この記事では日本の大学入試を考えている帰国子女向けに、受験資格や大学ごとに必要なIELTSのスコアについて解説します。

親の転勤や海外赴任などの理由で国外に長期滞在をしていると、日本の大学入試についての情報が手に入りづらい方もいるでしょう。

ぜひ参考にしてください。

帰国生入試の試験の種類

まず最初に、帰国生入試の試験の種類やスケジュールについて解説します。

帰国生入試は主に、海外で高等教育を受けた日本人を対象としています。

そのため、日本の義務教育を受けていない生徒も試験を受けられるよう、大学のセンター試験が課されない場合がほとんどです。

帰国生入試の試験の種類は、主に下の2つです。

AO入試

「AO入試」はAdmissions Officeの略で、いわゆる「自己推薦入試」です。

帰国子女に限った入試試験でなく、大学側が独自に定めた合格基準や条件に基づき、高校時の成績や志望理由、IELTSやTOEFL®などを含む英語試験のスコア、面接などを判断基準にし、合格者を選考する制度です。

AO入試では、原則センター試験のような学力を測るテストは実施されません。

英語力の高い生徒を積極的に選考している大学であれば、帰国子女であることは大きなアピールポイントになるでしょう。

また、優れたスポーツ能力や積極的なボランティア経験なども選考の参考になることがあります。

帰国生入試(帰国子女入試)

帰国生入試(別名:帰国子女入試)は、海外に在住していた高校生または卒業生を対象に実施される試験です。

既に帰国子女を対象としている入試なので、AO入試同様にセンター試験のような日本の高等教育の知識を測る試験は実施されません。

東京大学慶應大といった名門大学も帰国生入試を採用しています。出願する大学によって条件が異なるので、志望するの大学の公式サイトで入試要項を確認しましょう。

帰国子女入試と一般の大学入試の違い

帰国子女入試と一般の大学入試の主な違いは、タイミングと試験内容です。帰国子女入試は一般の大学入試より早く実施されることが多いです。

また、試験内容もセンター試験のようなテストが省かれている点が異なります。

選考方法は大学によって異なりますが、第一次が書類審査、第二次が面接や試験という形式が多いです。

第二次選考での試験内容は、学部に関係のある筆記試験を実施する大学があります。

帰国生入試のスケジュール

帰国生入試のスケジュールの一例は下の通りです。

4月〜5月入試の日程や出願条件を確認し、出願書類を準備する
5月〜6月出願する大学を絞る・決定
6月〜7月準備した書類で出願する
7月〜8月1次選考
8月〜9月2次選考
10月ごろ最終合格発表

日本の多くの大学が、帰国生入試の出願期間を6月〜7月と定めています。

例えば早稲田大学の2023年度の出願期限は、2022年6月30日〜7月7日とされています。

出願に間に合わないと受験を逃すことになってしまうので、早めの準備が必須です。

また、海外の高校は卒業時期が異なることから、大学や学部によっては9月入学を実施している場合もあり、その場合出願のタイミングも1期と2期に別れていることがあります。

入試のどこで英語が必要になるのか

入試そのものは日本語で行われることが多いですが、下の2つのタイミングで英語力が必要になります。

出願書類

まず出願書類で英語力が求められます。IELTSやTOEFL®といった英語力を証明する書類を提出したり、志望動機を英語で書いたりする必要があります。

英語の筆記試験、エッセイ

英語力が必要になる2つ目のタイミングは、実際の入試の際です。

エッセイなどを含む英語の筆記試験が実施されることがあります。

逆に、国語の筆記試験を実施し、日本の大学の授業についていけるだけの日本語力があるかを試される場合もあります。

スケジュールから考えていつまでに英語のスコアが必要なのか

上で紹介したように、出願のタイミングは6月〜7月なので、出願のタイミングまでに英語のスコアが必要になります。

万が一必要なスコアを達成できなかった時のことを考慮すると、できるだけ早めに取得しておくと安心です。

関連コラム:IELTSの結果はいつわかる?何ヶ月前に受験したら良いの?

帰国子女大学受験に必要なIELTSのスコアは?

目指したいIELTSのスコアはできるだけ高いスコアを取得し出願するのが理想的ですが、一般的には6.5〜7.0以上は目指したいと言われます。

7.0以上であれば推薦の際にも一際目立つことができ、優先的に合格をもらえる可能性も上がるでしょう。

出願資格として必要なIELTSの最低スコア

大学によっては出願条件にIELTSの最低スコアを定めている場合があります。

多くの大学は、IELTSやTOEFL®、TOEIC®を英語力の証明に採用しています。

IELTSの最低スコアが定められている場合、そのスコアを達成できなければ出願ができないので、早めに受験したい大学の定める基準を確認するようにしましょう。

2021年度の入試でIELTSの最低スコアを定めていた大学の例は下の通りです。

大学名学部出願に必要な最低スコア
青山学院大学総合文化政策部4.5
順天堂大医学部4.0
昭和女子大グローバルビジネス部4.0
東洋大国際学部5.0

これらの最低スコアは変更になることがあるので、注意が必要ですが大学と学部によって最低スコアがあるので確認をしておきましょう。

帰国生入試で大学ごとに目指したいIELTSのスコアの目安

大学ごとに目指したいIELTSの目安は下の表の通りです。

各大学側が帰国生入試で使えるIELTSの点数を定めていることがありますが、それ以上を取るに越したことはありません。

なぜなら、帰国生入試を実施している大学は、今後グローバルで活躍していけるようなバイリンガルな人材を求めているからです。

大学名目指したいスコア
東京大学・京都大学・一橋大学など超名門7.0−7.5
早稲田大学・慶應大学などの名門7.0
上智大学・ICUなど6.5〜7.0
青山学院・明治大学・同志社6.0

これらはあくまで目安になります。

競争率が高い名門大学では、IELTSの点数で最終合否を決めることがあるので、できるだけ試験官の目に止まるようなハイスコアを目指してIELTSを取得しましょう。

関連コラム:IELTSのスコア別難易度と目標スコアをとるためには?

