公務員から行政書士になるには?特認制度と試験内容について解説
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「公務員から行政書士に登録できる?」
「公務員を何年勤めたら行政書士になれる?」
「公務員が行政書士になる条件は?」
公務員から行政書士になれる「特認制度」について、このような疑問をもつ人は少なくありません。
特認制度を利用すれば、試験を受けることなく行政書士資格を取得できます。
しかし、そのためには一定期間公務員として勤務し、行政書士会に認められることが必要です。
当コラムでは、特認制度について解説します。公務員と行政書士の試験内容や共通点なども紹介しているため、ぜひ最後までご覧ください。
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公務員から行政書士になる方法
公務員から行政書士になるには、主に以下の2つがあります。
- 行政書士試験を受験して合格する
- 特認制度を利用する
上記のうち王道といえる方法は、行政書士試験に合格することです。
「特認制度」と呼ばれる制度を利用する方法では時間がかかりすぎるうえ、確実に行政書士になれるとはかぎらないためです。特認制度の利用には、最短でも17年かかります。そのため、すぐに行政書士資格を得られるわけではありません。
一方、試験を受験して行政書士を目指す場合は合格までに数年かかることもありますが、本気で勉強に取り組み、途中で諦めなければ特認制度を利用するとき以上に時間がかかることはないでしょう。
特認制度については次で詳しく解説します。
公務員なら行政書士になれる?「特認制度」とは
「特認制度」とは、17年以上(中卒なら20年以上)行政事務を行った国家公務員や地方公務員が、試験を受験することなく行政書士資格を取得できる制度のことです。
行政書士法2条は以下のように規定しています。
第2条
次の各号のいずれかに該当する者は、行政書士となる資格を有する。
一 行政書士試験に合格した者
二 弁護士となる資格を有する者
三 弁理士となる資格を有する者
四 公認会計士となる資格を有する者
五 税理士となる資格を有する者
六 国又は地方公共団体の公務員として行政事務を担当した期間及び特定独立行政法人(独立行政法人通則法 (平成11年法律第103号)第2条第2項 に規定する特定独立行政法人をいう。以下同じ。)又は特定地方独立行政法人(地方独立行政法人法 (平成15年法律第118号)第2条第2項 に規定する特定地方独立行政法人をいう。以下同じ。)の役員又は職員として行政事務に相当する事務を担当した期間が通算して二十年以上(学校教育法 (昭和22年法律第26号)による高等学校を卒業した者その他同法第九十条 に規定する者にあつては十七年以上)になる者
これをまとめると、特認制度を適用されるのは以下の者ということになります。
- 行政書士試験に合格した者。
- 弁護士、弁理士、公認会計士、税理士のいずれかの資格を有する者。
- 国または地方公共団体の公務員として行政事務を担当した期間、あるいは行政法人または特定地方独立行政法人の役員または職員として行政事務に相当する事務を担当した期間が通算して17年以上(中卒の場合は20年以上)の者。
つまり、公務員として17年または20年勤めると行政書士試験が免除され、試験を受けることなく行政書士になれるということです。
なお「行政事務」とは、役所の窓口業務や行政文書の作成など、地方公共団体の施設を管理するうえで必要な事務のことをいい、単純な事務作業や補助的な業務は含まれません。
ここでは公務員と行政書士の業務の関係性や試験を受けなくてよくなる理由、特認制度を利用する際の注意点について解説します。
公務員と行政書士の業務の関連性
公務員と行政書士の業務には深い関連性があります。
なぜなら、行政書士の主な業務のひとつである「許認可申請書類の提出や手続きの代行」は官公庁に対して行うものであり、行政書士が提出した書類の確認や審査は行政事務を担当する公務員が行うためです。
例えば農地法の許可申請や届出には、役所に設置されている農業委員会事務局が対応します。
建設業許可申請なら、建設事務所の管轄です。
いずれも、それぞれの部署に所属する公務員が担当し、相談段階から行政書士とかかわります。
このように、書類を作成・提出する側と確認・審査を行う側という違いこそあるものの、公務員と行政書士の業務は深く関わっており、業務に必要な知識にも共通している部分があります。
行政書士試験を受けなくてよい理由
公務員が行政書士試験を受けずに資格を取得できる理由は、公務員と行政書士の業務分野が大きく重なっている点にあります。
公務員として長く働いている=行政書士の実務経験に相当する経験値があるとの判断から、行政書士試験が免除されます。
また、行政書士試験は、行政書士として実務を行っていくための知識があるかどうかを見る試験です。
公務員として長く勤めた人であれば、すでに行政書士試験に合格できるだけの知識が十分に備わっていると考えられるため、わざわざ試験を受けさせる必要がないのでしょう。
特認制度を利用する際の注意点
特認制度を利用する際は、以下のことに注意する必要があります。
- 特認制度をすぐに利用できるわけではない
- 特認制度を利用しても行政書士になれるとはかぎらない
- 公務員と行政書士の兼業ができない
それぞれ解説します。
特認制度をすぐに利用できるわけではない
前述のとおり、特認制度を利用するためには最低でも17年公務員として勤めなければなりません。
例えば大卒で公務員になった場合、行政書士資格を取得できるのは40代以降です。
「公務員になれば自動的に行政書士資格をもらえる」といったものではない点に注意しましょう。
特認制度を利用しても行政書士になれるとはかぎらない
特認制度を利用しても、100%行政書士になれるとはかぎりません。
行政書士資格を取得するためには、行政書士会の審査を通らなければならないためです。
そのため、公務員として勤務した期間は満たしていても、業務内容によっては行政書士会に認めてもらえない可能性があります。
公務員と行政書士の兼業ができない
公務員と行政書士の兼業ができない点にも注意が必要です。
公務員は副業を禁止されているため、「平日は公務員として勤務し、週末だけ行政書士として活動する」というような働き方はできません。
特認制度の利用が向いているケースは、すでに公務員として長く勤務していて、退職後のキャリアプランとして行政書士が候補に上がっているような場合です。
行政書士試験はたしかに難関といえる試験ですが、司法試験や司法書士試験に比べれば難易度は低く、受験資格の制限もありません。
行政書士として働くことに興味があるなら、行政書士試験を受験して資格を取得することをおすすめします。
公務員と行政書士試験内容に被りはある?難易度が高いのは?
