技術士総合技術監理部門の基本情報まとめ|受験資格・試験概要・合格のポイントは?
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このコラムでは、技術士の総合技術管理部門について解説いたします。
これから取得を検討している人に向けて、技術士総合技術管理部門とはどのような資格なのか、取得するとどのようなメリットがあるのか、試験内容や難易度についてなどについて解説しますので、参考にしてみてください。
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目次
技術士総合技術監理部門とは
技術士第二次試験は、機械部門から総合技術監理部門まで21の技術部門ごとに実施されます。
総合技術監理部門は、21番目の技術部門で、その受験者の多くは、すでに技術士登録者です。
試験では総合技術部門の技術士となるのに必要な課題解決能力および応用能力について、択一式と記述式試験でその能力を有するかを判定されます。
関連コラム:技術士とはどんな資格?受験資格・仕事内容・技術士になるまでの流れを解説
総合技術監理部門技術士の役割
総合技術管理部門の技術士は、技術に関する業務を安全かつ遅れることなく、完了させることを目的にして、5つの管理技術を適用しながら発生する問題群を解決する役割の技術士です。
5つの管理技術とは、技術に関する業務責任者である技術士が、業務を遂行していく中で発生するコストや納期(時間)、人間関係調整など様々な問題を解決するため、下記の各分野の管理技術のことを指します。
【総合技術監理部門の5つの管理技術】
①経済性管理
②人的資源管理
③情報管理
④安全性管理
⑤社会環境管理
なおこの管理技術は、公益社団法人日本技術士会から、総合技術監理部門キーワード集(2023)として公表されています。
総合技術監理部門の技術士(以下総監技術士)は、技術業務全体を俯瞰して幅広い観点から5つの管理技術を発揮し、業務を監理します。
トラブルが発生した場合には、最良と考える解決策について論理的に検討し、その解決をします。
このトラブル解決の時、あちらを立てればこちらが立たず状態、いいかえればトレードオフが発生します。
総監技術士は、トラブルが解決すればよいという視点は持っていません。
技術業務を安全な状態で中断せずに進めるために、部分最適な解決ではなく、全体最適になるように解決策を講じます。
総合技術監理部門に合格した場合のメリット
技術士としての確固たる自信が持てる
総監技術士は、専門技術部門(機械部門から原子力部門までの20部門)にすでに登録し、受験資格を満たし合格登録しているか、20部門と併願受験し、同時合格を経て、登録することでしか名乗ることはできません。
ただでさえ難しい技術士国家試験を通過したうえに、総合技術監理部門に合格し、登録することは、技術者として圧倒的な自信になります。
専門性を深掘りし、技術課題を解決する20部門技術士に加え、総合俯瞰的に管理業務を監理する能力の証明が得られることは、技術者の誉れとも言えます。
総合技術監理部門は、20技術部門の上位資格ではなく、21番目の技術部門の資格です。勘違いをされる方がいらっしゃいますので、付け加えます。
技術業務を超えて発生する問題解決能力と組織マネジメントに取り組む資質証明になる
20部門技術部門の技術士であれば、担当技術業務を専門家視点で深掘りし、最適解決に近づければ任務完了です。
しかし総監技術士は、組織の幹部もしくはその候補生として、いずれは組織そのものをマネジメントしていく中核立場になります。
技術士試験合格登録を経て、技術領域の問題解決と事業プロジェクト運営の能力証明を国家から資格として頂いたわけですから、重要な資質証明になります。
技術者の立場で、上司の指示で業務を担当する立場から、プロジェクトと部下をマネジメントする立場になったとき、総監技術士の立ち位置が明確になります。
このとき技術者人生の大きな変化が、あなたの中で巻き起こります。
社内ポジションの選抜試験の要素 技術者としての生き残りパスポートになる
