受験科目数の多いことで知られる保育士試験。資格取得には9科目の筆記試験すべての合格と、実技試験3分野中2分野の合格が必要です。

ただし、過去の試験で一部合格をしている場合や、所有している免許・資格によっては科目免除となります。

免除の条件や申請方法について確認し、最短&確実に合格を目指しましょう。

目次

保育士試験の科目免除とは?

保育士試験の科目免除とは、以前の合格科目や、取得済みの免許・資格による一部科目の試験免除制度です。

保育士試験で科目免除になる条件として、大きく分けて「一部科目合格による免除」「免許・資格による免除」の2つのパターンがあります。

「一部科目合格による免除」の対象者は筆記試験9科目の一部科目が合格している人、「免許・資格による免除」の対象者は、幼稚園教諭免許の所有者、または社会福祉士・介護福祉士・精神保健福祉士のいずれかの資格所有者です。

それぞれ以下で詳しく解説します。

一部科目合格による免除

筆記試験9科目のうち合格している科目があれば、次回試験ではその科目は免除となります。合格の有効期間は3年間です。

3年間のうちは合格科目の受験は免除されるので、不合格だった科目のみ受験すれば良いということになります。

それでも3年以内での全科目合格が難しい場合は、合格科目の有効期限を再受験で延長することができます。

例えば令和3年に合格した科目を、令和5年に再受験して合格した場合、有効期限は令和7年までとなります。

免許・資格による免除

幼稚園教諭免許所有者(1種・2種・専修)は、免除申請をすれば、「教育原理」「保育の心理学」の筆記試験2科目と実技試験が免除されます。1種・2種・専修で免除科目に違いはありません。

また大学、短大、専門学校等の指定保育士養成施設で筆記試験科目に対応する教科を履修した場合も免除の対象となります。

社会福祉士・介護福祉士・精神保健福祉士のいずれかの資格所有者は、「社会的養護」「子ども家庭福祉」「社会福祉」の3科目が免除対象です。

これらの資格も幼稚園教諭免許所有者同様、指定保育士養成施設で試験科目に対応する教科を履修すると、その教科が免除されます。

一部科目合格による保育士試験の免除について

筆記試験の合格通知は全科目合格者だけに行われるわけではなく、一部科目合格者にも一部科目合格通知書という通知が届きます。

科目ごとに合格判定するので、受験者はモチベーションを保ちやすいともいえるでしょう。

一部科目合格の免除とは

筆記試験9科目のうち1科目でも合格した場合、その科目は「一部科目合格の免除」の対象となり、次回試験が免除されます。

ただし「教育原理」と「社会的養護」は2科目同時に6割以上得点しないと合格とはならないので注意が必要です。

前年度、どちらかの科目が6割以上得点できていても、今年度も2科目受験しなくてはなりません。

一部科目合格の免除はいつまで?

合格科目の有効期限は合格した年を入れて3年間です。3年間の間に9科目合格すれば全科目合格となり、実技試験に進むことができます。

例えば令和5年に合格した場合、免除が有効となるのは令和7年の試験までとなります。

合格科目免除期間延長制度を利用した場合には、最長5年まで延長が可能です。

合格科目免除期間延長制度とは

既定の期間内に、対象施設で一定の勤務期間及び勤務時間、児童等の保護に従事した場合は、有効期間を最長5年まで延長可能です。

対象施設には幼稚園、保育所型認定こども園を含む保育所、児童発達支援センターなどが該当します。

対象施設について詳しくは、以下をご確認ください。
筆記試験合格科目における 合格科目免除期間延長制度について|一般社団法人全国保育士養成協議会

勤務先が対象施設に該当するかの確認は、各都道府県・市町村の保育主管課に問い合わせることができます。

免除申請に必須とされる勤務期間、及び総勤務時間数は「1年以上かつ1,440時間以上の勤務」または「2年以上かつ2,880時間以上の勤務」です。

つまり、令和5年に合格した科目の免除期間を延長する場合、令和5年4月~令和8年3月までの期間に、1年以上かつ1,440時間以上の勤務経験があることで、令和8年の試験まで免除期間が延長されます。

この時、令和元5年3月以前、もしくは令和8年4月以降の勤務経験は含まれません。

出典:筆記試験合格科目における 合格科目免除期間延長制度について|一般社団法人全国保育士養成協議会

また、令和5年4月~令和9年3月までの間に、2年以上かつ2,880時間以上の勤務経験があることで、令和9年の試験まで免除期間が延長されます。

この場合も、令和5年3月以前、もしくは令和9年4月以降の勤務経験は含まれません。

出典:筆記試験合格科目における 合格科目免除期間延長制度について|一般社団法人全国保育士養成協議会

なお複数対象施設で勤務していた場合勤務期間、総勤務時間数を合算することができます。

一部科目合格による免除の申請時の必要書類とは

平成28年~令和5年に受験して一部科目に合格しており、郵送申請にて受験申込を行う場合、平成28年以降の筆記試験結果通知書等のコピー(「筆記試験結果通知書」「一部科目合格通知書」「通知書紛失届」のいずれか一通のみ)が必要となります。

