「介護福祉士の試験はどんな内容なのかな」と思っている方はいませんか?

 実は、介護福祉士の資格を取得することで、「資格手当がつく」や「他の資格へステップアップできる」などのメリットがあります。

「介護の資格であることぐらいしか知らない」という方にも、介護福祉士の試験内容や受験資格などをわかりやすく解説します。

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介護福祉士とは

介護福祉士とは、介護の専門的な知識と技術を持ち、身体や精神の障害により日常生活に困っている方への介護や、他の介護者への指導などをする、介護の国家資格です。

実務者研修や初任者研修などの介護系資格の中でも高く評価されていて、社会福祉士や精神保健福祉士とともに、福祉系三大国家資格と呼ばれています。

就職・転職活動を有利に行えるだけではなく、福祉施設で勤務する場合は、施設によっても違いますが、5000~30000円程度の資格手当がつくのが一般的です。

受験資格を得るためには4つのルート(養成施設ルート、実務経験ルート、福祉高校ルート、EPAルート経済連携協定))があります。

ただし、実務経験ルート(3年以上の介護の実務経験+実務者研修修了など)であれば、大学や専門学校などで学ばなくても受験できるので、他の業界から介護業界へ転職した方の多くが、このルートで介護福祉士試験を受験する傾向があります。

関連コラム:介護福祉士とは?仕事内容、働く場所、なり方を紹介

介護福祉士国家試験には受験資格が必要

介護福祉士国家試験は、受験するための資格が必要になります。

受験資格を得るためのルートは、以下の4通りです。

1. 養成施設ルート

指定の介護福祉士養成施設を卒業した方向けの受験資格ルートです。

養成施設ルートは、平成28年度までは試験を受ける必要がなく、卒業することで介護福祉士の資格を取得できました。

しかし、平成29年度からは介護福祉士国家試験を受験することが可能となり、平成29年度から令和9年度までに養成施設を卒業する方は、5年間介護福祉士になれます。

この5年間で介護福祉士国家試験に合格するか、卒業後5年間続けて介護の仕事につくことで、5年後も介護福祉士として登録することができます。

令和9年度以降に養成施設を卒業する方は、国家試験への受験が必須となります。

養成施設ルートでは以前なら卒業するだけで資格が手に入りましたが、介護現場ではより専門性の高い人材が求められるようになり、受験が必須化されているという流れになります。

2. 実務経験ルート

介護職として働きながら介護福祉士の資格取得を目指すルートです。

実務経験は介護の業務に就労した期間が、下記の期間と日数の要件を満たす必要があります。

従業期間は在職期間、従事日数は実際に介護業務に従事した日数です。

  • 従業期間3年(1,095日)以上
  • 従事日数540日以上

この2つの要件を満たせば、実務経験はクリアできます。

しかし、実務経験のみでは実務経験ルートでの受験資格を得ることはできません。

実務経験に加えて、実務者研修、または介護職員基礎研修+喀痰吸引等研修を修了する必要があります。

実務経験ルートの注意点

申し込みの際に実務経験の条件を満たしていなくても、試験実施年度の3月31日までに従業期間、従事日数が上記以上になる見込みの場合には「実務経験見込み」として受験することができます。

1年に1回しかない介護福祉士国家試験です。

次の年まで受験を待たなくても受験できる可能性がありますので、いつの時点で実務経験を満たすか勤務する事業所に確認することをおすすめします。

3. 福祉系高校ルート

福祉系高校に入学し、指定の単位を修めて卒業した方が福祉系高校ルートの受験資格があります。

ただし以下の方は、筆記試験合格後、介護福祉士資格の登録を申請するまでに「介護過程Ⅲ」を受講し、登録申請時に「介護過程Ⅲ修了証明書」を提出する必要があります。

  • 平成20年度以前に福祉系高等学校(専攻科を含む)に入学し、卒業した方
  • 特例高等学校(専攻科を含む)を卒業し、9ヶ月以上介護等の業務に従事した方

※令和5年度までに、介護技術講習会または介護過程を修了、かつ修了から3年を経過していない方は、登録申請時に「介護技術講習修了証明書」または「介護過程修了証明書」を提出することにより、「介護過程Ⅲ修了証明書」の提出は必要ありません。

