保育士試験の受験にあたり、実技試験対策に頭を悩ませている方は多いのではないでしょうか。

「筆記試験を突破したものの、実技試験の対策が難しい…」
「3分野の実技のうち、どの2分野を選べばいいかわからない…」

このコラムでは、そんなお悩みをもつ方のために、保育士試験の実技について詳しく解説します。
試験分野の選び方や、実技試験当日の服装についても記載しているので、試験対策にお役立てください。

保育士実技試験の概要

保育士実技試験は、保育士に求められる資質・知識・技能の評価を目的として行われます。
試験分野は以下の3科目に分かれており、受験者が2科目を選んで受験します。

  • 音楽表現に関する技術
  • 造形表現に関する技術
  • 言語表現に関する技術

いずれの科目も、配点は50点満点です。
選択した2科目で得点率が6割、各分野で30点に達していれば、実技試験は合格となります。

なお、一度分野の申請を行なった後は、変更することができません。
科目選択の前にそれぞれの試験内容を把握し、自分に合った分野を選ぶことが重要です。

また、受験する分野によっては、当日の持ち物が必要になります。
持参が必要なもの・持ち込めないものを事前にチェックしておきましょう。

その他、保育士試験の日程など概要については以下コラムで解説しています。あわせて参考にしてください。

関連コラム:保育士試験の概要|日程・時間割・申し込み方法も解説

保育士試験の実技はどれがいい?音楽・造形・言語の試験内容とおすすめな人

保育士試験の実技は、音楽・造形・言語の3分野によって、それぞれ試験内容や求められる技術が異なります。
ここでは、分野ごとの試験内容と、おすすめな人の特徴を解説します。

「音楽に関する技術」の試験内容

幼児に聴かせることを想定し、課題曲の伴奏と歌唱を行う科目です。
幼児に聴かせるための歌と伴奏の技術に加え、リズムを用いた表現などが求められます。

令和5年試験の課題曲は、「やぎさんゆうびん」「幸せなら手をたたこう」の2曲でした。課題曲は選択制ではなく、両方を弾き歌いするため注意しましょう。

使用できる楽器は、ピアノ・アコーディオン・ギターのいずれかと定められています。

音楽はこんな人におすすめ

  • 楽譜をスラスラ読める人
  • ピアノ・ギター・アコーディオンのいずれかを演奏できる人

関連コラム:【保育士試験】ピアノ(音楽)実技を解説!楽譜の選び方や過去の課題曲、合格基準など

「 造形表現に関する技術」の試験内容

問題文の指示に従い、保育における一場面を絵画に表します。
イメージした場面・人物・情景などを、絵画によって表現する力が求められます。

使用できる筆記用具は、HB〜2Bの鉛筆またはシャープペンシル・12〜24色の色鉛筆・消しゴムです。
回答用紙の大きさはA4ですが、絵画を描くスペースは縦横19cm四方の枠内に限られます。

造形はこんな人におすすめ

  • 絵が得意な人
  • 人前に立つのが苦手な人

関連コラム:【保育士試験】造形(絵)実技を解説!練習方法や落ちた人の特徴、不合格理由など

「言語表現に関する技術」の試験内容

3歳児クラスの子どもが3分間集中して聴けるような「お話」を行います。
幼児へのお話にふさわしい話し方や、表現上の技術が求められる課題です。

課題は、4つの物語のなかから選択します。
約15人の子どもを楽しませることを想定し、身振り手振りを交えた表現を心がけましょう。

言語はこんな人におすすめ

  • 演劇などの経験がある人
  • 相手に何かを伝えるのが得意な人

関連コラム:【保育士試験】言語実技を解説!採点基準や不合格理由、台本作りのコツなど

保育士試験で受かりやすい実技科目の選び方とは

保育士実技試験においては、受かりやすい実技科目を選択することが重要です。自分の適性を把握し、得意な分野を選ぶことで、合格に近づけるでしょう。

保育士の実技試験を選ぶ際は、まず自分が得意な分野を選ぶのがおすすめです。苦手な分野にチャレンジしてしまうと、多くの練習時間が必要となり、本番までに十分な準備ができない場合があります。

