【土地家屋調査士 実務家インタビュー】マークプラス土地家屋調査士事務所 小川曜様~測量とIT活用~
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今回は、マークプラス土地家屋調査士事務所の小川曜様に特別インタビューを行いました。
土地家屋調査士になろうと思ったきっかけや独立の経緯、今後の展望などを詳しくご回答いただいています。
また、小川様は土地家屋調査士として独立後、2024年に測量士試験に合格。測量業免許も取得しました。
土地家屋調査士と測量士のダブルライセンスについてもお答えいただきましたので、これから土地家屋調査士を目指す方や測量士にも興味がある方は、ぜひ参考になさってください。
目次
なぜ資格を取得しようと思ったのですか?
最初に就職した会社を短期離職をしてしまい、自分の強みを作るために何か取得をしようと思ったのがきっかけです。
大学が法学部だったため、宅建の取得を目指し、無事に宅建の資格を取得したことが自信となり、公務員試験、行政書士試験に挑戦し合格しました。
資格勉強をしている中、特定分野についての専門家になりたいと思い、司法書士と土地家屋調査士という登記の専門家に興味を持ちました。
理系の要素もあり技術職である土地家屋調査士の方が、自分の年齢、合格までの期間、資格者の年齢層・人数、独立後の集客等も考慮し、土地家屋調査士の方が自分に合っていると思い選びました。
主にどのような業務をされているのですか?
土地境界確認測量、不動産表示登記業務などの土地家屋調査士として一般的な業務が大半を占めています。
1日の簡単なスケジュールを教えて下さい
7:00 | 出勤 測量の現場がある日は、渋滞を避けるために、早めに自宅を出発し、事務所によらず直行します。 (測量の現場が近場だったり、また図面作成などの事務仕事の場合は、近くのカフェで自分の好きな時間を過ごした後、ゆっくり仕事に取り掛かります。) |
8:30 | 測量現場近くのカフェやファミレスにて測量の下準備及びメールの確認 |
10:00 | 測量開始土地の所有者と隣接者様に測量させて頂く旨のご挨拶をした後に、測量に入ります。 |
13:00 | 昼食 |
14:00 | 測量が午前で終われば、その後は役所調査や隣接者への記名押印書類等のご説明に伺います。 |
17:00 | 事務所に戻り、翌日の準備、図面や書類作成を行います。 |
18:30 | 帰宅 |
20:00 | 帰宅後、自宅のパソコンにて図面や書類作成をしたりすることはありますが、急ぎの要件でない限り、意識的に休むようにしています。 |
仕事の魅力ややりがいを感じる時を教えて下さい
お客様のご要望をかなえられる登記ができた時ではないかと思います。
不動産表示登記に関しては、対象である不動産を事実の通りに登記しなければなりません。
ただ、その事実を確認できる資料等は、お客様の手元になく、またお客様も把握されてなかったりします。
そのような中、土地家屋調査士の測量・調査次第でお客様のご要望をかなえられる点に魅力ややりがいを感じます。
印象に残っている仕事・案件のエピソードがあれば教えて下さい
今年受任したビール工場の新築の建物表題登記が印象に残ってます。
ビール工場の建物表題登記のご依頼があったのですが、工場が稼働できない状況にもかかわらず、前年に建物が完成したとして、今年の固定資産税を支払わなければならないお悩みをお持ちのお客様でした。
お客様のご認識だと外構工事は終わってなく、まだ完成していないとのことでしたが、建物の本体は外見上もう完成しており、検査済証には前年に検査が完了した旨の記載があったため、固定資産税課から今年の課税のお問い合わせがある状況でした。
そのような中、現地を調査したところ、ボイラーに貼ってある設置日のラベルを発見し、ボイラーが今年になって設置されていることを確認しました。
お客様はビール工場として建築計画をしており、ボイラーが設置されないとビール工場としての用途をなされないため、ボイラーの設置日に建物の『用途性』が認められ、その日が建物の新築年月日であると判断しました。
固定資産税課の方に、ボイラーの設置日を新築年月日として登記申請をする旨をお伝えしたところ、登記の新築年月日の通りの課税する旨の回答をもらいました。
その後、ボイラー設置日を新築年月日として建物表題登記申請し、無事に登記も完了しました。
お客様のご要望の通りの結果となり、また余計な固定資産税を支払わなく済んだため、お客様も安心したと思います。
書類だけで判断するだけではなく、登記の要件を満たしているか、現場調査をしっかり調査することで、お客様の要望に沿うように登記ができた、印象に残っている仕事・案件でした。
なぜ独立開業をしようと考えたのですか?
独立できる資格として、土地家屋調査士の取得を目指したためです。
また、自分の力を試してみたいとの気持ちも大きかったと思います。
士業は独立して一人前との風潮も少なからずあるため、その空気感も開業しようと決意した要因になっていると思います。
開業後、最も苦労されたのはどのような部分ですか?
