「専門統計調査士」は、一般財団法人である統計質保証推進協会が実施している「統計検定」の中の1つで、統計調査の企画・管理、ならびにデータの高度利用に携わる上で必要になる基本的知識と能力を認定する資格です。

この記事では専門統計調査士について、試験の概要や学習方法について解説します。

専門統計調査士とは?

専門統計調査士検定は、高度な統計調査とデータの活用に関する能力を認定する試験です。

調査の企画や設計、調査の指導から、データを集計・分析し利活用する手法まで、統計調査に関する基本的な知識と能力が評価されます。

「統計調査士」の上位資格にあたり、統計調査士が統計調査の意義や役割、データ活用がメインであったのに対し、専門統計調査士は調査の設計や実施の段階からの内容が含まれ、より高度な知識を求められるのが特徴です。

本資格を取得することによって、調査プロジェクトの実務上の能力を証明することができます。

リサーチャーなどの業務で募集要項に挙げられることもあり、データ解析等の分野で高く評価される資格です。

専門統計調査士試験に受験資格はありませんが、資格の認定には下位資格である統計調査士資格の取得が必要です。

「統計調査士」と両方の試験に合格することで初めて「専門統計調査士」の認定証が得られる点に注意しましょう。

求められる数学知識

専門統計調査士試験の内容には、統計検定2級程度の数学知識が含まれます。

これは大学基礎課程レベルの内容に相当します。

計算問題では母比率推定の問題が多く出題されるため、特に標準誤差については理解を深めておくことが必要です。

統計調査士の試験では知識を問われる問題が多く出題されましたが、専門統計調査士試験では理論的な問題や計算問題が多くなっています。

数学の重要性が統計調査士よりも高くなっているので、苦手な方は重点的に対策しておきたいところです。

専門統計調査士資格を取得するメリット

専門統計調査士は統計学をビジネスに活かすことに主眼を置いた資格です。

統計調査士はデータの利活用や統計調査の意義に関する基礎的な内容でしたが、専門統計調査士では統計調査の設計段階からデータの解釈に至るまでの体系的な知識を有していることが証明できます。

比較的新しい資格であるため、以前は知名度があまり高くはありませんでしたが、近年では転職や就職活動においても、専門統計調査士資格がプラスに働くことが増えてきました。

特にアンケートなどの統計的な調査を行う仕事に携わる場合、本資格を有していることによって業務に関連する十分な前提知識を有していることを示すことができます。

また、統計調査に関連する業務を行わない方にとっても、専門統計調査士の勉強を通じてデータの取り扱いや論理的な思考力が身に付き、ビジネスにおいてより確度の高い意思決定ができるようになる、といったメリットもあります。

専門統計調査士の試験内容

名称専門統計調査士
受験日程通年
出題形式CBT(5肢選択問題)
受験料一般:10000円(税別)
学生:8000円(税別)
問題数40問程度
試験時間90分
合格点正答率65%

専門統計調査士試験は、試験会場のパソコン上で5択の中から選択肢を選ぶ形式の試験です。

本試験では電卓の持ち込みが認められています(関数電卓等は不可)。

計算問題では平方根(√)を含む計算も出題されるので、ルート計算機能のある電卓の用意が必要です。

出題される問題数は40問程度で、試験結果は試験終了後すぐにレポートとして確認することができます。

試験時間は90分と十分な時間がとられています。

1問あたり2分程度の計算となり、極端に時間が足りなくなることは少ないですが、データの読解や計算が必要な設問の中には時間がかかるものもあるため注意しましょう。

出題の傾向

専門統計調査士試験では調査規格や調査手法に関する知識問題と、データ読解に関する計算問題が出題されます。

下位資格である統計調査士試験と異なり、計算問題の割合が高くなっているのが特徴です。

主な出題内容は下記の通りです。

  • 調査企画
  • 調査票作成 
  • 標本設計と結果の推計 
  • データの整理 
  • 調査の種類と特徴
  • 調査手法
  • データ利活用の手法

統計検定 CBT「専門統計調査士」 出題範囲表より抜粋

特に調査手法についての内容は非常に範囲が広くなっています。

訪問調査や郵送調査、インターネット調査などの手法について、それぞれの特性や実施・管理上の注意点について理解しておく必要があるため、テキストをよく読み込んで理解を深めておきましょう。

