今日は、栗を存分に食べられずに悔しさのあまり、確率を追求しはじめた話をします。確率の問題、皆さんも考えてみましょう。

食欲の秋ですね。前日実家のある茨城に数年ぶり帰省し、これでもかっというくらい大きな栗を2kgあまり買って帰りました。私の掌を覆うくらいの巨大な栗で、言うまでもなく美味しすぎてほっぺが落ちるのはこう言う時のことを言っているのですね、と悟ったくらいです。

さて、この二週間、2kgの栗を6回に分けて、毎回デザートとして300g(12個だけでその重さ!)以上を夫婦二人で頂いています。たまに外はツルツルで可愛い形しているのに、中が腐敗していることもあります。

ついに栗パーティの最終回(第6回目)がやってきました。そこで以下の現象が起きました。

【問題提起】
・12個の殻付き栗を二人(SさんとYさん)で分け合って食べる。
・とった数は、Sさんが7個、Yさんが5個(YがSに多めに譲った…)
・12個のうち実は3個が腐敗していた(殻を開けないと分からない)
↓↓
この時、Yさんは自分がとった5個のうち、なんと3個とも腐ったものが当たってしまった。
「こんなのあり得なくない!?」と思っているこの現象、どれくらいの確率で起きていますか?


【ヒント】

2つパターンの解法を思いつくかもしれません。(さらにもっと多いかもしれませんが…)
難しい方の解法に挑戦したい方は、不幸なYさんに注目して考えてみてください。

さて、解説をこの下で出します。

すぐにネタバレにならないように、間に栗の写真を挟みますね。

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#1:簡単(巧み?)な解法

より簡単に答えにあり付けられる考え方は、むしろ、7個完璧な栗を選べたSさんに注目することです。

12個のうち良い栗は9個なので、Sさんが1個ずつ「良い栗を取り出す確率」を7回繰り返す設定で、7つの確率値を掛け合わせます。毎回の確率値は、分母が残っている栗の総数、分子は残っている「良い栗」の総数。

(計算式)

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上記の簡単(巧み?)な解法はなんだか、面白くないなあ … なぜ不幸はY(私)に着目した計算がこんなに難しいにだろう、としばらく諦めずに考え込みました。

↓↓

#2:苦労するけど成功したら達成感のある解法

解法1と同じように、順番に取り出すことを想定し、「先に良い栗を2個立て続けて取り出してから悪い栗を立て続けで3個取り出す」(*)というシナリオの確率の積を計算します。

(*)とは異なる順番もあり得るので、上にはさらに「5個から2つを選ぶ」組み合わせ 5C2 = 10を掛け算します。

下図を計算すると、解法1と同じ 1/22の確率になることが分かります。



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なぜこの組み合わせの数をかけるだけでいいのか、これも検証が必要です。下の図のように(これは書き出して試さないとわからない!)どの組み合わせにしても掛け合わせている確率値は同じだということが分かりますね。

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ということで、可哀想なYさんは大好きな栗を5個取ったのに2個しか実際食べられませんでした。しかもこの現象が1/22の確率でしか起きないというのに!



いかがでしたか?

日常の出来事に好奇心を傾けることで、面白い数学の問題が潜んでいることに気付けますね。

この記事の著者 ヤン ジャクリン

ヤン ジャクリン (講師紹介はこちら

2015年 東京大学大学院 理学系研究科物理学専攻 修了(理学博士)
2015年 高エネルギー加速器研究機構 素粒子原子核研究所(博士研究員)
2017年 株式会社GRI(現職) 講師 兼 分析官
2019年 Tableau Desktop Certified Associate 資格取得

・英検1級
・TOEFL IBT試験満点

北京生まれ、米国東海岸出身(米国籍)、小学高学年より茨城県育ち。

万物の質量の源となるヒッグス粒子の性質を解明し、加速器実験による新粒子発見に関する研究を行い、国際・国内学会発表20件以上、査読論文5件以上。
10年以上に渡り、幅広い年齢層の学習指導を学習塾や大学などで実施(5科目、英会話、受験指導、素粒子物理など)。
現在は、株式会社GRIにて、データ分析官(データ前処理、可視化分析、マーケティング施策の分析 他)
公開講座および法人研修を多数開設。

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