前職からのコネ等も何もない状態で独立したため、最初の集客に最も苦労しました。
集客方法として、飛び込み営業、WEB集客や異業種交流会への参加など様々な営業を試しました。
飛び込み営業は、結果がすぐに出て、今現在お仕事を頂いている事業者様もいますので、土地家屋調査士が開業当初に行う営業手法としては、取っ掛かりを作るために良いと思います。
しかし、こちらからお願いしているため、仕事をする上で立場が弱くなってしまい、相見積でのご依頼が多く、安価な報酬での仕事になってしまう傾向があるため、苦労が多かったです。
そのような中、積極的に行ったのがブログ記事を書くなどのWEB営業です。
最初は仕事がなく暇な時間しかないので、WEB上にブログ記事を積極的に書いていきました。
ある程度記事が蓄積されると、検索上位に表示されるようになり、後々のWEBからのお問合わせに繋がりました。
また、検索の上位に表示されると信頼にもつながったため、取り組んでよかったと思ってます。
WEB記事は一度書いてしまえば、それが積み重なり、同業の土地家屋調査士が取り組んでいないため、時間は掛かるかもしれませんが、私の開業時には効果が実感しやすい営業手法でした。
なぜ土地家屋調査士と測量士を両方とも取得しようとされたのですか?またダブルライセンスによるメリットはどのような点にありますか?
残念ながら土地家屋調査士は知名度がなく、測量士と間違われることが多いです。
そのため、測量士の資格も持っていると、測量士と名乗れるため、その点で仕事上がスムーズにいくことがあります。
また、測量士試験は土地家屋調査士の実務で必要な知識を問う試験であるため、勉強内容が土地家屋調査士の仕事に直結します。
そのため、土地家屋調査士が測量士試験の内容を勉強することはとても意義があると思っています。
私自身、測量養成学校を卒業したため、実務経験2年間で測量士の資格を取得することはできたのですが、測量士試験の内容が自分の学びたい内容と合致していたため、試験内容を勉強し、試験合格で測量士の登録をしました。
合格後、測量士登録と会社を作り、その会社で測量業許可も取得しました。
土地家屋調査士の法定業務でない仕事は測量会社で積極的に受託して、ゆくゆくは公共測量の仕事が出来ていけたらと思います。
土地家屋調査士と測量士は、測量という共通業務があるため、ダブルライセンスのメリットは大きいと感じています。
今後の展望等がありましたら教えて下さい
GIS(Geographic Information Systemの略:地理情報システム)とGNSS(Global Navigation Satellite Systemの略:全地球航法衛星システム)について興味があり、それを土地家屋調査士業務に取り入れていきたいと思います。
GISとGNSSについては、測量士試験・測量士捕試験とも、試験内容となっているため、言葉自体はご存じの方は多いと思います。
私が測量士捕試験を勉強した平成28年度は、GISとGNSSは土地家屋調査士が仕事上使わない分野であると思っていたため、使わない技術を勉強をするのはめんどくさいと思っていました。
しかし、私が本記事を作成した令和6年度はその状況が一変していると思います。
GNSSについては、以前は何百万もする衛星受信機が、20万円程度で販売されている業者もあり、ネットやSNS上で見ると取り入れている土地家屋調査士の先生が多くいらっしゃいます。
また、GISについては、オープンソースのデスクトップアプリ(QGIS)やWEBライブラリ(Leaflet)などが取り入れやすい環境になっているだけではなく、令和5年度に法務省の備え付け地図が無償で公開され、その利用の方法としてGISについての知識が必要な場面が増えてきたと感じています。
土地家屋調査士を目指されている方の中には、測量士試験・測量士捕試験に興味が沸かない分野もあると思います。
しかし、ドローンや3D測量の技術等もすごい勢いで発展し広く普及し始めていることを考えると、どの分野の技術も知っていなければ、取り残されてしまう時代がくるかもしれません。
私自身、GNSS受信機で世界測地系に準じた位置情報で測量をほぼ行ってますし、その測量データをGISで活用し、土地家屋調査士業務のプラスアルファで価値を提供していけないか、日々模索しています。
これから資格取得を目指している方へメッセージをお願いします
土地家屋調査士の仕事は、境界の確認というご依頼者様だけではなく、隣接者様との境界を確認をする必要があり、それぞれの利害関係を考慮しながら、仕事をしなければなりません。
それが、土地家屋調査士の一番の大変なところだと思います。
しかし、真面目に仕事をすることで、依頼者様だけではなく、隣地者様から頼られたりすることもあり、とてもやりがいがある仕事です。
また、多くの人と関わるという点では、自らを売り込む機会は、仕事をしていく中で、自然と生まれていくと思います。
私自身、開業3年目の新人ではあるのですが、信頼を積み重ねていけば確実に仕事は頂くようになり、食うには困らない仕事だと感じています。
土地家屋調査士試験受験者の方の中には、試験合格後を心配している方もいらっしゃるかもしれませんが、心配はしなくて大丈夫です。
一生の仕事としてとてもやりがいがある仕事です。
この記事の著者 マークプラス土地家屋調査士事務所 小川曜
大学を卒業後、不動産会社、警視庁、土地家屋調査士・測量事務所に就職
2022年 土地家屋調査士を個人開業
2024年 測量士登録、株式会社マークプラスを設立、同法人にて測量業免許取得