「電験三種ってどのような資格?」

「電験三種の難易度は?必要な勉強時間はどのくらい必要?」

このコラムでは電験三種の業務内容・試験概要・難易度・必要な勉強量・メリットについて解説します。

電験三種の取得を考えている方は参考にしていただければ幸いです。

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電験三種とは?仕事内容を紹介

電験三種とは「第三種電気主任技術者」の略称で、工場・ビル・発電所・変電所・工場などの電気設備の保安監督業務を行える国家資格です。

施設の電気設備の運転や監視、定期点検・保守などは電気主任技術者の独占業務のため、活躍の場が広いと言えるでしょう。

また電気事業法(昭和39年法律第170号)の第43条により、すべての電気設備の安全性・品質の確保のため電気主任技術者を設置することが義務づけられています。

電気設備は工場や施設の運転、業務に不可欠なため、電気主任技術者の需要と雇用の安定性は高いでしょう。

電気主任技術者は取り扱う電気工作物の規模(電圧等)により第一種・第二種・第三種に分類されます。

電験二種種・一種になるにつれて、取り扱える電気工作物の規模が大きくなります。

電験三種・二種・一種類の違いは?

電験三種・二種・一種の違いは、取り扱える事業用電気工作物の電圧です。

下記に電験三種・二種・一種、それぞれ保安・監督できる範囲を見てみましょう。

免状の種類工事、維持及び運用を保安・監督できる範囲
電験一種(第一種電気主任技術者)すべての事業用電気工作物
電験二種(第二種電気主任技術者)電圧17万ボルト未満の事業用電気工作物
電験三種(第三種電気主任技術者)電圧5万ボルト未満の事業用電気工作物

電験三種の携われる業務は、電圧5万ボルト未満の電気工作物の工事・維持・保安監督となります。

ただし出力5千キロワット以上の出力の発電所は含みません。

電験二種は電圧17万ボルト未満の電気工作物の工事・維持・保安監督が行えます。

電験一種は、電気工作物の規模による制限はなく、すべての電気工作物の工事・維持・保安監督を担えます。

また、次に挙げる施設は、電気主任技術者の保安監督の対象外なため注意しましょう。

  • 水力発電所
  • 火力発電所(内燃力は除く)
  • 原子力発電所
  • 燃料電池設備の改質器(最高使用圧力が98キロパスカル以上)

電験三種の年収はどのくらい?

令和5年職業情報提供サイト「jobtag」によると、電験三種の平均年収は432〜506万円です。

電験二種、電験一種の取得者の平均年収は、500万円前後以上が目安となります。

ただし上記の平均年収は、電気主任技術者(第一種〜第三種)取得者の就職先として多い、電気工事士やビル施設管理の平均年収から参照したものです。

自身の経験値、所属する企業や業界、地域によって年収は大きく異なります。

一般的には、経験豊富で大規模な工場や施設で電気設備管理を担う電気主任技術者は、年収が高くなる傾向があります。

自分の現況での年収を把握するには、具体的な企業や求人情報を調査すると良いでしょう。

電気主任技術者と電気工事士の違いは?

電気主任技術者と電気工事士の大きな違いは、仕事内容にあります。

電気主任技術者の仕事内容は、電気設備の保安監督や電気工事の監督なのに対して、電気工事士は電気を利用するための設備等の工事などです。

ほかにも電気主任技術者と電気工事士の違いを詳しく紹介します。

資格取得の難易度が違う

電気主任技術者の資格取得の難易度は、電気工事士よりもかなり高いです。

令和5年電気技術者試験センターが公表した、第三種電気主任技術者試験の合格率は、上期で 16.6%、下期で15.7%でした。

一方、令和5年の第二種電気工事士の合格率は上期学科試験で59.9%、下期学科試験で68.8%。

上記の結果から、第三種電気主任技術者の方が、電気工事士より資格取得が難しいと言えるでしょう。

年収が違う

令和5年職業情報提供サイト「jobtag」によると、電気主任技術者の平均年収は432〜506万円前後なのに対して、電気工事士の平均年収は500万円前後と違います。

年収に大きな差はないものの、一般的に電気主任技術者のほうが年収が高い傾向にあります。

電験三種の試験概要について徹底解説

電験三種に受験資格は設けられておらず、年齢・学歴・国籍問わず受験が可能です。

試験概要についてまとめたので見てみましょう。

出題科目理論・電力・機械・法規
試験方式マークシート方式、またはCBT方式
解答方式五肢択一方式

電験三種の合格には、4科目全ての合格が必要となります。

2023年からCBT方式が導入

2023年(令和4年)の第三種電気主任技術者試験から、これまでのマークシート方式に加えてパソコンで解答するCBT方式(Computer Based Testing)が導入されました。

