行政書士試験の受験生の中には「とにかく記述式問題が書けない」「どのように書けばよいかわからず、本試験でいつも1文字も書けずに出してしまう」など、記述式問題に関する悩みを抱えている方が多いのではないでしょうか。

しかし、行政書士試験に合格するためには、記述式問題を避けては通れません。

当コラムでは、行政書士試験における記述式問題の対策について解説します。
記述式問題の出題タイプや採点基準、おすすめの問題集についても紹介しているため、記述式問題に手こずっている方はぜひ最後までチェックしてみてください。

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行政書士試験 記述式問題とは?

行政書士試験の記述式問題とは、5肢択一式や多肢選択式のような選択問題とは異なり、40字前後で文書を作成して解答するタイプの問題です。

例年記述式の問題が民法2問、行政法1問の計3問出題されています。

記述式はなぜ難しい?

行政書士試験の記述式問題は一から自分で文章を作成しなければならないため、正確に記述するためには5肢択一式の知識がしっかり頭に入っている必要があります
5肢択一式や多肢択一式であればまだ勘で正解できる可能性もありますが、記述式では知識がなければ得点することは難しいでしょう。

捨てるべきでない!記述式問題が重要な理由

記述式は問題数は少ないものの、300点満点中の60点なので2割という大きなウェイトを占めています。対策が難しいため、中には「記述式問題は捨てる…」という人もいますが、捨てることはおすすめできません。

記述式問題は行政法から1問、民法から2問の計3問が出題されます。
全60問中3問と考えるとそれほど重要に思えないかもしれませんが、配点は1問につき20点で計60点と大きなウェイトとなるのです。

▽行政書士試験・科目別配点(問題数や配点は年度によって異なる場合があります)

  出題形式
(配点)
科目 問題数 配点 合計 基準点
法令科目
5肢択一式
(1問4点)
基礎法学 2問 8点
244点
122点
憲法 5問 20点
行政法 19問 76点
民法 9問 36点
商法 5問 20点
多肢選択式
(1問8点)
憲法 1問 8点
行政法 2問 16点
記述式
(1問20点)
行政法 1問 20点
民法 2問 40点
 
基礎知識
 
5肢択一式
(1問4点)
一般知識 14問
3問
56点
 
24点
行政書士法等行政書士業務と密接に関連する諸法令
情報通信・個人情報保護
文章理解
  60問 300点 180点

例えば記述式問題で60満点が取れた場合、それだけで合格点である180点の3分の1を稼げてしまうということです(60点満点を狙う戦略は現実的ではないですが……)。
行政書士試験合格を目指すなら、記述式の攻略を避けては通れないでしょう。

【行政書士試験】記述式の対策法

行政書士試験 記述式問題の対策法について解説します。

1.まずは択一式問題を解けるレベルまで勉強する

記述式問の対策を始めるより前に、まずは択一式の問題がおおむね解けるレベルまで択一式問題の学習をしたうえで、記述式問題集に取り組むことをおすすめします

記述式の問題は、択一式に比べて難易度が高く、択一式の知識がないと記述できないようになっています。

記述式は択一式とは異なり、曖昧だったり不十分な知識ではほとんど太刀打ちできません。

そのため、知識が不十分なうちから取り組もうとすると、全然解くことができずに挫折してしまう可能性があります。

そのため、学習の順序としては「択一式をある程度仕上げる→記述式の学習」となります。

記述式の対策はいつから始めるべき?

初級・中級レベルであれば5月頃までは5肢択一式に集中し、5月頃から本格的に記述式対策をスタートさせるとよいでしょう

ただし、適切なタイミングは、5肢択一式の知識がどれだけ頭に入っているかによって異なります。
行政書士試験の上級者は、すぐにでも本格的に取り掛かりましょう。

2.40字で書く訓練をする

記述式問題集を解くときも、必ず40文字で文章をまとめることを意識しましょう。

記述式問題は、40文字で解答することを求められます。

普段文字数を意識せずに文章を書いている人にとって、文字数をコントロールすることは想像以上に難しいものです。

決められた文字数で文章をまとめるためには、実際に文章を書く訓練をすることが欠かせません。

3.部分点だけでも採れるように解答する

記述式の採点は、0点から20点満点までの間の部分点がもらえる解答もあります

模範解答として不足はあるものの、一部正しい内容が記載されていれば、部分点が狙えるのです。

そのため、完璧に答えられないからと諦めて空欄にしてしまうことなく、分かる内容だけでもきちんと文章にできるように訓練しておきましょう。

繰り返し出題されている重要論点はしっかりとマスターし、完璧な解答ではなくてもできるだけポイントを押さえた解答ができるように訓練しておくことが大切です。

4.解法テクニックを身につける

解法のテクニックも身につけていきましょう。

記述式の対策は、1.事案とテーマ、2.キーワードという2ステップを意識しながら学習することをおすすめします。

1.事案とテーマ

まずはステップ1、事案とテーマについて解説します。

記述式問題では、基本的に事案が出てきます。
ここで重要なのは、事案に合ったテーマを設定することです。事案とテーマがずれてしまうと、見当違いの解答になってしまうためです。

