行政書士は独立開業しやすく、魅力的な職業である一方、インターネット上では「悲惨」などという否定的なワードを発見し、資格取得を迷う方も見受けられます。

ネガティブな声に触れると、将来への不安が大きくなるかもしれません。

しかし行政書士として成功し、大きなやりがいを得ている人も大勢います。

このコラムでは、行政書士は本当に悲惨なのか知るために、試験の難易度や年収、開業後の課題などを幅広く解説します。

悲惨と言われる背景を知ったうえで、前向きに活用する方法や対策を探ってみましょう。

「行政書士は悲惨」という人がいる理由5つ

「行政書士は悲惨」「食べていくのが難しい」などと話す人がいるのはなぜなのでしょうか。

理由として挙げられるのは、次のようなことです。

1. 法律の勉強が初めての人にとって試験が難しい？
2. 年収が低い？
3. 独立開業してもうまくいかない？
4. ライバルが多い？
5. 転職の役に立たない？

これらについて、１つずつ解説します。

1.法律の勉強が初めての人にとって試験が難しい？

行政書士試験は合格率10％程度の難しい試験です。そのため、働きながら合格を目指すのが難しく、諦めてしまう人もいます。中には、「これから行政書士を目指すなんて悲惨だ」などと、八つ当たりのような気持ちで言う人もいるのです。

