
行政書士となるために、行政書士試験に合格することが考えられますが、行政書士試験がどのような試験かわからないまま無策に勉強を始めてしまっては貴重な時間を無駄にしてしまうかもしれません。
そこで、行政書士試験とはどのような試験か、どのようなことが出題されるのか、どのように勉強していくことが重要なのか等、行政書士試験に合格するための学習にあたって必要となることを紹介していきます。
行政書士試験とは
行政書士試験は、行政書士法に基づき、総務大臣が定めるところにより、行政書士の業務に関し必要な知識及び能力について、毎年1回以上行うこととされています。
行政書士試験は、総務大臣により「指定試験機関」として指定された行政書士試験研究センターに、行政書士試験の施行に関する事務を委され、実施されています。
行政書士試験に合格した場合、行政書士法第2条1号で定める「行政書士試験に合格した者」にあたり、「行政書士となる資格」を有していると扱われます。
行政書士法第2条各号には、他にも「行政書士となる資格」の取得方法が挙げられていますが、行政書士試験に合格することが行政書士になるためには一番の早道となります。
受験資格、費用
行政書士試験には、年齢、学歴、国籍等による 受験資格の制限がありません。
そのため、行政書士試験はだれでも受験することが可能となっています。
また、受験自体にかかる 受験手数料も7,000円と他の資格試験に比して低く、各予備校の行政書士試験の講座価格も他の資格試験に比べて低いことが多いです。
そのため、行政書士試験を受験するにあたっては、費用がかさむことがなく、少ない費用で受験・合格することが可能と言われています。
日程(願書~合格発表)
行政書士試験は、例年7月第2週に行政書士試験研究センターホームページ上に掲示または各都道府県庁もしくは各都道府県行政書士会で配布される試験案内により試験の概要が発表されています。
受験願書配布窓口での配布
窓口での配布
8月上旬~9月上旬
郵送による配布
8月上旬~8月下旬
受験願書受付
郵送による受験申込み
8月上旬~9月上旬
インターネットによる受験申込み
8月上旬~9月上旬
(例年郵送による受験申込みより3日程度早く締め切られます)
受験票の交付
10月中旬
試験
11月第2日曜日 13:00~16:00(3時間)
合格発表・合否通知書の送付
1月下旬
※受験者は,合否通知書にて合格基準点及び得点を知ることができます。
行政書士試験の難易度
行政書士試験の必要勉強時間の目安は700時間から800時間と言われています。
行政書士試験は決して簡単な試験ではありませんが、司法試験が6,000時間、公認会計士試験が3,000時間の必要勉強時間と言われていますから、これらと比べるとかなり少ない時間でも合格することが可能な試験となっています。
主婦の方や働きながら受験勉強をしている方などの普段から忙しい方でも合格している方が多いのは、隙間時間や寝る前の数時間など利用することでも十分合格が狙えると言えることが大きな理由の一つです。
そのため、行政書士試験は決して簡単な試験ではありませんが、しっかりと勉強を続けることで、確実に合格することが可能な試験と言えます。
行政書士試験の合格率
行政書士試験の合格率は、平成17年度では2.62パーセントと非常に低く、狭き門となっていました。
しかし、行政書士試験の合格率は年々増加し、近年では10パーセント前後となっています。
特に、平成29年度の合格率は約15パーセントと高く、6360名もの方が合格しました。
平成30年度の合格者の内、10代20代の方が全体の23.5パーセントとなっています。
また、合格者の内、56.2パーセントを30代40代の方が占めており、主婦の方や働きながら勉強をしている方なども多く合格していると言えます。
このような傾向は、平成29年度、平成28年度の行政書士試験にも見ることができ、行政書士試験の合格者の特徴であると言えます。
行政書士試験結果の推移(単位:人)
年度 | 申込者数 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|---|
平成17年度 | 89,276 | 74,762 | 1,961 | 2.62% |
平成18年度 | 88,163 | 70,713 | 3,385 | 4.79% |
平成19年度 | 81,710 | 65,157 | 5,631 | 8.64% |
平成20年度 | 79,590 | 63,907 | 4,133 | 6.47% |
平成21年度 | 83,819 | 67,348 | 6,095 | 9.05% |