専門統計調査士の難易度・合格率

専門統計調査士試験は統計検定2級程度の数学知識に加え、統計調査についての理解度が問われます。

難易度はやや難しいといえます。

特に、統計調査士で初めて統計学を学び始めた人にとっては、一段高い理解とスキルを求められる試験となっています。

いっぽう、数学が得意な方にとっては、暗記が必要な問題の割合が減っているため、統計調査士試験よりも難易度が低く感じられるかもしれません。

なお、合格率に関しては紙媒体を利用した従来の試験(PBT方式試験)が終了して全てCBT方式の受験に移行したことに伴い、2021年以降合格率は公表されていません

以下では参考までに、2021年までに公表された過去5年の合格率を見ていきます。

  申込者数 受験者数 合格者数 合格率
2021年 87 74 19 25.7%
2020年
(試験中止)
2019年 501 433 144 33.3%
2018年 390 323 87 26.9%
2017年 324 272 120 44.1%

年によってばらつきが大きいですが、おおむね合格率は30%台で推移しています。

合格率のみで比較すると、統計検定2級よりやや低い数字です。

試験範囲から考えても、専門統計調査士の難易度は、統計検定2級プラスアルファ程度といえるでしょう。

専門統計調査士の勉強方法

専門統計調査士は、公式の過去問題集が出版されています

学習用のテキストについては公式の書籍が出版されていませんが、統計検定2級のテキストである「統計検定2級対応 統計学基礎(日本統計学会)」と、「入門・社会調査法 2ステップで基礎から学ぶ(法律文化社)」などの社会調査に関する書籍があると理解を深めやすくなります。

効率のいい学習方法は以下の流れです。

まず、過去問に一通り目を通します。

現時点で解ける問題、暗記が必要な問題、計算方法の理解が必要な問題がそれぞれどの程度あるか確認します。

現時点で解けそうな問題が多く、わからない問題が暗記か計算のどちらかに偏っている場合は知識の穴を埋めるように該当するテキストを確認し、過去問を繰り返し解いていきましょう。

暗記と計算のどちらも解けそうにない問題が多い場合は、まず計算問題を重視して学習することをお勧めします。

計算問題は出題数が多く、また、統計学の基礎となる数学を理解しておけば、さまざまな問題に対応しやすいためです。

専門統計調査士試験では、特に標準誤差に関する計算問題がよく出題されます。

最低限、標準誤差の項目(平均値、比率、サンプル数と標準誤差の関係)についてはよく確認しておきましょう。

過去問でわからなかった問題の解答を確認し、理解が不十分な内容については統計検定2級のテキストの該当項目を読んで理解を深め、繰り返し問題を解いて知識の定着をはかります。

ある程度計算問題の理解が進んだら、暗記問題に取り掛かりましょう。

特に重要な問題については過去問を繰り返し解くことで対応が可能ですが、より深い知識について問われる設問も出題されるため、テキストの読み込みは必須といえます。

特に社会調査の方法論については出題範囲が広く、分類や詳細な方法を理解しておく必要があります。

まずは統計検定2級のテキストの該当項目を確認し、それだけで十分な理解が難しい場合は「入門・社会調査法」などの社会調査の参考書に目を通しておくといいでしょう。

専門統計調査士の学習時間は、初学者であれば40〜50時間程度、統計学2級程度の内容をすでに学習しており、計算問題が得意な人であれば20時間程度が目安になります。

まとめ

専門統計調査士は、高度な統計調査とデータの活用に関する能力を認定する試験です。

調査の企画段階からデータの利活用まで、統計調査に関する体型的な知識を証明できるため、ビジネスや転職にも活用することができます

本記事を参考に、専門統計調査士資格の取得から目指してみてはいかがでしょうか。

この記事の著者 アオミ ソウ

アオミ ソウ

薬学系大学院の修士課程を主席卒業後、大手製薬企業で有機合成・データサイエンス関連業務に従事(専門は生物有機化学)。

現在は研究の傍ら、ライターとして記事の執筆・イラストの制作を行っている。

主な執筆分野はサイエンス(医療、生化学、情報科学)をはじめ、ガジェット、資格など。

保有資格
2018年 危険物取扱者甲種
2021年 データサイエンス数学ストラテジスト(上級)
2021年 応用情報技術者

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