試験は憲法や民法、行政法など法律科目で幅広い法律知識を問うほか、基礎知識も含まれる部分が特徴的だといえます。

暗記だけでは対応しきれない問題も多く、制度の趣旨や判例をじっくり理解する姿勢が大切でしょう。

法律初学者にとっては、学習の入り口が高く感じられる場面も少なくありません。

しかし行政書士試験は、正しい対策法で勉強すれば誰でも合格は不可能ではありません。

通信講座や予備校が提供するカリキュラムを活用し、基礎理論を着実に習得しながら、過去問で定番の出題パターンを吸収する方法は効果的です。

合格に必要とされる勉強時間は500～1000時間程度。

仕事や育児などと両立は難しいですが、計画的に勉強を進めれば合格は可能です。

2. 年収が低い？

「行政書士は年収が低い」と言われることがあることから、「悲惨だ」という人がいるようです。

実際のところ、行政書士の年収は様々で、200万円台の人もいれば、1000万円を超える人も多くいます。

行政書士は独立開業しやすい資格・職業ですが、勤務行政書士か開業行政書士かによっても、年収は大きく違いします。

補助的な立場で勤務行政書士として事務所や企業に雇用される場合、給与が低めに設定されている職場もあります。

実際には、在留資格や建設業許可などニーズの高い分野へ的確にアプローチし、大幅に収益を伸ばしている事務所も珍しくありません。

法人向けのサービスを充実させ、長年の取引によって安定した売上を得ているケースも見受けられます。

こうした成功例では、法律の知識だけでなく、営業やマーケティングなど経営の側面も重視している点が共通しているようです。

「行政書士は稼げない」という認識は、正しくないといえます。

3.独立してもうまくいかない？

独立開業しやすい行政書士ですが、「独立開業してもうまくいかない」というイメージにより「悲惨だ」という人もいます。

なかには開業直後は顧客が少ないままスタートし、思ったように仕事を得られず廃業に追い込まれる方もいます。

たとえ書類作成や法律の専門知識を持っていたとしても、経営や営業のスキルを磨いていないと期待通りの結果を出しづらいこともあるでしょう。

開業資金や生活費を確保できなくなる状況は、精神的なプレッシャーにも直結しがちです。

「行政書士として独立したら必ずうまくいく」なんていうことはありません。

どの仕事でも同じですが、成功するには、戦略や努力が必要です。

開業前に入念な準備を行い、自分の得意分野を明確に打ち出すと、一定の顧客を獲得できることにつながります。

SNSやホームページを活用し、定期的に情報発信を行う取り組みや、税理士や司法書士など他士業との連携を強化する方法が考えられます。

地域の異業種交流会やセミナーに積極的に参加して、一人でも多くの見込み客に存在を知ってもらうことも重要です。

最初は苦戦しても、誠実なサービス提供で信頼を蓄積すれば、リピーターや口コミが増え、徐々に業務が拡大するケースも見られます。

4. ライバルが多い？

行政書士は登録者数が多く、飽和状態であると言われることから、「行政書士は悲惨」という人がいます。

行政書士の登録者数は、2024年12月末日時点で52,965名です。

参考：月刊 日本行政 | 日本行政書士会連合会

登録者数の多さから、競争が激しいと言われる場面もあるでしょう。

業務範囲が広いことで潜在的な需要はあるものの、差別化を図りにくいと感じることがあるかもしれません。

インターネット上には大手事務所の広告も多く、得意分野を打ち出していない個人事務所は埋もれるリスクが考えられます。

しかし、だからと言って年収が低くなるとは限りません。量的な競争を乗り越える事例も珍しくありません。

外国人の在留資格申請や各種許認可など、特定の業務分野に絞った情報発信を進める方法、検索エンジンで上位表示を狙い、実績を具体的に提示する取り組みなど、工夫していけば一定の顧客を集めることができるでしょう。

5. 転職の役に立たない？

「行政書士の資格は転職の役に立たないから取っても悲惨」という人がいます。

独立開業のイメージが強い行政書士ですが、企業への転職で活かしたいと考える方もいるでしょう。

行政書士資格が有効かどうかは、当然企業に寄ります。

実際、求人票に「行政書士資格必須」と書いてあることは少ないかもしれませんが、企業が官公庁へ許認可申請を行う際に法的知識を要する場面などで役に立つでしょう。

法務部門や総務部門の業務を想定し、契約書作成やコンプライアンスの面でサポートできる要素をアピールする戦略も考えられます。

近年は、副業や兼業として週末だけ依頼を受ける行政書士も見かけます。

転職に直結しなくても、社内の法律的なチェック体制を強化できる人材として評価される余地があるでしょう。

悲惨な行政書士にならない方法

ここまで言われてきたように、行政書士は資格取得後の行動や考え方によって大きく変わります。

悲惨と言われる状況を避けるには、以下のポイントを押さえておくとよいでしょう。

経営と営業の基礎を学ぶ

独立開業を検討するなら、法律知識と同様に経営の仕組みを理解する姿勢が欠かせません。

売上を上げるための営業活動やマーケティング戦略を意識せずに始めると、苦戦が長期化しかねないでしょう。

開業資金や月々のランニングコストを把握し、SNSやホームページを使った集客方法を検討してください。

専門分野を確立する

行政書士として成功するためには、専門分野を確立することをおすすめします。

行政書士は多彩な業務を扱えますが、すべてを同時に取り組むと専門家としての魅力が埋没しやすいです。

相続や許認可、外国人サポートなど、特定領域へ注力することで依頼者にとってわかりやすい肩書きになります。

一つの分野で信頼を得たあと、別の分野へと拡大していく手段も考えられます。

継続的な勉強と情報収集を惜しまない

行政書士資格を取得し、独立した後も、継続的な勉強と情報収集は続けましょう。

法律は改正が繰り返されるため、最新の動向を見逃すと正確なサポートが行いにくくなります。

情報収集の習慣を確立し、セミナーや勉強会へ積極的に参加して知識を更新するとクライアントからの信用が高まりやすくなります。

依頼者の要望を丁寧にヒアリングし、迅速に対応する姿勢がリピーターの獲得や口コミの広がりにつながるでしょう。

まとめ：行政書士は悲惨じゃない

行政書士は試験の難易度や年収面などから「悲惨」と言われる場合がありますが、実際には取り組み次第で状況が変わる資格です。

独立開業はしやすいといわれますが、営業や経営の知識が不足している場合は、開業後に失敗するリスクが高まります。

専門分野を打ち出し、粘り強く情報発信を続けて、多くの人に自身のサービスを知ってもらうことが大切です。

また、企業への転職という選択肢においても、法的知識や書類作成のスキルが重宝される場面が少なくありません。

悲惨と呼ばれる状況に陥るケースは情報の偏りや準備不足に起因することが多く、計画的に行動すると回避できる余地があります。

行政書士に興味のある方は、一部の悪評だけを鵜呑みにするのではなく、資格が持つ潜在的な可能性や魅力を考えつつ前向きに検討してみてください。