日本土地家屋調査士会連合会 副会長の佐々木様にインタビュー!連合会の役割や土地家屋調査士の魅力とは?
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今回は、日本土地家屋調査士会連合会副会長の佐々木義徳様にインタビューを行いました。
日本土地家屋調査士会連合会の役割や土地家屋調査士の魅力など、詳しくご回答いただいています。
これから土地家屋調査士を目指す方は、ぜひ参考になさってください。
目次
- 自己紹介をお願いします
- 日本土地家屋調査士会連合会とはどのような団体なのでしょうか?
- 日本土地家屋調査士会連合会と各都道府県の土地家屋調査士会にはどのような違いがあるのでしょうか?
- 日本土地家屋調査士会連合会が注力している活動を教えてください
- 日本土地家屋調査士会連合会に加入してほしいのはどんな方ですか?
- 改めて土地家屋調査士という仕事について教えてください
- 土地家屋調査士はやはり独立開業する方が多いのでしょうか?
- 土地家屋調査士に向いている人、向いていない人とは?
- 土地家屋調査士は若手が少ないのでしょうか?
- 女性の土地家屋調査士が増えていると伺いましたが実際はどうなのでしょうか?
- 土地家屋調査士の収入面は良いのでしょうか?
- 土地家屋調査士の仕事はたくさんあるのでしょうか?
- 土地家屋調査士の魅力・やりがいを教えてください
- 土地家屋調査士事務所の集客で大事なことはなんでしょうか?
- 土地家屋調査士を目指す方にメッセージをお願いします
- 最後に、どんな方に土地家屋調査士になってほしいですか
自己紹介をお願いします
昭和41年の9月生まれ。58歳です。
生まれは東京の小金井市で、現在も都内在住です。
高校卒業後、たまたま新聞の広告で見た土地家屋調査事務所の求人に応募したのが土地家屋調査士となったきっかけでした。
ちょうど時代はバブル、不動産が高騰し、土地や不動産にフォーカスされている時代でしたし、私も興味がありました。
就職した土地家屋調査士事務所は建築の確認業務と、都市計画法の開発行為の許認可、そして土地家屋調査士の業務、この3つの柱で事業をおこなっていました。
ここで1から先輩に教えていただいて土地家屋調査士の資格を取得しました。
25歳で資格を取得して、すぐに開業しました。
その後は複数の支部の役員、東京会の役員を歴任し、今は日本土地家屋調査士会連合会の役員をしています。
日本土地家屋調査士会連合会とはどのような団体なのでしょうか?
土地家屋調査士業務をするには、土地家屋調査士会連合会の備える名簿に登録する必要があります。
地域を管轄する調査士会に必ず入会しなければいけません。
その会員の登録をおこなっています。
また、都道府県の各法務局ごとに置かれている調査士会の方に対しての連絡、情報の提供、共有も日本土地家屋調査士会連合会の仕事です。
他にも、日本土地家屋調査士会連合会は国の制度との間の連携施設でもありますので、国に対する提言、土地家屋調査士の制度広報、一般の方への制度広報も担っています。
日本土地家屋調査士会連合会と各都道府県の土地家屋調査士会にはどのような違いがあるのでしょうか?