例えば、義務付け訴訟について問われているにもかかわらず、差止め訴訟や不作為の違法確認訴訟などの間違ったテーマを設定してしまうと、求められている答えから外れてしまいます。
そのため、事案を見て正しいテーマがぱっと出てくるようになる必要があるのです(J→Tの思考)

5肢択一式を学習する際にも、事案が出てきた場合は「その事案のテーマは何なのか?」ということを常に意識するとよいでしょう。
また、それとは反対に、テーマから具体的な事案を思い浮かべられるようになることも重要です(T→Jの思考)

このように、JTを常に意識しながら5肢択一式を学習すれば、自然に記述力が養われていきます。
なお、問題を解いたあとは、解説を読みながら事案とテーマについて分析することが大切です。

このひと手間をするかしないかが、伸びるかどうかの分かれ道です。くれぐれも、問題を解きっぱなしにしないようにしましょう。

2.キーワード

続いてはステップ2、「キーワード」について解説します。

ステップ2でやるべきことはキーワードの暗記です。
記述式問題では、解答に必要なキーワードをいくつかひねり出し、文章として意味が通じるように繋げる必要があります。

事案とテーマが正しく設定できて適切なキーワードが記述できていれば得点できますが、肝心のキーワードが出てこなければ結局何も記述できずに白紙で提出するなどということになり兼ねません。事案とテーマを意識し結びつけながら、どんどんキーワードを暗記していきましょう。

なお、キーワードの暗記は夏から始めても遅くはありません。ステップ1にじっくりと時間をかけ、夏になったらステップ2も実行し始めるといったやり方でよいでしょう。

行政法と民法の出題タイプ

行政法

行政書士試験の記述式問題で出題される「行政法」の出題タイプについて解説します。

行政法からは、大きく分けて以下の4タイプの問題が出題されます。

タイプ1は「名称」とその周辺の知識を問う問題です。
平成23年度に出題された問題44では、行政行為の名称と内容が問われました。

タイプ2は裁判所が下す判決を問う問題です。
平成25年度に出題された問題44では、建築確認の取消しを求めて取消訴訟を提起した際の裁判所の判決について問われました。

タイプ3は特定の事案において、問題解決のためにはどのような種類の訴訟を提起すべきかを問う問題です。
平成20年度に出題された問題44では、誰を被告としてどのような訴訟を提起すべきかが問われました。

そしてタイプ4は条文知識を問う問題です。
平成19年に出題された問題44では、行政手続法第7条の知識が問われました。

上記の4タイプのうちどのタイプの問題が出題されても対応できるように、どのタイプの問題にも慣れておく必要があるでしょう。

記述式問題に関しては、同じ問題を何度も繰り返し解くよりも、さまざまな問題に触れることが重要です。記述式問題集や模試を利用して、たくさんの問題を解きましょう。

民法

行政書士試験の記述式問題で出題される「民法」の出題タイプについて解説します。

民法からは、大きく分けて以下の4タイプの問題が出題されます。

タイプ1は「法律要件」を問う問題です。
平成25年度に出題された問題45では、相手方が無権代理人に対し「どのような要件の下でどのような請求ができるか」について問われました。

タイプ2は「意義」を問う問題です。
平成21年度に出題された問題46では、「民法177条の第三者」の意義について問われました。

タイプ3は条文の「趣旨」を問う問題です。
平成22年度に出題された問題46では、不法行為によって債務が生じた場合の判例の趣旨が問われました。
※ただし、令和2年の民法改正で不法行為の成立要件が変わったため、問題自体は没問題となっています。

そしてタイプ4は、法的トラブルを解決する手段を問う問題です。
平成24年度に出題された問題46では、遺留分侵害額の請求に関する知識が問われました。

このように、民法も出題タイプが決まっています。
どのタイプの問題にも対応できるよう、「記述式の対策の2ステップ」を念頭に置いてしっかり学習しましょう。

【行政書士試験】記述採点はブラックボックス?