得意な分野を見極めるためには、自分がすでに持っているスキルを洗い出してみましょう。

  • ピアノやギターを習っていた
  • 読み聞かせのボランティア経験がある
  • デッサンの技術がある

上記のように、過去の経験を振り返ることで、自分の得意な分野が明確になります。得意な分野がないという場合は、練習が苦にならない分野を選ぶことも有効です。

実技試験においては、分野にかかわらず、多少なりとも練習を行う必要があります。そのため、目標に向かって、最後まで前向きに取り組める分野を選ばなければなりません。

また、自分の苦手な分野を避ける「消去法」の選び方も効果的です。
例えば、「どうしても人前で話せない」という弱みがある場合は、言語以外の2分野を選択しましょう。

さらに、周囲の人の意見を参考にして決めるという方法もあります。自分では苦手だと感じていても、実は一定の水準に達している場合も少なくありません。

どうしても科目選びに迷ったら、家族や友人などの意見を取り入れてみましょう。

保育士実技試験当日の服装や持ち物は?

保育士の実技試験では、どんな服装を選べばいいか迷ってしまう方も多いです。ここでは、実技試験当日におすすめの服装と、試験分野ごとの持ち物について解説します。

試験当日におすすめの服装

実技試験の当日は、清潔感のある服装で臨みましょう。保育士としてふさわしい、明るく誠実な印象を与えられるものがおすすめです。

また、試験当日は体を動かす場面があるため、動きやすい服装が適しています。

男性の場合、綿素材のパンツやチノパンに、襟付きシャツなどの組み合わせが適切です。
女性の方は、適切な丈のスカート・ワンピース・チノパンなどから選択しましょう。トップスには、襟付きのシャツか、清楚な印象のカットソーなどを合わせると良いでしょう。

服装や身だしなみは、面接官へ与える印象を大きく左右します。

例えば、スーツはきちんとした印象を与える一方、保育士業務において実用的ではありません。また、短パンにTシャツや、ジャージの上下などでは、だらしない印象を与えてしまいます。

TPOを意識した適切な服装によって、自分が求められている役割や、期待される人物像を理解していることをアピールできます。

試験当日までにコーディネートを決め、全身が映る鏡でチェックしてみましょう。

試験当日の持ち物

試験当日の持ち物は、すべての実技試験に共通するものに加え、試験分野ごとに個別で準備が必要なものがあります。

すべての実技試験に共通する持ち物は以下の通りです。

必ず必要な持ち物

  • 受験票
  • 筆記用具
  • 腕時計(計算機能・通信機能がないもの・アラーム音不可)
  • 現地までの交通費

あると便利な持ち物

  • マスク
  • スマホ
  • タオル・ハンカチ
  • クリアファイル
  • 飲み物・軽食
  • のど飴
  • 膝掛けやカーディガンなど

続いて、試験分野ごとの持ち物です。

音楽実技の持ち物

  • 楽譜
  • 楽器(ピアノ以外を選択した場合)

音楽の実技試験でピアノ以外を選択した場合は、楽器の持参が必要です。
ギターを使う方は、事前に弦切れのチェックやチューニングを済ませておきましょう。

造形実技の持ち物

  • 12〜24色の色鉛筆
  • 鉛筆またはシャープペンシル(2B〜HB)
  • 消しゴム
  • 腕時計

造形の実技試験では、腕時計で残り時間を把握しながら作業を進めるのがおすすめです。
注意点として、造形の試験では「人の形のイラストが入ったもの」の使用が禁じられています。ペンケースや、色鉛筆のパッケージなどをチェックしておきましょう。

言語実技の持ち物

  • 台本(必要に応じて)

言語の試験では、個別の持ち物はありません。台本を作って練習している方は、当日持参しておくと待ち時間などに確認できます。
ただし、試験本番に台本や小道具の持ち込みはできないため注意しましょう。