合格科目免除期間延長制度対象者については、合格科目免除期間延長申請用勤務証明書が必要となります。詳しくは最新の「受験申請の手引き」を必ず確認するようにしてください。

また、平成28年度以降の受験者がオンライン申請にて受験申込を行う場合、筆記試験結果通知書等のコピー等をアップロードする必要はありません。

免許・資格による保育士試験の免除について

保有している免許・資格によって筆記試験、実技試験の一部ないしすべてが免除されます。

保育士試験の免除の対象になる免許・資格とは?子育て支援員や看護師・教員は?

保育士試験の免除の対象となる免許・資格

免除の対象となる免許・資格は、以下の2つです。

  1. 幼稚園教諭免許
  2. 社会福祉士・介護福祉士・精神保健福祉士のいずれかの資格

幼稚園免許所有者は、筆記試験科目「保育の心理学」と「教育原理」、実技試験が免除になります。さらに指定保育士養成施設で筆記試験に対応する科目を履修した場合、その科目の試験は免除されます。

社会福祉士・介護福祉士・精神保健福祉士のいずれかの資格所有者は筆記試験科目「社会的養護」「子ども家庭福祉」「社会福祉」が免除になります。

子育て支援員や看護師・教員などは免除の対象となる?

子育て支援員や看護師・教員などは、いずれも保育士試験の科目免除の対象とはなりません。

免除の対象となるのは、幼稚園教諭免許、または社会福祉士・介護福祉士・精神保健福祉士いずれかの資格所有者のみです。

子育て支援員資格、看護師資格、教員免許を所有し、実務経験があるということは、免除の対象には該当しないものの、保育の現場で働く強みとなるでしょう。

また、子育て支援員は受験資格に該当する施設、受験資格認定基準に該当する施設・事業での勤務経験があれば、受験資格の「勤務経験」としてみなされるケースもあります。

幼稚園教諭免許を持つ人の免除科目・特例制度など

幼稚園教諭免許を持つ人が免除となる科目

幼稚園教諭免許所有者が免除されるのは筆記試験の2科目「保育の心理学」「教育原理」および実技試験です。

また筆記試験について上記2科目以外も、指定保育士養成施設において対応する科目を卒業・履修することで、その科目は免除されます。この場合、実務経験の有無は問いません。

履修した科目が、筆記試験免除に対応するかどうかは、通っていた指定保育士養成施設に確認しましょう。

幼稚園教諭免許を持つ人向けの特例制度

幼稚園教諭免許を持つ人向けに、以下のような特例制度が制定されています。

実務経験による特例制度

幼稚園教諭免許所得後に、以下の1~9の特例制度対象施設において「3年以上かつ4,320時間以上」の実務経験を有する場合は、通常免除の筆記試験「保育の心理学」「教育原理」と実技試験に加え、筆記試験「保育実習理論」が免除になります。

特例制度対象施設】

  1. 幼稚園(特別支援学校幼稚部含む)
  2. 認定こども園
  3. 保育所
  4. 小規模保育事業
  5. 事業所内保育事業
  6. 公立の認可外保育施設7.離島その他の地域において特例保育(子ども・子育て支援法第30条第1項第4号に規定する特例保育)を実施する施設
  7. 幼稚園併設型認可外保育施設
  8. 認可外保育施設指導監督基準を満たす旨の証明書が交付された認可外保育施設

出典:特例制度について(幼稚園教諭免許状を有する者における保育士資格取得特例)|一般社団法人全国保育士養成協議会

指定保育士養成施設(大学・短大・専門学校等)での学びによる特例制度

【特例教科目4教科】

4年制大学、短期大学、専門学校などの指定保育士養成施設で、下記の4科目・8単位を取得することで指定保育士養成施設より「幼稚園教諭免許所有者保育士試験免除科目専修証明書(特例教科目)」が発行されます。

  1. 福祉と養護(講義:2単位)
  2. 子ども家庭支援論(講義:2単位)
  3. 保健と食と栄養(講義:2単位)
  4. 乳児保育(演習:2単位)

この幼教専修証明書(特例)があることで、以下の対応表のように筆記試験科目が免除されます。

試験科目修得が必要な特例教科目修得が必要な養成課程の教科目※1(告示に定める教科目)
1. 社会福祉A. 福祉と養護① 社会福祉
2. 子ども家庭福祉A. 福祉と養護② 子ども家庭福祉
B. 子ども家庭支援論③ 子ども家庭支援論
3. 子どもの保健C. 保健と食と栄養※2④ 子どもの保健
4. 子どもの食と栄養⑤ 子どもの食と栄養
5. 保育原理D. 乳児保育⑥ 乳児保育Ⅰ
⑦ 乳児保育Ⅱ
B. 子ども家庭支援論⑧ 子育て支援
6. 社会的養護A. 福祉と養護⑨ 社会的養護Ⅰ
出典:特例制度について(幼稚園教諭免許状を有する者における保育士資格取得特例)|一般社団法人全国保育士養成協議会

