行政書士試験の文章理解において、巷の対策のほとんどは「設問別解法」のみに言及していますが、はたしてそれだけで確実に3問正解できるのでしょうか。

答えはNOです。

確実に3問正解になる勉強方法を紹介します。

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基礎知識対策でカギを握る文章理解

3問正解しないと足きりにかかる率が高くなる

まず文章理解は行政書士試験の基礎知識(一般知識)の中でどのような位置付けになるのでしょうか。

一言でいうと「命綱」です。

基礎知識は14問中、6問以上正解しないと足きりになってしまいます。

正解が5問以下だと無条件に不合格です。

その14問の中で、文章理解は3問出題されます。

これを確実に3問正解しないと足きりにかかる率が高くなってしまうのです。

もちろん、文章理解と並び、個人情報保護法を含む情報系や、関連三法(行政書士法、戸籍法、住民基本台帳法)の問題も対策しやすいことから、これらも正解していくのがセオリーです。

しかし、一番対策が取りやすい個人情報保護法は2題出題させれる年もあれば、平成29年度のように出題されない年もあります。

情報系は出されたら確実に得点していきたい分野ですが、文章理解に比べて対策がやや取りづらい点があります。

さらに政治経済社会の分野になると、大学入試の「政治経済」のように、対策本を完璧にこなせば正解できるといった問題はあまり多くありません。

例えば令和元年度には「戦後史」の問題が出題されたり、平成30年度には「外国人技能実習制度」について出題されたりしていますが、いずれも市販の対策本でふれているものはほとんどありません。

これらだけが特別な問題なのではなく、ほとんどの問題が対策本の内容がそのままでは出題されることはありません。

逆に「政治・経済・社会」は市販の対策本にある問題が1~2題出題されればラッキーというレベルなのです。

他の分野がこのような状況なので、文章理解の3問は絶対に落とせない問題であることがおわかりいただけたのではないでしょうか。

文章理解だけは訓練すれば確実に3問正解できる

文章理解は正しい勉強をすれば確実に得点できます。

文章理解以外の残りの11問は運の要素がどうしても捨てきれませんが、文章理解だけは訓練すれば確実に3問正解できます。

また、令和元年度の試験から傾向を考えると、文章理解は易化の傾向にあるといえます。

これは大きなチャンスなのです。

次の章で具体的な文章理解の対策について述べていきたいと思います。

文章理解は「本文の読解が全て」

もちろん、設問別のアプローチは重要ですし、私も指導の際にはこれを言及しています。

しかし、設問別アプローチは最後にやるべきものであって、最初にやるべきものではありません。

これは大学入試予備校の現代文の受講生にもいえることです。

では、どうすれば確実に点がとれるようになるのでしょうか。

端的にいうと「読解力をつけること」のみです。

「え?そんなのわかってるよ!」
「それが難しいんじゃないか!」
「私、国語嫌い!即解ける方法を教えてよ!」

そう思いましたよね。

気持ちは痛いほどわかります。

大学入試予備校の受験生もそういう反応を最初は必ずします。

しかし、即席の解法テクニックでは、確実に3問正解になるとはいえません。

ですので、ここでは最短で確実に3問正解する方法を述べます。

この記事を最後まで読んでいただいたら、令和元年度の問58を解いてみてください。

私の述べていることがわかるはずです。

まず、出題されている文章のタイプを考えてみましょう。

これはほぼ「評論文」からの出題です。

評論文とは、「筆者が何らかの主張を読者に伝える文章」のことです。

そして、評論文には一定の型があります。

逆にいうと、この型通りに書かれていることが評論文の評論文たるゆえんなのです。

では、その型とは何でしょうか。

1 主張反復→主張を具体例や引用や言い換えなどで補足する
2 対比→主張と対立項の二者を比較する

原則、この2点です。

これを意識して本文から筆者の「一番イイタイコト」を読み取ります。

なお、「一番イイタイコト」を論旨と呼びます。

よく「文章理解では接続詞をチェックせよ」といわれますが、接続詞を追って読むことはこの二点をより正確におさえるための方法であり、決して接続詞をおさえると即問題が解けるわけではありません。

では、実際に簡単な文章で評論文の型を見てみましょう。

(例文)
現代人はスマホなしでは生きていけない点が問題である。かつては、データ収集といえば新聞やTVであったが、新聞やTVは外出してしまえばそう簡単に目にすることはない。しかし、スマホは持ち運べてしまう。例えば、全国の高校生は一日平均3時間以上スマホを触っているというデータがある。ビジネスマンになるとその時間はさらに長くなるだろう。現代人のスマホ中毒は深刻な社会問題なのである。