帰国生入試はTOEFL®とIELTSどっちがいい?

帰国生入試の出願の際に提出する英語力の証明は、TOEFL®とIELTSのどちらか一方を使った方が有利になるということはありません

ベストな選び方は、よりハイスコアを取れる方を選び、受験をすることです。

いくつかの知っておきたいポイントをこの章で紹介します。

TOEFL®とIELTSでスコアを利用できる大学が違う

まず大前提ですが、出願をする大学が採用している英語の試験を受けることです。

IELTSを利用していない大学の出願のためにIELTSを受験しても使うことができません。

そのため、まずは大学の入試要項を確認し、利用している英語の試験の種類を確認しましょう。

関連コラム:帰国子女の大学入試で必要なTOEFL®のスコアは?

TOEFL®とIELTSの違い

それぞれ特徴のある試験なので、体感的な難易度は受験者の得意・不得意によって異なりますが、主な違いは、下の通りです。

  • IELTSはペーパー試験とコンピューター試験から選べる・TOEFL®はコンピューターのみ
  • IELTSはイギリス英語・TOEFL®はアメリカ英語
  • IELTSのスピーキングは面接官と1対1・TOEFL®は録音

TOEFL®とIELTSは、どちらもリスニング・リーディング・ライティング・スピーキングを含む4技能の総合力を測る試験です。

アメリカやオーストラリアといった主な英語圏で実施されているので、帰国子女の受験生も今住んでいる国で受験することが可能です。

IELTSはペーパー試験とコンピューター試験から選ぶことができます。

普段からパソコンを使っているのであればコンピュータ試験、逆に画面上で長文を読むのが苦手ならペーパー試験を選ぶと良いでしょう。

一方でTOEFL®はコンピューター試験のみとなっており、リスニングからスピーキングまで全てパソコン上で行われます。

リスニング試験もIELTSにはイギリス英語の音声が登場する点がTOEFL®と大きく異なります。IELTSはイギリスで発祥した試験で、TOEFL®はアメリカで生まれたのがその理由です。

スピーキングに関しては、IELTSは面接官と1対1で実施される一方、TOEFL®ではコンピューター上でマイクに向かって話します。

IELTSが向いている人は?

上で紹介したように、IELTSはイギリスで発祥している試験なので、すでにイギリスに住んでいる人は、IELTSが向いていると言えるでしょう。普段聞いている発音で試験が受けられるのは大きなメリットです。

一方で、IELTSのライティングは採点基準が厳しいことで知られています。

TOEFL®では多少のミスは寛容に採点してくれる傾向にあるため、喋るのは得意だけど書くのは苦手、という受験生はTOEFL®に挑戦してみるのもおすすめです。

IELTSでスコアを上げるのにどのくらいの時間が必要か?

一般的に、IELTSのオーバーオールを0.5上げるためには、100〜300時間の準備が必要と言われています。

もちろん学びの質にもよりますが、この数字を参考に逆算していくと、1日にどれくらいの勉強量が必要かが分かるでしょう。

IELTSスコアが現在5.0で、6.0まで上げたい場合、200時間〜600時間ほどの準備時間を見ておきましょう。

5.0から6.0までは、IELTSの試験の特徴や、解き方のコツを掴むことで上げられます。

そのため、IELTSの参考本や過去問題集を活用し、IELTSに慣れることに集中力を当てましょう。

6.0から7.0に上げたい場合も200時間〜600時間ほどの準備時間が必要になりますが、英語の総合力を上げることが重要になってくるので、普段から英語を積極的に使ったり、英語のニュースを見たりしましょう。

また、凡ミスで点数を落としてしまわないよう、1回1回の練習問題で時間を測って緊張感を高める練習をしましょう。

関連コラム:IELTSの目標別スコアの目安と必要な勉強時間

帰国子女が英語のスコアを上げるときに注力したほうが良い科目や勉強のコツ

帰国子女は、英語力をIELTSという試験で生かすための戦略を立てていくのが効率の良いスコアの上げ方です。

基本的に英語で生活をしている分、英語力の基礎は身についているはずです。

可能であれば、IELTSを教えている講師にコツを聞いたり、スピーキングの練習をすると良いでしょう。

また、ライティングに関しては英語力だけでなく書き方を学ぶ必要があります

せっかく英語力があるのにライティングの書き方を知らなかったから点数を逃してしまったということが起こらないよう、エッセイの書き方の例を読んでみましょう。

帰国子女入試の出願でIELTSのスコアが必要な人はいつまでに勉強をはじめたらいいのか?

その時点の英語力によりますが、勉強の期間を含めると出願の4ヶ月〜6ヶ月前にIELTSについて調べ始めるのがおすすめです。

帰国子女入試の出願でIELTSのスコアが必要な人は、最低でも2ヶ月前に受験をするようにしましょう。

AO入試や帰国子女入試では、面接やエッセイの練習も必要です。

IELTSはできるだけ早めに取ってしまい、他の準備に集中できるようにするのがベストです。

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この記事の著者



 

橋本志保

高校卒業後、オーストラリアのGriffith大学に進学。国際観光学とホスピタリティを学び学位を取得し、卒業。
大学卒業後は外資系旅行会社に勤め、海外からのクライアントとの会話など、ビジネス英語を使う経験をする。
2021年にIELTS8.0を達成。
現在はカナダに移住し、英語学習のコーチング、翻訳や執筆業にも従事。

 

 


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