本コラムでは、日本を代表する国内MBAである慶應義塾大学大学院経営管理研究科一橋大学大学院経営管理研究科の特徴を説明します。

その上で、多くの受験生が興味を持つ点(例えば、ケースメソッドの授業の比率は?)をピックアップして、それらの視点で両校を比較し、受験生の皆さんが、どちらに進学すべきかを判断する際の材料を提供します。

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慶應MBAの基本情報

慶應義塾大学大学院経営管理研究科(以下、KBS)には2つのMBAコースがあります。

一つ目は2年制で全日制のフルタイムMBA,もう一つが基本的に土曜日だけの通学で済むEMBA(エグゼクティブMBA)です。

KBSの特徴は、ケースメソッドを採用している点です。

授業の3分の2がケースメソッドによって行われています。

ケースメソッドとは、実際に起きた経営上の事例を教材として、その問題を分析し、討議しながら解決策を導いていくことを通じて、実践的な問題解決・意思決定能力を高めていく教育手法です。

KBSのケースメソッド授業の流れは、「事前個人研究」→「グループディスカッション」→「クラスディスカッション」となっています。

事前個人研究とは予習のことで、各自がケースの当事者の立場に立って、ケースを分析・検討し、ディスカッションでの具体的な提案を準備します。

グループディスカッションでは、10名くらいの学生でグループを作り、事前個人研究の成果を参加者が持ち寄りディスカッションを行って各自の問題意識を発展させます。

そして、クラスディスカッションでは、教員のリードにより、多数の参加者の意見を通じて、参加者全員がディスカッションを重ねます。

このケースメソッドは、知識をインプットするだけの学習ではなく、「あなたならどうするか」を問われるアウトプット学習のため、主体的な問題解決能力、意思決定能力を養うことができるのです。

関連コラム:慶應義塾大学ビジネススクール(KBS)【入試対策】

一橋MBAの基本情報

一橋大学大学院経営管理研究科(以下、HUB)には全日制と夜間のMBAコースがあります。

全日制は日本語で授業が行われる「経営分析プログラム」と英語で授業が行われる「国際企業戦略専攻」があります。夜間は2年制の「経営管理プログラム」と「金融戦略・経営財務プログラム」があります。

HUBの特徴は、ケースメソッドというよりも、グループワークや個人学習であるレポートが多い点です。

グループワークとは、授業中に提示された課題を、学生で作ったグループで情報収集やディスカッションを通して解を導き、授業で発表するものです。

例えば、経営組織の授業で与えられた課題は、「何らかの企業が組織改変によって復活した事例を自由に調査し、クラス全体に紹介する」というものです。

この事例について、グループメンバーで役割を決めて、ネットや書籍や過去の新聞などから情報を探して、グループディスカッションを通して、グループの考えをまとめて発表するのです。

また、マーケティングの授業でのグループワークは、消費者行動を探る課題が出されたこともあり、実際に消費者にインタビューをしてデータを取得して、その結果をまとめるという内容のものもありました。

実際にフィールドに出てのリサーチをグループで役割を決めて行うのです。

このようにケースメソッドよりも、グループワークに力点が置かれている点が一橋MBAの特徴です。

このグループワークをこなすだけでも大変なのですが、並行して個人のレポートが課題として出されます。

グループワークをこなしながら、6,000字程度のレポートが課されるのです。

中には、16,000~18,000字(A4で10~15 枚)のものまでありますので、相当なタフさが必要になります。

関連コラム:一橋ビジネススクール(HUB)【入試対策】

慶應MBAと一橋MBAを比較して

ここでは、KBSとHUBを比較して、皆さんがどちらのMBAに進学するかの意思決定の参考になる情報を提供しようと思います。

比較1 ケースメソッドの比率

1つ目は、ケースメソッドの比率です。

先に説明した通り、KBSはケースメソッドの比率が3分の2と高くなっています。

HUBは、ケースメソッドというよりもグループワークや個人学習であるレポートが多いです。

よって、米国のMBAの代表であるハーバード・ビジネス・スクールのようなケースメソッドでの授業を希望する方はKBSに進学することをお勧めします。

比較2 仕事とMBAの両立

2つ目は、キャリアを中断せずに働きながら通えるか、という点です。

HUBには平日夜と土曜日の通学で修了できる夜間コースがあります。

KBSは、EMBA(エグゼクティブMBA)と言って、土曜日だけの通学で済むコースがあります。

しかし、EMBAプログラムは在籍先の企業・団体等における職務に精通した方々を対象とすることから、入学年度の4月1日の時点で15年相当以上の職務経験があることを出願の要件としています。

よって、20代、30代前半の方の進学は不可能です。

キャリアを中断せずに働きながら通えるという点では、HUBが人気があります。

比較3 留学制度の充実さ

3つ目は、全日制志望の方だけが対象となる点ですが、世界のビジネススクールとの提携留学制度があるか、という点です。

KBSは交換留学やダブルディグリーなど留学制度が充実していますが、HUBには留学制度はありません。

なので、提携校への留学を希望する方はKBSに進学した方がいいということになります。

KBSでは、米国のケロッグ経営大学院、ペンシルベニア大学ウォートン・スクール、UCLAなど著名校への留学が可能になっています。

比較4 キャリアに応じた学習

四つ目は、キャリアに応じた学びの内容についてです。

ファイナンスに関する定量的な分析による研究に力を入れたい方は、HUBへの進学をお勧めします。

HUBの金融戦略・経営財務プログラムは、ファイナンスに関する定量的な分析に特化した内容になっています。

また、日本の大企業で行われている日本的経営に関して深く学び、日本的経営の未来について研究したいという場合もHUBの方が向いていると思います。

HUBは単に米国MBAのやり方を踏襲しようとせずに、日本型のMBAにこだわっています。

そのため、日本的経営に関して深く研究したい場合はHUBが最適かと思います。

最後に、修了後に外資系のコンサルティングファームや金融機関に就職を希望する方は、過去の実績を見ると、KBSの方が実績は多くなっています。

実績が多くあるということは、OB訪問の機会も多くなり就職時に有利に働くことも考えられますので、上記への転職を考えている方は、KBSに進学することをお勧めします。

関連コラム:MBAを日本で取得するには?国内MBAとは?おすすめの大学院や選び方も解説

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この記事の著者 飯野 一 講師

飯野 一 講師

ウインドミル・エデュケイションズ株式会社で代表取締役を務めながら受験指導をおこない、約20年間にわたる指導経験を有する国内MBA受験に精通したプロフェッショナル講師。

国内MBAに関する書籍を多数出版し、ベストセラーを生み出している国内MBA受験に関する人気作家としての側面も持つ。

国内MBA修了生としては珍しい学術論文の学会発表、学会誌掲載の実績を持つ。

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