保育士実技試験当日の流れと注意点

保育士実技試験当日の流れは以下の通りです。

  • 試験会場への入場(ガイダンス開始時刻の30分前~)
  • ガイダンスを受ける
  • 受験教室への移動

試験当日は、まず会場への入場を行います。入場開始時刻は、受験票に記載されているガイダンス開始時刻の30分前です。早めに到着しても問題ありませんが、時間になるまでは入場できない場合があります。

続いて、受験者全員で実技試験に関する注意事項などのガイダンスを受けます。

ガイダンスでは、試験を実施する教室の場所や、待機場所などの情報も共有されます。配布された資料には必ず目を通し、内容を頭に入れておきましょう。

一人ずつ試験を受ける音楽・言語の科目については、このタイミングでそれぞれの開始時刻を案内されます。

ガイダンスが終わったら、自分のスケジュールをしっかりと確認し、案内された開始時刻に間に合うよう、受験教室に移動しましょう。

待機場所と受験教室が離れている場合もあるため、会場の配置図を見て、おおよその移動経路を考えておくのがおすすめです。

移動に時間を取られてしまい、試験開始時刻に遅れることのないよう十分に注意しましょう。

保育士実技試験の合格率は?

保育士実技試験の合格率は、80%前後で推移しています。

厚生労働省による「保育士試験の受験者・合格者の推移」では、平成17年から26年までの10年間において、実技試験の合格率が最も低い平成19年で73.4%、最も高い平成25年で89.3%となっています。

実技試験の上記10年間の平均合格率は82.45%となっており、筆記試験の合格率が20%台で推移していることと比較すれば、高めの合格率と言えるでしょう。

実技試験で落ちる人の特徴や不合格になる理由とは

保育士の実技試験は合格率が高めですが、不合格になる受験者も存在します。実技試験に落ちる人の特徴や、不合格になる理由を把握し、対策を行いましょう。

実技で落ちる人の特徴とは

保育士実技試験で落ちてしまう人には、以下のような特徴があると考えられます。

  • ルールを守れない
  • 時間を守れない
  • 自己表現が極端に苦手

それぞれ以下で解説します。

ルールを守れない

明らかにルールを守れないと判断された人は、試験に通りにくくなるでしょう。
オリジナル曲を演奏したり、お話に過度なアレンジを加えた場合、協調性や判断力が欠如していると見なされる可能性があります。

時間を守れない

試験開始時刻に間に合わなかった場合、面接官からの印象の低下は避けられません。
また、試験を受けられる時間が短くなるため、ほかの受験者よりも不利になるでしょう。

自己表現が極端に苦手

実技試験では、子どもに接するための表現力や、明るい印象が求められます。
試験中に全く笑顔を作れなかった場合、保育士としての適性が疑われる恐れがあります。

実技試験で不合格になる理由と合格するためのポイント

実技試験で不合格になる理由として、まず試験そのものが無効になってしまうケースが挙げられます。試験のルールや時間を守れなかった場合は、不合格になる可能性が高いでしょう。

また、それぞれの科目に定められている「求められる力」を満たしていないと判断された場合も、合格が難しくなります。

実技試験に合格するためには、実技試験のルールを遵守し、科目ごとの基準を満たすことが重要です。また、試験の目的を正しく理解し、自分に合った科目選択を行うことも大切なポイントとなります。

保育士実技試験についてまとめ

本コラムでは、保育士実技試験の概要や、自分に合った科目の選び方などを紹介しました。

保育士試験は筆記試験の難易度が高く、実技試験は合格しやすいと言われています。しかし、実技試験の対策が難しいと感じる受験者も多いです。

実技試験を受ける際は、それぞれの科目内容と目的を把握し、自分の力を発揮できるものを選びましょう。

また、事前に服装や持ち物などをチェックし、当日の流れをイメージしておくのがおすすめです。

本コラムを参考に対策を行い、万全を期して実技試験に臨みましょう。