平成22年度 | 88,651 | 70,586 | 4,662 | 6.60% |
平成23年度 | 83,543 | 66,297 | 5,337 | 8.05% |
平成24年度 | 75,817 | 59,948 | 5,508 | 9.19% |
平成25年度 | 70,896 | 55,436 | 5,597 | 10.10% |
平成26年度 | 62,172 | 48,869 | 4,043 | 8.27% |
平成27年度 | 56,965 | 44,366 | 5,820 | 13.12% |
平成28年度 | 53,456 | 41,053 | 4,084 | 9.95% |
平成29年度 | 52,214 | 40,449 | 6,360 | 15.7% |
平成30年度 | 50,926 | 39,105 | 4,968 | 12.7% |
令和元年度 | 52,386 | 39,821 | 4,571 | 11.5% |
出題形式(択一式、記述式)
行政書士試験の出題は、筆記試験によって行われます。
出題の形式は、「行政書士の業務に関し必要な法令等」は択一式及び記述式、「行政書士の業務に関連する一般知識等」は択一式です。択一式は、5肢択一式と多肢択一式いずれかの方式で出題されています。
5肢択一式は5肢の中から正解の肢を選び出すマークシート方式であり、多肢択一式では20肢の中から空欄に入る適切な語句を選択するマークシート方式となっています。
記述式は、与えられる問題に対し、40字程度で記述解答するものが出題されます。
記述式では、例年行政法から1問、民法から2問出題されており、このような傾向は今後も継続されていくと考えられます。
5肢択一式
5肢択一式5肢の中から,正解を選ぶマークシート式の試験です。
サンプル問題はこちら
多肢選択式
多肢選択式20肢の中から,空欄に入る適切な語句を選択する,マークシート式の試験です。
サンプル問題はこちら
記述式
記述式問題に対して,40字程度の記述で解答する試験です。
サンプル問題はこちら
試験科目と配点
行政書士試験は,3時間で60題の問題を解く試験です。
出題科目は,行政書士の業務に関し必要な法令等(以下,「法令等」に関する問題)と,行政書士の業務に関連する一般知識等(以下,「一般知識」に関する問題)に分けられます。
試験科目 | 内容等 | 配点 |
---|---|---|
行政書士の業務に関し必要な法令等 (出題数46題/60題) | 憲法 行政法 民法 商法 基礎法学 | 244点 /300点 |
行政書士の業務に関連する一般知識等 (出題数14題/60題) | 政治・経済・社会 情報通信・個人情報保護 文章理解 | 56点 /300点 |
試験科目と配点について
行政書士試験の試験科目は、大きく分けて「行政書士の業務に関し必要な法令等」と「行政書士の業務に関連する一般知識等」の二つになり、全部で300点分の出題がされます。
「行政書士の業務に関し必要な法令等」は、憲法・行政法・民法・商法・基礎法学を内容としています。
「行政書士の業務に関し必要な法令等」では、択一式に加えて記述式による出題もなされているため、配点が高く設定されており、300点の内244点の配点となっています。
他方、「行政書士の業務に関連する一般知識等」は政治・経済・社会、情報通信・個人情報保護、文章理解を内容としています。
法律のような専門的知識は問われておらず、また、出題も択一式のみであるため、配点が低く、300点の内56点の配点となっています。
合格基準について
行政書士試験では、合格基準が設定されています。
行政書士試験の合格基準の要件は以下になります。
- 「行政書士の業務に関し必要な法令等」科目の得点が満点(244点)の50パーセント(122点)以上である者
- 「行政書士の業務に関連する一般知識等」科目の得点が満点(56点)の40パーセント(24点)以上である者
- 試験全体の得点が満点(300点)の60パーセント(180点)以上である者
要件は出題された問題の難易度の評価によって補正的措置が加えられることもありますが、行政書士試験に合格するためには、このような要件をすべて満たす必要があります。
また、(1)と(2)の要件を満たしても、総得点で34点分不足し(3)の要件を満たすことができません。
そのため、配点が高く、専門的知識を問われることからある程度出題される範囲が定まっている「行政書士の業務に関し必要な法令等」でしっかりと得点していくことが重要となります。
合格に向けた戦略
民法と行政法は攻める科目
