技術士は、科学技術に関する専門的な知識やスキルを証明する国家資格です。

技術士の専門分野は21部門にわかれており、そのひとつに生物工学部門があります。

部門数が多いため、技術士を知っていても生物工学部門について詳しく知らない方は多いのではないでしょうか。

本コラムでは、技術士の生物工学部門について詳しく解説します。

取得するメリットや難易度に加えて、取得するための勉強方法にも触れるため、興味がある方はぜひ最後までご覧ください。

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技術士生物工学部門とは?

技術士生物工学部門とは、生物学的な知識やスキルを実社会に役立てる技術を確立させる部門です。

生物工学部門に該当する分野の一例は、以下のとおりです。

  • 生物機能工学
  • 生物プロセス工学

具体的には、日本酒や漬物などの微生物による発酵を利用した食品生産に役立つ技術や、微生物の働きによる下水処理技術などが該当します。

生物工学部門の技術士資格を取得すれば、生物工学の知見を応用して、食品生産の効率化を促す、環境問題の解決を目指すなどの仕事に従事できます。

そのほか、iPS細胞などを活用した再生医療や植物を利用したバイオ燃料技術の研究なども該当するため、幅広い業界や分野で活躍できるでしょう。

技術士生物工学部門を取得するメリット

生物工学部門で技術士資格を取得するメリットは以下のとおりです。

  • 専門性の証明とキャリアアップ
  • 社会的信頼・責任の担保
  • 国際的な活躍の機会獲得

専門性の証明とキャリアアップ

生物工学分野における高度な専門知識と技術力を証明し、専門家としての市場価値を高めることが可能です。

企業や研究機関からの信頼を得て、研究開発・製品開発・コンサルティングなど専門性の高い業務に携わる機会が増え、キャリアアップにつながります。

また高度な専門性を活かし、社会貢献をできる魅力も。

技術士としての倫理観を持ち、技術の発展に貢献することで、社会全体の利益に繋がります。

社会的信頼・責任の担保

技術士は、高度な倫理観と責任感を持つ技術者として認知されており、社会的に高い信頼を得られます。

国・地方自治体の公共性の高い事業や研究プロジェクトにおいて、技術士としての専門知識や経験が評価され、重要な役割を担うことが可能です。

生物工学関連の領域は、人々の健康や環境に直接影響を与える重要分野なため、高い倫理観と責任感がなくてはなりません。

技術士としての責任を果たすことは、技術の安全性や倫理性を確保し、社会の持続可能な発展に貢献することを意味します。

国際的な活躍の機会獲得

技術士は国際的な相互認証が進んでおり、海外での活躍の機会を広げることが可能です。

海外の企業や研究機関との共同研究や技術交流において、技術士としての専門知識や経験が評価され、国際的なプロジェクトに参画できる可能性が高まります。

特に生物工学部門の技術士はグローバルな課題解決に貢献できる分野で、国際的な連携が不可欠です。

技術士資格は、国際的な基準を満たす技術者であることを証明してくれるため、海外での活動を円滑に進める上で有利に働きます。

技術士生物工学部門の難易度は?

技術士生物工学部門の難易度は、総合的に見て「難しい」です。

難しいとされる大きな要因は、技術士試験のシステムが挙げられます。

技術士資格を得るためには、第一次試験・第二次試験の両方に合格する必要があり、最終的な合格率は低いのが現状です。

第一次試験の合格率

技術士生物工学部門の第一次試験の難易度は「やや難しめ」です。

以下、過去5回における生物工学部門・第一次試験の合格率を紹介します。

年度受験者数合格者数合格率
令和6年度117名59名50.4%
令和5年度122名77名63.1%
令和4年度139名48名34.5%
令和3年度131名50名38.2%
令和2年度84名21名25.0%

※参考:技術士第一次試験 統計情報|公益社団法人 日本技術士会

過去5回における第一次試験の合格率は、25.0%〜63.1%となっています。

令和5年度の合格率が63.1%と最も高く、令和2年〜4年の合格率と比較して大きく合格率があがりました。

しかし、次年度の令和6年第一次試験では、合格率50.4%と少々下がっており、今後も下がる可能性があるでしょう。

合格率が20%代の年度もあるため、第一次試験の難易度はやや難しいと捉えておきましょう。

第二次試験の合格率

技術士生物工学部門の第二次試験の難易度は「難しい」といえます。

以下、過去5回における生物工学部門・第二次試験の合格率です。

年度受験者数合格者数合格率
令和6年度40名7名17.5%
令和5年度30名6名20.0%
令和4年度29名5名17.2%
令和3年度27名5名18.5%
令和2年度33名9名27.3%

