なケースを担当。
現在は、医療ソーシャルワーカーとして、地域の在宅・施設の福祉職と協働しながら、数多くの高齢者・障害者とその家族への退院支援業務にあたる。