これにより試験方法がマークシート方式とCBT方式の2種から選択可能となっています。

どちらも出題形式は同じで、五肢択一方式です。

CBT方式で受験できる会場は全国に約200ヶ所あり、試験日の3日前まで試験会場・試験日時の変更が可能です。

CBT方式が採用されたことで試験会場や試験日時の選択の幅が広がり、より多くの人が受験しやすくなりました。

参考:第三種電気主任技術者試験におけるCBT方式の導入について

電験三種の試験科目とは?

電験三種の試験科目は「理論・電力・機械・法規」の4科目です。

電圧5万ボルト未満の事業用電気工作物の主任技術者に必須となる専門的な知識を有することを測るために、下表の内容で学科試験を行います。

科目試験内容
理論電気理論、電子理論、電気計測及び電子計測の3分野からの出題
電力発電所、蓄電所及び変電所の設計及び運転、送電線路及び配電線路(屋内配線を含む)の設計及び運用並びに電気材料の4分野からの出題
機械電気機器、パワーエレクトロニクス、電動機応用、照明、電熱、電気化学、電気加工、自動制御、メカトロニクス並びに電力システムに関する情報伝送及び処理に関する出題
法規電気法規(保安に関するものに限る)及び電気施設管理に関する出題

各科目について詳しく解説していきます。

電験三種の理論とは?

電験三種の理論は、直流回路・電磁気・静電気・交流回路・三相交流回路などの、電気理論・電子理論・電気計測と電子計測に関する内容が問われます。

計算問題が大半で出題数の8割を超えるため、高校数学レベルの学力が必要です。

理論は、他科目に共通する基礎知識を学べるため、最初に学習を始めることをおすすめします。

電験三種の電力とは?

電験三種の電力は、電気供給の一連の流れとなる電気系統に関する問題が中心となります。

理論で習得した知識を使うことで、理解がしやすい科目です。

電力は、基礎的な内容が多く、計算問題も約4割と、4科目の中では合格しやすい科目と言えます。

電験三種の機械とは?

電験三種の機械は、発電及び電気を使う機械の深い知識が求められます。

最も難易度が高いとされる機械は、範囲が広く学習時間を要する科目です。

変圧器、直流機、誘導機、同期機などの分野の理解はもちろん、電動機、電気化学、自動制御などの専門知識も覚えなくてはなりません。

電験三種の法規とは?

電験三種の法規では、電気設備の技術基準・電気工事士法・電気事業法・電気工事士法などの法令に関する出題となります。

そのため、法規は法令の暗記と理解が必要な科目です。

穴埋め文章問題、正誤判定問題などだけではなく、計算問題も出題されるため、法令の知識+法令の内容を理解した上での演習力も必要になります。

各科目の試験時間・問題数・配点

各科目の試験時間と問題数・配点は下表の通りです。

科目試験時間問題数と配点
理論90分A問題:14問×5点B問題:3問(選択問題含む)×10点
電力90分A問題:14問×5点B問題:3問×10点
機械90分A問題:14問×5点B問題:3問(選択問題含む)×10点
法規65分A問題:10問×6点B問題:3問×各13~14点
参考:第三種電気主任技術者試験 | ECEE 一般財団法人電気技術者試験センター

A問題は1問につき、求められる解答が1つの通常の問題です。

B問題は大問1問につき小問(a)、(b)2問で構成されます。(a)の解答を用いて、(b)を解く形式が多いため、(a)が正しく解けないと実質2問分の失点となります。

1問の配点も高いため合否を左右しやすいと言えます。

電験三種の合格点は?

電験三種の合格点は、各科目100点満点中、60点以上です。

どれか1つでも60点未満の点数を取ると、試験は不合格となります。

ただ過去の合格点を見ると、合格点が60点以下の科目もあります。

年度理論電力機械法規
2023年下期60点60点60点60点
2023年上期60点60点60点60点
2022年下期60点60点60点60点
2022年上期60点60点55点54点
2021年60点60点60点60点

2022年下期の試験では、機械と法規の合格点が60点以下です。

科目手の平均点が著しく低い科目については、合格点の調整が入る可能性があります。

基本的に電験三種の合格点は60点以上なので、60点以上を目安に過去問を解きましょう。

参考:第三種電気主任技術者試験

電験三種の試験日は?

