公認会計士として活躍する人の多くが、キャリアアップを考えるときに選択肢とするのがUSCPA(U.S. Certified Public Accountant)の資格とMBA(Master of BusinessAdministration)の学位です。

この記事では、今後、キャリアアップを目指す公認会計士の方に向けて、USCPAの資格とMBAの学位を比較してそれぞれのキャリアへの役立ちを示します。

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USCPAとMBAはどっちがおすすめ?

キャリアアップのためにUSCPAとMBAのどちらが良いかは、自身のキャリアにおいてUSCPAの資格とMBAの学位をどのように活かしたいと考えるかによるでしょう。

どちらも、公認会計士として活躍している人がキャリアアップのために選択肢として挙げるものです。

USCPAとMBAの違い

まず、USCPAは「資格」、MBAは「学位」という大きな違いがあります。この点をきちんと理解しておきましょう。

資格とは、ある行為を行うために必要なものです。資格がなければ、ある行為を行うことはできないのです。

USCPAは、米国において公認会計士として名乗るための資格ですから、USCPAの資格がなければ、公認会計士として名乗ることはできません。

一方で、MBAは資格ではなく学位ですから、MBAの学位を持っているからといって、ある行為を行うことが認められるわけではありません。

このように、USCPAの資格とMBAの学位のどちらがおすすめであるかは、自身のキャリアについてどのように考えているかによります。

以下では、MBAの学位がおすすめの人とUSCPAの資格がおすすめの人に分けて、それぞれ説明していきます。

MBAがおすすめな人

MBAがおすすめな人は、すでに公認会計士としてある程度経験を積み、知識の幅を広げたい人です。

MBAは経営に関する様々な知識を有していることの証となります。

公認会計士としてすでに活躍していて、今後は、公認会計士として働くこと以外のキャリアを考えている場合も、MBAが良いでしょう。

20代、30代を公認会計士として働き、40代で公認会計士として働いていた頃に培った知識を生かして別の職業に就くケースは意外と多いものです。

USCPAがおすすめな人

USCPAがおすすめな人は、まだ公認会計士として経験が浅く、さらに深く専門知識を身に着けたいという人です。

日本で公認会計士として働いているケースでも、日本企業傘下の米国企業の監査をしなければならないことも当然あります。

日本と米国で上場している企業もありますから、そうした監査のためにもUSCPAの資格は役立ちます。

したがって、USCPAがおすすめなのは、今後も公認会計士としてのキャリアを高めたいという人です。

公認会計士がMBAを取得するメリット

ここからは、公認会計士がMBAの学位を取得するメリット、デメリットについて説明していきましょう。

MBAで学べること

MBAでは会計だけの知識を学ぶわけではなく、経営組織論、経営管理論、マーケティング論、広告論など、多くの専門知識を身に着けられる場所です。

MBAは経営学に関する幅広い知識を身につけるために通う場所なのです。

知識の幅を広げることはもちろん、同じ志を持つ同級生とともに切磋琢磨しながら勉学に励むことによって、ネットワークを広げることができるのもMBAの魅力の一つでしょう。

この意味で、MBAはキャリアの幅を広げてくれる場所と理解しておくのが正しい認識であると言えます。

公認会計士と相性の良い履修科目とそこで学べること

MBAでは「社会環境会計」という分野を学ぶことが可能です 。

近年では、企業はESG(Environment、Social、Governance)活動を活発化させているため、ESGに関する取組みに関してコンサルティングできる人材を求めています。

公認会計士であるからと言って、会計・監査の専門家であれば良いというわけではありません。

たとえば、公認会計士は、一定の経験を積むことで税理士として登録することもできます。

しかし、MBAで税務について学ぶことで、会計・監査・税務という幅広い分野を仕事に活かすことができるのです。

実際、公認会計士として働きながら、各企業のタックスプランニングに関してコンサルティングを行ったりしているケースもあるでしょう。

このように、MBAは公認会計士という仕事のポテンシャルをさらに広げてくれるでしょう。

MBAを取得すると転職に役に立つ?主な転職先

MBAを取得すると、間違いなく転職に役立ちます。

キャリアの幅を広げてくれるのがMBAですから、公認会計士としてだけではなく、税務などの隣接領域で働くことができる人材として転職することも可能です。

また、企業活動に従事し、IR活動などを行う領域で活躍する人もいます。

公認会計士がMBAを取得するデメリット

公認会計士がMBAを取得すると、頭でっかちになってしまい、現実の会計実務と向き合えなくなる可能性があります。

MBAはあくまでも学位プログラムですから、科学的な知識の獲得と向上を目指すのが普通です。

修士論文の執筆が必要となるMBAプログラムもあります。

しかし、実際の会計実務には科学的とは言えない部分が多く含まれています。そうした現実と科学のギャップに悩まされる人が少なくありません。

科学的には正しくても、実務的には間違っていることもあるのです。

MBAを取得した公認会計士の会計、監査業界での評価は?