4. 経済連携協定(EPA)ルート

経済連携協定(EPA)に基づいて一定の要件を満たして入国され、受け入れ施設において介護福祉士の資格を目指して研修しながら就労している外国製の方をEPA介護福祉士候補者と呼びます。

EPA介護福祉士候補者が受験資格を得るのが経済連携協定(EPA)ルートです。

平成20年度から開始されて、現在のところ対象国はインドネシア、フィリピン、ベトナムの3か国のみです。

EPA候補者で「令和6年5月以前入国者」の方は、筆記試験合格後、介護福祉士資格の登録を申請するまでに「介護過程Ⅲ」を受講し、登録申請時に「介護過程Ⅲ修了証明書」を提出する必要があります。

※令和5年度までに、介護技術講習会または介護過程を修了、かつ修了から3年を経過していない方は、登録申請時に「介護技術講習修了証明書」または「介護過程修了証明書」を提出することにより、「介護過程Ⅲ修了証明書」の提出は必要ありません。

※「令和6年5月以前入国者」の方で実務者研修を修了している方は、登録申請時に「実務者研修修了証明書」を提出することにより、「介護過程Ⅲ修了証明書」の提出は必要ありません。

受験資格について気になる方は、こちらのコラムも参考にしてみてください。

関連コラム:【図解あり】介護福祉士試験の受験資格と対象者をわかりやすく紹介

介護福祉士試験の試験内容

受験者数と合格率の推移

介護福祉士の合格率は下表の通りです。

  合格率(%) 合格者数(人) 受験者数(人)
令和5年度
(第36回)
82.8% 61,747 74,595
令和4年度
(第35回)
84.3 66,711 79,151
令和3年度
(第34回)
72.3 60,099 83,082
令和2年度
(第33回)
71.0 59,975 84,483
令和元年度
(第32回)
69.9 58,745 84,032

関連コラム:介護福祉士の合格率と合格基準点(難易度補正)について解説!

介護福祉士国家試験にかかる費用

受験料はどの受験資格のルートでも18,380円の費用がかかります。

介護福祉士国家試験の日程

第37回介護福祉士国家試験の筆記試験は、令和7年1月26日(日)です。

合格発表日は令和6年3月24日(月)です。

合格発表の公開予定時間は午後2時で、合格者の情報は社会福祉振興・試験センターに掲載されます。

試験は年に1度、例年1月下旬に筆記試験がおこなわれます。

介護福祉士試験は、例年6月下旬頃から試験についての案内が始まります。

試験に申し込むためには「受験に手引」が必要になり、公益財団法人社会福祉復興・試験センターから取り寄せられます。

送られてくるのに少し時間がかかるので、早めに取り寄せましょう。

以下受験申込みから資格登録までのルートです。

受験申込み

8月中旬〜9月中旬

筆記試験受験票の交付

12月上旬~12月中旬

筆記試験実施

1月下旬

合格発表

3月下旬

登録の申請

関連コラム:介護福祉士国家試験の申し込み方法・スケジュール完全ガイド

試験会場

筆記試験は以下の35都道府県で実施されます。

北海道、青森県、岩手県、宮城県、秋田県、福島県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、石川県、長野県、岐阜県、静岡県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県、和歌山県、鳥取県、島根県、岡山県、広島県、香川県、愛媛県、高知県、福岡県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県

筆記試験の内容

筆記試験の内容について見ていきましょう。

筆記試験の試験時間

筆記試験の時間は、

  • 午前(10:00~11:50)
  • 午後(13:45~15:35)

