このコラムは、過去に技術士第二次筆記試験(以下技術士試験)の受験経験があり、残念な結果になった方向けに書きました。

技術士試験を知識確認試験と誤解していませんか?
技術士試験は、他の多くの技術系国家試験と異なり、知識確認が目的ではありません。
あなたの専門技術に関する用語をひたすら暗記することでは、絶対に突破できない試験です。みなさんが、長年にわたり技術者として経験した知見や課題解決能力を筆記と口頭で発揮する試験なのです。

技術士試験に受からない原因や、次こそ合格するためにやるべきことについて解説いたします。

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技術士試験 知っておきたい基本事項

なぜ技術士試験を突破することが難しいのか

技術士試験は、コミュニケーション能力確認試験とも言えます。
受験生が、設問に対して、的確かつ正確に応答できるかを記述ならびに口頭試験を通じて確認する試験です。

コミュニケーションの相手は、試験評価者である試験委員各位です。
試験委員各位とみなさんが設問を通じて、正確にコミュニケーションをとることができれば合格するのです。

単なる知識暗記の掃き出し試験ではありません
ここを間違えないようにしましょう。

技術士試験の範囲

総合技術監理部門以外の20技術部門と総合技術監理部門に分けて実施されます。

20技術部門は、必須科目(技術部門全般にわたる専門知識、応用能力、問題解決能力及び課題遂行能力に関するもの)と選択科目(選択科目についての専門知識及び応用能力並びに問題解決能力及び課題遂行能力に関するもの)が範囲です。

令和元年度以前の数年間の必須試験は、択一試験が採用され、知識確認の観点もありました。

しかし現在では、必須科目、選択科目とも技術士試験制度主旨から記述式試験に統一されています。

関連リンク:日本技術士会

技術士試験は簡単ではないが、難しくもない

技術士試験は、コミュニケーション試験といいました。
この観点を勘違いしていると何度受験しても合格できません

技術士試験を受験するには、所定の実務経験が必要です。20技術部門と総合技術監理部門で実務経験年数が異なります。
みなさんが専門技術者の立場で、蓄積した知見を前提に問題解答をしなればなりません。
答案内容は、みなさんの技術見解なのです。
一般論的な解答をいくら書いても、合格評価を得ることはできません。

このコラムを読んでいる皆さんは、経験豊かな専門技術者のはずです。コミュニケーション試験ということに気が付けば、合格の糸口が見つかりませんか?

技術士試験で残念な結果に終わってしまう場合にありがちな原因とは

私の100例以上の添削経験から、残念な結果となる一端をご紹介します。

ここでは経験年数で分けました。

1. 受験部門の基本的専門知識が不足もしくは30歳代技術者に多い傾向

基本的なテクニカルターム(技術キーワード)の理解が乏しく、技術全体の関連性が不明確な方です。
こういう方は市販参考書や受験対策講座に積極的に臨みますが、すぐに壁にあたり悶々としてしまいがちです。

受験に必要な知識が不足する方は、過去問を教科書とし、テクニカルタームを整理し、どのように解答したら試験委員各位に正確に伝わるかを考えましょう。

2. 実務経験20年超のバリバリ専門技術者に多い傾向

実務経験が長い技術者は、自負が強く、専門業務に対する圧倒的な自信があります。
知っていることは何でも話したい、書きたい衝動が強く、延々と進めるのです。

この姿勢で技術士試験に臨むと、設問に関係のないことまで解答することになり、評価を得ることができません。

設問の要求事項を正確に把握し、無駄なく的確に応える事に意識に集中し、自分をコントロールすることを意識しましょう。

次年度の技術士試験で合格するために絶対やるべき5つのステップ

技術士受からない

次年度は合格を勝ち取っていただきたく、合格ステップを次の5つに整理しました。

  1. 技術士試験の制度主旨を正確に理解する
  2. 自分自身の業務経歴(実務経験証明書作成の材料)の体系的整理をする
  3. 受験部門の過去問からテクニカルターム(技術キーワード)の抽出と解説を付ける
  4. パラグラフライティング手法を習得する
  5. 記述練習

当たり前のことばかりですが、このステップの一つ一つを確かめながら、自分を見つめなおしましょう。

1. 技術士試験の制度主旨を正確に理解する

技術士試験の制度主旨をご自身で確認し、理解してください。

先に述べたように技術士試験は、知識確認試験ではありません。
設問に対して、技術者の実務経験を前提に的確かつ正確に応答できる能力を記述ならびに口頭試験を通じて確認する試験です。

2. 自分自身の業務経歴(実務経験証明書作成の材料)の体系的整理をする

受験申し込みには、実務経験証明書の記載が必要です。

学校卒業後から受験直前までの実務経験を体系的に整理します。

実務経験証明書の作成には技術士法第二条の技術士の定義に沿い、作成する必要があります。
実務経験証明書の作成途中で身近な技術士登録者にアドヴァイスを受けたほうが良いです。

3. 受験部門の過去問からテクニカルターム(技術キーワード)の抽出と解説を付ける

記述試験の答案を記述する材料が、テクニカルターム(技術キーワード)になります。

④で述べる論文作法を知っていても材料そのものの理解がない状態で解答論文は書けません。

市販の参考書を傍らに置き、過去問題(必須科目と選択科目)5年分から、知らないキーワードを抽出し、解説を200字程度で付けます。

4. パラグラフライティング手法を習得する

先に述べた論文作法のことです。

一見難しいようですが、解答を連綿と記述するのではなく、設問に従い解答目次を作り、各目次に対して見出しとその内容で構成する段落(パラグラフ)形式で記述する方法論のことです。

5. 記述練習

技術士試験対策の大骨です。

過去問題を中心にパラグラフライティング手法で解答練習をします。

設問に的確に応答するためには、複数回の練習が必要です。

また解答した答案は、必ず技術士登録者などの識者に校閲してもらうことが近道になります。

技術試験は、正しく対策すれば必ず合格できます

技術士試験は正しく対策をすれば必ず合格できます。

残念な結果を繰り返すのは、コミュニケーション試験であることを理解していないからです。

自分で完璧と考えても、試験評価者から見れば異なった見解もあります。

設問で解答要求されていることを正確に把握し、これに対して具体的かつ論理的に記述する姿勢であれば、合格できるのです。

ぜひこのコラムを参考にご自身を振り返ってください。

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この記事の著者

日比 幸人 講師

北海道大学卒業後,工業用界面活性剤と食品油脂を製造する会社のプラントマネジャーを経て,大手製薬会社系列食品会社で食品素材の研究・開発ならびにテクニカルサービス業務を経験。


1994年に独立し,技術コンサルタント会社を創業,現在に至る。


平成28年,技術士(経営工学部門と総合技術監理部門を併願)試験を受験し,合格。

平成29年3月2部門同時登録。同年から技術士試験受験指導にも携わり,先達の導きもあり,4年間で数十名の受験生を支援する。

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