先ほどお話しした日本土地家屋調査士会連合会は、各それぞれの都道府県に届けがある会に対しての情報提供をおこなっています。
一方、各都道府県の土地家屋調査士会では、各地域ごとにいる土地家屋調査士への指導や、直接連絡をとったりしています。
土地家屋調査士と直接接するのは各都道府県会で、その取りまとめや連絡を日本土地家屋調査士会連合会がおこなうという建付けです。
日本土地家屋調査士会連合会が注力している活動を教えてください
いろいろと多岐に渡って活動していますが、大きな取り組みは5つです。
1つ目は、狭隘(きょうわい)道路の解消です。
狭隘道路とは、幅員と幅が4メートルに満たない道路のことです。
住宅街には幅の狭い道路がわりとありまして、道路を広げてそれを解消、改善するための運動です。
これは土地家屋調査士の直接的な業務ではありませんが、道路を広げることで道路として提供すべき元の土地の測量や分筆、地目の変更といった関連業務が発生します。
そのため、道路の狭隘の解消は土地家屋調査士がおこなうほうがスムーズですし社会貢献にもなりますので、その役割を担っています。
2つ目は、地図の整備です。
地図は法務局に地図を備えることが法律で明文化されていますが、なかなか整っていません。
実際に、災害の復興や、不動産の取引の際に支障が出てしまっています。
それを解消するために、今、国が法務局備えつけの地図の整備事業をおこなっています。
国から土地家屋調査士に業務が発注され、少しずつ地図の整備が進められています。
3つ目は、未登記建物の解消です。
本来であれば建物をつくった場合は1ヶ月以内に建物の登記をしなければいけないのですが、忘れている消費者もいます。
そうすると、「その建物が誰のものだかわからない」「建てた方が亡くなったときに、相続人が誰であるかということが明確にわからない」という問題が発生します。
そういった状態の解消や、未登記の場合には、建物の登記を推進する活動もおこなっています。
4つ目は、法改正です。
法改正は、制度が変わっていく中で、国が考えていくこと、現実的に現場で起きていること、土地家屋調査士が考えていくこと、を調整しながら、国への働きかけをしています。
法改正についても、こちらの理解を求める、あるいは国がやっている政策をどういう方向でやるのかを先取りして法改正をしていくことも連合会の仕事です。
5つ目は、受験者の拡大です。
どこもそうですが、人材不足は深刻です。
土地家屋調査士の役割は多岐にわたりますから、地域にいないと困ってしまいます。
ですので、土地家屋調査士の明るい未来の発信を発信するように努めています。
我々も役員も、一人でも多くの方が土地家屋調査士として活躍し、社会の役に立つことができる仲間を少しでも増やしていくための活動を実践しています。
YouTubeなど広報活動にも注力されていますね
力を入れています。
やはりこれから調査士を目指そうと思っている方は、動画やSNSのほうが親しみがあるでしょうから。
こちらから日本土地家屋調査士会連合会の動画を制作してくれる業者を募って、「受け手の身になったときにどういうところに魅力を感じられるのか」を考えた動画づくりをおこなっています。
日本土地家屋調査士会連合会のYouTubeチャンネルはこちら
日本土地家屋調査士会連合会に加入してほしいのはどんな方ですか?
土地家屋調査士としての資質や知識も必要ですが、日本土地家屋調査士会連合会は組織全体で動いていきますので、集団での身のこなしができる、素直に学んでいける方だと好ましいです。
制度を推進するスキルと、実際に現場で土地家屋調査士としておこなうスキルは別物ですから。
土地家屋調査士は、自身の事務所では一国一城の主、リーダー的な立場となっている方も多いですが、またそれとは違う資質が求められます。
日本土地家屋調査士会連合会の役員の決め方を教えてください
役員は他薦と自薦があります。
他薦の場合は、土地家屋調査士会の8ブロックの中から推薦されます。
会長、副会長については、立候補者がたち選挙をおこないます。
なお、副会長1名と3名以外の理事については会長が指名できることになっています。
改めて土地家屋調査士という仕事について教えてください
土地家屋調査士は、土地家屋調査士法の使命に基づいて資格調査の第3号の中に様々な業務があり、不動産の表示の手続きに始まり、筆界特定、ADR(裁判外紛争解決制度)の手続き、といったことも業務に含まれます。
土地家屋調査士の1日の仕事の流れを教えてください
暗くなると作業ができませんから、一般的には8時半ごろから作業を始め、17時から18時ごろに終わることが多いと思います。
外に出る仕事と事務処理が大体半々ぐらいですね。
中には夜遅くまで働くけれど週4日だけの勤務にして、余暇は自分の趣味に使うといったライフスタイルの方もいます。
ただ、地域によっても違いますし、クライアントの特性もありますので、個々で大分違ってくると思います。
土地家屋調査士の一日(石瀬正毅さん・東京土地家屋調査士会)
土地家屋調査士の一日(大平祐規子さん・兵庫県土地家屋調査士会)
土地家屋調査士はやはり独立開業する方が多いのでしょうか?
