資格の取得を検討しているとき、年収は最も気になるポイントの一つではないでしょうか。

このコラムでは技術士の年収について、データに基づいてご紹介します。

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技術士の平均年収とは?

厚生労働省の令和5年賃金構造基本統計調査によると、技術士の平均年収は約615万円でした。

この数値は全国男女の技術士年収の合計の数値です。

男女別の技術士平均年収は下記の通りです。

男性:約637万円
女性:約494万円

その他、技術士の属性ごとにデータを詳しく見てみましょう。

都道府県・男女別の技術士の年収

2019年の厚生労働省のデータから都道府県別に技術士の平均年収をみると、男性は滋賀県が最も高く857万円、女性は富山県が最も高く1,129万円となっています。

年収が高い上位10の都道府県のうち、男女共に年収が高いのは宮城県、埼玉県、東京都です。

順位男性女性
都道府県平均年収(万円)都道府県平均年収(万円)
1滋賀県857富山県1,129
2埼玉県853宮城県831
3沖縄県836兵庫県643
4徳島県816東京都641
5宮城県789千葉県626
6東京都758埼玉県624
7愛知県743福井県608
8三重県740神奈川県591
9鳥取県735大阪府580
10長野県732京都府558
参考: 厚生労働省 賃金構造基本統計調査 都道府県×職種DB (2019年)

企業規模別の技術士の年収

技術士の年収は、所属する企業規模が大きいほど高くなっています。

1000人以上の大企業に所属する技術士の平均年収は大企業に所属する技術士の平均年収は752万円、100~999人の中企業に所属する技術士の平均年収は669万円、10~99人の小企業に所属する技術士の平均年収は606万円となっています。 

企業規模平均年収(万円)
企業規模計(10人以上)667
大企業(1,000人以上)752
中企業(100~999人)669
小企業(10~99人)606
参考: 厚生労働省 賃金構造基本統計調査 都道府県×職種DB (2019年)

技術士の年収は所属する企業によってバラつきあり

技術士の年収は所属する企業によって異なり、同じ技術部門の技術士であっても大きな幅があるのが特徴です。

技術士の年収例

以下に、所属する企業によって異なる技術士の年収例として、技術士資格を必須とする求人の一部を抜粋して紹介します。

想定年収(年収例)業種・職務内容部門他歓迎資格など
450~750万円サイバー/科学捜査技術支援情報工学部門 化学部門情報処理安全確保支援士薬剤師国家試験合格者
500~800万円環境コンサルタント環境部門 衛生工学部門RCCM
500~900万円建設コンサルタント建設部門 上下水道部門 応用理学部門 農業部門 水産部門 森林部門 衛生工学部門 機械部門 電気電子部門 
600~1200万円技術顧問総合技術監理部門(電気電子)1級電気通信工事施工管理技士

技術士資格が必須の求人では、コンサルタントや技術顧問といった、上流の技術職で年収が500~1000万円以上となっています。

技術士資格の求人は、建設コンサルタントが大多数を占めます
建設コンサルタントの求人では、建設部門や上下水道部門といった、社会資本(道路、橋、河川、鉄道、空港等)の調査や設計などに関連する技術士資格の保有を必須としているものがほとんどです。
中でも、技術部門に加えて、その技術部門の専門科目まで細かく指定した求人は、年収がより高い傾向にあります。

建設コンサルタント以外では、技術士資格を必須としている官公庁や独立行政法人の技術者求人があります。

一般のメーカーやIT系企業で技術士を必須としている求人は少なく、技術士資格を持たない他の技術者との間に年収の大きな差はみられません。

サラリーマン技術者の割合

日本技術士会の資料によると、技術士の勤務先で最も多いのが一般企業等の42.7%、次いで建設コンサルタント業の35.8%となっています。

自営業の技術士8.6%を除くと、技術士登録者の90%以上は企業や団体に所属するサラリーマン技術者です。このため、技術士の年収は、同じ資格保有者であっても所属する企業によってバラつきがあります。 

企業規模による賃金格差

産業全体での企業規模による賃金の違いをみてみましょう。
厚生労働省 賃金構造基本統計調査によると、大企業の賃金を100としたとき、中企業の賃金は90.0、小企業の賃金は85.0といった格差があります。
このような傾向から、サラリーマン技術士の年収は、大企業に所属する技術士の方が高いと考えられます。

企業規模大企業=100とした賃金格差
大企業(1,000人以上)100
中企業(100~999人)90.0
小企業(10~99人)85.0
参考:令和5年賃金構造基本統計調査 結果の概況|厚生労働省

部門による違い

同じく 厚生労働省 賃金構造基本統計調査によると、産業別では「学術研究,専門・技術サービス業」の賃金が最も高く、次いで「電気・ガス・熱供給・水道業」という順になっており、これらの産業に分類される企業に所属する技術士の年収が高くなっているといえます。

参考:令和5年賃金構造基本統計調査 結果の概況|厚生労働省

多くの技術士が勤務する建設コンサルタント業は、学術研究、専門・技術サービス業に分類されます。
技術士21部門のうち、建設コンサルタント業に関係が深い建設部門などインフラ系の技術士は年収が高い傾向にあり、直接的な関係が少ない機械・化学などの部門と年収の水準が大きく異なります。 

資格手当はどれくらい?