さて、この文章の論旨はどうなるでしょうか。

前述した構造にしたがって主張反復と対比構造を追ってみましょう。

▼本文
現代人はスマホなしでは生きていけない点が問題である。かつては、データ収集といえば新聞やTVであったが、新聞やTVは外出してしまえばそう簡単に目にすることはない。
しかし、スマホは持ち運べてしまう。
(具体例1)「例えば、全国の高校生は一日平均3時間以上スマホを触っているというデータがある。
(具体例2)「ビジネスマンになるとその時間はさらに長くなるだろう現代人のスマホ中毒は深刻な社会問題なのである。

赤文字、および赤の「 」に注目してください。

実はこれらは具体例や言い換えを使って同じ事を別の言葉で繰り返しているのです。

したがって、共通の意味内容をひとつにまとめていくことができます。

それを「論旨」とか「要旨」と呼んでいます。

以上をふまえて論旨をまとめていきます。

▼論旨
現代人のスマホ依存は深刻だ

さらに、これと相反する事象として、青文字にした文章をぶつけて比較しているのです。

これが対比です。

したがって、

▼論旨
現代人のスマホ依存は深刻だ


対立項
TVや新聞は目にする機会が少ない(スマホほど依存しない)

これが上記の文章の全てです。

これさえつかんでしまえば、後は問が空欄になろうと、内容合致問題になろうと、正解を導き出せます。

この状態から設問別解法に入るべきなのですが、ちまたの文章理解対策本で読み方をメインにしているものは少ないのが現状なのです。

設問別解法について

先ほどのやり方にしたがって毎回同じ読み方でしっかり本文を読むことができてこそ、設問別解法がはじめて意味をなすのです。

したがって、先ほどのやり方をふまえた上で、設問別解法について述べていきます。

空欄問題

問 空欄Aに入るものを以下の1~5から一つ選べ。

現代人はスマホなしでは生きていけない点が問題である。かつては、データ収集といえば新聞やTVであったが、新聞やTVは外出してしまえばそう簡単に目にすることはない。しかし、スマホは持ち運べてしまう。例えば、(A)ビジネスマンになるとその時間はさらに長くなるだろう。現代人のスマホ中毒は深刻な社会問題なのである。

1、ガラケーは性能が低いがスマホは性能がよい。
2、全国の高校生は一日平均3時間以上スマホを触っているというデータがある
3、(以下省略)

▼本文構造
現代人はスマホなしでは生きていけない点が問題である
||
(A)
||
「ビジネスマンになるとその時間はさらに長くなるだろう」
||
現代人のスマホ中毒は深刻な社会問題

以上により、空欄には「スマホ中毒の具体例」が入ることは明白です。

もちろん正解は2です。

ここではじめて、直前の「例えば」に注目して、「具体例がはいるのだな!」と認識するわけであり、接続詞に頼り切って本文を読むわけではありません。

内容合致問題

では、次にこの文章を使って内容合致問題を作っていきます。

問 本文内容に合致するものを一つ選べ。

1 新聞やTVを見る時間が長くなったのは社会問題といえる。
2 スマホを見る時間にとらわれるのは問題だ。
3 データ収集は積極的にすべきだ。
4 (以下省略)

もう、おわかりですね。

正解は2「スマホを見る時間にとらわれるのは問題だ。」です。

赤文字の論旨そのものでしたね。

ちなみに、大学入試予備校で模試を作成した経験上、不正解の選択肢をつくるやり方も相当研究しました。

以下、内容合致において、どのように不正解肢を作るか言及します。

1 新聞やTVを見る時間が長くなったのは社会問題といえる。
2 スマホを見る時間にとらわれるのは問題だ。

これは対比混同の選択肢です。

対立項の内容と論旨を混同させています。

あくまで、論旨は「現代人のスマホ依存は深刻だ」でしたね。

これでは、対立項の内容を問題視してしまっています。

3、データ収集は積極的にすべきだ。

これは「データ」というワードのみ本文に書いてあるパターンです。

このワードを基に本文に書いてない内容を足して不正解肢をつくります。

しっかり読んでない受験生をひっかける選択肢です。

実際はこのタイプを選ぶ受験生はほぼいません。

このように、「しっかり本文を読み、論旨をおさえる」と、設問パターンに振り回されずに正解が出ます。

公務員試験の文章問題を含めて100題以上解きましたが、資格試験に出される文章理解は、型通りに書かれている文章が大多数でした。

設問別解法はその後にやれば鬼に金棒なのです(ただし、並べ替え問題だけは、ミクロの視点が重要になります。これだけは別途対策が必要です)。

並べ替え問題

上でも述べましたが、並べ替え問題だけは、選択肢相互の繋がりを考えていかなくてはなりません。

これは本文との対応が一番薄い問題だといえます。

では、実際に問題を見てきましょう。

問 A~Dを意味が通じるように並べ替えよ。

A 例えば、古典作品の『大鏡』では翁が若者に語ることで歴史を伝えている。
B 歴史は科学だという意見が多い。
C しかし、歴史は文学という語りの中にこそ存在するものであるという意見もある。
D これは科学者というより、文学研究者の意見である点に意外性がある。

