【合格者が語る】土地家屋調査士試験では「実力を出し切る」ことが重要
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土地家屋調査士試験を受験する際の心構え・ポイントを、アガルートアカデミーの講座を受講し、試験に合格した「某有資格者」さんがお伝えします。
実務者からみた試験問題の実務上の観点、そして「手応えがなかった」けれど合格できた理由を、試験中の気持ちの揺れと合わせて紹介していきます。
目次
土地家屋調査士試験問題の気になるポイント
10月に入り土地家屋調査士試験がいよいよ近づいてきました。
過去に出題された問題について実務上の観点から気になるポイントを述べてみます。
調査士試験の書式あるいは記述と呼ばれる問21・問22については、
- 「登記の対象である不動産」
- 「登記の申請人」
- 「必要な登記の種類」
を正確に把握する必要がありますが、実務では(試験でも変わりはないですが)、
「対象不動産の『所有者』」
を確認しなければなりません。
『所有者』とは「代金・費用を支払った者」を指します。
本試験平成28年度の問22では、
渡り廊下と新館の建築費用を丙山一郎が全額拠出し、建物の所有権登記名義人である乙山和雄から増築(建物表題部変更登記)の申請をする出題がありました。
この問題の増築部分の『所有者』は費用を払った「丙山一郎」です。
→しかし同部分は区分建物としての要件が揃わず既存建物への増築となり、
→増築による建物表題部変更登記の申請適格者は表題部所有者または所有権の登記名義人である乙山一郎なので、
→乙山一郎から建物表題部変更登記を申請
という内容でした。
この問題で問われた、
- 「増築部分の所有者は誰なのか」
- 「増築部分は利用上・構造上の独立性を有するのか(区分建物として登記対象となるのか)」
- 「必要な登記の種類は何か」
- 「必要な登記の申請適格者は誰か」
の各論点は試験だけではなく実務に直結します。
ちなみに平成20年度問5のイ、ウについても上記の論点と同じ内容が問われています。
「登記の申請適格者は誰か」という論点は択一の問題でも散見されますし、この基礎の基礎を押さえていれば取捨できる肢は意外に多いものです。
よくいわれることですが、試験においては皆が正解する問題を間違えた者から脱落していきます。難しくて皆が落とすような問題は合否に影響しません。
「基礎中の基礎を間違えない」「皆ができる問題を落とさない」ことが肝要です。
試験直前期となり不安を抱く受験生もいるかもしれませんが、難易度の高い枝葉ばかりを追うのではなく、改めて「幹」を省みると意外な発見があるかもしれません。
合格率の捉え方
以下は根拠となる数字やデータはなく、昨年まで数度の調査士試験を受験した「いち受験生として」の立場から私個人の体感的なものを記してみました。
雑記として軽く読み流していただければと思います。
択一の基準点をクリアすれば合格率は20%! いける数字だ!
数年前初めての調査士試験に挑むにあたり、某資格予備校に通学しました。
冒頭のガイダンスでは、「土地家屋調査士試験の合格率は年度により差はあるものの、およそ8~10%。択一・記述・合格点と3つの基準点が設定され、その全てをクリアできるのは毎年400名ほどの狭き門です。択一20問と土地・建物の記述が50点ずつの計100点の試験ですが、0.5点が合否を分けるシビアな試験です。皆さん頑張りましょう」といった内容の話を拝聴します。
数字だけを額面通りに受け取るとなかなかしんどい試験に感じますが、私が注目したのは、
「択一の足切りで残るのは2000名」
「合格者は400名」
の2つの数字です。
私は「ええと、2000分の400だから合格率は20%ってことだな」と理解しました。
択一でふるい落とされた者から合格者は出ないので合格率の分母にカウントしません。
つまり、この試験は席に着いて参加するところがスタートではありません。
択一の基準点をクリアしたところが本当のスタートです。
酷な言い方で恐縮ですが、択一で脱落した者はスタートラインには立てていないのです。
「合格率20%」と「合格率10%」を比べてみましょう。
20%→5人に1人が合格、敵は4人です。
10%→10人に1人が合格、敵は9人です。
「倒す相手が4人の戦い」と、「倒す相手が9人の戦い」では自分の勝ち目がかなり変わりませんか。
「5個の中に1個の当たりがある箱」と「10個の中に1個の当たりがある箱」では、どちらが当たりを引けそうですか。
「そんなのは数字上の気休めだろう」「確率の意味分かってる?」などと思われる方もいるでしょうが、受験生にとって合格率は低いよりも高い方が良いに決まっています。
