資格試験では、「足切り」と呼ばれる、一定の基準に達していないと不合格とする制度を採用していることが多く、行政書士試験も例外ではありません。

足切りされてしまうと、総合得点では合格点を超えていても不合格となってしまいます。

ここでは、行政書士試験で足切りされないために、足切りの基準や回避する対策について紹介します。

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行政書士における足切り(基準点)とは?

行政書士試験では、足切りの制度が採用されています。

一般的に足切りとは、試験の科目等ごとに一定の基準を下回った場合に、総合得点を超えているかどうかにかかわらず不合格とする制度のことです。

行政書士試験の場合、試験の科目は「行政書士の業務に関し必要な法令等」、「行政書士の業務に関し必要な基礎知識」の2つの科目群で構成されています(令和6年度より「行政書士の業務に関連する一般知識等」は「行政書士の業務に関し必要な基礎知識」に改正されました)。

この法令等科目においての足切り、基礎知識等科目においての足切りがそれぞれ存在します。

法令等科目、基礎知識等科目のそれぞれにおいて、一定の基準点に届いていない場合にはその時点で不合格となってしまいます。

また、行政書士試験は、択一式、多岐選択式、記述式の問題が含まれていますが、記述式以外で一定の基準点に達していなければ足切りとなり、記述式については採点してもらえません。

以上のとおり、行政書士試験の足切りには、下記2種類が存在するのです。

①法令等科目または基礎知識等科目で一定の基準点に届いていない場合
②記述式以外で一定の基準点に届いていない場合

科目毎の足切り点

次に、行政書士試験の具体的な足切り点について解説します。

行政書士試験は、300点満点で、配点は法令等科目244点満点、一般知識等科目56点満点です。

総合得点の合格点は、満点の60%以上のため、180点以上が必要です。

問題数や配点は年度によって異なる場合があります。以下は目安として参考にしてください。

1 法令等科目について

法令等科目は、下記のように構成されています。

①基礎法学
②憲法
③民法
④行政法(一般的法理論・統合、行政手続法、行政不服審査法、行政事件訴訟法、国家賠償法・損失補償、地方自治法)
⑤商法・会社法

法令等科目には、択一式と記述式の問題があります。

科目ごとの配点は、下記の通りです。

①基礎法学8点(択一式2問)
②憲法28点(択一式5問、多岐選択式1問)
③民法76点(択一式9問、記述式2問)
④行政法112点(択一式19問、多岐選択式2問、記述式1問)
⑤商法・会社法20点(択一式5問)

法令等科目の点数が50%未満だと、足切りとなってしまいます。

各科目での足切り(民法で何点以上など)があるわけではありません。

法令等科目の配点は244点満点のため、122点未満の場合は足切りとなり不合格が確定します。

ただし、122点ギリギリだった場合に合格できる可能性があるかというと、実は法令等科目等で122点をとった場合に基礎知識等科目で満点を取ったとしても、合格点には達しません。

実際には、最低でも124点以上取らなければ合格の可能性はありません。

その理由を、実際の点数で計算してみます。

法令等科目得点122点
基礎知識等科目得点56点(満点)
合計178点

これでは、総合得点の合格点である180点に満たないため、不合格になることがわかります。

以上のことから、法令等科目の足切り点は122点と考えるのではなく、事実上124点と考えたほうがよいでしょう。

2 基礎知識等科目について

基礎知識等科目は、①一般知識、②行政書士法等行政書士業務と密接に関連する諸法令、③情報通信・個人情報保護、④文章理解で構成されています(令和5年度までは①政治・経済・社会、②情報通信・個人情報保護、③文章理解で構成されていました)。

基礎知識等科目は、択一式の問題のみです。

科目ごとの配点は、①~④の科目合計で56点(1問4点×14問)です。

基礎知識等科目の点数が40%未満だと、足きりとなってしまいます。

基礎知識等科目は56点満点のため、24点未満だと足きりとなり不合格が確定します。

基礎知識等科目が足切り点ぎりぎりの24点だった場合、法令等科目では156点以上取る必要があります。(180点-24点=156点)