公務員と行政書士の試験内容に共通点はあるのでしょうか。
また、難易度が高いのはどちらなのでしょうか。
ここでは公務員、行政書士の試験内容と共通点、難易度について解説します。
公務員の試験内容について
公務員の試験内容は以下のとおりです。
教養科目 | ||
一般知能 | 数的処理 | 数的推理 |
判断推理 | ||
空間把握 | ||
資料解釈 | ||
文章理解 | 現代文 | |
英文 | ||
一般知識 | 人文科学 | 世界史 |
日本史 | ||
地理 | ||
思想 | ||
文芸 | ||
自然科学 | 数学 | |
物理 | ||
化学 | ||
生物 | ||
地学 | ||
社会科学 | 法律 | |
政治 | ||
経済 | ||
社会 | ||
時事 |
専門科目 | |
法律系科目 | 憲法 |
民法 | |
行政法 | |
労働法 | |
刑法 | |
商法 | |
経済系科目 | ミクロ経済学 |
マクロ経済学 | |
財政学 | |
経営学 | |
会計学 | |
統計学 | |
行政系科目 | 政治学 |
行政学 | |
社会政策 | |
国際関係論 |
試験によって出題科目は異なります。
また、上記の科目がすべてではありません。
公務員試験には筆記試験と人物試験があり、筆記試験は高校までに学ぶ内容の「教養科目」、大学で学ぶ内容の「専門科目」に分類されます。
「人物試験」とは面接や適性検査のことで、筆記試験に合格したあと二次試験として実施されます。
また、公務員には「採用区分」と呼ばれる種類があり、区分によって出題される科目が異なることが特徴です。
上記は、「行政職」の区分で受験する際に出題される科目です。
受験先によっては、教養科目だけが出題されるケースもあります。
行政書士の試験内容について
一方、行政書士の試験内容は以下のとおりです(令和6年以降の内容)。
法令科目 | 民法 |
行政法 | |
憲法 | |
基礎法学 | |
商法・会社法 | |
基礎知識 | 一般知識(政治・経済・社会) |
行政書士業務と密接に関連する諸法令 | |
情報通信・個人情報保護 | |
文章理解 |
行政書士試験は「法令科目」と「基礎知識」の2つの分野に分けられます。
公務員試験に比べると科目数が少ないため、それほど難しくないのではと思われるかもしれません。
しかし、公務員試験の科目には高校で学ぶ範囲も含まれているのに対し、行政書士試験では大半が法律の知識になるため、初学者にとってはほとんどなじみのない内容である可能性が高いです。
また、法令科目、基礎知識にはそれぞれに足切り点が設定されています。
合計点が合格点に達することはもちろん、それぞれの分野で足切り点を突破しなければなりません。
それぞれ特徴の異なる試験ですが、公務員試験の採用区分が行政区分であれば以下のように共通する科目もあります。
- 憲法
- 民法
- 行政法
- 商法
- 政治
- 経済
- 社会
- 文章理解
以上のとおり、行政書士試験で出題される法令科目のうち、基礎法学以外の科目が公務員試験で出題されます。
また、基礎知識でも、行政書士業務と密接に関連する諸法令と情報通信・個人情報保護以外は共通しています。
難易度の高さについて
公務員試験と行政書士試験の難易度は、比べられるものではありません。
それぞれ異なる難しさがあるためです。
例えば公務員試験の難しさには、試験範囲の広さがあげられます。
試験範囲をカバーするだけでも一苦労で、場合によっては手の回らない科目も出てくるでしょう。
一方行政書士試験では、法律に対する深い理解が求められます。
「浅く広く」といった勉強の仕方ではなかなか太刀打ちできません。
まとめ
公務員から行政書士になれる「特認制度」についてや、公務員と行政書士の試験内容、共通点を解説しました。最後にコラムの要点をまとめます。
公務員と行政書士まとめ
- 公務員から行政書士になる方法は、試験に合格する方法と「特認制度」を利用する方法がある
- 特認制度とは、17〜20年公務員として勤務した人が試験を受けることなく行政書士資格を得られる制度である
- 公務員には兼業が禁止されているため、行政書士資格を取得しても公務員を辞めないかぎり行政書士登録はできない/li>
- 公務員と行政書士の業務には共通する部分があり、試験内容にもいくつか同じ科目が存在する
- 公務員試験と行政書士試験のどちらの難易度が高いかについては、一概にどちらともいえない
特認制度を利用すれば、試験を受けることなく行政書士資格を取得できます。
しかし、特認制度を利用するためには高卒以上の人で17年、中卒の人で20年公務員として勤務する必要があります。また、制度を利用したとしても認められるとはかぎりません。
行政書士になるもっとも近道といえる方法は、行政書士試験に合格することです。
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