一般知識等で合格最低点である24点を取ると仮定すると、合格基準の要件である「全体で180点以上」を取るためには、「行政書士の業務に関し必要な法令等」科目で156点以上取る必要があります。
もっとも,156点ギリギリを目指した勉強では、試験本番でのアクシデントに対応できません。
そこで、160点以上を目指して余裕のある合格を目指した勉強が重要になります。
ポイントになるのが行政法と民法です。
行政書士試験における民法・行政法の配点は、188点分もあります。
188点という配点は「行政書士の業務に関し必要な法令等」科目の約77%(188点/244点),総合点でも約63%(188点/300点)と圧倒的な比率を占めています。
同じ時間をかけて学習をするのであれば、配点比率が高い科目を優先するのが効率的です。
行政法と民法で,8割以上(150点以上)の得点を獲得することができれば、「行政書士の業務に関し必要な法令等」科目で160点以上の得点を獲得することも難しくなく、余裕をもって合格することが可能になります。
一方、民法・行政法以外の法令等科目の比率は、必ずしも高くないので、行政法・民法に大部分の学習時間を費やすことを前提に、他の科目については出題可能性の高い分野を重点的に学習して、可能な範囲で得点を稼ぐというのが効率の良い学習方法です。
基礎法学、商法、一般知識は守る科目
科目の中には、抽象的で対策がしにくいものとして「基礎法学」、「一般知識(政治・経済・社会/文章理解)」、配点が少ない上に難易度が高いものとして「商法」があります。
これらの科目については、民法・行政法のように多くの勉強時間を費やすことなく、少ない時間で勉強すべきことを選んで勉強していくことが必要です。
出題範囲が広く、対策が立てにくい「行政書士の業務に関連する一般知識等」科目は、合格基準の要件であるライン(24点)をクリアできれば十分であると考えるべきでしょう。
ただし、24点ギリギリを目指すと、目標に届かず、要件を満たさなくなってしまうことがあるため、28点以上を目指していく勉強が重要となります。
28点以上を取るためには、情報通信・個人情報保護など行政法と合わせて学習することが多く、他に比べて対策が立てやすいもの、文章理解など高校入試や大学入試レベルの知識で対応できるものを中心に点数を稼いでいくことが効率的です。
合格する勉強法
合格する勉強法は、いつから勉強を始めるかで異なります。
試験を受ける年の1月から2月あるいはそれ以前から勉強を始める方は、試験までに余裕があり、各法律にしっかりと取り組むことができます。
そのため、法律ごとに分けられており、ある程度細かい内容まで記載されている参考書やテキストを用い、講義を十分に聞くなどして勉強をしていきましょう。
4月5月など新生活の開始とともに勉強を始める方は、試験までの期間が短いため、なるべく早く法律の勉強を一応終える必要があります。
そのため、試験で必要な知識が一冊の本に詰め込まれているような参考書やテキストを用い、必要な知識をすぐにインプットしてしまいましょう。
どちらの時期から始める方も、インプットだけでは試験に受かることは難しいので、過去問や模試などを利用して、インプットした知識の使い方を学んでいくことになります。
過去問学習では試験でどのような知識が問われているかが分かり、今後のインプットの方向性も定まっていくため、過去問学習は非常に重要となっています。
法律の学習を一通り終え、試験で何が問われるかをわかっている上でインプットとアウトプットを繰り返していくことが、地道ではありますが確実に合格できる方法と言えます。
行政書士試験 Q&A
Q 独学で合格できますか?
A 市販の参考書を用い独学で勉強をしている方でも行政書士試験に合格することは可能です。
もっとも、講義では初めのインプットの段階で、試験でよく問われること間違えやすく気をつけること等の市販の参考書にはない様々な情報を得ることができます。
そのため、限られた時間で効率よく勉強していく上では、講義を受講していただくことがおすすめとなります。
Q 法改正は試験に影響しますか?
A 平成29年5月26日に「民法の一部を改正する法律」が成立し、一部を除き平成32年4月1日に施行されます。
行政書士試験では、「行政書士の業務に関し必要な法令等」科目の中に民法があり、また民法は行政法と合わせて188点という高い配点があるため、行政書士試験にも民法の改正は大きく影響します。
Q 通信講座のサイトで,解答速報をやると聞いたのですが?
A アガルートアカデミーでは毎年、行政書士試験後に、解答速報・解説・分析会を開催しています。
講師による解説・分析によって自分がどの程度できたかを知ることができ今後の計画に役立てていくことが可能です。