MBAを取得した公認会計士の会計・監査業界での評価は間違いなく高まります。

会計・監査の専門家である公認会計士の資格と、経営学の幅広い知識を身に着けていることの証であるMBAの学位があれば、企業経営に携われるくらいのレベルにあると評価されるでしょう。

公認会計士がわざわざMBA留学をする意味はある?

日本で働くことを考えているのであれば、必ずしもMBA留学は必要ないと考えられます。

国内MBAだけではなく、海外MBA(MBA留学)を検討している人もいるかもしれません。その際、留意すべきことは、MBA留学してまで得たいものは何かということです。

MBA留学のためには、高い英語力が必要となります。

その英語力を活かす場面が自身のキャリアにおいてあると考えるのであれば、MBA留学は実り有るものとなるでしょう。

会計財務に強い国内MBAは?

会計財務に強い国内MBAは、関東であれば一橋大学、関西であれば神戸大学です。

一橋大学と神戸大学は、もともと旧三商大(旧学制においては、商科大学・商業大学と呼ばれる大学)で、経営・マーケティング・会計といった商学科目に強みを持つ大学です。

どちらのMBAプログラムも日本屈指の会計研究者による指導を受けることができるなど、会計財務に関しては他の大学よりも頭一つ抜けた存在であると言えるでしょう。

公認会計士がUSCPAを取得するメリット

ここからは、公認会計士がUSCPAの学位を取得するメリットについて説明していきましょう。

USCPAで何が学べるか

日本の会計基準と米国の会計基準は異なりますので、USCPAを取得することで米国と日本における会計に関して詳しくなることができます。

USCPAは、米国で公認会計士として働くことができるという資格なのです。

資格取得の過程で、米国における会計基準に関して詳しい知識を得ることができるでしょう。

USCPA取得すると転職に役に立つ?主な転職先

USCPAを取得すれば、転職候補として米国の監査法人が視野に入るといえるでしょう。

ただし、選択肢に入るというだけで、実際に米国の監査法人に転職する人は多くありません。

USCPAを取得しても、転職せず、そのまま公認会計士として働く人の方が多いです。

これはUSCPAの資格が転職に役立たないという意味ではなく、そもそもUSCPAの資格取得を目指す公認会計士は、自分の仕事の幅を広げるために資格を取得しているというだけです。

そのため、転職先としては、同じ業界の大手企業であったり、より自分の得意とする会計業務を担当できる企業へと転職する人がほとんどです。

転職先として、米国の監査法人へと転職したり、会計士以外の仕事を選択するという人は多くありません。

USCPAを取得するデメリット

USCPAを取得することのデメリットは、資格取得後にその資格を生かした活躍の場が用意されているわけではないということです。

日本においてUSCPAとして活躍する場は限られていますし、USCPAとして活躍できるだけの英語力を持っていないと海外では通用しません。

したがって、USCPAを取得しても、それを活かせるかどうかは英語力次第となります。

USCPAを取得した公認会計士の会計・監査業界での評価は?

USCPAを取得した公認会計士の会計・監査業界での評価は高くなります。

その理由は、日本において公認会計士として働ける幅が広がる、つまり、監査できる対象が増えるからです。

米国会計基準にもとづいて会計情報を作成している会社についても、USCPAの資格があった方が良いでしょう。

したがって、USCPAの資格は公認会計士としての仕事の幅を広げてくれるのです。

英語が苦手な人でもUSCPAは取得できるのか?

英語が苦手であったとしても、USCPAの資格自体は取得することができるでしょう。

USCPAで出題される問題は、過去問を通じて勉強することができるので、試験突破自体はそれほど難しいわけではありません。

日本の公認会計士試験のほうが難易度は高いため、その知識を活かせば、米国公認会計士の試験を突破できる人も多いでしょう。

しかし、実際にUSCPAとして活躍できるだけの英語力が身についているかどうかは別の話です。

英語が苦手であってもUSCPAの資格は取得できますが、職業としての責務を果たせるかどうかは別問題であるというわけです。

USCPAとMBAの取得者の年収

USCPAの資格保有者とMBAの学位保有者では、その年収はどのように変わってくるのでしょうか。

以下では、おおよその目安としてどれくらいの年収が想定されるかを紹介していきます。

USCPA取得者の主な就職先と年収

大手監査法人の年収を考えると、30代で700万円程度、40代で800万円程度、50代で900万円程度となるケースが多いです。

USCPAを取得しても、そのまま公認会計士として同じ会社で働き続けるという人が多くいます。

その場合、あくまでも会社の雇用体系のなかで給与・報酬が決まりますので、USCPAの資格をとることによって年収が大幅にアップするということはないのです。

USCPAの資格を取得しても、米国で働こうと考える人はあまり多くありません。

なぜなら、実際に英語で公認会計士として働けるだけの英語力が身についているわけではないからです。

意外に思われるかもしれませんが、大手監査法人のなかで働く人のなかには、USCPAの資格保有者が大勢います。これは日本において監査業務を行うためです。

大手監査法人は、従業員として雇用している公認会計士に対してUSCPAの資格取得を奨励しており、資金援助を行っているのです。

MBA取得者の主な就職先と年収

MBA取得者の年収は、企業ごとに異なると考えられますが、公認会計士の年収がおよそ30代で700万円であることを考えると、それを下回る水準となる可能性は低いでしょう。