1日を通して実施されます。

試験時間が、午前と午後合わせて3時間40分間なので体力と集中力を必要とします。

筆記試験の出題形式

出題形式はすべて五肢択一です。

5つの選択肢の中から、「最も適切なもの」や「正しいもの」などの正解を1つ選ぶ形式です。

介護福祉国家試験の試験科目

出題数は、4領域12科目と総合問題を合わせた13科目の範囲から全125問が出題されます。

試験科目は13科目ですが、「人間の尊厳と自立(2問)」と「介護の基本(10問)」、「人間関係とコミュニケーション(2問)」と「コミュニケーション技術(8問)」の2科目ずつを、1科目群としてまとめて扱うため、科目群としては11科目群になります。

午前に、「人間と社会」「介護」の2領域7科目68問、午後に、「こころからだのしくみ」「医療的ケア」「総合問題」の2領域6科目57問が出題されます。

1問1点の合計125点です。

合格基準は、総得点の60%程度に、問題の難易度により加減した得点が基準になります。

ただし、試験科目の11科目群全てで得点しないと不合格になるので注意が必要です。

各領域の科目や問題数、内容については下記の通りです。

領域:人間と社会

人間と社会の領域は「人間の尊厳と自立」、「人間関係とコミュニケーション」、「社会の理解」の科目です。

人間の尊厳と自立(2問)

介護をする上で基本となる理念や考え方について問われます。

関連コラム:【介護福祉士国家試験】「人間の尊厳と自立」の基本情報と勉強法

人間関係とコミュニケーション(2問)

介護職としてかかすことのできないコミュニケーションの基礎や技法について問われます。

関連コラム:【介護福祉士国家試験】「人間関係とコミュニケーション」の基本情報と勉強法

社会の理解(12問)

介護を必要とする方を取り巻く社会や福祉制度について問われます。

関連コラム:【介護福祉士国家試験】「社会の理解」の基本情報と勉強法

領域:介護

介護の領域は「介護の基本」、「コミュニケーション技術」、「生活支援術」、「介護過程」の4分野です。

介護の基本(10問)

介護職としてかかすことのできない介護の理念や知識、介護サービスなどについて幅広く問われます。

関連コラム:【介護福祉士国家試験】「介護の基本」の基本情報と勉強法

コミュニケーション技術(8問)

介護現場におけるコミュニケーションの実践・技法や、チーム内でのコミュニケーションについて問われます。

関連コラム:【介護福祉士国家試験】「コミュニケーション技術」の基本情報と勉強法

生活支援技術(26問)

介護現場における生活支援や介護の技術・知識が幅広く問われます。科目の中では最も多い26問が出題されます。

関連コラム:【介護福祉士国家試験】「生活支援技術」の基本情報と勉強法

介護過程(8問)

介護におけるアセスメントから評価までの一連のプロセスについて問われます。

関連コラム:【介護福祉士国家試験】「介護過程」の基本情報と勉強法

領域:こころとからだのしくみ

こころとからだのしくみは「発達と老化の理解」、「認知症の理解」、「障害の理解」、「こころとからだのしくみ」の4科目です。

発達と老化の理解(8問)

老化に伴う心身の変化や病気の他に、子どもの発達や病気に関連する知識について問われます。

関連コラム:【介護福祉士国家試験】「発達と老化の理解」の基本情報と勉強法

認知症の理解(10問)

 高齢者支援においてかかすことのできない認知症の知識・制度や社会状況について問われます。

関連コラム:【介護福祉士国家試験】「認知症の理解」の基本情報と勉強法

障害の理解(10問)

障害者支援にかかすことのできない障害の理解・制度や社会状況について問われます。

関連コラム:【介護福祉士国家試験】「障害の理解」の基本情報と勉強法

こころとからだのしくみ(12問)

