今回は、瀬古土地家屋調査士事務所の瀬古貴文様に特別インタビューを行いました。

瀬古土地家屋調査士事務所では、一級建築士事務所と別法人で解体工事業も行っており、幅広くサポートできることが強みです。

土地家屋調査士になろうと思ったきっかけや普段の業務内容、独立の経緯などを詳しくご回答いただいています。

これから土地家屋調査士を目指す方は、ぜひ参考になさってください。

なぜ資格を取得しようと思ったのですか?

私は工業高校の建築科を卒業後、地元企業に就職しましたが、周囲には大卒の同僚が多く、自然と学歴に対するコンプレックスを感じるようになりました。

このコンプレックスを克服したいという思いから、まずは国家資格に挑戦することにしました。

最初に挑戦したのは二級建築士で、無事に合格しました。当時勤めていた会社は建設業ではありませんでしたが、資格取得を通じて会社からの評価が飛躍的に向上したのを実感しました。

その後、不動産に関する資格を複数取得し、その中の一つが土地家屋調査士でした。

主にどのような業務をされているのですか?

現在は、土地家屋調査士事務所と一級建築士事務所を運営しており、さらに別法人で解体工事業も行っています。

主な業務は土地家屋調査士事務所での業務で、従業員は全員こちらに所属しています。

私たちの主な業務は、個人の土地の境界を明確にすることであり、具体的には境界確定や杭の設置、不動産登記(土地分筆登記や建物表題登記)などを行っています。

一級建築士事務所では既存住宅の診断業務を行っており、解体工事業は測量業務と非常に親和性が高いです。

土地の売却を希望される方には、売却前に確定測量を行って売却範囲を明確にし、建物がある場合は解体して更地にするという流れでサポートしています。解体に伴って、建物の滅失登記も支援しています。

また、解体以外にも駐車場の舗装工事と測量をセットで請け負ったり、更地の有効活用についての提案も行っています。

1日の簡単なスケジュールを教えて下さい

私の一日は、朝5:30~6:00に起床し、メールやチャットの確認をして仕事の準備をすることから始まります。

8時前に出社し、8:30からスタッフミーティングを行います。ミーティングの流れは以下の通りです。
– 8:30 各自の業務進捗をスプレッドシートに記入
– 8:35 各自の予定を共有し、動きの確認
– 8:40 交代制で過去問1問の解説

その後、曜日ごとのミーティングでは、月曜に1on1ミーティング、火曜にSNS会議、水曜に解体会議、木曜に営業会議、金曜にリーダー会議といった形で内容が異なります。

測量スタッフは2人1組でチームを組み、ミーティング終了後に現場へ向かいます。現場での業務に加えて、事務所内では図面作成や境界検討会などを行います。

私は、金融機関やお客様との打ち合わせが中心で、夕方には経営者向けの勉強会にも参加します。夕食は外食が多いというスケジュールです。

仕事の魅力ややりがいを感じる時を教えて下さい

私たち土地家屋調査士は、土地という貴重な資産の境界を明確にし、個人や法人の大切な財産を守るお手伝いをしています。

しかし、現実には境界が曖昧な土地も多く、見えない境界線を見える形にしていくことが私たちの役割です。

測量は単なる作業ですが、測量した結果と過去の資料を組み合わせて、現地では見えなかった境界線を見える形でお示しし、お立ち会いいただいた皆さんにご納得いただける瞬間はとてもうれしいです。

印象に残っている仕事・案件のエピソードがあれば教えて下さい

ある案件では、敷地に建つ建物が隣地に越境しているという問題がありました。越境を解消するためには、境界を正確に確定し、越境部分の解体作業や舗装工事、境界杭の設置など、複数の視点からのアドバイスと対応が必要でした。

依頼主様はすでに複数の解体業者に相談されていましたが、断られてしまい、困り果てた末に弊社にご相談くださいました。

弊社では、確定測量から建物解体、登記変更まで一貫してサポートできる強みがあり、問題解決に至ることができました。この案件は非常に印象に残っています。

なぜ独立開業をしようと考えたのですか?