行政書士試験の記述式問題の採点は、実はブラックボックスです。どのように採点されているかについては、実際のところ正確にはわかりません。
ただし、合格者の答案を見るかぎり、5肢択一式や多肢選択式の出来によって採点基準が変わるのではないかと推測されます。

例えば、5肢択一式や多肢選択式の出来がよい場合は厳格に採点され、反対にあまり出来がよくない場合は少し緩めの基準で採点されるというように、5肢択一式や多肢選択式のできによって点数を調整している可能性があるのです。

実際に、5肢択一式と多肢選択式で134点しか取れず、不合格を確信していた受験生がなんと記述式で46点を獲得し、180点ちょうどで合格を果たした例もあります。このことからも、推測が見当違いでないことがわかります。

とはいえ、5肢択一式と多肢選択式で点が取れるに越したことはありません。
理想は5肢択一式と多肢選択式だけで180点以上取ることですが、ハードルが高いため、5肢択一式・多肢選択式の部分で160点後半〜170点前半あたりを目標にするとよいのではないでしょうか。

記述式の目標としては、3問中1問はしっかりと書ききって満点を目指し、残り2問で部分点を取っていくイメージでよいでしょう。

行政書士記述式問題集おすすめ4選

おすすめの行政書士試験の記述式問題集4冊を紹介します。

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こちらは、記述式問題の正しい解法がマスターできるようにマニュアル化されており、マニュアルに従って記述式の解答をすることで安定した点数を取れるように設計されています。

それぞれの問題に詳細な解説があり、解答に必要なキーワードが明記されているので、重要な論点を効率的に身につけることができます。

過去問を使って記述式の解答方法を解説し、予想問題としてオリジナル問題もあるため十分な演習を行うことができます。

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「出る順行政書士 40字記述式・多岐選択式問題集」(東京リーガルマインド)は、問題演習を通して記述式問題の解答テクニックを身につけることができるように工夫されています。

問題文から、

  1. 何を問う問題なのか
  2. 適用法令等が何なのか
  3. 事例に適用法令等が合致するか

というポイントを押さえて解答するためのテクニックが解説されています。

40文字で解答するための文章表現のテクニックについても解説されており、問題の解答だけでなく役に立つ情報が豊富です。

合格革命 行政書士 40字記述式・多岐選択式問題集

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基礎編と応用編の2段階構成で、万全な記述式対策ができます。

基礎編では、問題の材料となる条文や判例のキーワードをしっかりと暗記していき、応用編では本試験と同様の形式のオリジナル問題を解くことで実践を積むことができるように設計されています。

インプットとアウトプットを効果的に進めることができるため、記述式の初学者でも無理なく学習することができます。

行政書士 トレーニング問題集 3記述式・多岐選択式

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こちらは、オリジナル問題と過去問が収録されており、十分な問題量があります。

試験で繰り返し出題されている重要論点が網羅されているため、効率的に記述式対策ができます。

記述式に解答する力を養えるように、頻出論点の「キーワードチェック」でまずはキーワードを覚えて、その後に本試験形式の記述式問題を解くという2段階の構成となっています。

 左ページに問題、右ページに解答解説が掲載されているため、すぐに答え合わせができて使いやすい問題集です。

記述式に限らない問題集は、「おすすめの行政書士試験問題集」コラムをご覧ください。

まとめ

以上、行政書士試験における記述式問題の対策について解説しました。
最後に、このコラムの要点をまとめます。

  • 記述式問題は、例年行政法から1問、民法から2問の計3問が出題される
  • 記述式問題の配点は1問につき20点と、大きなウェイトを占めている
  • 記述式の学習をする際は「事案とテーマ(JT)」「キーワード(KW)」が重要である
  • 出題タイプは行政法、民法ともに大きく分けて4タイプあるため、さまざまな問題に触れ、どのタイプが出題されても対応できるようにしておく必要がある
  • 記述式の採点基準はブラックボックスだが、5肢択一式でできるだけ点数を取ったうえで、記述式でも3問中1問はしっかり書ききり、残り2問で部分点が取れるようにする

行政書士試験合格を目指すなら、記述式問題の攻略は必須です。
コラムの中で解説した「記述式の対策の2ステップ」を実践し、ぜひ合格を目指しましょう。

独学での学習に自信がない場合は、行政書士試験の予備校・通信講座を活用すると良いでしょう。

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