土地家屋調査士の法人が認められるようになりましたので、東京においてはかなり法人が設立されていますし、そこで働く社員調査士、法人の調査士も多いです。
地方は独立開業するケースが多いですね。
東京では独立開業、法人の調査士として働く方両方います。
独立開業して苦労したことを教えてください
やはり人の財産を扱う仕事なので、そういう点で神経質にならざるを得ないことがあります。
他には、隣接やお隣の方の協力がないと土地の測量確定は手続きが進まない、けれど、全員が協力的な方ではないこともあるので、そういう面で苦労したこともあります。
また、今問題になっているのが所有者不明土地。
「どこに住んでいるか所有者がわからない」「誰が所有者かは登記簿に載っていたも、その方がいまどこに在住かわからない」、その方を探し求める、そしてどういう手続きをするかで多くの土地家屋調査士が苦労しているかと思います。
ただ、そのときは本当に頭が痛い問題でも、振り返ると、苦労した一つひとつが次の仕事の糧になります。
「今回はこの手で行こうかな」といったように、経験を活かしていくことができています。
土地家屋調査士に向いている人、向いていない人とは?
それは本当に千差万別で、向いていない人も特にいません。
というのも、クライアントも社交的な土地家屋調査士事務所がいいという方、すごく慎重でちょっと仕事は遅いけれど、あの人なら絶対に間違いないという土地家屋調査士に依頼したい方など、求めるものが違いますので、それに応じた方が担えばいいんです。
本人にやる気さえあれば、お客様が応援してくれるかなと。
土地家屋調査士は若手が少ないのでしょうか?
どこの職場に限らず、若い方が少なくなっていますよね。
特に地方ではなかなか次の担い手がいないと聞きます。
我々の仕事はやはりそこの土地にいないとできません。
調査した内容と、実際に現地がどうなっているのか対比をして、現地の測量をして立ち会いをして…と、進めていきます。
例えば、私が長野に行って現地の土地家屋調査士の方と同じ仕事ができるかというと、難しいです。
土地に関する資料の管理の仕方であったり、境界の扱いの風習というのが、それぞれの土地によって違っています。
ですから地方においても、地域に根ざした、若い方に担っていただきたいという思いはあります。
女性の土地家屋調査士が増えていると伺いましたが実際はどうなのでしょうか?
土地家屋調査士白書2024のデータですが、令和5年の土地家屋調査士の会員数は15,650人、そのうち女性は538人で全体の約3.4%で他の士業と比べても極めて少ないです。
土地家屋調査士は外の仕事、穴を掘るとか、境界にコンクリートの杭を埋めるといった作業も伴うことがあるので、そういった点で敬遠されていたかもしれません。
しかし、測量の方法も増えていますから、無理なく仕事をこなすことができるようにもなってきていますし、現在は土地家屋調査士法人の社員になるという選択もあります。
他にも、地図をつくる事業は、チームを組んでおこないます。
ですので、女性の活躍は十分期待できますし、まだまだ伸び代もあるはずです。
土地家屋調査士の収入面は良いのでしょうか?
東京に関して言えば、土地家屋調査士で手残りで1,000万というのは全然普通だと思います。
また、都内に限らず地方でも、国の仕事が多い地域だとそこまで働かなくても年収600~800万くらいは得られる方が多いです。
事業計画をしっかり立てて規模を広げている土地家屋調査士法人であれば、それなりに報酬もとれていると思います。
土地家屋調査士は働き方を自分で決めやすいですから、年配の方でお小遣いぐらいがいいんだと少しだけ働くという方もいます。
あと、東京など土地の値段が高いところは報酬も高くなります。
東京会では地価も報酬額に加味する形で研修をおこなっています。
どうしても地価の高い土地には、取引した後もケアが必要になることが多いからです。
土地家屋調査士は、行政書士と土地家屋調査士のダブルライセンスで仕事をしている方や、測量会社と土地家屋調査士事務所を合わせて運営している方も多いです。
そういう方はより高い報酬を得ているのではないでしょうか。
土地家屋調査士の仕事はたくさんあるのでしょうか?
