土地家屋調査士試験に独学で合格するための勉強法と知っておくべきリスク
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土地家屋調査士試験は、合格率9~10%の難関国家資格です。
しかし一方で、予備校に通わずに独学で試験に臨む方も多くいます。
そこで今回はそうした方たちのために、試験の内容と各科目ごとの勉強法などをご紹介致します。
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土地家屋調査士試験の出題問題
まずは土地家屋調査士試験の内容です。
試験は、大きく分けて「筆記試験」と「口述試験」に分かれています。
筆記試験は例年10月に行われ、それに合格すると翌年1月の口述試験に進むことができます。
口述試験にも合格すると晴れて最終合格となり、土地家屋調査士となる資格が与えられます。
筆記試験は、さらに「午前の部」「午後の部」に分かれています。
その名の通り、1日のうちに午前と午後の2つの試験があり、どちらにも合格しないといけません。
最短合格を目指すなら「午前の部」は免除前提
ところが、です。
このうち「午前の部」は、実際に受験している人はほんのわずかしかいません。
毎年、数十人程度です。
なぜ受験者が少ないかというと、この「午前の部」は免除を受けることができるからです。
「午前の部」の試験内容は、「平面測量に関する知識と作図」となっています。
試験時間は2時間もあります。
「午前の部」を受けて、その後さらに試験時間が2時間30分ある「午後の部」を受験するのは、気力も体力にも大変です。
そこで、9割以上の受験生は免除を受けることを選択しているのです。
免除を受ける条件は、以下の資格のうちいずれかに合格していることとなっています。
・測量士
・測量士補
・一級建築士
・二級建築士
この中では「測量士補」が最も取得しやすい資格のため、ほとんどの受験生は例年5月に行われる測量士補試験を受験しています。
そして気力、体力が十分な状態で「午後の部」に臨むのです。
ということで、筆記試験の本番は「午後の部」です。
さらにいうと、「筆記試験の本番」ではなく「土地家屋調査士試験の本番」といっても過言ではありません。
というのも、その後に行われる口述試験は、参加すればほぼ全員が合格する“本人確認”のようなものだからです。
よって、土地家屋調査士試験は午後の部で全てが決まるといえます。
そのため以下では「午後の部」だけに絞って内容を見ていくことにしましょう。
※「午前の部」の詳細についてはこちらをご覧ください。
「午後の部」の試験内容
試験時間 | 午後1時00分~午後3時30分 (2時間30分) |
試験内容 | ・民法に関する知識 ・登記の申請手続(登記申請書の作成に関するものを含む。)及び審査請求の手続に関する知識 ・その他土地家屋調査士法第3条第1項第1号から第6号までに規定する業務を行うのに必要な知識及び能力 |
出題形式 | 択一式 20問 記述式 2問 |
「午後の部」の試験内容は、与えられた選択肢から1つの答えを選ぶ「択一式」と、応用問題の「記述式」で構成されています。
択一式
択一式は、3つの法令科目から合計で20問が出題されます。
民法:3問
不動産登記法:16問
土地家屋調査士法:1問
採点は加点方式で、1問正解するごとに2.5点がプラスされ、合計で50点となります。
関連コラム:土地家屋調査士試験「択一式」の勉強法と学習計画の立て方
記述式
記述式は、与えられた事例から申請内容を読み解き、座標や面積を計算し、図面を作成するといった応用問題です。
土地:1問
建物:1問
が出題され、それぞれ25点で合計50点となります。
採点は減点方式で、間違えた箇所に応じて点数がマイナスされます。
関連コラム:土地家屋調査士試験「記述式」の勉強法と理想的な学習時間の配分
択一式、記述式ともに、いわゆる“足切り点”である「基準点」が設定されています。
いずれかがこの点数に到達していなければその時点で不合格となります。
どちらも基準点をクリアし、その上で合計点が「合格点」に到達していなければ合格できません。
相対評価の試験なので、合格点は毎年変わり、合格者が400名ほどになるところで設定されます。
毎年、あと0.5点というところで合格点に届かず涙を呑む受験生が多くいます。
そのため、択一式でいかに点を稼ぎ、記述式ではいかに細かいミスを少なくするか、という点が重要となっています。
令和6年度の土地家屋調査士試験の出題傾向は?
