「いままでの慣習にとらわれずにもっと病院を良くしていきたい」「質の良い医療が提供できるよう、医療経営について学びたい」、医師の方でMBAに対して興味を持たれる方が多くなってきました。

医師がMBAで学んだ場合、どのように実務や医療経営に活かせるのかについて解説をしていきます。

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医師にこそMBAは必要

医師は、独立開業医の方と勤務医がいますが、どちらもMBAを取得する意味は「ある」と言えます。

なぜなら、医療従事者の多くは専門職で、経営やマネジメント、マーケティングについて学ぶ機会がないにもかかわらず、高度で専門的な経営手法が求められるからです。

開業医と、勤務医の2つに分けてMBAの必要性について解説をしていきます。

開業医や病院経営陣がMBAを取得する必要性

特に、独立開業医にはMBAで学ぶ知識は医学の知識と同じくらい役に立つといえるでしょう。

なぜなら、独立開業医は企業経営者と同じだからです。

自身がクリニックを開業するためには設備を整えるため金融機関から借入をし、

  • 客を集めるためのマーケティング
  • 看護師や事務員のモチベ―ションを高めるにはどうしたらいいのかという人材マネジメント
  • 近隣に位置するライバルのクリニックと差別化するにはどうしたらいいのかという経営戦略

を考える必要があります。

医師の資格があれば開業するだけで、患者さんがたくさん来るわけではありません。

各地域に病院や独立開業医が経営するクリニックが数多く存在し、その中で生き残り競争をすることになります。

なので、開業医には医学的な知識だけではなく、一般企業の経営のような経営スキルを学ぶ必要性があります。

同様に病院の院長や副院長など、経営陣もMBAに関して学ぶ必要性はあると言えます。

病院では一般的に優秀な臨床医がそのまま病院の幹部になることが多く、経営について体系的に学んでいる病院の経営幹部は少ないのが現状です。

なので、経営に関する知識がないまま今までのやり方で病院の運営を継続してしまい、赤字経営になってしまうことが起こってしまうのです。

勤務医がMBAを取得する必要性

勤務医は自身が経営者というわけではないので、直接経営のスキルが求められるわけではありません。

勤務医として勤務年数が長くなると、医長や科長に就任することになります。

そうなった時、今までのルールや慣習に則って運営をされている方は多いのではないでしょうか?

勤務年数が増えるごとに、勤務医でも看護師や事務員に対する人材マネジメントが必要になってきます。

ところが、医師はそもそも専門職であり、医療に関する専門知識はありますが、マネジメントに関する知識は学んできていません。

マネジメントについて考えるようになるのは、運営を任される側に立ってからだと思います。

医師の方で「もっと質の良い医療を提供したい」と考えている方は多いと思います。

MBAで学び、効率よく運営ができるようになることで、患者の受け入れを増やせたり、質の良い医療が提供できるようになります。

質の良い医療を提供しするために医療経営について学びたい、今まで病院のルールや慣習を見直したい人にMBAをおすすめします。

また、ご自身の将来のキャリアを考えた場合に、一生勤務医でいることに対して疑問を持つ方もいるのではないでしょうか。

将来の独立開業医としてのキャリアを考えるなら、勤務医のうちから経営感覚を磨くためにMBAで学ぶことは意味のあることだと言えます。

医療業界特有の経営の難しさについて

独立開業医は一般企業の経営者と同じようなものだと話をしました。

ただ、クリニック経営と一般の企業経営には違いがあります。

この違いを理解することで、開業医がMBAで学ぶ意義やメリットを把握しやすくなります。

なので、まずはクリニック経営と一般の企業経営には違いを説明していきます。

病院・クリニックと一般企業の違い

さまざまな制約がある中での経営という点で、より高度で専門的な経営手法が求められているのが病院(クリニック)業界です。

病院やクリニックは自由な経営行動に制約が存在するという特徴があります。

一つ目の制約は、「価格決定」に関するものです。

経営戦略の中でも極めて重要である価格設定を、病院やクリニックは自由に設定することができません。

例えば、ユニクロのカットソーは1,000円~2000円程度ですが、ルイヴィトンのカットソーは10万円以上のものもあります。

ファッション製品の価格設定は、その企業に任されていて、自由な価格設定が可能です。

ところが、診療報酬制度を基礎として医療サービスが提供されている医療機関では、どのような医療機関で、どのような医療サービスを受けようとも、同一の医療サービスを受ける限りにおいて基本的に治療報酬は同じです。

2つ目は「広告」に関するものです

医療法のもとで自由な広告活動に厳しい制限が課せられています。

例えば、他のクリニックと比較して、自分のクリニックが優良であると認知させる広告が禁止されています。

このように病院経営には、一般企業にはない法律や規制などによる制約があります。

「価格」や「広告」による制約がある中で、自分の病院やクリニックは、どのように他の病院やクリニックと差別化して、厳しい競争に勝ち抜き、患者に愛される病院やクリニックにするのか考えなくてはいけません。