仕事自体は結構あります。
土地家屋調査士は制度としては1978年からありますが、これまでは余りガツガツ仕事を取りにいく感じではなく、社会に必要とされる仕事を粛々と進めてきていました。
そのため、まだまだ開拓ができていない部分があります。
競売に関してや未登記の土地建物、法務局に備えつける地図制作など、まだまだ我々が活躍できるフィールドがありますね。
土地家屋調査士に将来性はありますか
近頃、士業がAIに取って代わるといわれることがあります。
我々は現場の仕事もありますから、他の士業の方から「調査士さんはいいね」と言われることもあります。
私は、土地家屋調査士に限らず、AIなどによって専門性のあるものと一般の方との距離が縮まってきているからこそ、一般の方では「どうしても超えられない部分」が明確に浮かびあがると思っています。
今までは本当に敷居が高くて、全くまたぐ気にもならなかった方が、AIなどを使うことによって、「とりあえず敷居をまたいでみよう、でもちょっと不安だな」となったときに、我々専門家を呼んで活用していただくとよいのではないでしょうか。
土地家屋調査士の魅力・やりがいを教えてください
これは人それぞれですが、私が期待をしたのは、やはり自分で働く場所、働く時間、報酬であったり、お客様を自分から選ぶことができる…とまではいきませんが、自分のペースで仕事ができる点ですね。
ライフスタイルの中で、例えば子供との時間を優先したいとき、しっかい稼ぎたい時期など、自分で働き方をコントロールしやすい職だと思います。
転勤もありませんし。
土地家屋調査士法人に勤務する場合は転勤がある場合もありますが。
スキーが好きで、冬の間はなるべく仕事をいれないようにしている人もいます。
その分それ以外の季節に頑張っていますし、趣味を通じて仕事につながることもあるようです。
土地家屋調査士事務所の集客で大事なことはなんでしょうか?
土地家屋調査士事務所のホームページを作ることも必要かもしれませんが、やはり一番は人脈づくりです。
土地家屋調査士は仕事をするうえでどうしても地域との深い関わりが必要になります。
地域に根差して、例えば商工会や法人会、若い人であれば消防団などにも顔を出していくと、「ちょっとうちの仕事を手伝ってよ」という感じで、集客につながっていきますね。
土地家屋調査士を目指す方にメッセージをお願いします
土地家屋調査士は、国の方にも必要とされていますし、狭隘道路の回復、災害が起きた際は被災された方の相談や被災地の復元など、まだまだやらなければならないことがたくさんあります。
土地家屋調査士は皆さん心が豊かです。
自画自賛になってしまいますが。(笑)
東京であれば、各会に支部があり仲間がいますので、懇切丁寧に教えてくれるようになっています。
みんなで助け合いながらやっていく、そういう文化が根付いています。
安心して先輩に質問して、ご自身の力を伸ばしていっていただければなと思っています。
最後に、どんな方に土地家屋調査士になってほしいですか
「この仕事を通して社会問題を解決する、それを自分が担っていくんだ!」というような、気概のある方が一番いいかなと思います。
この記事の著者 日本土地家屋調査士会連合会 副会長 佐々木義徳
日本土地家屋調査士会連合会副会長(制度対策・広報・全調政連)
土地家屋調査士法人佐々木事務所代表社員
株式会社佐々木測量代表
昭和41年9月生。
東京都出身。
土地家屋調査事務所に入社し、25歳で土地家屋調査士資格を取得し独立。
複数の日本土地家屋調査士会連合会支部、東京会の役員を歴任。
現在は日本土地家屋調査士会連合会副会長(制度対策・広報・全調政連)。