※参考:技術士第二次試験 統計情報|公益社団法人 日本技術士会

直近5年における第二次試験の合格率は、17.2%〜27.3%でした。

第二次試験を受験するためには、実務経験などの条件をクリアしなければなりません。

受験者が実務経験者のみにもかかわらず合格率が低いため、第二次試験の難易度はかなり高いと考えられます。

技術士生物工学部門の難易度が高い理由

技術士生物工学部門の難易度が高い理由は、以下の3点が挙げられます。

  • 試験範囲が広く専門性が必要
  • 複合的な問題解決能力が必要
  • 高度な倫理観と社会的責任が必要

試験範囲が広く専門性が必要

生物工学部門は、医療、食品、環境、エネルギーなど、非常に広範な分野にまたがる学問です。

試験範囲も基礎的な生物学から応用技術まで多岐にわたり、それぞれの分野において高度な専門知識が求められます。

受験者は、広範な知識を網羅するだけでなく、それぞれの分野における最新の技術動向や研究成果も把握しておかなくてはなりません。

複合的な問題解決能力が必要

生物工学部門の試験では暗記だけでなく、複数の分野の知識を統合し、複雑な課題を解決する能力が求められます。

受験者は様々な視点から問題を分析し、最適な解決策を導き出す能力を養うことが重要です。

生物工学部門が扱う課題は、多くの場合、複数の要因が複雑に絡み合っています。

例えばバイオ医薬品の開発においては、生物学的な知識だけでなく化学・工学・薬学など様々な分野の知識が必要です。

試験ではこれらの知識を統合し、安全性・有効性・経済性などを考慮した上で、最適な開発計画を立案する能力が問われます。

高度な倫理観と社会的責任が必要

生物工学部門の技術士は人々の健康や環境に直接影響を与える技術を扱うため、高度な倫理観と社会的責任が求められます。

試験では技術者倫理に関する問題や、環境や安全性に配慮した技術開発に関する問題が出題されるため、受験者は正確かつ適切な判断を下せる能力を養わなくてはなりません。

生物工学領域の発展は、社会に大きな恩恵をもたらす一方、倫理的な問題や環境問題を引き起こします。

例えば、遺伝子編集技術や再生医療などの分野は議論が活発です。

試験ではこれらの問題に対してどのように向き合い、社会の利益に貢献するかを問われます。

技術士生物工学部門の試験内容

技術士生物工学部門の第一次・第二次試験の内容について解説します。

第一次試験の概要

受験資格

第一次試験の受験資格は、特に設けられていません。

年齢・学歴・業務経歴などの制限はないため、希望すれば誰でも受験することが可能です。

試験内容

第一次試験は筆記試験です。

全科目択一式となっており、基礎科目・適性科目・専門科目について問われます。

また、令和6年度の第一次試験における合格基準は、各科目50%以上の得点となっています。

※出典:令和6年度技術士試験合否決定基準|文部科学省

基礎科目で80%以上点数が取れても、ほかの科目で50%以上の点数が取れなければ、合格にはなりません。

以下、各科目の詳しい概要をまとめました。

科目試験範囲配点解答時間
基礎科目設計・計画に関するもの情報・論理に関するもの解析に関するもの材料・科学・バイオに関するもの環境・エネルギーに関するもの15点満点1時間
適性科目技術士法第四章(技術士等の義務)の規定の遵守に関する適性15点満点1時間
専門科目細胞遺伝子工学生物化学工学生物環境工学50点満点2時間

※参考:技術士第一次試験の科目|公益社団法人 日本技術士会技術士第一次試験実施大綱

基礎科目と適性科目は、全部門共通した科目です。

専門科目は各部門によって範囲が異なり、生物工学部門では細胞遺伝子工学・生物化学工学・生物環境工学から問題が出題されます。

第二次試験の概要

受験資格

第二次試験を受験するためには、一次試験に合格もしくはJABEE課程を修了後、技術士補の資格を取得し、以下のいずれかの条件に該当しなければなりません。

条件①技術士補として技術士を補助したことがある者で、その補助した期間が通算して次に定める期間を超える者総合技術監理部門を除く技術部門 4年総合技術監理部門 7年※条件②の期間を算入することができる
条件②科学技術(人文科学のみに係るものを除く)に関する専門的応用能力を必要とする事項についての計画、研究、設計、分析、試験、評価(補助的業務を除く)又はこれらに関する指導の業務を行う者(注1)の監督(注2)の下に当該業務に従事した者で、その従事した期間が修習技術者(JABEE課程修了者含む)の立場で、通算して次に定める期間を超える者総合技術監理部門を除く技術部門 4年総合技術監理部門 7年※注1:7年を超える業務経験を有し、かつ受験者を適切に監督することができる職務上の地位にある者※注2:受験者が技術士となるのに必要な技能を修習することができるよう、指導、助言その他適切な手段により行われるもの※条件①の期間を算入することができる
条件③科学技術(人文科学のみに係るものを除く)に関する専門的応用能力を必要とする事項についての計画、研究、設計、分析、試験、評価(補助的業務を除く)又はこれらに関する指導の業務に従事した期間が通算して次に定める期間を超える者総合技術監理部門を除く技術部門 7年総合技術監理部門 10年(既に総合技術監理部門以外の技術部門について技術士となる資格を有する者にあっては7年)

いずれの条件でも実務経験が必要となるため、第二次試験の受験したい方はまず実務経験を積みましょう。

また条件①〜③のいずれにおいても、理科系統の大学院修士課程・専門職学位課程を修了、または博士課程(前期博士課程(修士)・後期博士課程)に在学もしくは在学していた者は、実務経験に最大2年間を上限として加算できます。