技術士に登録して、社内待遇が大きく変わることはまずありません。自分の名刺や自己紹介で技術士(●●部門)と名乗ることぐらいでしょう。
しかしここに総合技術監理部門とあるだけで、官公庁や技術士仲間から一目を置かれます。総合施術管理部門資格ホルダーの重要性を痛感します。
一方、その重要性に反し、技術士のプロ中のプロ、技術士経歴十数年の各位でもなかなか総監技術士試験を突破できないのです。
これは総監技術士試験が、とりわけ難しいのではなく、専門家視点が染みつきすぎて、総合俯瞰的な見方が弱いためです。
ある意味、技術者は専門家視点で深掘りしないといけませんが、俯瞰的に技術業務や組織マネジメントをしなければならない実際のプロジェクト運営の場合は、そうはいきません。
実直に業務経験年数を重ねると、そろそろ上級管理職です。
プライドが高い専門技術者(技術士)の組織マネジメントの資質と能力保有者である総監技術士である国家証明は、社内生き残りパスポートになります。
技術士総合技術監理部門の受験資格
日本技術士会HPにある通り、総合技術管理部門の受験資格は下記の通りとなっています。
技術士補となる資格を有し、次のいずれかに該当する者
(1)技術士補として技術士を補助したことがある者で、その補助した期間が通算して次に定める期間(⑵の期間を算入することができる。)を超える者
①総合技術監理部門を除く技術部門 4年
② 総合技術監理部門 7年(2)科学技術(人文科学のみに係るものを除く。)に関する専門的応用能力を必要とする事項についての計画、研究、設計、分析、試験、評価(補助的業務を除く。)又はこれらに関する指導の業務を行う者の監督の下に当該業務に従事した者で、その従事した期間が技術士補となる資格を有した後通算して次に定める期間(⑴の期間を算入することができる。)を超える者。
① 総合技術監理部門を除く技術部門 4年
② 総合技術監理部門 7年(3)科学技術(人文科学のみに係るものを除く。)に関する専門的応用能力を必要とする事項についての計画、研究、設計、分析、試験、評価(補助的業務を除く。)又はこれらに関する指導の業務に従事した期間が通算して次に定める期間を超える者。
① 総合技術監理部門を除く技術部門 4年
② 総合技術監理部門 10年(既に総合技術監理部門以外の技術部門について技術士となる資格を有する者にあっては7年)なお、⑴~⑶のいずれにおいても学校教育法による大学院修士課程(理科系統のものに限る。)若しくは専門職学位課程(理科系統のものに限る。)を修了し、又は博士課程(理科系統のものに限る。)に在学し、若しくは在学していた者にあっては、2年を限度として、当該期間からその在学した期間を減じた期間とする。
整理しますと、総合技術監理部門の受験には、技術士補もしくは修習技術者(JABEE修了含む)である必要があり、さらに(1)~(3)のいずれかの経験年数がなくてはなりません。
実際の受験者は、上記の条件を満たし、その他の技術部門の技術士に合格登録している技術者がほとんどです。
技術士実務で豊富な指導経験値があり、後輩技術者の職務教育や業務管理を行う技術者が多いことも総合技術監理部門受験者の特徴です。
一方、30歳代後半でチャレンジする若手技術士もいます。
業務経験は、先輩技術士に満たなくとも、5つの管理技術、リスクアセスメント、トレードオフに代表される総合技術監理技術を養い自己成長することは大変意義のあることです。
技術士総合技術監理部門 試験の難易度・合格率
技術総合技術監理部門の最新年度の合格率は、20.7%となっています。
過去5年分の総合技術監理部門の合格率を以下に示します。
年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
令和5年度 | 2,618 | 543 | 20.7% |
令和4年度 | 2,735 | 501 | 18.3% |
令和3年度 | 2,742 | 398 | 14.5% |
令和2年度 | 2,582 | 325 | 12.6% |
令和元年度 | 3,180 | 490 | 15.4% |
過去5年の合格率推移を見ますと、12.6%~20.7%の分布です。
