「データサイエンス発展(DS発展)」とは、一般財団法人である統計質保証推進協会が認定している「統計検定」の中の1資格です。

DS発展はその名称の通り、統計検定のデータサイエンス関連資格の中でも発展的な内容となっています。

DS基礎ではExcelを用いたデータハンドリングに重機が置かれていたのに対し、DS発展ではより理論的な内容が問われるのが特徴です。

この記事ではデータサイエンス発展(DS発展)について、試験の概要や学習方法について解説します。

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データサイエンス発展(DS発展)とは?

DS発展はDS基礎と同様に、2021年から試験が開始された新しい資格です。

内容は数理や情報、統計、情報倫理やAIに関する知識など、大学教養レベルの内容を踏まえた問題が出題されます。

DS基礎よりさらに踏み込んだ内容となっており、統計検定2級相当の知識とPythonの操作スキルが求められます。

統計検定2級は仕事で活用できる目安と言われるレベルの試験です。

それに加えて実践的なデータ解析スキルを有していることも証明できることから、DS発展は業務や転職などでも有用な資格と言えるでしょう。

求められる数学知識

DS発展の内容には、大学教養レベルにあたる数学知識が含まれます。

例えば線形代数や行列、微積分といった内容をよく理解し、計算の方法や、どのような処理でそれらの数式が使えるのかを理解しておく必要があります。

DS基礎がExcelを用いたデータ処理が中心の試験であるのに対し、DS発展では概念や数式の意味を問うような問題も多く出題されていることから、統計解析に用いられる数学について、より深い理解が求められる試験です。

統計検定のデータサイエンス資格

統計検定では、「DS発展」「DS発展」「DSエキスパート」3つのデータサイエンス関連資格があります。

これらのうち、DS発展はデータサイエンスの理論を網羅した内容となっており、仕事に活用できる資格です。

資格求められる数学知識どんなスキルを証明できるか
DS基礎大学入試レベル実際のデータセットを目的に応じてハンドリングし、その結果を問う能力
DS発展大学基礎課程レベル数理、情報、統計、倫理・AIに関する大学教養レベルの能力
DSエキスパート大学専門課程レベル計算、統計、モデリング、領域知識に関する大学専門レベルの能力

これまではDS発展が統計検定のデータサイエンス資格の中で最も難易度の高いものでしたが、2022年9月よりさらに上位に当たるDSエキスパートが新設されます。

業務内容や自身のスキルにあわせ、上位資格の取得も検討してみてはいかがでしょうか。

統計検定からの横展開にもおすすめ

DS発展では、より実際のデータ分析に活かせる内容が含まれていることから、データサイエンスについて学習したい場合にも適しています。

統計検定3級や2級を取得し、データ分析に必要となる統計学の基礎知識を身につけた後であれば、Pythonなどのプログラミング言語を用いた統計処理についても理解が深めやすくなるでしょう。

データサイエンティストとしてのキャリアを目指す場合は、募集要項として挙げられることが多い統計検定2級を取得した後、データ分析の実務能力を証明できるDS発展やDSエキスパートを取得することをおすすめします。

※関連コラム1:統計検定2級とは?難易度や必要な数学レベル、勉強法・参考書まで紹介!

※関連コラム2:統計検定3級とは?難易度や勉強法や勉強時間、テキスト・参考書まで紹介!

データサイエンス発展の試験内容

DS基礎同様、試験会場のパソコン上でExcelを使って処理した結果をもとに多肢選択や数値・文字入力で問題に答える形式の試験です。

電卓の持ち込みが認められており(関数電卓等は不可)、計算が必要な問題も出題されることがあるため、使い慣れた電卓を持参しましょう。

出題される問題数は30問程度で、試験結果は試験終了後すぐにレポートとして確認することができます。

名称データサイエンス発展
受験日程通年
出題形式CBT
(多肢選択と数値・文字入力)
受験料一般:6000円(税別)
学生:4000円(税別)
問題数30問程度
試験時間60分
合格点正答率60%
参考:統計検定 データサイエンス発展(DS発展)

出題の傾向

DS基礎がExcelでのデータ処理スキルを問う試験であったのに対し、DS発展ではデータサイエンスに関する知識を広く問う試験となっており、かなり出題傾向が異なります。

出題範囲は下記の通りです。

  • 社会におけるデータ・ AI 利活用
  • データ・AI利活用に おける留意事項
  • データリテラシー
  • 数理基礎
  • デジタル情報と コンピュータの 仕組み
  • アルゴリズム 基礎
  • データ構造と プログラミング 基礎 (主に Python)
  • データ ハンドリング
  • データ取得と オープンデータ
  • 確率と確率分布
  • 統計的推測
  • 種々のデータ解析
  • データ活用実践

統計検定 CBT「データサイエンス発展」 出題範囲表より抜粋

計算が必要な統計学や数学の問題に加え、プログラミングや機械学習法に関する問題や、倫理・法律に関する問題など、データサイエンスに関する一般的な内容を問う問題が出題されます。

これらの知識問題のうち、特にAIや機械学習についての内容は他のデータサイエンス関連資格と共通する内容の設問も多くあります。

いっぽう、「数理基礎」や「統計的推測」の項目をはじめとした数学的・統計学的な理論については内容が厚く盛り込まれているのが本試験の特色です。

データサイエンス発展の受験資格

統計検定はいずれの難易度も受験資格が設けられていません。

DS発展を含めたデータサイエンス関連資格も、どのレベルからでも受験が可能です。

統計検定のデータサイエンス資格は「DS発展」「DS発展」「DSエキスパート」の3種があります。

自分に合った難易度から受験を目指すと良いでしょう。

データサイエンス発展の合格率と難易度

合格率

2023年に実施されたデータサイエンス発展試験の合格率は64.6%でした。

試験実施年合格率
2023年64.6%
2022年49.5%
2021年63.0%

データサイエンス発展試験が始まった2021年の合格率は63.0%、2022年の合格率は49.5%という結果でした。

2023年の合格率は64.6%と、今までで一番高い合格率となっています。

今後も50%~65%の合格率を推移すると考えられる試験です。

Pythonでのプログラミング経験があればやや難易度が下がる

データサイエンス発展試験の難易度は、大学入試レベルの数学知識を前提とした統計学に加え、AIや、リテラシーなどの幅広い・内容が含まれることから、未経験者にとってはやや難しいでしょう。