直近の電験三種の試験日は、CBT方式の上期で7月4日~7月28日、下期が2025年2月6日~3月2日、筆記方式だと上期が8月18日、下期が2025年3月23日です。

試験方式試験実施日申込期間
CBT方式上期:7月4日~7月28日下期:2025年2月6日~3月2日上期:5月20日~6月6日
下期:11月11日~11月28日
筆記方式上期:8月18日下期:2025年3月23日
参考:令和6年度電気主任技術者試験の実施日程等のご案内

2022年(令和4年)より電験三種の受験回数が年1回から年2回に変更となりました。

2022年(令和4年)までは上期・下期共に試験実施日が1日のみでしたが、2023年(令和5年)よりCBT方式が採用されたことで、受験日の選択の幅が広がりました。

2024年のCBT方式の試験実地期間は上期・下期共に25日間となっています。

なおCBT方式と筆記方式の併用は不可です。

2022年、2023年の試験スケジュールは下表を参照ください。

試験年度試験実施日申込期間
2022年
(令和4年)
上期2022年8月21日2022年5月16日〜6月2日
下期2023年3月26日2022年11月21日〜12月8日
2023年
(令和5年)
上期CBT方式:2023年7月6日~7月30日
筆記(マークシート)方式:2023年8月20日
2023年5月15日~ 6月1日
下期CBT方式:2024年2月1日~2月25日
筆記(マークシート)方式:2024年3月24日
2023年11月13日~ 11月30日
参考:第三種電気主任技術者試験における CBT 方式の導入について

電験三種の申込方法は?

電験三種の申込方法は、原則「インターネット申込み」となります。

但し、インターネットをご利用できない等のやむを得ない事情のある方は、「郵便による書面申込み」が可能です。

書面申込みを希望する場合は、一般財団法人 電気技術者試験センター 本部事務局に連絡が必要となります。

2024年の申込受付期間はCBT方式・筆記試験方式共通で、上期が5月20日10時〜6月6日17時、下期が11月11日10時〜11月28日17時です。

申込期限が最終日の17時までとなっているため、ご注意ください。

参照:令和6年度電気主任技術者試験の実施日程等のご案内

電験三種の受験料と支払方法は?

電験三種の受験料は、インターネット申込みが7,700円、郵便による書面申込みが8,100円です。

インターネット申込みの方が400円安く、手続きも簡単なのでおすすめ。

個人申込みの場合、受験料の支払方法は次の3つです。

  • クレジットカード決済
  • コンビニ決済
  • ペイジー決済

団体申込みの支払方法は銀行振込となります。

参考:令和6年度電気主任技術者試験の実施日程等のご案内

電験三種の試験会場は?

電験三種の試験は、47都道府県指定の試験会場で実施されます。

会場については自身の受験票を確認しましょう。

2024年(令和6年)上期の試験会場は以下の公式サイトから確認できるので、参考にしましょう。

参考:令和 6年度第三種電気主任技術者上期試験の結果について

電験三種の受験には、試験会場の選択と変更・キャンセルが可能なCBT方式がおすすめです。

筆記方式の試験日は1日のみで、受験者が選択できるのは「試験地」だけです。

受験票及びマイページに記載された試験会場での受験となり、試験会場の変更はできません。

電験三種の試験難易度は?

過去4年間の電験三種の平均合格率は、12.4%と試験難易度が高い資格です。

近年の合格率の推移は下表のようになります。

試験実施年度受験者合格者合格率
2024年(令和6年)上期25,416人4,064人16.0%
2023年(令和5年)下期24,567人5,211人21.2%
2023年(令和5年)上期28,168人4,683人16.6%
2022年(令和4年)下期28,785人4,514人15.7%
2022年(令和4年)上期33,786人2,793人8.3%
参考:試験実施状況の推移 第三種電気主任技術者試験

電験三種の取得に必要な勉強時間は?

電験三種の合格に必要とされている勉強時間の目安は1,000時間と言われています。

ただし、勉強時間の目安は、個人の学習ペース・背景知識・実務経験によって異なります。

電気工学や電気関連の分野に関する基礎知識、実務経験のある方は約500時間の勉強時間で合格することも可能です。

勉強時間を1,000時間とした場合、平日2時間、休日5時間の勉強だと、学習期間は350日(11.5か月)かかります。

平日4時間、休日に8時間の勉強をした場合は194日(6.5か月)となります。

電験三種の合格には、多くの時間を要するため、短期間で合格を目指すのなら休日に集中して学習を進めると良いでしょう。

電験三種の受験者層は?