もともとサラリーマンでしたので、「一国一城の主」になることへの憧れがありました。

学歴コンプレックス解消のために取得した二級建築士がきっかけで資格取得を続けるうちに、資格そのものが目標になってしまったこともあります。

「将来どのような仕事がしたいか」よりも、「どんな資格が取れるか」に意識が向かい、約10年もの間、思考停止状態で資格取得に専念していたように思います。

ある日、「私はなぜ資格ばかり取っているのだろう?」と立ち止まり、資格取得の目的を見つめ直すようになりました。

いくつか資格を取得していく中で、「努力を続ければ国家資格も取得できる」という自己信頼を持つことができ、自然と学歴コンプレックスも薄らいでいました。その時、違和感なく「独立してやっていける」と思えたのが開業のきっかけです。

通常であれば、経験を積んでから独立するケースが多いと思いますが、私は未経験のまま期待感だけで独立に踏み切りました。

開業後、最も苦労されたのはどのような部分ですか?

開業時は、土地家屋調査士としても経営者としてもゼロからのスタートで、知識も経験もコネもない状態でした。

営業経験もなく、見積もり作成も未経験。業務の内容を十分に理解していないために営業に出ることへの不安がありました。

実力をつけるために仕事をする必要があるのに、その実力がないことで営業も思うようにできないというジレンマと闘いながらの毎日で、苦労の連続でした。

土地家屋調査士以外にも複数の資格を所有されていますが、なぜ取得しようとされたのですか?またダブルライセンスによるメリットはどのような点にありますか?

開業して実務を重ねるうちに、土地家屋調査士の範囲だけでは解決できない案件が多くあり、関連する士業や他業種との連携の重要性を強く感じるようになりました。

課題解決には、どの専門家がいつ、どの程度関わるべきかを的確に判断し、最適な提案を行うことが求められます。

このため、私は土地家屋調査士、一級建築士、宅建士、マンション管理士など、不動産関連の資格を総合的に活用しています。

たとえば、不動産仲介業者様からのご依頼において、古い家屋のある土地の売買の場合は測量と解体をセットでお引き受けし、比較的新しい建物と土地の売却案件では、一級建築士として中古建物の状況調査や建物診断を行い、土地の測量は土地家屋調査士として対応しています。

このように、建物の解体が必要なケースでも、残して活用するケースでも柔軟に対応できるのが弊社の強みです。

今後の展望等がありましたら教えて下さい

日本が直面する少子高齢化などの社会課題に対応する専門家集団を目指したいと考えています。

測量や登記、解体、舗装、空き家・空き地の有効活用など、次の時代に向けた事業を通して、地域社会に貢献していきたいです。

人口減少によって、各自治体が維持できなくなる日も遠くないと予想しています。

人口数に応じたまちづくりが必要であり、衰退を防ぎながら成長できる政策が求められています。

こうした課題に対して、私たち民間の力で実行可能な対応を見出し、専門家集団として解決策を提供していきたいと考えています。

これから資格取得を目指している方へメッセージをお願いします

資格取得はあくまでスタートラインであり、ゴールではありません。取得した資格をどのように活用し、社会問題の解決に役立てるかが大切です。

社会課題は刻々と変化し、常に新しい課題が発生します。

資格者としての知識やスキル、経験を活かし、自分の専門分野を核にして多様な社会問題に目を向ける柔軟性が求められています。

次世代の資格者の皆さんが、社会に貢献できる道を切り拓かれることを期待しています。

また、今年、弊社の補助者がアガルートさんの講座でお世話になり、自己採点の段階で土地家屋調査士試験の合格が見込まれています。この場をお借りして感謝申し上げます。

この記事の著者 瀬古土地家屋調査士事務所 瀬古 貴文(せこ たかふみ)

工業高校を卒業し、地元企業に就職しました。職場環境には恵まれていましたが、学歴に対するコンプレックスを次第に感じるようになり、克服しようといくつかの国家資格に挑戦しました。資格を取得するうちにいつの間にか資格取得に没頭するようになり、「資格を手にした自分なら、きっと家族を幸せにできる」「こんな自分でもやればできる」と感じ、ついに脱サラを決意しました。

しかし、経験もコネもゼロの中での独立は想像以上の困難を伴いました。実務の学習はもちろん、飛び込み営業や見積もり、請求書の作成方法まで、一つひとつ学びながら手探りで進めていきました。

その結果、業務は徐々に増え、共に夢を追う仲間もでき、現在は株式会社や一級建築士事務所を開設するまでに至っています。

挑戦には勇気が必要で、リスクも伴います。しかし「やればできる」と自分を信じ続け、乗り越えた先にこそ、自分がなりたい姿があると感じています。

瀬古土地家屋調査士事務所