令和6年度の土地家屋調査士試験は、択一式は過去問のみで正解できる問題が多く、その分記述式が時間のかかる難しい問題だったという印象です。
以下に択一式と記述式のポイントをまとめました。
択一式
- 民法、不動産登記法、調査士法、いずれも過去問のみで正解できる
- 過去問の演習量で差がついており、満点を取っている方も多い
- 択一式は30分程度で終わらせ、記述に向けた時間を確保
記述式
- 時間がかかる難しい問題だった
- 実務寄りの問題が多かった傾向
- 第22問から解き始める場合は時間を区切って第21問に進むことが大切
- 大きな論点を外さず、細かい論点のミスを極力減らすことが求められる
択一式を短時間で終わらせ満点に近い点数を取ること、そして記述式は大きな論点を外さず、細かいミスを減らすことが合格のために必要だったと言えるでしょう。
試験科目ごとの勉強法
それではそれぞれの勉強方法を見ていきましょう。
択一式「民法」の勉強法
民法の出題は3問です。
範囲は「総則」「物権」「相続」からそれぞれ1問ずつとなっています。
民法そのものは範囲がとても広い科目ですが、土地家屋調査士試験においては上記の3編に絞られています。
よって、ここに重点を置いて勉強しましょう。(その他の部分も理解を深めるためには必要ですが)
重要なのは当然過去問……と言いたいところですが、土地家屋調査士試験に関してはそれが言えません。
というのも、民法が出題されるようになったのは平成16年からと比較的最近であるため、過去問の量が絶対的に少ないのです。
そのため、行政書士など他資格の民法過去問も活用するとよいと思います。
関連コラム:土地家屋調査士試験の民法勉強法!しっかり対策して3問全問正解
択一式「不動産登記法」の勉強法
不動産登記法の出題は16問です。
ご覧の通り、出題数がとても多いです。
つまりこの試験において非常に重要な科目ということですね。
タイトルでは不動産登記「法」としていますが、実際には不動産登記法だけでなく、「不動産登記令」「不動産登記規則」「不動産登記事務取扱手続準則」といった関連法規も範囲に含まれています。
これらは内容がつながっているので、横断的な理解が必要となります。
さらに「先例」という、過去の登記例や通達も出題されます。
範囲がとても広いわけですね。
不動産登記を学ぶ際にネックになるのは、「用語」と「概念」です。
似たような言葉がたくさん出てきますが、それぞれ意味するものが違います。
「表題登記」と「表題部の登記」は違うものですし、「所有者を証する情報」と「所有権を証する情報」も違うものです。
「登記済証」と「登記完了証」は全く別物ですし、「敷地権」と「敷地利用権」も区別して使わなければいけません。
このように、多くの用語とその意味を覚えて初めて、条文や過去問の選択肢が理解できるようになります。
これは初学者にとって最初のハードルになりますので、まずは一つ一つを丁寧に覚えていきましょう。
ある程度テキストが読めるようになったら、過去問にチャレンジです。
不動産登記法の過去問は量も十分あるため、重要論点はほぼ網羅できます。
過去問を解き、間違えた箇所や理解が不十分だった箇所は、テキストの該当箇所に戻りましょう。
この、過去問→テキスト→過去問→テキストの繰り返しで理解が深まっていきます。
最初は点でしかなかったものが、徐々に線になり、やがて立体的な理解につながっていくことが実感できると思います。
関連コラム:土地家屋調査士試験の不動産登記法勉強法!多肢択一対策
択一式「土地家屋調査士法」の勉強法
土地家屋調査士法からは1問出題されます。
民法と同様、出題数が少ないですが、もともとの学習範囲が狭いため対処はしやすいといえます。
学習方法としては、過去問の肢をしっかり網羅しておけば大丈夫でしょう。
なお、時折ものすごく細かい論点が出題されることもありますが、その場合は他の人も解けていないので、あまり気にすることはありません。
基本的な知識をしっかり身につけておき、余裕があれば細かいところを見ておくのが良いでしょう。
記述式「土地」の勉強法
記述式の問題は基本的に「計算」「申請書」「作図」で構成されています。
もちろん全てが重要なのですが、土地の問題においては、このうち「計算」が肝になってきます。