厚生労働省の賃金事情等総合調査によると、技術(資格)手当制度の金額は業種によって幅があり、一般的に1~4万円程です。

一方、建設コンサルタント業のような技術士資格を必須とする企業では求人情報に資格手当を明記していることも多く、技術士資格取得時に一時金として20万円程が支給されたり、3~10万円 /月の技術士資格手当が支給される会社も珍しくありません

年収を上げるには?技術士年収Q&A

技術士の年収の幅は広いようです。

今回は、アガルート技術士講座を担当している日比講師に、技術士の年収と魅力について質問してみました。

Q.上記までのデータ上の技術士の年収について、補足があれば教えてください。

A.関連統計データをもとに整理しましたので、まずは年収イメージをもちましょう。

技術系国家資格のなかで、技術士資格は最高峰の難関資格と言われています。
試験で考査される内容が、専門技術知識の多寡ではなく、今まで培った実務経験を応用し、課題設定能力やケース問題で応用視点を記述形式で試問されるからです。

よって難関試験ゆえにその取得後は大幅に年収が上がり、経済的に豊かになることをイメージしがちです。
しかし実際はそうではありません。

先に示したように技術士資格保有(登録)者の年収は、所属する企業の給与基準によって決まります
仮に同じ技術部門かつ同じ選択科目で登録した技術士を比較した場合でも、所属する企業の基準に準じて異なります

ただし建設業などのインフラ等公共事業を担う企業の場合は、技術士資格の有無で資格手当以上に職務立場が異なることはあるようです。

一方、私のようなフリーランス技術士の年収は、自分自身の営業努力次第で決まります

ただしその営業において、「・・・・部門の技術士登録証明」があるのとないのとでは、営業の進め方が全く異なります
企業に所属する技術士の立場で業務を担う場合とフリーランスの立場とでは、年収以上に技術士登録証明の意味が異なります。

資格取得後の年収に目が行きがちですが、年収以上に技術士資格は、専門技術部門における重要な能力証明であり、さらにダントツの自信を導いてくれます。

Q.技術士資格を活かして高年収を狙うには?

A.サラリーマン技術士は、所属企業技術部門の最高職位を、フリーランス技術士は、専門技術特化した技術コンサルタントを目指す方法があります。

年収を維持・確保する必要なことを書いておきます。

技術士登録すると、実務経験とともに目標を設定し継続研鑽をしていかなければなりません
継続研鑽は、技術士の責務であり、刻々と変化する世間世相の関心事の解決に対応しなければなりません。
みなさんが目標とする技術者になるため、また公益確保を念頭に研鑽の方向性とその内容を実務に照らし合わせて、進めましょう。

サラリーマン技術士は、企業内の技術部門の最高職位を目指す意義があります。
技術担当者から技術士登録を経て、自社技術の業際を含め自学研鑽をすること、若手技術者の育成に貢献することは極めて有意義です。
さらに担当技術部門を超えた技術監理者になるために総合的な技術研鑽をすることも良いでしょう。
技術監理能力の証明が技術士試験総合技術監理部門資格になります。
大手企業技術部門の部長職位以上には、技術士20部門に加えて、総合技術監理部門登録者が多いです。

関連コラム:技術士総合技術監理部門の基本情報まとめ|受験資格・試験概要・合格のポイントは?

一方、フリーランス技術士は、保有する技術部門を軸に専門性を極めることをお勧めします。
保有する技術士資格の技術部門を軸にして、業際拡大をするのです。
私は、経営工学部門(旧生産マネジメント)と総合技術監理部門の保有者ですが、技術士活動の専門は、食品衛生監理視点で安全な食品製造と流通のコンサルタントです。
経営工学視点を軸に営業部門を設定し、技術士の課題解決思考で仕事を進めています。
フリーランス技術士は、顧客からどの専門家であるか明確にわかるように専門性の軸を磨く必要があります

Q.年収面以外の技術士の魅力は?

A.技術士の魅力の一つは、みなさんの技術士資格がこれからの自信軸になるということです。

「自信軸」とは、自分自身のよりどころのことです。
言い換えれば、「何をよりどころに技術業務を進めるのか」を意味します。
研究職の場合は、一例ですが「博士号」と関連論文数などをもとに研究課題を設定し、業務を進めます。
技術者の場合は、「技術士資格」をよりどころに業務を進めるといっても過言ではないでしょう。

技術士試験で自信軸を作った一例を紹介します。

私の知人技術士には、技術士技術部門を4つ登録している猛者もいます。
最初に登録した技術部門を軸にその技術に関連する業際技術を勉強し、実務経験との関連を確認しながら、他の技術部門の研鑽をしていきました。
彼は、現役引退後、私とともに仕事をしています。
彼の人柄に加え、その専門性の広さと技術指導業務に対する自信に脱帽です。
彼は大手部品製造会社の技術管理職でした。
控えめな性格で、自己主張をしなかったことから、社内で注目を浴びないまま定年になりました。
そこで自己革新目的で技術士試験にトライしたのです。

私の場合は、技術士倫理綱領を常に念頭に技術営業をすることで、お客様に信頼頂ける活動ができていると自負しています。

このコラムを読んでいただいているみなさんにも、技術士資格を取得頂き、ご自身の自信軸を明確にしていただきたいと思います。

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この記事の監修者

日比 幸人 講師

北海道大学卒業後,工業用界面活性剤と食品油脂を製造する会社のプラントマネジャーを経て,大手製薬会社系列食品会社で食品素材の研究・開発ならびにテクニカルサービス業務を経験。


1994年に独立し,技術コンサルタント会社を創業,現在に至る。


平成28年,技術士(経営工学部門と総合技術監理部門を併願)試験を受験し,合格。

平成29年3月2部門同時登録。同年から技術士試験受験指導にも携わり,先達の導きもあり,4年間で数十名の受験生を支援する。

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