一方、経験者にとっては基礎的な知識も含まれることから、普通程度の難易度です。

前述の通り、DS発展はデータサイエンスに関連する資格の中でも数学・統計学についての内容が多く含まれるため、学習においても数学・統計学の理解をいかに深めるかがポイントになります。

また、DS基礎試験の問題のうち、プログラミングに関連する設問は比較的多く出題されます。

中にはPythonなどのプログラミング言語で書かれたコードを読み、内容を理解できれば解ける問題もあることから、Pythonの扱いに慣れていれば学習の難易度は下がります。

もっとも、単にプログラミングができるだけで有利になるという訳ではありません。

Pythonのプログラムと数学・統計などを組み合わせた問題も出題されているため、コードの意味や処理の内容について深く理解しておく必要があります。

※関連コラム:【AI開発に必須!】Python(パイソン)とは?特徴や強みを解説

データサイエンス発展の勉強方法

DS発展では統計学に関する知識だけでなく、AI技術に関する内容やリテラシーについての知識が問われ、幅広くデータサイエンスの基礎知識を問う内容となっています。

数学を扱う設問も多く、単なる計算問題だけではなくプログラミングなどの分野を組み合わせた捻りのある問題も出題されるため、広い周辺知識と深い数学・統計学の理解という、2軸の学習が必要になる資格です。

DS発展を受験する上で、以下の3点が学習のポイントです。

  1. 関連用語の理解
  2. Pythonを用いたプログラミングの理解
  3. 数学・統計学の理解

1.関連用語の理解

特に「1.関連用語の理解」の用語理解がDS基礎に合格する上で最も重要になってきます。

設問の中には言葉の意味を知っていれば解ける問題も多いため、点数を獲得する上ではこれらの問題は確実に押さえておきたいところです。

DS発展の出題範囲表には「学習しておくべき用語」の項目が設けられています。

参考:統計検定 CBT「データサイエンス発展」 出題範囲表

この表に含まれる用語については、最低限説明できるようにしておきましょう。

2.Pythonを用いたプログラミングの理解

「2.Pythonを用いたプログラミングの理解」については、Pythonのコードを読んで処理の内容が理解できる必要があります。

Excelを実際に操作して解答を行うDS基礎に対し、DS基礎では実際に手を動かしてデータ分析をすることはありません。

ですので、Pythonのコードを書いてデータ処理を練習するというよりは、プログラミング言語としてのコードの意味や構成に注目して学習するようにすると効率的です。

条件分岐や繰り返しなど、プログラミング言語の基本となる処理についてはよく理解しておく必要があります。

※関連コラム:【AI開発に必須!】Python(パイソン)とは?特徴や強みを解説

3.数学・統計学の理解

「3.数学・統計学の理解」がDS発展の学習をする上で最も特徴的な部分です。

実際に計算した結果を問われる問題が出題されるため、統計学で用いられる数学について理解し、線形代数や微分積分の基本的な計算ができる必要があります。

計算や用いられる記号の意味、どのような時にその計算が可能なのか、といったことを理解し、特殊な出題形式(プログラミングと組み合わせた問題など)であっても迷わず計算できる程度にまで知識を定着させておきましょう。

また、データサイエンス発展試験は、日本統計学会公認のテキスト「日本統計学会公式認定 統計検定データサイエンス発展対応 データサイエンス発展演習」があります。

引用:Amazon.co.jp

こちらのテキストでは、数理、情報、統計に関する幅広い知識を組み合わせて活用する能力を多様な例題で演習できる内容になっています。

「データサイエンス発展」の出題範囲に合わせたテキストになっているので、こちらを活用して勉強するのがおすすめです。

まとめ

統計検定DS発展は、データサイエンスの基本となる統計学やAI、データリテラシーについて、幅広い知識と数学的な理解を問う資格です。

データサイエンスについて学ぶ上で必要になる内容が網羅されており、理論を理解する上では非常に有用な資格となっています。

ひとつ注意したいのが、DS基礎がExcelのスキルを問う実践的な内容であったのに対し、DS発展は理論寄りの内容となっており、試験の傾向が異なる点です。

DS基礎のような実務から入り、理論を深く理解したい場合や、データサイエンティストを目指したい場合の足がかりとして、DS発展は非常に良い資格と言えるでしょう。本記事を参考に、ぜひ取得を目指してみてはいかがでしょうか。

関連記事:DS検定とは?難易度や合格ラインを講師が解説(データサイエンティスト検定リテラシーレベル)

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この記事の著者 アオミ ソウ

アオミ ソウ

薬学系大学院の修士課程を主席卒業後、大手製薬企業で有機合成・データサイエンス関連業務に従事(専門は生物有機化学)。

現在は研究の傍ら、ライターとして記事の執筆・イラストの制作を行っている。

主な執筆分野はサイエンス(医療、生化学、情報科学)をはじめ、ガジェット、資格など。

保有資格
2018年 危険物取扱者甲種
2021年 データサイエンス数学ストラテジスト(上級)
2021年 応用情報技術者

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