心と身体の仕組みの理解が問われます。「生活支援技術」の科目と関連があるので、関連付けながら勉強しましょう。

関連コラム:【介護福祉士国家試験】「こころとからだのしくみ」の基本情報と勉強法

領域:医療的ケア

医療的ケアは「医療的ケア」の1科目です。

医療的ケア(5問)

医療ケアの基礎や、喀痰吸引・経管栄養の基礎と実施手順について問われます。

関連コラム:【介護福祉士国家試験】「医療的ケア」の基本情報と勉強法

総合問題

総合問題(12問)は、4領域に横断した問題が事例形式で出題されます。

関連コラム:【介護福祉士国家試験】「総合問題」の基本情報と勉強法

実技試験

実技試験は、福祉系高校ルート・EPAルートの一部の受験者が、筆記試験に合格した場合に受験します。

その他のルートの受験者は実技試験が免除されます。

なお、実技試験では、「介護等に関する専門的技能」について問われます。

試験当日は、介護される方の情報や希望などが書かれた紙を渡され、それにもとづいて実技をします。

合格基準は、総得点の60%程度に、問題の難易度により加減した得点が基準になります。

介護福祉士国家試験の合格基準

介護福祉士国家試験の合格を目指す場合は、合格基準は必ず把握しておきましょう。

合格基準を鑑みながら、勉強に励むことで効率よく資格取得を目指すことができます。

筆記試験の合格基準は以下の2つです。

1. 合格基準は補正されるため変動する

介護福祉士国家試験の合格基準値は60%です。

ただし、あくまで基準値で、この60%から試験の難易度によって補正がかかります。

そのため、60%でも合格できない年もあれば、60%以下でも合格できる年があるので注意が必要です。

近年では令和2年度60%(75点)、令和元年度61.6%(77点)、平成30年度57.6%(72点)が合格基準でした。

2. 11科目すべてで得点が必要

総得点が合格基準を満たしても、以下の11科目全てにおいて得点する必要があるため、どの科目でも1点以上ないと合格できません。

そのためすべての科目を、まんべんなく勉強することが大切になります。

  科目名 設問数
1 人間の尊厳と自立、介護の基本 12
2 人間関係とコミュニケーション
コミュニケーション技術
10
3 社会の理解 12
4 生活支援技術 26
5 介護過程 8
6 発達と老化の理解 8
7 認知症の理解 10
8 障害の理解 10
9 こころとからだのしくみ 12
10 医療的ケア 5
11 総合問題 12

介護福祉士試験合格後の手続きについて

実技試験に合格後には介護福祉士の登録証を受け取る必要があります。

3月下旬の合格発表後に、合格通知と必要書類が送付されてきます。

必要書類を揃えて、提出し、受理されれば介護福祉士を名乗ることができるようになります。

詳しい手続きについてはこちらのページを参考にしてみてください。

関連コラム:【介護福祉士試験】合格後の登録手続き、登録証送付の流れを紹介

合格するための筆記試験対策

合格率が例年70%前後の試験なので、簡単な試験と思われがちですが、試験に合格するためにはしっかりとした対策が必要です。

ほとんどの受験生が実技試験を免除されるので、介護福祉士試験の対策は筆記試験に絞られます。

筆記試験の対策のポイントは、

  1. 計画的に勉強する
  2. インプットとアウトプットを意識した勉強をする
  3. 模擬試験を受ける

の3つです。

1~3はどの試験にも共通することですが、多くの方が仕事をしながら受験勉強することから、やはりこの3つポイントを意識することが合格への近道となります。

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この記事の監修者  湯浅 美佐子 講師


湯浅 美佐子 講師(講師紹介はこちら)


介護福祉士国家試験対策講座を10年以上継続して実施しており、介護福祉士国家試験の内容を熟知している。

また、介護福祉士養成施設の教員として、日々介護福祉士国家試験の内容について研究し、生徒の国家試験合格率アップのためにつながることを実践している。

分かりやすい説明を心掛け、受験者の不安に寄り添うよう努めている。