合格率推移は、20部門と変わらないように見えますが、先に述べたように受験者のほとんどは技術士資格保有者です。すでに技術士として認められている受験者(技術士登録者)を絞り込む狭き門なのです。
総合技術部門の試験は、確かに難しいですが理由はそれだけではありません。
20部門技術士試験は、自身が選択した技術部門の全般にわたる専門知識、応用能力、問題解決能力及び課題遂行能力に関して、専門家視点で深掘りする解答を求められます。
一方、総合技術監理部門では、提示された業務(プロジェクト)事例に対し、リスクマネジメント視点で5つの管理技術を応用し、発生するトレードオフ解決を目指す全体最適思考を求められます。
この一連のプロセスが、総監試験でいう課題解決能力や応用能力にあたります。
これは20部門技術士の工学的視点のみで技術的問題の解決を図ることは、総監技術士としては不十分ということです。
工学的見地で技術問題は解決しても、そのほか業務上で発生する多くの問題は、技術的問題ではないからです。
工学技術以外の管理能力を発揮し、技術的な問題以外の様々な問題について解決を図っていく必要があります。
関連コラム:技術士試験の難易度は?一次・二次試験の合格率全部門総合&部門別にまとめ
技術士総合技術監理部門 試験日程と内容について
試験の日程
筆記試験日
総合技術監理部門の必須科目:令和6年7月14日(日)
総合技術監理部門の選択科目:令和6年7月15日(月)
口頭試験:令和6年11月から令和7年1月までの間で、受験者に別途通知する日
総合技術監理部門の第二次試験は、通常7月中旬に実施されます。
併願受験の場合は、総合技術監理部門の試験日の翌日に選択科目(20部門の必須科目と選択科目)を受験します。
なお試験実施日は、例年受験日の前年年末ごろに公益社団法人日本技術士会のホームページで公表されます。
試験科目の必須科目
筆記試験と口頭試験で実施されます。
*免除しない場合、選択科目(受験者が指定した20部門の必須と選択科目)受験
筆記試験
Ⅰ 必須科目 「総合技術監理部門」に関する課題解決能力及び応用能力
①択一式(午前中の2時間)
②記述式(午後の3時間30分)
Ⅱ 選択科目 (他の20の技術部門の必須科目及び対応する選択科目のうちあらかじめ選択する1科目)①選択した「技術部門」全般にわたる専門知識、応用能力、問題解決能力及び課題遂行力に関するもの (午前中の2時間)
② 選択した技術部門に対応する「選択科目」についての専門知識及び応用能力に関するもの
➂選択した技術部門に対応する「選択科目」についての問題解決能力及び課題遂行能力に関するもの (②と➂合わせて、3時間30分)
※既に総合技術監理部門以外のいずれかの技術部門について技術士となる資格を有する者は、当該技術部門に対応する選択科目が免除される。(技術士法施行規則第11条の2)
必須科目は、択一式と記述式で行われます。
択一式は、ほぼ毎年年末に公表される総合技術監理部門キーワード集の管理技術別のキーワードから社会世相を反映して出題されます。
5つの管理技術に対して、各管理技術ごとに8問、合計40問を2時間で解答します。
記述式は、キーワード集の冒頭に整理された総合技術監理の背景、技術体系と範囲、総合技術監理における総合管理技術、総合技術監理に必要とされる倫理観等から社会世相をもとに出題され、3時間30分で記述解答します。
なお選択科目については、ほとんどの受験者が技術士登録者であることから、ここでは割愛します。
口頭試験
① 口頭試験は、筆記試験の合格者に対してのみ行う。
② 口頭試験は、技術士としての適格性を判定することに主眼をおき、筆記試験における記述式問題の答案及び業務経歴を踏まえ実施するものとし、筆記試験の繰り返しにならないよう留意する。
Ⅰ(必須科目に対応)「総合技術監理部門」の必須科目に関する技術士として必要な専門知識及び応用能力
Ⅱ(選択科目に対応) Ⅰ 技術士としての実務能力 とⅡ 技術士としての適格性
③試問事項及び試問時間は、20分とする。なお、試問時間を10分程度延長することを可能とするなど受験者の能力を十分確認できるよう留意する。