なぜかといえば、座標値の計算が必ず出題されるからです。
もし座標値を間違えてしまうと、その後に求める辺長や地積も全て間違えてしまいます。
これは非常に痛いミスです。
たったこれだけで合格が厳しくなってしまいます。
ですから、「点の移動」「放射計算」「交点計算」「補正計算」は、電卓の使い方も含めてしっかりマスターしておきましょう。
もちろん「面積計算」「辺長計算」も必須です。
申請書に関しては、土地の問題は比較的シンプルです。
パターンが限られているので、ある程度数をこなせば分かってくるでしょう。
なお、一番出題頻度が高いのは「分筆」に絡めた問題です。
「地積更正・分筆登記」や「一部地目変更・分筆登記」「分合筆登記」など。
単なる「合筆」は、地積測量図を添付しませんので、メインで出題されることはありません。
作図は、土地の場合、各点の座標値を用紙にプロットし、それを結ぶという手順です。
鉛筆で下書きし、ボールペンで清書するわけですが、簡単そうに見えて意外と難しいです。
早く正確に描くには、多くの図面を書いて慣れる必要があるでしょう。
記述式「建物」の勉強法
建物の問題は、申請書がキモとなります。
パターンが多く複雑なので、適切な申請書を書き上げるにはかなりの慣れが必要でしょう。
普通建物だけでも「表題登記」「表題部変更登記」「分割登記」「区分登記」「分棟登記」「分棟・分割登記」「合併登記」「分割・合併登記」「合体による登記等」「滅失登記」とあります。
これに区分建物のものを加えると、倍くらいの量になります。
まずはそれぞれの基本的なケースを覚え、徐々に複雑なケースに対応できるようにしていきましょう。
計算問題について
計算は、土地と違ってそれほど複雑ではありません。
床面積の計算くらいです。
ただ、ヒッカケが用意されていることも多くありますので油断は禁物です。
例えば、区分建物の場合は壁の内側線で面積を計算しますが、見取図では壁の中心線になっていたりといったように。
問題文は注意して見るようにしましょう。
図面について
図面は、各階平面図と建物図面を描くことになります。
それぞれ形状を正しく見極める必要がありますし、量が多いのでスピードも要求されます。
簡単に見えて実はかなり神経を使うのが作図です。
なお、区分建物の建物図面の場合は、点線と一点鎖線の使い分けも必要です。
やはり建物の問題は、区分建物があることによって一気に難易度が上がります。
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独学の勉強のデメリット
さて、独学の方でも勉強できるように、色々と解説をしてきました。
しかし、やはり土地家屋調査士試験に独学で臨むのはイバラの道だと思います。
先ほどもお伝えした通り、不動産登記には多くの関連法規があり、覚える内容は膨大です。
市販のテキストをご覧になった方もいると思いますが、どれもかなり分厚いですよね。
それを独学でクリアしていくのは、なかなか難しいと思います。
しかも初学者にとって、テキストは暗号のような文字列ばかりです。
誤解して覚えてしまうことも多々ありますし、その知識は誰も修正してくれません。
そして、記述式問題に関しては、採点してくれる人がいないというデメリットがあります。
文章で解答する問題や図面の出来は、自分の答えでよいのか判断できませんよね。
自分では大丈夫と思っていても、本試験では大きく減点される可能性もあるわけです。
正しく実力を測れなければ、改善することもできないのです。
現実問題として、合格者の大多数は予備校で学んだ人たちです。
独学で合格できているのは、他資格で勉強したことがある方や、実務ですでに知識を得ていた方でしょう。
そうでなければ、もともと並外れて頭がいい人か、です。
皆さんが上記のうちのどれかに当てはまるのであればよいのですが、もしそうでないなら、予備校を活用された方がよいと思います。
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私が知る中では、すでに6年独学している人がいます。
正直な気持ち……とてももったいないなと思います。
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