過去に特例教科目ではない、通常の養成課程の教科目(告示に定める教科目)を指定保育士養成施設で修得していた場合、特例教科目が未修得でも免除になるケースがあります。

修得した科目が筆記試験科目と対応するかどうかは、通っていた指定保育士養成施設にご確認ください。

社会福祉士・介護福祉士・精神保健福祉士のいずれかの資格を持つ人の免除科目・特例制度など

社会福祉士・介護福祉士・精神保健福祉士の資格を持つ人が免除となる科目

社会福祉士・介護福祉士・精神保健福祉士のいずれかの資格を持つ人は、筆記試験科目の「社会的養護」「子ども家庭福祉」「社会福祉」が免除になります。

社会福祉士・介護福祉士・精神保健福祉士いずれの資格も、福祉職の基盤となる社会保障制度に関わる基礎的知識や、相談援助の基礎などの学習を修得します。

そのため保育士養成課程の「福祉職の基盤に関する科目」に係る部分は、他の福祉職でも学ぶ内容として免除されるのです。

社会福祉士・介護福祉士・精神保健福祉士の資格を持つ人向けの特例制度

「社会的養護」「子ども家庭福祉」「社会福祉」の3科目以外も、指定保育士養成施設で筆記試験科目および実技試験に対応する教科目を修得すれば、その試験は免除可能となります。

修得内容によっては全試験が免除となることもあります。

修得科目が筆記試験科目に対応するかどうかは、通っていた指定保育士養成施設にご確認ください。

免許・資格による免除の申請時の必要書類とは

幼稚園教諭免許、社会福祉士・介護福祉士・精神保健福祉士資格所有者が、試験科目の免除を申請するには、幼稚園教諭免許状や登録証のコピーが必須となります。

また指定保育士養成施設において、筆記試験科目および実技試験に対応する教科目を履修していた場合は、幼稚園教諭免許所有者保育士試験免除科目専修証明書の原本や、社会福祉士、介護福祉士又は精神保健福祉士保育士試験免除科目専修証明書の提出も必要となります。

幼稚園教諭免許を持つ人

【幼稚園教諭免許状(公印が写るように)】の提出が必須となります。これによって、筆記試験2科目「保育の心理学」「教育原理」と実技試験が免除されます。

また以下の場合は、追加で必要な書類があるのでそれぞれ説明します。

指定保育士養成施設での科目等履修で筆記試験科目を免除する場合

指定保育士養成施設での科目等履修で筆記試験科目を免除する場合は、「幼稚園教諭免許所有者保育士試験免除科目専修証明書(特例教科目)の原本」が必要です。

「単位修得証明書」「成績証明書」等では申請不可なので、注意しましょう。

幼稚園などの特例制度対象施設で「3年以上かつ4,320時間以上」の「実務経験」がある場合

幼稚園などの特例制度対象施設で「3年以上かつ4,320時間以上」の「実務経験」のある方で、指定保育士養成施設において特例教科目を修得し、該当の試験科目を免除する場合は、「実務証明書」「幼稚園教諭免許所有者保育士試験免除科目専修証明書(特例教科目)の原本」が必要です。

専修証明書について、こちらも「単位修得証明書」「成績証明書」等では不可なので、注意しましょう。

社会福祉士・介護福祉士・精神保健福祉士の資格を持つ人

受験申請時に登録証のコピーが必要です。これによって、筆記試験3科目「社会的養護」「子ども家庭福祉」「社会福祉」が免除になります。

指定保育士養成施設で筆記試験科目および実技試験に対応する教科目を修得していて、対応する試験科目を免除する場合は、通っていた指定保育士養成施設が発行する「社会福祉士、介護福祉士又は精神保健福祉士保育士試験免除科目専修証明書」も必要となります。

保育士試験の科目免除とは?まとめ

筆記試験9科目、実技試験2科目(3分野から2分野選択)と、試験科目数の多い保育士試験ですが、以前の筆記試験の結果や所有している免許・資格によって、一部科目が免除されるケースがあります。

科目免除が適用されるのは以下に該当する場合です。

  • 一部科目合格者である
  • 幼稚園教諭免許所有者である
  • 社会福祉士・介護福祉士・精神保健福祉士のいずれかの資格保有者である

最短で合格するために、過去の受験歴、所持している資格、学校での履修歴を再確認することをおすすめします。対策の前に自分が該当する項目がないか、しっかりと確認しましょう。

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