3 記述式以外について

法令等科目のうち160点が択一式、24点が多岐選択式で、基礎知識等科目のすべて(56点)が択一式です。

これらの記述式以外の合計240点のうち120点未満の場合、足切りとなり記述式を採点してもらえません。

科目出題形式問題数配点足切り点(基準点)
法令等択一式
多岐選択式
記述式
40問
3問
3問
160点
24点
60点
 122点
※合格には最低124点必要
基礎知識等択一式14問56点24点
合計 60問300点180点

これは、たとえ記述式が満点(60点)である場合でも、記述式以外の合計点が120点未満であれば合格点(180点以上)に満たないため、採点をする意味がないからだと考えられます。

足切りにならないための点の取り方

足切りにならず、合格点を取るための行政書士試験の勉強法(ポイント)について紹介します。

法令等科目は「民法」、「行政法」を重点的に

法令等科目のうち、民法と行政法は出題数が多く配点も高くなります。

民法と行政法の合計点は例年188点となり、これだけで300点満点中の60%を超えます。

行政書士にとって、民法と行政法はそれだけ重要な科目ということです。

民法と行政法を制すれば、他の法令等科目で点が取れなくても、基礎知識等科目が足切りぎりぎりであっても合格が可能です。

実際に業務を始めてからも重要な科目なので、重点的に力を入れて勉強することをおすすめします。

基礎知識は「諸法令」「情報通信・個人情報保護」、「文章理解」が点数に結び付きやすい

基礎知識等科目では56点満点中24点(14問中6問)以上取る必要がありますが、そのうちの12~16点(3~4問)が「一般知識(政治・経済・社会)」です。

また、「諸法令」が12~16点(3~4問)が「一般知識(政治・経済・社会)」と予想されます。

「情報通信・個人情報保護」は12~16点(3~4問)、「文章理解」は12点(3問)なので、「政治・経済・社会」を重点的に勉強しようと思いがちですが、意外と非効率です。

なぜなら、「政治・経済・社会」は出題範囲がとても広く、対策をしてすぐに点数に結び付くとは限りません。

時間を割いても必ずしも結果が出ない科目とも言えます。

それよりは、「諸法令」「情報通信・個人情報保護」と「文章理解」の対策をしっかりと行い、ここで着実に点数を稼ぐ方法が点数に結び付きやすいといえます。

イメージとしては、諸法令で2問・情報通信・個人情報保護で2問・文章理解で3問正解し、政治・経済・社会で3~4問中1問正解できることを狙うのが効率的だと考えられます。

法令等科目では憲法もポイント

上述した通り、法令等科目では民法と行政法が重要ですが、民法も行政法も出題範囲が広く難易度の高い問題が出ることも多いため、この2科目以外を捨ててよいわけではありません。

民法、行政法の次に対策すべき科目として、憲法がおすすめです。

憲法は配点が28点と行政法と民法の次に高く、比較的対策が立てやすい科目です。

憲法は条文数が少ないため、しっかりと条文をマスターし、基本的な判例を頭に入れておけば得点に結びつきやすいといえます。

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この記事の監修者 豊村 慶太 講師

豊村 慶太講師


行政書士受験指導のカリスマ。早稲田大学3年次にわずか2か月の学習期間で行政書士試験に合格。
大手資格予備校LECで12年以上にわたり、行政書士試験の受験指導を行い、基幹講座・単科講座・全国向け収録講座のみならず、大学学内講座(成城大学・学習院大学)も担当。
LEC時代・アガルート移籍後を通じて、19年以上の講師歴を通じて、のべ1万人以上の受験生を指導(2023年4月時点)。高い合格率に定評がある。

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グルメを中心としたブログも人気。趣味は、サーフィン・スキューバダイビング・ゴルフ・トランペット・神社仏閣めぐり。

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