「択一の基準点をクリアする」という絶対条件が必要ですが、図々しい私は択一で脱落するつもりなど全くありませんでしたし、誰に迷惑をかけるわけでもないので、このマインドセットで合格率を20%に倍増させて試験に臨んでいました。
合格ボーダーラインにいる自分が合格するために
本試験の緊張感に呑まれると、問題文の読み落とし、勘違いから普段なら間違えるはずのない論点を間違える、公式が飛んでしまう、電卓の入力ミスや計算間違い、作図ミスなどの無限の負のループに陥ります。
もがけばもがくほど時間がなくなり、求められている申請書や作図が未完のまま試験終了。
出題者の思うつぼにまんまとはまり、後になってみると「なんだよ。よく読めばわかる問題だったな。なんでこの問題を間違えた?」といった典型的な「実力を発揮できなかった」経験はありませんか。
今年の調査士試験は、革新的な資格予備校が台頭し受験生全体のレベルが上がっていることと、昨年涙を呑んだ受験生が満を持してリベンジを挑んでくることにより、受験性のレベルがかなり高くなる(個人的には過去一と予想)ものと思われます。
約400名の合格者のうち、どんな問題が出ても合格できるようなとび抜けた実力の持ち主はほんの一握りで、それ以外の受験生、特にボーダーラインを挟む100名前後などは個々の実力に差はほとんど無いはずです。
それでは一体何がボーダーライン上の合否を分けるのでしょうか。
合格と不合格を分けるのは「発揮できた実力の割合」
私が思うに、それは「出力の度合い(発揮できた実力の割合)」です。
実力が同じ70%と仮定したA・Bが、Aは実力の90%を発揮し、Bは実力の70%しか発揮できなかった場合、成果はAが63%、Bは49%です。
同じ実力の両者にもかかわらず「実力の何割を発揮できるか」によってこのような大差がつきます。
これが試験だったらどうでしょう。
実力と出力の数値を変えてみて下さい。
実力が80で出力が80なら成果は64、しかし実力が70でも90%発揮できれば成果は63です。
自分の実力が仮に70だとしても、実力が10上回る相手と互角の勝負ができると思いませんか。
もちろん現実はそれほど単純なものではないはずです。
仮に実力を100%発揮できても実力以上の成果は得られませんし、試験で求められる成果分の実力が備わっていなければ勝負の土俵に立つことすらできません。
それでもいざ試験を迎えればその時点での実力が己の全てです。
試験中はずっと手が震え、心が折れそうにもなった
私が昨年の試験に臨む際に心掛けたのはただ一つ。
「今ある力の全てを出し切る」ことだけでした。
振り返れば昨年の試験中はずっと手が震えていました。
地積測量図は反対の筆を作図しているので図面は得点されていません。
建物図面も一度書き上げたものが間違っており、×で消してもう一度書き直しましたがそれでも建物の位置が間違っていました。
2時間半に渡ってこれでもかというほど追い込まれ、「マジかよ。1年間本気で勉強してきたことが通用しないのか」と一瞬心が折れそうにもなりました。
深呼吸、そして「後悔しないよう全てを出しきる」
それでも、
「ふうーーーーーーーー(息を吐いています。緊張すると呼吸が浅くなるので必ず息を吐きましょう)、大丈夫だ。落ち着け。まだ間に合う。後悔しないよう全てを出し切るんだ。」
と試験中ずっと自分に言い聞かせ、持てる力は全て出し切りました。
それでも手応えは記述の出来が芳しくなく実力不足を痛感し完全に諦めていたのですが、合格していてとても驚きました。
本試験独特の緊張感で実力を発揮できない受験生が多い
要因として考えられるのは、やはり本試験独特の緊張感から実力を十分に発揮できなかった受験生が多かったのではないかということ。
対して、おそらくは私の「出力の度合い(発揮できた実力の割合)」が周囲の実力上位者たちを上回ったのだろう、ということです。
本試験で実力を出し切ることは意識・努力で可能!
直前期に「他人が知らなくて自分だけが知っている知識」を探すのは無駄ですが、試験において「出力を他の人より大きくして成果を上げる」ことは当人の意識・努力で十分可能です。
今ある実力=「インプット」を、全て出力する=「アウトプット」
よく言われる二つの単語には沢山の意味合いがあるのでしょうが、私はこんな感じで捉えていました。
ご参考になれば幸いです。
ご覧の受験生が実力を発揮できるよう祈っております。頑張ってください。
この記事の著者 某有資格者
2019年の12月からアガルート講座の2期生として中山先生の薫陶を受け、2020年の土地家屋調査士試験に合格しました。
現在、関東某所の調査士事務所に所属中で、主に建物の登記を担当しております。
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