今回は「建物滅失登記」の流れと「建物滅失登記申請」の前提についてお伝えします。

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建物滅失登記案件の流れ

私が扱う案件の中で2番目に多いのがこの「建物滅失登記」です。

おおまかな一連の流れとしては下記の通りです。

  1. お客様からの登記依頼
  2. 必要資料を入手
  3. 資料調査
  4. 現場調査
  5. 登記必要書類の作成・手配
  6. 登記申請
  7. 登記完了後納品
  8. 領収証作成・送付

1. お客様からの登記依頼

このお客様も取引実績が多数あり案件の金額が決まっているため、見積書の作成が省略されます。

納期を確認します。

2. 必要資料を入手

案件の「公図」「建物登記事項」「建物図面・各階平面図」「土地登記事項」「地積測量図」と必要書類を入手します。

3. 資料調査

各種資料の調査です。滅失登記の注意点は「対象の建物に所有権以外の権利があるかどうか」です。

所有権以外の権利は登記記録の権利部乙区に記載されており、抵当権や根抵当権が設定されていることがあります。

試験勉強では「滅失登記は報告的登記であり、建物に所有権や所有権以外の権利に関する登記がされていても消滅承諾書などの提供は不要」と習いますが、弊社では権利の設定者に「建物の滅失登記を申請予定ですが設定の権利をどうしますか?」と確認します。

「申請しても結構ですよ」と言われれば調査報告書にその旨を記載して申請しますが、「それでは設定の登記を抹消します」と言われることもあり、その場合は先方の抹消登記が申請されるのを待つことになります。

今回の案件では所有権以外の権利は登記されていませんでした。

4. 現場調査

公図・地積測量図と照らし合わせて現地を特定後、建物図面に記載の建物がないことを確認し写真撮影。

建物滅失登記案件の流れ
建物滅失登記案件の流れ

5. 登記必要書類の作成・手配

委任状・建物の取壊証明書を手配し調査報告書を作成。試験勉強的には委任状以外は法定添付書類ではありませんが、実務では取壊証明書(または解体証明書・施工会社の実印が押印された書類)の添付が求められるため、「取壊証明書の有無・手配の可否」については注意を要します。

この取壊証明書については施工会社の書式で発行されることがほとんどです。

物件の内容まで記載する会社、物件は空欄でこちらが記入する会社、棟数分発行してくれる会社、取壊した建物が複数棟あっても1枚しか発行してくれない会社など様式はそれぞれ異なりますが、印鑑証明書(印影と会社法人等番号の確認用)と併せて手配します。

6. 登記申請

建物滅失登記の法定添付書類は「代理権限証書」です。委任状と取壊証明書・調査報告書を揃えオンラインで申請し、添付書類は郵送します。

7. 登記完了後納品

登記完了後、「登記完了証」「閉鎖事項証明書」「請求書」を納品します。

8. 領収証作成・送付

費用の入金確認後「領収証」を作成・送付します。

建物滅失登記の依頼パターン

「建物滅失登記」の依頼をいただくのは主に次の2パターンです。

1 個人または法人が建替えの際に依頼

古い建物を取壊し、新しい建物を建てるケースです。

「滅失登記」と「表題登記」を併せてご依頼いただくことが多くなります。

2 事業用地(マンションや工場など)の売買の際に依頼

事業用地を取りまとめた不動産会社が、用地を必要な法人に売却します。

事業用地はある程度の大きさが必要なため元の土地の筆が多く、それぞれ元の筆に建っていた滅失対象建物も複数棟となることが多いです。

建物滅失登記「申請」の項目不足

滅失登記については不動産会社と法人の契約によるので、売主側(不動産会社)からのご依頼、買主側(法人)からのご依頼、それぞれのケースがあります。

一言で「滅失登記」といいますが、実は「滅失登記の依頼者」は、下記項目を理解していることが前提となります。

①建物の登記記録があること・建物の存在・所有者がわかっている
②対象建物を取壊した、または取壊している事実・その時期がわかっている
③建物を取壊したことで、「滅失登記」の必要があることをわかっている

もし②が不明でも取壊証明書があれば問題ありません。

つまり、1や2のような「申請適格者」からの依頼により、必要書類が揃っている「建物滅失登記申請」は、それほど難しいものではありません。

ところが、実務では上記①から③の項目が不足する案件があるのです。

いったいどういうことでしょうか。

そして赤字で書かれている申請は何を意味するのでしょう。

詳細は次回で紹介します。

余談をひとつ。

弊社では東京管轄内の建物滅失登記申請においては、申請人が個人の場合でも委任状に実印で押印してもらい、印鑑証明書を添付します。

本職によれば「以前法務局から調査士会に申し入れがあった」とのことで継続しているのですが、「東京でも今は必要ない」というような話も外部から聞いたことがあり、気になって先日東京法務局に聞いてみました。

登記官の回答は、

「東京法務局では建物滅失登記に印鑑証明書の添付が無いことを理由とした補正や却下はしていません。管轄の各法務局や出張所に確認するのが宜しいかと思います。」

とのことでした。

実務における「情報のアップデートの重要性」を痛感した次第です。


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某有資格者による業務忘備録

2019年の12月からアガルート講座の2期生として中山先生の薫陶を受け、2020年の土地家屋調査士試験に合格しました。

現在、関東某所の調査士事務所に所属中で、主に建物の登記を担当しております。

諸般の事情により名を明かすことができませんが、これまで経験した建物の登記申請業務について備忘録として発信していく予定です。

参考にしていただける部分があれば幸いです。あくまで弊社の仕事の仕方ですので各事務所によって方法が異なる部分もあるかと思いますが、その辺りはご容赦頂きたく存じます。

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