電験三種は20代の受験者が一番多く、続いて30代、40代となっています。

電験三種は電気関連業界でのキャリア形成やスキルアップに有利な資格として認知されているため、20代の若手技術者や学生が積極的に受験する傾向があります。

下表で過去3回分(令和4年~2年)の受験者割合を確認しましょう。

年度10代20代30代40代50代60代以上
令和4年7%30%26%17%15%5%
令和3年7%31%25%20%12%5%
令和2年6%32%25%21%12%4%
参考:電気技術者試験受験者実態調査

過去3年間を通して、受験者の年齢層の割合に大きな変化はありません。

受験者割合の半分以上を占めるのが20代、30代の若い世代。

若い世代はキャリアを見直し、自己成長やスキルアップのために資格取得を目指す人が多いです。

また高齢化が進む電気関連業界では、若手の電気主任技術者の需要は高まっています。

企業の中には資格取得手当を支給することで、若手社員の資格取得サポートを行うところもあります。

再生可能エネルギーの普及やスマートテクノロジーの発展に伴い、電気設備や電気工事の需要が増えたことも若年層の受験割合を高めていると言えるでしょう。

電験三種を取得するメリットは3つ

電験三種の資格を取得するメリットは以下の3つ。

  • 資格の需要が高くなる可能性がある
  • 就職や転職に有利
  • 将来独立も目指せる

資格の需要が高く将来性がある

電験三種の資格は需要が高く、今後も残り続ける仕事のため将来性があります。

というのも経済産業省の「電気保安人材の現状分析と取組の方向性について」で、第三種電気主任技術者の仕事となる再生可能エネルギー設備に係る電気工作物は、今後も増加すると予想されているからです。

また、毎年約4,000人、電験三種の取得者数がいるものの、高齢化による退職者数が多く、入職者と退職者の数はほぼ均衡状態です。

 一方、エネルギー基本計画に基づく試算によると、電験三種による保安・監督を必要とする再生可能エネルギー設備は、年間約2,000件のペースで増加するとされています。

将来的には電験三種取得者が不足する可能性が高く、業界内での需要がこの先も増えていくでしょう。

参考:電気保安人材の現状分析と取組の方向性について

AIに代替されにくい

電験三種は、AIに代替されにくい仕事のため、需要が高く将来性がある仕事だと言えます。

電験三種の仕事は電気工事や設備管理に関する高度な専門知識と技術が求められますが、AIが完全に代替することは難しいでしょう。

また、状況に応じて柔軟に対応できる交渉力が必須となります。

AIは特定の条件下での作業には効果的ですが、実際の現場で臨機応変に対応する能力は限られてしまいます。

就職や転職に有利

電験三種の資格を持っていれば、未経験でも就職・転職が可能な会社は多々あります。

実務経験がなくても、電験三種の資格があれば、電気・電力・電気設備の高度な専門知識を持っている証明になるからです。

電験三種の仕事は「工場・商業施設・建設現場・病院などの電気設備の保守監督業務」です。

幅広い業種から必要とされている仕事のため、就職や転職にも有利と言えるでしょう。

将来独立も目指せる

電験三種として、各地域の電気管理技術者協会の定める実務経験を積むことで独立も目指せます。

会社に勤めていると、勤務スケジュールは固定されるため、早朝出勤や夜勤も避けられません。

独立開業することで、勤務スケジュールや仕事内容の選択が自由になるため、自分に合った働き方がしやすいでしょう。

また独立すれば個人事業主として、体力が続く限り、年齢に関係なく仕事を続けることができます。

まとめ

電験三種は需要の高い資格であり、将来性のある資格です。

近年の合格率は8〜16%と難易度が高く、まとまった勉強時間が必要となります。

初学者の方ですと1,000時間以上、理系出身や実務経験のある方でしたら500時間前の勉強時間が必要でしょう。

また電気設備の保守監督を担う第三種電気主任技術者の需要は、業種を問わず高いです。

特に再生可能エネルギーや発電所などのエネルギー関連施設では、電験三種資格取得者の需要が増えています。

電験三種を取得し実務経験を積むことで、独立開業も可能です。性別・年齢を問わず生涯現役で活躍できるでしょう。

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