並べ替え問題のポイントは、まず、セットを作ることです。

その際に接着剤の役割を果たすのが、「接続語」と「指示語」です。

特に選択肢の頭にある「接続語」は、前の選択肢との関係を示します。

例えば、Cの文頭に「しかし」があることで、前には反対の内容がくることがわかります。

また、Aの文頭に「例えば」があることで、この選択肢は前の内容の具体例であることがわかるのです。

今回はAの前にくる選択肢が一番わかりやすいので、そこからセットを作っていきます。

C、しかし、歴史は文学という語りの中にこそ存在するものであるという意見もある。
↓(具体例)
A、例えば、古典作品の『大鏡』では翁が若者に語ることで歴史を伝えている。

したがって、(C→A)でセットとなり、これをXとします。

次に、Dの「これ」に注目します。

すると、「『これ』を主張しているのが、科学者でなく文学研究者である点に『意外性』がある」がわけですから、この前には「科学者が主張しそうな意見」がきます。

つまり、Dの「これ」は、Bの「歴史は科学だという意見」を指すわけです。

B、歴史は科学だという意見が多い。

D、これは科学者とうより、文学研究者の意見である点に意外性がある。

よって、(B→D)でセットとなり、これをYとします。

次にXとYの前後を決めます。

するとCの頭に「しかし」とあるので、これ以降がYの内容と反対の内容になるとわかりますね。

したがって、Y→Xの順です。

よって、正解は、B→D→C→Aです。

このように並べ替えだけは、論理パズルをしていかなくてはいけませんので、「接続語」や「指示語」をメインに組み立てていくのです。

なお、最後に一つ注意点を述べておきますが、セットを作る過程で一度つくったセット(たとえば上記のX)を絶対だと思わないでください。

これを絶対だと思い、Xありきで作っていくと先入観が入り込んでトラップの選択肢に引っかかることがあります。

途中で違和感を感じたら、作ったセットを一度解体してみてください。

並べ替え問題は「暫定的につくったセットを正しいと思う思い込み」が一番危険です。

「Xはいつでも解体しうる」ことを念頭において、全体の順番を調整していってください。

このあたりは私は講義で何度も注意喚起しています。

文章理解のおすすめの勉強法

文章理解はなかなか独学が難しい分野です。

したがって、一番のおすすめは、私が担当しているアガルートアカデミーの『文章理解対策講座』を受講していただくことです。

ただ、どうしても独学でマスターしたい場合は、本文の構造をしっかり解説している問題集を解くことです。

これは資格対策本よりも大学入試用の現代文の問題集の基本編がおすすめです。

行政書士試験の文章理解という観点からおすすめすると、

『入試現代文へのアクセス』(河合出版)
『安達雄大のゼロから始める現代文』(KADOKAWA)
『無敵の現代文記述攻略メソッド』(かんき出版)

あたりがおすすめです。

これらの中には記述問題対策の章もありますが、幹の読解力をつけるにはそれらも飛ばさずにやることです。

これは試験委員の先生方の名簿からもそのことが伺えます。

例えば、平成30年度の試験委員には、筑波大学の石塚修教授がいらっしゃいます。

石塚教授のご専門は法律ではなく、日本文学です。

また、石塚教授は2002年に『筑波大生の「国語力』に関する総合的調査と研究」もされております。

専門分野から推測するに、おそらく平成30年度は石塚教授が文章理解の問題をおつくりになっているはずです。

以上により石塚教授は筑波大学の国語の入試問題にも精通されていることは明らかです。

したがって、行政書士試験の文章理解の対策は大学入試現代文からのアプローチが最適であることは間違いありません。

それは試験委員の名簿からも明らかなのです。

いずれにせよ、小手先のテクニックに逃げないことです。

しっかりと本文に向き合うことが重要です。現代文指導歴18年の私と一緒にがんばりましょう。

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この記事の著者 田島 圭祐 講師

20年以上に渡り、大学入試予備校で「古文」、「現代文」、「小論文」、「時事対策」等の指導を行い、担当する講座の多くは定員締切講座となる人気講師。

アガルートアカデミーでは大学入試指導で培った「日本語」のノウハウを武器に講義を展開する。

講師業にとどまらず、記事ライターとしても活動するなど、幅広く活躍している。

田島講師の紹介はこちら

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