MBA取得者の主な就職先・転職先としては多種多様な業界となります。MBAは経営学などに関する高度な専門知識を身に着けている証となる学位ですので、企業の多様なニーズに応えられる人材であると考えられます。

したがって、MBA取得者は様々なビジネスの現場において活躍できるでしょう。

USCPAとMBAのダブルホルダーになると年収はどうなる?

USCPAとMBAのダブルホルダーになると、 年収は平均よりも高い水準となる可能性が高くなります。

USCPAの資格で公認会計士として働ける幅が広がり、MBAの学位で専門知識の幅が広がります。

USCPAとMBAのダブルホルダーは転職市場においては、高度なビジネスに関する知識と会計の専門知識を身につけた人材であると判断されることになります。

会社組織においては役員クラスの人材として扱われることになるでしょう。

公認会計士と比較したMBAとUSCPA の取得難易度

公認会計士・USCPA・MBAの合格率・難易度を単純に比較することは難しいです。

以下の表は、合格率と難易度、勉強時間、費用について比較したものです。

公認会計士と比較してMBAやUSCPAがどのくらい難しいのか、費用や勉強時間はどのくらいかかるのかについて解説しましょう。

・合格率と難易度の比較

公認会計士USCPAMBA
合格率10%程度40%程度50%~25%(倍率2~4倍)
難易度高い相対的に低い相対的に高い

・合格までに必要な勉強時間

公認会計士USCPAMBA
合格までに必要な時間4000時間程度1000時間程度360時間程度

・必要な費用

公認会計士USCPAMBA
必要な費用100万円~150万程度100万円程度200万円程度

日本の公認会計士試験に合格するのに必要な勉強時間は、一般に、4,000時間程度と言われています。かなりの難関試験です。

そのため、公認会計士の合格率は約10%程度で推移しています。 

一方、USCPAはおよそ1,000時間の勉強で全カリキュラムをカバーできます。

日本在住のUSCPA試験受験者の合格率は約40%ですが、日本の公認会計士試験より合格率が高いことがわかります。

ただし、すでに説明してきたように、USCPAの資格取得を目指すのは、すでに公認会計士の資格を有している人が多く、難易度の高い公認会計士試験を突破しています。

そのため、USCPAの合格率は高くなっており、難易度も相対的に低いように見えるだけです。

公認会計士ではない人が、USCPAの合格を目指す場合、USCPAの難易度は公認会計士と同程度になると言えるでしょう。

MBAの場合、そもそも資格試験ではなく、学位なので、公認会計士やUSCPAと単純に比較するのは困難です。

MBAでは、大学によって難易度は大きく異なりますし、複数の試験方式があるので、試験方式によっても難易度は異なります。

それでも比較してみると、平均して合格率は10%程度で、難易度は公認会計士と比較すると相対的に高いと言えます。

入学に勉強時間は、働きながら合格している人も多いことを考えて、一日当たり2時間と仮定すると、半年間でちょうど360時間程度となります。

その後はMBAで1年から2年程度学ぶことになります。

MBAは試験科目が多く、独学で対策がしにくいことから、公認会計士やUSCPAと比較すると相対的に難しい試験であるため、高い難易度として説明しています。

USCPAとMBAだったら取得する難易度はどっちが高いか?

MBAの方が難しいと言えるでしょう。

すでに説明してきたように試験方式が多岐にわたるため、そもそも独学では対策が難しいです。

USCPAは、指定の講義を受講することが要件となっていて、その後試験を受けて合格を目指すことになります。

USCPAは独学で勉強するというわけではありません。

したがって、MBAの方が独学で対策しにくいという意味で、難易度は高いと言えるでしょう。

公認会計士でとりあえずキャリアップを目指したい人にはMBAがおすすめ

公認会計士のキャリアアップとしてMBAとUSCPAが考えられます。

資格と学位なので比較することは難しいですが、USCPAは1000時間なのに対して、MBAは360時間と必要な勉強時間はMBAの方が少ないです。

毎日2時間勉強を1年半続けて合格できるのがUSCPAなのに対して、MBAは半年間の勉強で大学院に入ることができます。

キャリアアップのためになにか取り組んでみたいと考えている人にはMBAがおすすめです。

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