※選択科目に関する口頭試験は、総合技術監理部門以外の技術部門の口頭試験にて別途行うこととする。また、選択科目が免除される者は必須科目のみの試問とする。
口頭試験は、筆記試験合格者に対して、東京の試験会場でのみ実施されます。
経歴及び応用能力、体系的専門知識に対して、20分間で試問されます。
なお筆記試験の合格発表は、例年10月末ごろです。
合格判定基準
筆記試験は、択一式50点ならびに記述式50点の配点です。
択一式と記述式の合計点数が、60%を上回っていれば合格となります。
一方、口頭試験は、経歴及び応用能力60点、体系的知識40点の配点ですが、各々個別に60%を得点しないと合格できません。
筆記試験・配点は下記の通りです。
筆記試験の配点
必須科目
択一式 50点満点 記述式 50点満点
選択科目
1:40点満点
2・3:60点満点 (2:30点、3:30点)
口頭試験の配点
総合技術監理部門の必須科目に関する技術士として必要な専門知識及び応用能力
- 経歴及び応用能力 60点満点
- 体系的専門知識 40点満点
(経歴及び応用能力項目が60%以上、体系的専門知識が60%以上で合格)
合格するための試験対策・勉強方法
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問題文を実務でシミュレーションする
20部門技術士試験との大きな違いは、受験者の多くが技術士登録者であり、その道の専門家であることです。
また技術的な課題解決のみでなく、業務進捗や組織マネジメントに技術監理者の立場で臨むことが前提になります。
よって実務で管理職に相当する経験を積んでいるかいないかで臨む姿勢が異なってくるのです。
先に述べましたが、総合技術監理部門では、提示された業務(プロジェクト)事例に対し、リスクマネジメント視点で5つの管理技術を応用し、発生するトレードオフ解決を目指す全体最適思考を求められます。
仮に管理職経験がなくとも、問題文を読んだときに実際の業務がイメージできれば取り組みやすくなります。
20部門と総監技術士で実務経験年数が異なるのは、これが理由です。
総監技術士試験の受験を決意したら、過去試験問題と実務を結び付け、業務(プロジェクト)運営に関わる人・もの・カネなどの状況変化、次々迫る問題の把握、そして解決すべき課題を設定し、5つの管理技術で解決策を提案する習慣づけが必要です。
さらに発生するトレードオフの解決シミュレーションをすることが要諦になります。
択一はキーワード学習と過去問照査/記述はトレードオフ解決表現練習
総監技術士の本質を理解することが一番早道です。
公益社団法人日本技術士会が公表する総合技術監理部門キーワード集(2023)の冒頭を参考に総監技術士業務のイメージをしてください。
次に過去問題を5年間分整理して解いてみましょう。
最初は全く歯が立たないと思います。
択一科目は、5つの管理技術別に解答プロセスを整理しながら、解いていくしかありません。
択一試験の目的は、知識の確認です。これはじっくりと時間をかけて、勉強するしかありません。
記述試験は、上記のイメージをしながら、リスクマネジメントを念頭に5つの管理技術をどう応用するか、結果、発生したトレードオフ状態をどう解決するかを実務経験からイメージできるようにすること、さらにこの流れを所定時間の3時間30分で原稿用紙に記述する練習が必須になります。
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この記事の著者
北海道大学卒業後,工業用界面活性剤と食品油脂を製造する会社のプラントマネジャーを経て,大手製薬会社系列食品会社で食品素材の研究・開発ならびにテクニカルサービス業務を経験。
1994年に独立し,技術コンサルタント会社を創業,現在に至る。
平成28年,技術士(経営工学部門と総合技術監理部門を併願)試験を受験し,合格。
平成29年3月2部門同時登録。同年から技術士試験受験指導にも携わり,先達の導きもあり,4年間で数十名の受験生を支援する。
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