このことを考える上で、MBAで学ぶ経営学の知識は大いに役立つと言えます。

海外ではMBAを取得する医師が増えている

医師がMBAを取得するというのは海外では当たり前のことになっています。

これまで説明してきた通り、医師が医療の専門家であるだけでなく、経営の専門家でもある必要があるからです。

しかし、日本には、医師にも経営スキルが求められるという認識はあまり浸透していませんでした。

これは一般企業同様に、経営者という職業が日本では成り立っていないことが原因です。

日本の一般企業では、生え抜きが昇進して最終的に経営トップになるというキャリア形成が当たり前となっています。

経営者になるには、新卒で入社して、少しづつ階段を上がっていくイメージをするのがわかりやすいでしょう。

日本ではいきなり経営者として、他の会社からヘッドハンティングされるようなことはあまりありません。

このように、日本では経営者という職種はほぼ存在しません。

それは医師の業界でも同じで、病院を経営するのは医師であり、経営者という職業ではないというのが日本の認識だからです。

とはいえ、一般企業でも近年は、経営者という職業が少しづつではあるが芽生えてきています。

病院(クリニック)業界でも同様の流れにあり、病院やクリニックを経営するというのは、医師という専門職とは別の能力やスキルが必要という認識が持たれるようになってきました。

医師で海外留学ではなく、国内MBAに行く人はいるのか?

医療業界では経営スキルの重要性も認知されるようになってからは、医師の方で国内MBAに進学しようという方が近年増えてきています。

国内MBAの最大のメリットは、海外留学ではないため、医師としてのキャリアを継続しながら、MBAを学ぶことができる点にあります。

関連コラム:合格者の声|慶應MBA合格「医師もマネジメントの手法が必要に感じMBAで学ぶことを決意

開業を目指していて医学部を卒業する人は、医療政策系の大学院とMBAへの進学、どっちがおすすめか?

医療政策系の大学院とMBAへの進学に迷われた場合は、将来のキャリア計画をもとに考えるといいでしょう。

将来、開業医として独立したい場合はMBAに進学することをおすすめします。

勤務医として、病院の一職員としての医師のキャリアを考えている方は、医療政策系の大学院で医療政策、地域社会の医療問題など公共的な学びを追求しても良いでしょう。

関連コラム:合格者の声|早稲田MBA夜間主合格「合格後に必要なモノも多く得られた受講内容」【2016年度】

医療経営・医師におすすめの国内MBA・大学院5選

医療業界で働いている方にお勧めのMBAは5つあります。

この5校は、「医療マネジメント」に関する専門コースを設置しているMBAになります。

病院(クリニック)業界というのは、先に説明した通り、価格設定の制約、広告における制約など、特殊な業界です。

そして、この特殊な業界における経営という点にフォーカスした学びができるのが上記の3校です。

関西学院大学大学院経営戦略研究科では、「自治体・医療・大学経営プログラム」、兵庫県立大学大学院社会科学研究科では、「医療マネジメントコース」という専門コースが設けられています。

慶應義塾大学大学院経営管理研究科には、デュアル・ディグリープログラムという医療と経営双方の専門家育成プログラムが用意されています。

これは、MBAと本塾医学研究科の間で、ビジネス教育並びに医学教育のさらなる融合によりビジネスと医学双方に通じた人材を育成することを目的としてつくられたプログラムです。

健康マネジメント研究科、薬学研究科、医学研究科があります。

具体的には、MBAと医学研究科に設置された共通科目を履修し双学位課程修了に伴い修士(経営学)取得後最短1年で修士(医科学)が授与されるというものになります。

関連コラム:MBAを日本で取得するには?国内MBAとは?おすすめの大学院や選び方も解説

医師で忙しい、MBAに興味があるけど、時間がないと思った時は?

医師の方で忙しく、現状を良くしたい、MBAに興味があるが、時間がないと思っているのではないでしょうか?

どうやって勉強時間を確保しているのかといいますと、通勤時間、休憩時間などの隙間時間を活用されている方が多いです。

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動画を見なくとも、講義を耳から聞いているだけでも経営学の勉強は興味深い内容になっているので、自然に頭に残るような内容となっています。

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この記事の著者 飯野 一 講師

飯野 一 講師

ウインドミル・エデュケイションズ株式会社で代表取締役を務めながら受験指導をおこない、約20年間にわたる指導経験を有する国内MBA受験に精通したプロフェッショナル講師。

国内MBAに関する書籍を多数出版し、ベストセラーを生み出している国内MBA受験に関する人気作家としての側面も持つ。

国内MBA修了生としては珍しい学術論文の学会発表、学会誌掲載の実績を持つ。

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