試験内容

第二次試験は、記述式の筆記試験と口頭試験になります。

筆記試験の内容は、あらかじめ選択する1技術部門に対応する「必須科目」と、各技術部門に設定された選択科目の中から、あらかじめ選択する「選択科目」の2つです。

令和6年度第二次試験における筆記試験の合格基準は、必須科目・選択科目ともに60%以上の得点と定められました。

※出典:令和6年度技術士試験合否決定基準|文部科学省

以下、筆記試験の詳しい概要です。

科目試験範囲試験時間
必須科目「技術部門」全般にわたる専門知識、応用能力、問題解決能力及び課題遂行能力に関するもの2時間
選択科目「選択科目」についての専門知識及び応用能力に関するもの「選択科目」についての問題解決能力及び課題遂行能力に関するもの3時間30分

※参考:技術士第二次試験の科目 |公益社団法人 日本技術士会

なお、技術士生物工学部門の選択科目には、生物機能工学・生物プロセス工学が該当します。

第二次試験の口頭試験は、筆記試験の合格者のみの実施です。

令和6年度第二次試験における口頭試験の試問事項と、合格基準は以下のとおりです。

技術士としての実務能力コミュニケーション・リーダーシップ
評価・マネジメント
60%以上の得点
技術士としての適格性技術者倫理、継続研さん60%以上の得点

※出典:令和6年度技術士試験合否決定基準|文部科学省

口頭試験は技術士としての適格性を判定することを軸に、筆記試験における記述式問題の答案および業務経歴について問われます。

技術士生物工学部門の勉強方法

第一次試験の勉強方法

技術士生物工学部門の一次試験は、基礎科目・適性科目・専門科目の3科目です。

十分な学習時間を確保し、科目間で偏らないよう、実戦形式で練習しましょう。

時間配分や問題の解き方など、試験に慣れておくことが重要です。

基礎科目は、技術士会の公開する試験内容をよく確認し、自身の得意分野と苦手分野を把握することが重要。

苦手分野は重点的に復習し、克服に努めましょう。

適性科目は、技術士倫理綱領の理解が必須です。

熟読して技術者倫理に関する理解を深め、過去問を通して倫理的な判断力を養いましょう。

技術者としての社会的役割について考えることも重要です。

技術全般に関する常識も問われるため、日頃からニュースや新聞に目を通し、見聞を広める工夫が必要になります。

専門科目は、生物工学関連領域の専門書や論文を読み込み、最新の技術動向や研究成果を把握することが重要です。

特に過去問は徹底的に分析し、効率的に受験対策をしてください。

第二次試験の勉強方法

二次試験は、記述式の筆記試験・口頭試験で構成されます。

筆記試験の対策は、過去3年以内の出題傾向を把握し、過去問で記述練習をすること。

最新の研究論文や技術動向を把握し、関連法規制やガイドラインを理解しておきましょう。

また専門用語を正確に使い、論理的な文章を作成する練習も必要です。

論文の論旨構造を意識し、図表やグラフを効果的に活用できるようにしてください。

おすすめは第三者に論文を添削してもらい、客観的な意見を取り入れること。

技術士試験対策セミナーハウスが主催する答練や模擬試験を利用すると効果的です。

口頭試験では、プレゼンテーション能力も評価されます。

筆記試験の論述内容や口頭試験で試問される内容について、簡潔かつ明確に回答できるようにしましょう。

過去の口頭試験の内容をもとに、想定質問を考えることは非常に重要です。

専門知識だけでなく、技術者としての倫理観や社会貢献に対する考えなども明確に伝えられるように準備をしてください。

第三者実施の模擬面接を実施し、質疑応答の練習や話し方の改善に努めましょう。

まとめ

本コラムでは、技術士の生物工学部門について詳しく解説しました。

以下、コラムで特に押さえたいポイントを紹介します。

  • 生物工学部門とは、生物学的な知識やスキルを実社会に役立てる技術を確立させる部門
  • 生物工学の知見で食品生産技術の仕事から環境問題の解決に繋がる仕事まで幅広く活躍できる
  • 第一次試験の合格率は20~60%程度、第二次試験の合格率は20~30%で推移している

生物工学部門の第一次・第二次試験の両方に合格することは、総合的に見て難しいです。

特に第二次試験は実務経験者でも不合格になるため、しっかり試験対策を行わないと合格に繋がらないでしょう。

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この記事の監修者

日比 幸人 講師

北海道大学卒業後,工業用界面活性剤と食品油脂を製造する会社のプラントマネジャーを経て,大手製薬会社系列食品会社で食品素材の研究・開発ならびにテクニカルサービス業務を経験。


1994年に独立し,技術コンサルタント会社を創業,現在に至る。


平成28年,技術士(経営工学部門と総合技術監理部門を併願)試験を受験し,合格。

平成29年3月2部門同時登録。同年から技術士試験受験指導にも携わり,先達の導きもあり,4年間で数十名の受験生を支援する。

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